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クラウドファンディングが契約を後押しキャノンデール・ドラパック存続決定 新スポンサー「EF Education First」はどんな会社?

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 来シーズンの活動資金が700万ドル不足しているため、クラウドファンディングによる活動資金の調達と新スポンサーを探していたキャノンデール・ドラパックだったが、「EF Education First」社が2018年からチームのスポンサーとなることが決定した。これにより、懸念されていた資金問題は解消され、キャノンデール・ドラパックはチーム存続する運びとなった。「EF Education First」社とは、どんな会社なのか。また、契約解除を通告されていた所属選手たちの動向や、クラウドファンディングの行方についても、まとめてみた。

ブエルタのチームプレゼンテーションに臨むキャノンデール・ドラパックの選手たち Photo : Yuzuru SUNADA

メインスポンサーとして世界中のファンに影響を

 「EF Education First」社は、世界116カ国で語学学校や留学事業、大学などを展開する世界最大級の私立教育機関だ。1965年、スウェーデンにてバーティル・ハルトによって創業された。

 キャノンデール・ドラパックを運営するスリップストリームスポーツの代表を務めるジョナサン・ヴォーターズは、現在EF社の社長を務めるフィリップ・ハルト(バーティルの息子)とコンタクトをとり、サイクルロードレースの世界やクラウドファンディングによって世界中から支援が集まっていることを説明した。

 サイクルロードレースチームのメインスポンサーとなることで、世界中のファンに影響を与えることができる。さらにEF社と、スリップストリームスポーツ社の理念も重なり合い、両者はスポンサーシップ契約に合意した。

 来シーズンからキャノンデール・ドラパックは「Team EF Education First-Drapac powered by Cannondale」として活動することになった。カタカナ語表記にするならば、「チーム・イーエフ・エデュケーション・ファースト・ドラパック・パワード・バイ・キャノンデール」だろうか。

東京五輪の公式スポンサーを務める

 EF社の創始者であるハルトは難読症を患っており、学校で英語を学習することが困難だった。ところが仕事のためにイギリスで生活することになり、たった数カ月のうちに自分が流暢に英語を喋っていることに気付いた。このことから、教室で学ぶことだけではなく、実際に体験しながら学ぶことの重要性を知り、語学習得と海外旅行業を融合させた小さな会社を立ち上げた。

 社名は「Europeiska Ferieskolan」だ。スウェーデン語で「ヨーロッパのホリデースクール」を意味する。頭文字をとった「EF」は現在の社名の由来にもなっている。

 世界で初めて体験型学習プログラム、語学旅行のコンセプトを確立し、スウェーデンの学生たちを英語学習を目的にイギリスに送り出した。EF社の語学旅行は好評を博し、北欧を中心に急速にヨーロッパ中に広まっていった。1972年には、ヨーロッパ外の地域では初めてとなる日本に進出した。

 さらに、社会人向けにビジネス英語を学ぶ場として、英語学校も設立し、世界展開させていった。現在では、54カ国に学校・オフィスを構え、留学プログラムは116カ国が対象となっている。また、英語だけでなく、フランス語、ドイツ語、イタリア語、中国語、日本語なども扱っている。

 1990年代には国際教育企業としての発展を反映し、「Education First」をEFの正式名称とした。また、まだインターネットが浸透していない1996年にオンライン英会話スクールを開始しており、24時間365日アクセス可能なオンライン英会話サービスを世界で初めて提供した会社でもある。

 1988年に開催されたソウルオリンピックの公式スポンサーとなり、ボランティアスタッフ向けにドイツ語とフランス語のトレーニングを提供した。2008年北京、2014年ソチ、2016年リオでも同様に公式スポンサーを務めた。リオ五輪では50万人以上に対して、英語学習や、ポルトガル語学習のプログラムを提供した。

五輪オブジェの前で撮影するリオ五輪ロード日本代表の内間康平 Photo : Yuzuru SUNADA

 2018年の平昌に続いて、2020年の東京オリンピックでも語学トレーニングの提供が決まっている。東京オリンピックでは、審判員やボランティアスタッフだけでなく、タクシーやバスの運転手に対しても英語教育を行うそうだ。

リゴベルト・ウランは残留を表明

 2週間前に、キャノンデール・ドラパックの資金問題が発表された時、所属選手・スタッフの全員の契約が解除された。他のチームとの交渉の自由が許されたが、新スポンサー発表までの間に移籍を表明した選手はいなかった。チームのエースを務めるリゴベルト・ウラン(コロンビア)もチームに残留し、来年もツール・ド・フランスでマイヨジョーヌを狙う。

ツール・ド・フランス総合2位を獲得したリゴベルト・ウラン(左) Photo : Yuzuru SUNADA

 一方で、スポンサー問題が明るみに出る前から移籍を発表している選手は、アルベルト・ベッティオール(イタリア)→BMCレーシングチーム、クリスティアン・コレン(スロベニア)→バーレーン・メリダ、ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア)→アスタナ プロチーム、トムイェルテ・スラフテル(オランダ)→ディメンションデータなどだ。アンドリュー・タランスキー(アメリカ)は引退する。

 そして、新スポンサー獲得発表後には、ライアン・マレン(アイルランド)がトレック・セガフレードへの移籍を発表した。

 6人の選手を失うことになるが、新たな選手獲得の情報はゼロだ。チームGMのヴォーターズは「今後数週間にわたって新しい契約情報を発表することができるだろう」と話しており、他のチームに出遅れていたものの来シーズンに向けて本格的な戦力補強が開始される模様だ。

 新スポンサーが見つかるまでの2週間で、キャノンデール・ドラパックの選手たちは躍動していた。移籍が決まっているヴィレッラはブエルタ・ア・エスパーニャで山岳賞ジャージを獲得。2018年もチームとの契約を残すマイケル・ウッズ(カナダ)は自己ベストの総合7位となった。カナダで行われていたツアー・オブ・アルバータでは、ワウテル・ウィッペルト(オランダ)が2勝、アレックス・ハウズ(アメリカ)が1勝をあげ、全4ステージ中3勝を飾る猛烈な活躍を見せていた。なお、ウィッペルトもハウズも来シーズンの契約は決まっていない。チームのアピールだけでなく、自分自身の実力のアピールなど、様々な思惑があったことだろう。

30歳にして2度目のグランツールを走り、高い登坂力を示したマイケル・ウッズ Photo : Yuzuru SUNADA

クラウドファンディングは継続

スリップストリームスポーツの代表を務めるジョナサン・ヴォーターズ(写真は2008年ツール・ド・フランスにて) Photo : Yuzuru SUNADA

 クラウドファンディングでは、目標の200万ドルには達しなかったものの、9月12日時点で56万ドル(約6200万円)を越える支援が集まっている。出資者の一覧ページを見ていると、10〜20人に1人くらいのペースで日本人の名前も見受けられる。日本からの支援が多かったことも、東京オリンピックのスポンサーを務めるEF社の後押しになったかもしれない。何よりヴォーターズ自身が「クラウドファンディングキャンペーンなしに、今回の契約を獲得することは絶対にあり得なかった」と断言している。

 新スポンサーは見つかったが、出資者へ返金などはせずに、クラウドファンディングキャンペーンは継続するとのことだ。(※9月12日時点で残り1日)

 出資者には、金額に応じてステッカーやマグカップなどのグッズがプレゼントされる。100ドルコースからは、スリップストリームスポーツ社のスポンサーページに名前を載せる権利が得られるため、名実ともにワールドチームのスポンサーになるチャンスともいえよう。

 これにて一件落着となった。だが、サイクルロードレースチームにとってスポンサー問題は毎年のようにつきまとう。今回のキャノンデール・ドラパックの一件はクラウドファンディングを用いたことが新たな試みであった。

 熱心なサイクルロードレースファンは好きな選手と直接交流するために、世界中で開催されるレースを現地観戦することもある。サイクルロードレースファンと語学学習事業は相性が良いように思える。このような企業の契約を引き出すことができたのも、ファンの声を反映させたクラウドファンディングの効果だろう。

 今回の一件を通じて、スポンサー問題が少しでも減ることを祈るばかりである。

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