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猪野学の“坂バカ”奮闘記<15>山の神から「海へ向かえ!」 SUP練習で体得“脱力ヒルクライム”

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 ほんの数年前まで、「猪野学」といえば“ブレブレ走法”で有名だった。ヒルクライムやイベントに出ると「ブレてるぞぉ!」とずいぶんいじられたものだ。仕方ない。私は上体のブレを直すのに3年も費やし、それが全国に放送されていたのだから。ブレずに走る事も出来たが、ゴール前の追い込む時や、“坂バカ”の本性が剥き出しになった時にブレは現れる…。なぜ直すのに3年もかかったのか?それは体幹が使えていなかったからだ。私は勝手に体幹が使えているつもりでいたのだ、知ったかぶりならぬ、“知ったか体幹”だ。

自転車のトレーニングでなぜかSUPに?!

「体幹」ってなんだ?

 しかし体幹を使うといったってこれが意外と難しい。なぜなら、それは意識しづらいインナーマッスルだからだ。

純度100%の坂バカ。ブレこそが筆者の代名詞だった…

 主に腹横筋(ふくおうきん)、横隔膜(おうかくまく)、多裂筋(たれつきん)からなる体幹…。腹横筋は分かる。ツールの選手などが呼吸する時、怒った時の河豚の様に、見事にお腹を膨らませ呼吸をしている。初めて見た時は「自転車選手なのに随分メタボな選手がいたもんだ」と驚いたが、腹横筋による腹圧も立派なエンジンらしい。

 横隔膜も呼吸の時に意識して開くことが出来る。しかし、多裂筋になるともうわけが分からない。一体どうやって鍛えたら良いのだ?

レーパンで葉山の海へ

 体幹トレーニングといえばプランクなどのコアトレーニングだ。プロの方々も実走トレーニングの後にコアトレーニングをするらしい。いわゆるスクワットやデッドリフトといった筋トレも行うが、大半はコアトレーニングに費やしているのだそうだ。それほど体幹、コアの部分というは自転車競技にとって重要なのだろう。私には、この体幹の大切さを知る必要があった。

 そこでまた、困ったときの“山の神頼み”!ということで、森本誠師匠(イナーメ信濃山形)に助けを請うた。師匠からの指令は海へと向かえ、とのことだった。

”山の神”森本誠師匠からの指令は・・・

 真夏の葉山の海岸…ビキニギャルが戯れている。私は坂も好きだがビキニギャルも大好きだ。

ビキニギャルに目もくれず(?)SUPに挑む

 しかし私はブレを克服するために海へ来たのだと、ビキニを払拭し、向かった所は「スタンド・アップ・パドルボード」(SUP)を教えてくれるスクールだった。サップは体幹を認識するのに最適らしい、なぜならボードの上に立っているだけで無意識に体幹を使うからだ。波が高くなると体幹を使ってバランスを取らないと海に落ちてしまう。足で踏ん張ってもダメなのだ。

体幹の鍛え方が足りないとご覧の通りだ!

 最初のうちは何度も水没したが、慣れてくるとだんだんリラックス出来て立っていられるようになった。しかし、オールを使ってパドルリングする時も腕だけだとなかなか進まない。腕は脱力して、体幹を軸として上半身全体で漕ぐと不思議に進む…。脱力?

 私はここで体幹を使うには「脱力」が必要だという事に気付いた。そう、体の末端に力が入っていては体幹は働かないのだ!

脱力ビフォーアフター

 さっそく自転車の上で脱力したくなり、向かった場所は激坂で有名な葉山教会。距離は250mと短いが、最大29%平均16%とかなりの激坂だ。

 実はサップ前と後とを比較するためにすでに1本アタックし、タイムを計っていた。1本目は1分40秒。果たして短縮する事は出来るのか!サップで得た脱力のイメージを思い描きながら、腕や脚は脱力してスタート!

最大勾配29%の激坂で脱力の効果を試す!

 脱力しているが不思議とペダルに体重が乗る感じでぐいぐい進む…。勾配が29%になっても頑張って脱力! 最後の追い込みもブレずに脱力しゴール!

 結果はなんと…、8秒の短縮!「たったの8秒」と侮るなかれ!10kmのヒルクライムに換算すると5分の短縮になる!何とも喜ばしい結果だ。

厳かな葉山教会で、神父の「自転車乗りに嘘つきはいないから…」という言葉。心に響く

 さらに嬉しかったのが、葉山教会の神様の様な神父様から「激坂制覇認定証」をいただいたのだ。この認定証は「上ったよ!」と自己申告すれば誰でももらえる。神父曰く、自転車乗りに嘘つきはいないから…自己申告で良いのだと。私は自転車乗りだが、たまに嘘をつく、自分を恥じた瞬間だった。

 ちなみに神父の中村健一さんも生粋のサイクリスト。教会への激坂を毎日上っているのだから、かなりの剛脚なのだろう。

呼吸が楽になり自己ベスト量産

 私はこのロケの翌年から自己ベストを量産している。理由は脱力する事で体幹を使えるようになり、ペダルに体重が乗るようになったのと、脱力することで呼吸も楽になったのだ。

 最大心拍に近くなると呼吸が苦しくなり、身体がそれを拒否しようとして身体に力が入りがちだ。そうなると無駄な体力を使い、どんどん体力を消耗するのだ。長いヒルクライムだとかなりの違いになる。

 人生も脱力して生きたいものだ。だが脱力して生きていると、必ず叱咤する人物が現れる…。脱力しきった私の顔が腹立たしく映るのだろうか…

 脱力は、自転車の上だけにした方が良さそうだ。

(写真提供:NHK/テレコムスタッフ)

猪野 学猪野 学(いの・まなぶ)

俳優・声優。自転車情報番組NHK BS1『チャリダー☆』(毎週土曜18:00~18:25)にレギュラー出演し、「坂バカ俳優」という異名で人気を博す。自転車の他、空手やスキーなども特技とするスポーツマン。俳優として舞台や映画、ドラマなどで活躍する一方、映画『スパイダーマン』のトビー・マグワイアの声優としても知られる。ウェブサイト「マナブログⅡ

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