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サイクリスト

来シーズンの予算が700万ドル不足チーム存続の危機に瀕したキャノンデール・ドラパックが、クラウドファンディングを開始

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 アメリカのUCIワールドチームであるキャノンデール・ドラパックが、チーム存続の危機に瀕している。2018年から新たに契約予定だったスポンサー企業が突如撤退したことにより、来シーズンの予算が700万ドル(約7億7000万円)不足する事態に陥ってしまった。チームの運営会社であるスリップストリーム社は、所属選手・スタッフとの契約を解除することと、クラウドファンディングを活用して資金調達を行うことを発表した。

鮮やかな緑のジャージが特徴のキャノンデール・ドラパック Photo : Yuzuru SUNADA

突然のスポンサー撤退による予算不足に

 元々、アメリカ大手自転車メーカーであるキャノンデール社とのスポンサー契約は、2017年までとなっていた。キャノンデール社は、2018年以降も引き続きバイクサプライヤーとして、スリップストリーム社との関係を継続する予定ではあったが、予算は縮小されるため新たなスポンサーを探す必要があった。ツール・ド・フランス最終日の7月21日に、新たにアメリカのITメディア企業のオース社と新たなスポンサーシップ契約の締結を発表し、スポンサー問題は解決したと思われていた。

 ところが、ブエルタ・ア・エスパーニャの真っ最中に、期待されていた新スポンサーが撤退するために、来季の予算が700万ドル不足する事態に陥ったと発表した。700万ドルを準備できなければ、UCIの定める保証金の準備もままらなず、チームの存続は不可能となる。そのため、チームの所属選手・スタッフとの契約の一旦解除すること、クラウドファンディングによる資金調達を行うこともあわせて発表した。

 なお、撤退する新スポンサーとはオース社のことではない。チームの公式発表には、「現在のスポンサー(キャノンデール、ドラパック、POC、オース)は、2018年も引き続き支援すると約束してくれている」とあり、オース社以外の別の新スポンサーが撤退したものと思われる。なお、具体的な会社名は発表されていない。

契約解除は選手・スタッフへの配慮

 残念なことにサイクルロードレース界では毎年のように、チームの存続が危ぶまれるチームがでてくる。昨年はティンコフ、イアム サイクリング、ランプレ・メリダの3チームが消滅の危機に瀕した。ティンコフの場合はオーナーのオレグ・ティンコフ氏がチームを解散すると決めていた。イアム サイクリングの場合はスポンサー探しが頓挫したため、2016年5月にはチーム解散を発表していた。

 対してランプレ・メリダは、一度は中国企業のTJスポーツ社が引き継がれる予定だったが、結局スポンサーを降りることとなり、土壇場の12月にUAEアブダビが新たなスポンサーとして名乗り出て、現在のUAE・チームエミレーツへと至る。もし、UAEアブダビが名乗り出なかった場合、元ランプレ・メリダの選手・スタッフたちは引退に追い込まれたり、失職する可能性もあっただろう。

 キャノンデール・ドラパックには、フルタイムで働く人々が100人以上いるという。彼らの雇用と将来を思うからこそ、スリップストリーム社は所属選手・スタッフ全員に契約の解除を通告した。来年以降の契約の有無を問わず他のチームとの交渉が可能になることで、選手・スタッフが土壇場で行き場を失うことがないように配慮したのだ。

ジロでステージ優勝をあげて、復活を遂げたピエール・ロラン Photo : Yuzuru SUNADA
ツールでステージ1勝をあげ、総合2位となったリゴベルト・ウラン Photo : Yuzuru SUNADA

 チームの主力選手であるピエール・ロラン(フランス)やセップ・ヴァンマルク(ベルギー)は、チームの計らいに感謝を示しつつも新たな移籍先を探すことを公言している。ツール・ド・フランス総合2位に輝いたリゴベルト・ウラン(コロンビア)は、新チームとの交渉は2週間待つと表明。GMのヴォーターズはウランの心意気に感謝の意を表した。

 とはいえ、時間は待ってくれない。早く資金問題を解消しないことには、所属選手との契約もままならず、主力選手が大量離脱する可能性もある。それでは、予算を確保できたとしても、来年チームが再び活躍することが難しくなってしまう。

クラウドファンディングへの応募方法

 スリップストリーム社はサイクルロードレース界では異例ともいえるクラウドファンディングを用いて、企業ではなく、個人からの支援に活路を見出した。もちろん、並行して新スポンサー探しも行う。

 そして、スリップストリーム社のクラウドファンディングは、日本からも参加が可能だ。まずは「支援登録」を募集しており、実際の入金は後日となる(恐らく支援登録数が一定数を越えてから案内が来るものと思われる)。その登録手順を紹介したい。

※画稿は全てPC画面のものを掲載しているが、スマホ・タブレットでもほぼ同じように表示される。

1、次のURLにアクセスする

2、画面下部の「REGISTER YOUR INTEREST」をクリック

写真下部の黄色い部分をクリック (スリップストリーム クラウドファンディングページより)

3、ファーストネーム(名前)を入力する

特に注意書きはないが、英語のサイトであるためローマ字表記が望ましいだろう (スリップストリーム クラウドファンディングページより)

4、ラストネーム(苗字)を入力する

同上。ローマ字表記が望ましいだろう (スリップストリーム クラウドファンディングページより)

5、希望する寄付金額を選択

最低25ドル(約2750円)から応募可能。今すぐ入金するわけではないが、実際に寄付したい金額を入力した方がいいだろう (スリップストリーム クラウドファンディングページより)

6、Eメールアドレスを入力する

後日、具体的なクラウドファンディングの方法などが記載されたメールが届くとのこと (スリップストリーム クラウドファンディングページより)

7、フリースペースなので、応援コメントなどあれば入力する

できれば英語が望ましいだろう (スリップストリーム クラウドファンディングページより)

8、OKボタンまたはEnterキーを押して、応募完了

「Thank you very much」などの英文が表示されればOK (スリップストリーム クラウドファンディングページより)

 ひとまずの、支援登録はこれにて完了だ。一定以上の支援登録者が集まれば、後日メールにて案内が届くはずだ。恐らく、クレジットカードやペイパルなどを用いて寄付金を決済することになるものと思われる。

ヴォーターズの情熱は世界に伝わるのか

 大々的にクラウドファンディングを活用して資金調達を試みる動きは、サイクルロードレース界で初めてではないだろうか。解散になっても不思議ではない状況でも、チーム代表のヴォーターズは必死の動きを見せている。自身のツイッターにも「決して決して決して、諦めない。」と書き込んでいる。そんなヴォーターズの経歴を少し紹介したい。

 1990年代にプロ自転車選手として活動、1998・1999年とUSポスタルチームに所属していた。ドーピングでツール・ド・フランス7連覇のタイトルを剥奪されたランス・アームストロングが、最初にツールを制覇したのがUSポスタル所属時の1999年。この頃に、チームぐるみでのドーピングに手を染めていた。その懺悔を胸に秘め、クリーンで公平なレースを取り戻すために、2007年からチーム・スリップストリームのGMに就任した。スリップストリームは、過去にドーピングしていた選手を積極的に採用しながらも、徹底的なアンチドーピングコントロールを実施した。

 当時の自転車レース界は、ドーピングの蔓延に辟易しており、クリーンを売りにするヴォーターズ率いるスリップストリームは、レース主催者やスポンサーからの信頼を勝ち取ってきた。

メガネがトレードマークなジョナサン・ヴォーターズ(写真は2012年ツール・ド・フランスにて) Photo : Yuzuru SUNADA

 2009年にはワールドチームに昇格。目標としていたツール・ド・フランスに出場し、ブラッドリー・ウィギンス(イギリス)が総合4位、クリスチャン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ)が総合8位と、トップ10に2人送り込む大健闘を見せた。(後にランス・アームストロングの成績抹消の影響で、それぞれ3位・7位に繰り上げられた)

 そして、2012年ジロ・デ・イタリアでは、ライダー・ヘシェダル(カナダ)が総合優勝を果たし、ついにグランツールのチャンピオンを輩出することとなった。

チーム初のグランツール覇者となったライダー・ヘシェダル。カナダ人初のジロの覇者でもある Photo : Yuzuru SUNADA

 だが、チーム運営は決して順風満帆ではなかった。ガーミン、トランジションズ、サーヴェロ、バラクーダ、シャープなど、多くの企業名がチーム名につけられてきたように、ヴォーターズは常にスポンサー探しに奔走していた。2011年には大口スポンサーが倒産したことでチーム存続の危機に立たされ、2014年にはキャノンデール・プロサイクリング(かつてのリクイガスの系譜を次ぐチーム)と合併した。2015年には、大口スポンサーのガーミンが撤退し、低予算での運営を余儀なくされた。今回のような苦境に立たされるのは初めてのことではない。

 現時点でクラウドファンディングは、目標の700万ドルには及ばずとも、ヴォーターズ自身が驚くほどの反響を呼んでいるようだ。全てはクリーンなレースを取り戻すため、10年以上にわたって戦ってきたヴォーターズの姿を支持する世界中のファンの声の表れかもしれない。

 果たしてヴォーターズはこの危機を脱して、チームを存続できるのだろうか。

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