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サイクリスト

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 第6ステージ逃げ切ったマルチンスキーがキャリア最大の勝利 コンタドールは猛攻で魅せる

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 ブエルタ・ア・エスパーニャ第6ステージは、ヴィラ・レアルからサグントへの204.4kmで争われ、逃げ切ったトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)がステージ優勝を飾り、自身初のグランツールでの勝利となった。アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)は、終盤の2級山岳で猛攻撃を仕掛け、わずかながら総合順位をあげた。クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)は一時期アシストを全員失い防戦一方ながらも、総合首位を守りきった。

3人の小集団スプリントを制し、自身初のグランツールステージ優勝を飾ったトーマス・マルチンスキー Photo : Yuzuru SUNADA

逃げ切り狙いの大人数の逃げが形成

 スペインサッカーリーグのリーガ・エスパニョーラの名門チームであるビジャレアルCFのホームスタジアム「エスタディオ・デ・ラ・セラミカ」がスタート地点だ。ヴィラ・レアルの綴りはバレンシア語で「Vila-real」となり、ビジャレアルの綴りはスペイン語で「Villarreal」となっている。どちらも「王の町」を意味しており、1274年に「征服王」(エル・コンキスタドールこと、アラゴンの王・ハイメ1世によって建設された街であることに由来している。

山岳賞ジャージを着るダヴィデ・ヴィレッラは、序盤の山でポイントを稼いだ Photo : Yuzuru SUNADA

 王の町をスタートした集団は、内陸部を経由しながら海沿いの街・サグントへと至る。3級山岳が4つ、2級山岳が1つ登場するものの全体の難易度は低めに抑えられている。しかし、2級山岳ガルビ峠は登坂距離9.3km・平均勾配5.1%ではあるものの、中盤には平均勾配が10%超えの区間が3kmほど続くため、スプリンターが生き残ることは難しいだろう。そして、2級山岳からフィニッシュ地点までは36kmのダウンヒルなので、総合タイム差が大きく開くことも考えにくい。そのため、逃げ切りが決まりやすいステージと見られていた。

 スタート直後から大勢の選手が逃げを試みるものの、決定的な逃げはなかなか決まらなかった。48km地点、59.8km地点の3級山岳を越える頃には、28人の逃げ集団が形成された。3分24秒遅れの総合28位につけているルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ プロチーム)が逃げに乗っていることもあり、メイン集団をコントロールするチームスカイは最大2分程度にタイム差を抑えた。

猛攻を仕掛けたコンタドール

 フィニッシュまで40km以上残した2級山岳ガルビ峠の中腹、傾斜が厳しくなった区間に差し掛かると、チームスカイに代わってトレック・セガフレードがペースアップを図った。ピーター・ステティーナ(アメリカ)の引きが終わると、コンタドール自ら先頭に立ってペースアップを継続。強烈な牽引により、集団はみるみる人数を減らしていく。

 コンタドールのペースについていける選手は、マイヨロホを着るフルームらわずか10人程度だ。ファビオ・アル(イタリア、アスタナ プロチーム)、ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)エース級の選手たちも、次々と遅れをとった。ここまで、山岳で支配的な展開を見せていたチームスカイは、アシスト陣が壊滅。ワウト・プールス(オランダ)1人を残すのみとなった。

 人数の絞られたマイヨロホグループでは、引き続きコンタドールが先頭でペースアップ。ダンシングを多用しながら、激坂区間を走り抜けていく。いよいよプールスも脱落し、ついにフルームのアシストを全員引き剥がすことに成功した。

前待ち作戦でコンタドールをサポートしたヤルリンソン・パンタノ Photo : Yuzuru SUNADA

 すると逃げに乗っていたヤルリンソン・パンタノ(コロンビア)がコンタドールの元に合流し、先頭で牽引を開始。コンタドールの攻撃の手は全く緩むことがなかった。マイヨロホグループは、パンタノ、コンタドール、フルーム、総合2位のティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)、総合16位のカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター チーム)に加え元々逃げに乗っていたヤン・ポランツェ(スロベニア、UAE・チームエミレーツ)の6人まで人数を減らしていた。

2度の落車に見舞われたティージェイ・ヴァンガーデレン Photo : Yuzuru SUNADA

 途中、わずかに現れた下り区間でヴァンガーレンが落車し、巻き込まれたベタンクールも遅れを喫してしまう。マイヨロホグループは4人となり、ガルビ峠の山頂を通過した。

 一方で、逃げ集団も厳しい上りを経て、完全に崩壊していた。マルチンスキー、エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)、パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が先頭。15秒ほど遅れて追走にはルイスレオン・サンチェス、アントニオ・ペドレロ(スペイン、モビスター チーム)。数人の逃げに乗っていた選手を挟んで、フルームとコンタドールのマイヨロホグループは先頭から1分遅れ。その後ろにいるエスデバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)らエース級選手の揃うメイン集団は先頭から1分15秒遅れという構図で、ダウンヒル区間へ突入した。

最後のスプリントをマルチンスキーが制す

 長いダウンヒル区間を経て、先頭グループと追走グループが合流し5人の逃げ集団となった。メイン集団はマイヨロホグループを吸収した。しかし、ダウンヒルで遅れを喫したデラクルスは更に後方のヴァンガーデレンのいる集団に捕えられた。

 メイン集団と逃げ集団とのタイム差が10秒程度まで縮まり、逃げの吸収は間近かと思われたが、逃げ集団の選手たちは必死の抵抗を見せる。マルチンスキー、マス、ポリャンスキーの3人は吸収を嫌って再加速。メイン集団とのタイム差を30秒程度まで開くことに成功した。

 というのもメイン集団には、どのチームもアシストがほとんど残っていなかった。3人の選手を残していたチーム・サンウェブが集団の牽引を担うものの、先頭はサム・オーメン(オランダ)がほぼ1人で引いている状態。オーメンの脚質はクライマーであり、平坦巡航能力は決して高くないため、逃げ集団は再びリードを築くことができた。総合を脅かすような選手も逃げの3人のなかにはいないため、逃げ切りが濃厚となった。

 残り1km地点を、マスが先頭で通過した。3人はお互いを牽制しながら、残り100mで先頭のマスがスプリントを開始。背後で機をうかがっていたマルチンスキーがマスをかわして先頭でフィニッシュ。自身初のグランツールでのステージ優勝をあげた。

苦節の末、キャリア最大の勝利を手にした33歳のベテラン・マルチンスキー Photo : Yuzuru SUNADA

 マルチンスキーは33歳になるベテラン選手で、ポーランド国内選手権で2度の優勝経験はあるものの、ワールドツアークラスでのレースでは勝利経験がなかった。2013年シーズンに所属チームが解散し、移籍先がなかなか決まらず、2014年シーズン途中からプロコンチネンタルチームのツェツェツェに加入、2015年はトルコのコンチネンタルチームを走った苦労人だ。2016年にワールドチームのロット・ソウダルに復帰を果たして、この日ようやくキャリア最大の勝利をあげるに至った。

メイン集団内でフィニッシュするクリストファー・フルーム Photo : Yuzuru SUNADA

 先頭から30秒遅れでフルームらメイン集団が到着。そして、デラクルスやヴァンガーデレンのいる追走集団は43秒遅れでフィニッシュした。一方で、ロマン・バルデ(フランス、アージェーデュゼール ラモンディアール)は6分52秒も遅れてしまい、総合上位戦線から脱落する格好となった。

 翌第7ステージは、標高1000mほどの丘陵地帯を通過するほぼ平坦ステージのようなコースとなっている。残り16km地点に設定された3級山岳は登坂距離2km・平均勾配7.2%ではあるが、石畳の上り坂となっているため、レースが動く可能性が高い。フィニッシュ地点のクエンカは、「歴史的城塞都市クエンカ」として世界遺産にも登録されているため、美しい風景も堪能したいところだ。

第3ステージ結果
1 トーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル) 4時間47分2秒
2 パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +0秒
3 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) +0秒
4 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ プロチーム) +8秒
5 ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAE・チームエミレーツ) +8秒
6 ワレン・バルギル(フランス、チーム サンウェブ) +26秒
7 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ) +26秒
8 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) +26秒
9 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ プロチーム) +26秒
10 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、オリカ・スコット) +26秒

個人総合(マイヨロホ)
1 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 22時間54分38秒
2 エスデバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット) +11秒
3 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシングチーム) +13秒
4 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) +30秒
5 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) +36秒
6 ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ) +40秒
7 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ プロチーム) +49秒
8 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +50秒
9 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック) +1分13秒
10 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +1分26秒

ポイント賞(プントス)
1 マッテーオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ) 49 pts
2 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 31 pts
3 アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ プロチーム) 29 pts

山岳賞(モンターニャ)
1 ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) 38 pts
2 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、UAE・チームエミレーツ) 12 pts
3 リュイスギリェルモ・マス(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) 11 pts

複合賞(コンビナーダ)
1 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 12 pts
2 エスデバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット) 28 pts
3 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシングチーム) 38 pts

チーム総合
1 アスタナ プロチーム 68時間11分35秒
2 オリカ・スコット +1分59秒
3 UAE・チームエミレーツ +2分56秒

敢闘賞
エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)

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