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サイクリスト

クイックステップの研修生がスプリント制す雨澤ら3人が総合上位を賭けてアルプス3連戦へ ツール・ド・ラヴニール第6ステージ

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 U23(19~22歳)日本チームが出場している国別対抗のU23版ツール・ド・フランス「ツール・ド・ラヴニール」第6ステージが8月23日に開かれ、クイックステップフロアーズに研修生として登録されているアルバロ・ホデグ(コロンビア)がスプリントを制した。平坦ステージを終え、日本チームは岡篤志、岡本隼、雨澤毅明が総合の有力選手らと同タイムにつけ、25日からの山岳3連戦につなげている。(U23ジャパンナショナルチーム)

スタート地点のU23ジャパンナショナルチーム Photo: CyclismeJapon

岡がチームカーに激突も集団復帰

歓声を浴びる雨澤毅明 Photo: CyclismeJapon

 アルプス3連戦を前にした最後のスプリンター向きステージ。2013年のツール・ド・フランスで、マーク・カヴェンデュッシュ(イギリス)がスプリントを制した時と同じゴール地点が使われるため、スプリンターたちにとっては象徴的な舞台だ。翌日は休息日ということもあり、非常に激しい展開が予想される。特に風が激しい区間ということもあり、横風を利用した「集団分断攻撃」を得意とするオランダ、ベルギー、北欧の大柄な選手たちに有利で、小柄な選手が多い日本チームにとっては最も苦手とするタイプのステージ。この宿題を克服しないと世界では通用しない。

出走サインボードにサインする山本大喜 Photo: CyclismeJapon
山本大喜のサインはこんな漢字 Photo: CyclismeJapon

 スプリンター&パンチャーが勝利を狙える最後のステージであり、スタート直後から、最後のチャンスをものにしたいイタリアのフランチェスコ・ロマーノとアイルランドのマイケル・オローリンがスタートアタックを敢行。集団の安定化を望むメイン集団はこの逃げを容認し、この逃げに3分25秒の猶予を与えつつも、ゴールスプリントまでにじわりじわりと捕らえにかかった。

ボトルを運ぶ石上優大 Photo: CyclismeJapon

 一見、「逃げvsスプリンターチーム」という定石通りのステージ展開になるかに見えたものの、大柄な選手を揃えるデンマーク、ノルウェー、オランダが横風区間と狭い道幅を利用して弱い選手らを削りにかかり、集団内は度々パニックに陥った。小柄な日本選手にとっては、アルプスで総合順位争いを戦う権利獲得のための、生き残りを賭けた展開となった。

補給地点の模様 Photo: CyclismeJapon
国別対抗戦ということで、沿道にはところどころ国旗がなびく Photo: CyclismeJapon

 そんななか、全日本選手権での鎖骨骨折から復帰して間もない岡篤志が、パンクののちチームカーに激突して落車。不幸中の幸いで、治療をした鎖骨には影響がなかったようで、その後かろうじて集団復帰を果たした。

 ゴールまで残り3km。スプリンターを擁する強豪チームがコントロールするメイン集団は、ゴール2km前に差し掛かるもまだスタートアタックをした2人を捕まえられず、タイム差は25秒。2人はゴール1km手前でも15秒差で抵抗し、逃げ切りもありえるかと思えたのもつかの間、スプリントのための“お見合い”でスピードを緩めたために、ゴールまで約500mで吸収されることに。

僅差でスプリントを制したコロンビアのホデグ Photo: le tour de l'avenir

 ギリギリで逃げを吸収したメイン集団での混戦のスプリントは、すでにUCIワールドチームである「クイックステップフロアーズ」に研修生として所属中のコロンビア人スプリンター、アルバロ・ホデグが僅差で制した。逃げ続けたロマーノとオローリンの2人が吸収後にも関わらずスプリントに参加し、7位と9位に入っている点も圧巻だ。

 日本選手5人はメイン集団でタイム差なしでゴール。総合上位は山岳で活躍しないであろうスプリンターらが占めているが、総合成績を狙う選手ら90人が位置する「事実上の総合成績先頭集団」(マイヨジョーヌから3分49秒遅れ)に岡、岡本、雨澤が入っており、25日から始まるアルプス3連戦での総合成績争いに期待がかかる。

■第6ステージ結果
1 アルバロ・ホデグ(コロンビア) 3時間46秒
2 アラン・バナツェク(ポーランド) +0秒
3 コンラッド・ゲスナー(ドイツ)
34 山本大喜(鹿屋体育大学)
53 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
82 岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)
110 石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence)
118 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) +3分49秒

個人総合
1 パトリック・ギャンパー(オーストリア) 19時間40分36秒
2 イリヤ・ヴォルカウ VOLKAU Ilya(ベラルーシ) +1分23秒
3 キャスパー・アスグリーン(デンマーク) +3分45秒
31 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) +3分49秒
46 岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング) +3分49秒
92 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) +3分49秒
113 石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) +7分22秒
129 山本大喜(鹿屋体育大学) +20分25秒

監督・選手コメント

■U23ジャパンナショナルチーム浅田顕監督

 「前半の6つのスピードステージを終えて、ここには世界のトップが集まっていると感じる。U23のトップというよりこれから世界をリードする連中が確実に集まっていると感じる。スプリンターは驚異的な爆発力と粘りがあり、逃げる選手は狂っている。ここでのステージ1勝をどんなに望んでいるのか良くわかる。他のネイションズカップともプロのレースとも性質が違い、各チームの動きは組織的だが選手の可能性を殺さない。だから何があるかわからない。シナリオはあるが決め台詞は心の底からの叫びのようなアドリブだ。そんな日本選手を輩出したい。いよいよ山岳ステージが始まる。日本の位置と将来を占う大切なステージになりそうだ」

■アルバロ・ホデグ(コロンビア):ステージ1位

 「チームメイトたちはボクがスプリントしやすい位置に連れて行くために、最終局面で複雑なコースレイアウトで素晴らしい働きをしてくれた。ゴール3km手前で10~12番手。スプリンターのボクにとっては、平坦ステージが終わる今日が最後のステージ優勝のチャンスだったし、ここまで2度も2位になっているからどうしても勝ちたかった。ボクのことを助けてくれた家族とチームメイトには本当に感謝している。この勝利は彼らのものだ。ゴール地点でガッツポーズをしなかったのは、僅差のスプリントだったので自分では勝利の確信がなかったからなんだ。(今後はコロンビアの強豪スプリンター、フェルナンド・ガビリアと比べられることになるね?との質問に)いやいや、フェルナンドとはまだまだ次元が違うよ!彼とは親友だけど、ボクとは次元が違う選手だよ。彼はジロ・デ・イタリアで4勝したんだよ。全くもってボクとは別次元だよ。いつか彼のレベルになれるように頑張りたいね」

■パトリック・ギャンパー(オーストリア):第5ステージでの大逃げ以来マイヨジョーヌをキープ

 「逃げにチームメイトが2人いたので休むことができた。レース終盤は横風が凄まじかったね。デンマークとノルウェーがその区間で横風を利用して集団を壊そうとしていた。昨日よりもスプリントする脚が残っていたんだけど、ゴール数km手前からの複雑なコースレイアウトが頭に入っていなかったので、しっかりスプリントに挑めなかった。でもマイヨジョーヌをキープできてよかったよ。25日からのアルプス最終3ステージは、ここまでの平坦気味ステージとは全く別のレースになるだろうね。ボクはクライマーじゃないから今日が最後のマイヨジョーヌ着用日になるだろう。オーストリアとしては、クライマーであるベンジャミン・クルキックとマルクス・フライベルガーの2人にトップ10入りの勝負を託すことになる」

U23ジャパンナショナルチーム選手ピックアップ

岡篤志(宇都宮ブリッツェン)

 6月の全日本選手権での落車で鎖骨を折り、その後の夏のレースは終わったかに見えた岡篤志。1カ月半後に迫っていたラヴニールへの出場も正直なところ難しいかと思われた。そんななか、お見舞いも兼ねて筆者(U23日本チーム広報担当)は落車1週間後に岡に電話をしたのだが、そこで衝撃のセリフを耳にしてしまった

 「鎖骨折れちゃいましたけど、ラヴニールの遠征が楽しみです、うへへ」

 貴様は行く気なのかっっ!?その後、岡は浅田監督にもおんなじセリフを吐いたらしく(“うへへ”は抜きで)、無事にラヴニールのメンバーとしてここフランスにいる。数年前に欧州でこてんぱんにやられ、一時期は引退も考えたようだが、心身ともに復活&グレードアップし、宇都宮ブリッツェンの主力選手にまで上りつめた岡は神妙な面持ちで語る。「洋菓子系がとても好きなんでフランスのパティスリーにあるお菓子に目移りしますね、自分で作るのも好きです。この遠征が終わったら、ご褒美に食べたい(笑)」明らかにメンタルが数年前から格段に図太くなっている。

“自転車選手ブログ界の総合リーダー”「岡篤志」 Photo: CyclismeJapon

 そんな岡篤志を語る上で外せないのは、シャイな佇まいとは裏腹に軽妙なタッチで饒舌に語るブログだ。

 「日常のことはブリッツェンサポーターの方へ、レースのことは自分のメモ書きのような気持ちも含めて書いてます。他の選手のブログをそこまでチェックしているわけではありませんが、チームメイトのブログは見てますね。山本元喜選手(キナンサイクリングチーム)や吉田隼人選手(マトリックスパワータグ)のブログなど分かりやすく書かれていて面白いと思います」

 選手ブログ界の総合リーダーと言っても過言ではない面白さ。感性豊かな人柄が滲み出ており、私も岡のブログをチェックしている一人である。しかしここに来て大きな問題が発生した。それは本レースのレポートを書いている私よりも、岡のほうが先にツール・ド・ラヴニール詳細レポートをブログにアップしてしまい、私の面目が丸つぶれになってしまう問題である。

 激しいレースが終わって、クルマでホテルまで移動し、着替えてシャワーを浴び、夜ご飯を食べ終わると夜の8時半。「しめしめ、今日はこれで岡は眠くなって寝落ちし、明日だって寝坊してブログを書き忘れてしまい、私の逃げ切り勝利決定だ!」と安心するのもつかの間、夜の9時にはクオリティの高いレポートをブログにアップしていやがるのだ!レース中に自転車の上のスマホでレポートを書いているに違いない。

 「文章を書くのがすごく好きですね。書くのもかなり早いです。最近はずっと遠征続きで、日々生きることに精一杯です(苦笑)。ですからむしろブログを書くことでストレスを発散してる部分もあるかと思います。レース中はブログを書いていません、うへへ」

 岡には「UCIルールでは選手がレースの事をブログで書いていいのは、24時間以降から」だと言うことを教えてあげなければならない。

日本チームにはまだまだ負けられない

イギリスナショナルチーム監督/イギリス自転車競技殿堂入りコーチ キース・ランバート

 1975年&1980年のイギリスロードナショナルチャンピオンであり、チーム スカイの名物監督、デイヴ・ブレイルスフォードの師匠的存在であるキース・ランバート。1971年のプロ入り以降、これまでずっと選手&監督としてイギリス自転車界を見守ってきた。そんなイギリスの生き字引であるキースに「日本はどうしたらイギリスを倒せますか?」と聞いてみました

イギリスナショナルチーム監督 キース・ランバート氏 Photo: CyclismeJapon

 「まず始めに、イギリスは日本チームにはまだまだ負けられない。なぜならば、欧州ロードレース界に『住んで』いる期間が長いので、そのプライドにかけて負けるわけには行かない。君たちが相撲でイギリスに負けられないのと一緒だよ」

 「さて『若手を育てていくにはどうしたら良いか?』という点では一家言あるね。その前に注意だけど、イギリス競技連盟xチーム スカイの活動は少々特殊なため、U23選手の強化にはあまり参考にならないと思う。チーム スカイはもう巨大な資本で動く“ビッグマシーン”(1人や2人の手では手に負えない巨大な組織)だから、参考にならない。だから、あくまでもU23選手育成という観点で語るよ」

 「まず日本の若者が欧州に来てレース活動にあたっては当然現地の『環境適応』が重要だよ。居心地良くこっちで過ごさないといけないからね。特に日本人はシャイだし、コミュニケーションに必要な言葉は非常に大事だと思う。あとフランスにいるということは、言葉はフランス語を学んでいるのかい?そうだったらばフランス語ももちろん必要だが、英語にも力を入れるべきだよ。だって私の国の言葉だからね!それは冗談で(笑)、ここ10年来世界の自転車界の公用語は大幅に英語へとシフトしてきていると思う。英語を話せればどこの国のチームにも行けるし、情報だって多く収集できるだろ?特に北欧、ドイツ、オランダ、ベルギー人は非常に流暢な英語を話すから、その国での活動もしやすいしね」

 「次に重要なのは、欧州に『基地』を造って組織として遠征に来られるようにしなければならない。これは本当に重要だ。個人での活動でできることなんてたかが知れてるからね。イギリスはヨーロッパにあるから君は気が付かないかもしれないけど、私達だって海を隔てた欧州本土への遠征はそんなに楽じゃないんだ。レースではメカ、マッサーらがトラックの陸送で多くの荷物を運ばないと行けない。だから我々イギリスだって、こっちの欧州本土(フランス)側にクルマを用意しないといけないし、スタッフもその基地にほぼ常駐させることが必要だね」

 「最後にこれは自転車ロードレースがマイナーな国にとっては頭の痛い問題だけど、『活動予算の確保』が重要だ。競技連盟などが若手の遠征費などを資金的にしっかりサポートしないといけない。いや、給料を払うべきだとは言ってない。その前にU23選手で給料を払うべきレベルの選手がどの程度いるのか疑問だが(笑)。フランス、イタリア、ベルギーみたいに、子供が街のクラブチームから自転車を借り、地元のチームがレースに連れてってくれるような国ならば、家庭の生活レベルにあまり影響されずに自転車競技を始めることができる」

 「でも君の国では自転車ロードレースが盛んではないだろう?イギリスは日本より遥かにマシだろうけど、自転車ロードレースは機材スポーツである宿命で、金銭的に裕福な家庭に生まれないと始めにくい。子供に自転車を買い与え、遠征費用を出すなんて家計への負担がなかなかあるからね。これは選手層の拡大に大きな影響を及ぼす。ジュニア以下ならまだ遠征する必要はない。でもU23は海外遠征をしないと強くなれない。この遠征予算は誰が持つ?競技連盟やそのスポンサーが、選手のレベルをしっかり見極めて適切にサポート・金銭負担するべきだ」

 「これらは全てシンプルで当たり前のように聞こえる話かもしれないけど、全てを確実に実行するのは骨が折れる。でも覚悟を決めて徹底して実行するだけで、確実に日本は進歩する」

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