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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<220>ブエルタ・ア・エスパーニャ開幕目前 第14~16ステージが山場、注目選手もピックアップ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 2017年シーズン3つ目のグランツールとなる、ブエルタ・ア・エスパーニャが8月19日に開幕する。今回は目前に迫った大会のスタートに備えて、3週間でめぐるルートやスペインを舞台に活躍が予想される選手たちをチェックしていきたい。情熱の国で繰り広げられる戦いは、山岳を中心に熱いものとなるのが慣例。きっと今年も、驚きと感動に満ちた名勝負が待っているはずだ。

2017年シーズン最後のグランツールとなるブエルタ・ア・エスパーニャがいよいよ開幕する =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第21ステージ、2016年9月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

史上3度目の国外スタート 最終決戦はアングリル

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017ルートマップ © Unipublic

 ブエルタといえば、次々と登場する急峻な山岳が特徴。イベリア半島が誇る山々が、選手たちをふるいにかけていく。その趣は今年も変わらない。

 開幕はフランス南部の都市・ニーム。大会史上3度目となる国外スタートとなる今回は、13.7kmのチームタイムトライアルで幕開け。第2ステージまでフランス国内を走り、翌日の第3ステージでピレネー山脈に位置する小国・アンドラ公国に入る。

 スペイン入国は第4ステージから。その後中級山岳ステージが続くが、第8ステージには中腹の勾配が22%にものぼる1級山岳ソレット・デ・カティを通過。続く第9ステージも、平坦カテゴリーながら最後は1級山岳アルト・デ・プイグ・ジョレンカの頂上フィニッシュ。第1週から総合争いを見据えた動きとなるのは必至だ。

 第2週はスペイン南部へ。標高2160mのオブセルヴァトリオ・アストロノミコ・デ・カラール・アルトの頂上を目指す第11ステージ、今大会最初の超級山岳となるシエラ・デ・ラ・パンデを上る第14ステージ、超級山岳アルト・オヤ・デ・ラ・モーラをの長い上りを経てフィニッシュする第15ステージは、有力選手たちが確実に動くと見られる。

ヨーロッパ屈指の山岳であるアルト・デ・ラングリルが第20ステージに登場。総合争いを決定させる =ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第15ステージ、2011年9月4日 Photo: Yuzuru SUNADA

 総合争いを大きく揺るがしそうなのが第16ステージ。40.2km個人タイムトライアルは、ルート変更により当初の予定から距離が短縮されたが、それでも長距離TTとして順位の大幅シャッフルが考えられる。第17、第18ステージと、カンタブリア山脈での頂上フィニッシュも続く。

 最終決戦はおなじみアルト・デ・ラングリル(アングリル峠)での第20ステージ。登坂距離12.5km、平均勾配9.8%、最大勾配23.5%にも及ぶ、ヨーロッパ屈指の上りが総合首位の証であるマイヨロホに最もふさわしいライダーを決定させる。最終日はマドリード首都圏に“帰還”し、市街地サーキットでのフィナーレを迎える。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017

総走行距離 3324.1km
平坦ステージ 5(うち頂上フィニッシュ1)
中級山岳ステージ 8
上級山岳ステージ 5
個人タイムトライアルステージ 1
チームタイムトライアルステージ 1

ダブルツール目指すフルームと有終の美飾りたいコンタドール

 ブエルタに出場する22チームの多くが、8月15日までに9人の出走メンバーを発表。5月に行われたジロ・デ・イタリアや、熱戦が記憶に新しいツールとも遜色のない顔ぶれがスタートラインにつく見通しだ。

ツール・ド・フランス総合3連覇が記憶に新しいクリストファー・フルームが「ダブルツール」を賭けてスタートラインにつく =ツール・ド・フランス2017第21ステージ、2017年9月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

 マイヨロホを賭けた個人総合争いの中心となるのは、ツール3連覇を果たしたばかりのクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)。過去5度の出場で3回の総合2位を記録。ツールとの2冠「ダブルツール」への挑戦は、これで3回目となる。ツールに調子のピークを合わせていることもあり、これまでは下降気味のコンディションでブエルタを迎えていたが、今年はいつにも増してダブルツールへの意欲に燃えている。ツール前のレースでは一切“本気”を出さず、体力を温存させていたことが、ここへきても奏功するか。個人TTの第16ステージが狙い目の1つとなりそうだ。

クリストファー・フルーム(中央)はロマン・バルデ(右から2人目)とファビオ・アル(左端)をライバルに指名した =ツール・ド・フランス2017第15ステージ、2017年7月16日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そのフルームがライバルとして挙げるのが、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール・ラモンディアル)とファビオ・アル(イタリア、アスタナ プロチーム)。ともに山岳が険しくなればなるほど果敢な走りを見せ、ライバルを苦しめる。バルデにとっては初めてとなるスペインでの3週間だが、実力・実績から見て問題なく順応するだろう。アルは2015年に総合優勝を経験しており、戦い方を熟知しているのが強み。ツールでは大会後半に幾分失速したが、春に負ったけがの不安がなくなった今こそベストコンディションといきたい。

百戦錬磨のヴィンチェンツォ・ニーバリも強力 =ジロ・デ・イタリア第20ステージ、2017年5月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 百戦錬磨のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)も忘れてはならない。ジロを総合3位で終えたのち、今大会をシーズン後半のターゲットにすると宣言。夏場の調整を経て臨んだツール・ド・ポローニュ(7月29日~8月4日)を総合9位でまとめ、より状態を高めてブエルタを迎える。

 ツール山岳賞のワレン・バルギル(フランス、チーム サンウェブ)、ジロ新人賞のボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)に加え、スティーヴン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ)、イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)、ルイ・メインティス(南アフリカ、UAE チームエミレーツ)といった実力者も参戦。オリカ・スコットは、エステバン・チャベス(コロンビア)に、アダムとサイモンのイェーツ兄弟もメンバー入りする強力布陣。ツールでの落車負傷が癒えたラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)も調子を戻している。

ブエルタ・ア・エスパーニャを最後に現役を退くアルベルト・コンタドール。劇的なキャリアの終焉となるか =ツール・ド・フランス2017第17ステージ、2017年7月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、今大会を最後に現役引退を発表したアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が、有終の美を飾ることができるかも見もの。ライバルがひしめく中で、山岳・TTと輝きを取り戻すことができれば、劇的なキャリアの幕引きがあるかもしれない。

 山岳主体となるブエルタのステージ構成上、スプリントによるステージ優勝争いは少なくなりそう。それでも、2014年以来のプントス(ポイント賞)を視野に入れるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)を筆頭に、マウヌスコー・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)、イェンス・デビュッシュール(ベルギー、ロット・ソウダル)、サーシャ・モドロ(イタリア、UAE チームエミレーツ)、アダム・ブライス(イギリス、アクアブルースポート)といったスプリンターがチャンスをうかがう。

ブエルタ・ア・エスパーニャ序盤ステージ展望

●8月19日(土) 第1ステージ ニーム 13.7kmチームタイムトライアル

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第1ステージコースプロフィール © Unipublic

 ニーム中心部にある神殿「メゾン・カレ」から、各チーム9人が時間差でスタート。コースは鋭角コーナーやUターンが多く、バイクテクニックやコーナーを抜けた後の加速が勝負を分けそうだ。7.3km地点に3級山岳ポイントが設けられているのもユニーク。優勝チームの先頭でフィニッシュした選手に、今大会最初のマイヨロホが渡る。


●8月20日(日) 第2ステージ ニーム~グリュイッサン.グラン・ナルボンヌ 203.4km(平坦)

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第2ステージコースプロフィール © Unipublic

 フランス国内を移動する1日。途中では地中海沿いを走行。ほぼフラットで、カテゴリー山岳は設けられていない。ステージ優勝争いはスプリンターにゆだねられることとなりそうだ。


●8月21日(月) 第3ステージ プラデ・コンフラン・カニゴー~アンドラ・ラ・ベリャ 158.5km(中級山岳)

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第3ステージコースプロフィール © Unipublic

 フランスに別れを告げ、一度スペインに入ったのちに小国・アンドラへと向かう。スタート直後から1級山岳の上りが始まるなど、選手たちは大会3日目にしてブエルタの厳しさを実感することとなりそうだ。最終盤はアンドラの首都であるアンドラ・ラ・ベリャへの下り。ダウンヒラーの見せ場となるか。


●8月22日(火) 第4ステージ エスカルデス・エルゴンダニ~タラゴナ.アネッラ・メディティラネア2018 198.2km(平坦)

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第4ステージコースプロフィール © Unipublic

 実質スペインでのレース初日となるこの日は、途中の3級山岳を除いておおむね平坦基調。レース展開はスプリントフィニッシュを見越したものとなりそうだ。タラゴナでのフィニッシュは、翌年に迫ったメディティラネアンゲームズ(地中海沿岸諸国による国際総合競技大会)のプレイベントを兼ねる。


今週の爆走ライダー−マルク・ソレル(スペイン、モビスター チーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ジロとツールを走り終えたナイロ・キンタナ(コロンビア)、ツール第1ステージでの落車負傷で戦線を離脱したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)と、両輪を欠くモビスター チーム。そんな中、地元スペインで行われるブエルタを人一倍心待ちにしている若きクライマーがいる。マルク・ソレル、23歳。自身にめぐってきたこれ以上ないチャンスにモチベーションが高まる。

ボルタ・ア・カタルーニャで総合3位。マルク・ソレル(右)はアレハンドロ・バルベルデ(中央)やアルベルト・コンタドール(左)とポディウムに立った =2017年3月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

 アマチュア時代から注目を集めていた逸材は、プロ1年目の2015年に「若手の登竜門」ツール・ド・ラヴニールで個人総合優勝。ゼネラルマネージャーのエウセビオ・ウンスエ氏の方針もあり、育成を重視してきたが、満を持してグランツールへ送り出す時がやってきた。

 今シーズンの走りも、チームにとって文句なし。3月のボルタ・ア・カタルーニャで総合3位に入ると、6月のツール・ド・スイスでは総合8位。当初の予定通り、ブエルタ参戦に向けて準備を重ねてきた。

 山岳での走りを得意とするが、タイムトライアルも目下レベルアップの最中。将来的にはキンタナやバルベルデに続くオールラウンダーとしての立場も約束されるほど、チームやスペイン自転車界からの大きな期待が向けられている。

 ブエルタはその足掛かりとなりそうだ。初のグランツールでそう簡単に上位進出とはいかないかもしれないが、若い選手で編成されるチームの中心として、その走りに責任がともなう。

 第4ステージのフィニッシュ地・タラゴナにほど近い、ビラノバ・イ・ラ・ヘルトルの出身。当日は多くのファンがレースに駆けつけることだろう。アピールする絶好のチャンスに、どんなアクションを示してみせるのか。今から押さえておきたい、前途の明るいライダーの1人である。

得意の山岳とともに、タイムトライアルも向上中のマルク・ソレル。初出場のブエルタ・ア・エスパーニャは飛躍の機会となりそうだ =アムステルゴールドレース2017、2017年4月16日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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