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サイクリスト

2015年全日本ロードを追ったノンフィクション240kmの心理戦、地元選手の目線からレースを追体験 佐藤喬著『アタック』

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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佐藤喬著『アタック 2015年全日本選手権ロードレース』

『アタック 2015年全日本選手権ロードレース』
著者:佐藤喬
出版社:辰巳出版
版型:B6
価格:本体1,500円+税

 タイトルからも分かるとおり、2015年に発刊された『エスケープ 2014年全日本選手権ロードレース』の続編にあたる一冊だ。舞台は前作の1年後、2015年全日本選手権ロードレースの男子エリートレース。前作同様、有力選手約10人を丹念に取材し、事実関係や選手の思考や行動を再構築したノンフィクションだ。

 栃木県那須町で行われた2015年の全日本ロード。本書の中心となるのは、地元レースとなる那須ブラーゼンと、もう一つの栃木県を本拠地とする地元チーム、宇都宮ブリッツェンの選手たちだ。

 前作で見事な逃げ切り勝ちを演じたブラーゼン佐野淳哉は、出口の見えないスランプに悩んでいる。数々の栄光に輝いてきた大ベテランの鈴木真理は、選手生命の晩年をブリッツェンのキャプテンとして過ごしている。ブラーゼンの新人選手の吉岡直哉と鈴木龍、ブリッツェンのエースの増田成幸と、準エースの鈴木譲も、それぞれの思いでレースに臨んでいる。

大小のアタックが繰り返された2015年の全日本選手権ロードレース Photo: Ikki YONEYAMA

 前作の舞台となった2014年の全日本では序盤からの大逃げ(エスケープ)が最後まで逃げ切ったのに対し、本作の2015年全日本は、終盤まで決定的な逃げが決まらない展開だった。繰り返される無数のアタックは、その一つひとつに選手の思惑が込められている。若手、中堅、ベテラン、またアシスト、エースと、選手それぞれの立場での思いと歴史が、刻一刻と変わるレースの状況下での、一瞬の判断につながっていく。読み進めることで、また違った目線からレースを追体験できるはずだ。

 そして読み終えた後は、彼らが走るレースが全く違った景色に見えてくるだろう。これがまさしく、ロードレース観戦に一度ハマったら、抜け出せない理由でもある。本文中では選手それぞれに口調を変え、選手の思考がとても間近に感じられた。

 レース後2年経っての発刊ということで、本書で登場した選手たちも、現在はそれぞれ異なる立場におかれている。前作よりタイムラグがあることで、大きく変わった登場人物たちの「いま」が強い余韻を残している。

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