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女性サイクリストが生まれる瞬間  「自転車の世界を知ることができて良かった」ラファ Women's100初挑戦リポート

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 7月23日に、Rapha(ラファ)が主催する女性サイクリストのための「Women’s100」が開催され、今年も国内外で7000人の女性が100kmを走り抜けました。参加者一人ひとりにそれぞれのストーリーが生まれる100kmですが、自転車を始めて間もない滝澤薫さんは「挑戦」の思いをもって長野県で開催された「Women’s100八ヶ岳」に臨みました。「女性サイクリスト」が誕生する瞬間の心のドキドキを綴ったレポートを紹介します。

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「Women's100」に初参加した滝澤薫さん。グラベルを必死に攻略中 Photo: Mari YANO

◇         ◇

 「自転車に乗ると自分の力だけですごく遠くまで行ける。(大好きな)山登りに行けない天気のときも、同じくらい楽しめる!下り(ダウンヒル)は最高のご褒美」という言葉にのせられて始めたロードバイク。自分の自転車を買ったものの、ドロップハンドル、脚の届かないサドル、脚が固定されるビンディングシューズ、車並みに速いスピードは怖く、なかなか1人では乗りに行けなかった。

緊張した面持ちでバイクをチェックする滝澤薫さん Photo: Kyoko GOTO

 昨年10月に自転車を買って、季節はそのまま寒い冬へ。ますます乗るきっかけをなくし、気がつけば新しい年。そんなときに、自転車に乗りはじめるきっかけをくれた人が誕生日のお祝いに「ラファ」の自転車アイテムをプレゼントしてくれた。それがラファを知った最初のきっかけだった。

 その後も東京に店舗(クラブハウス)があることを知り、ウェアを見に行ってみたら、店員さんが優しく親切で色々と相談に乗ってくれた。それから何度かお店に行っては自転車に乗るときの悩み(日焼けのこと、防寒のこと、いつもお股が痛くなること、補給のことなど)について聞き、色々相談にのってもらった。

心に響いた「Ride together!」

 季節が進んでも、いつも自転車は1人で乗ることが多く、車道の車や自転車の取り扱いが怖いから、だいたいいつも短距離(20~30km)で終わっていた。たまに友達と2人で出かけても連れていかれるのは峠や山ばかりでいつもハード。それなりに頑張っているつもりだけど、褒められることはなくて、「自転車が楽しい!」って心から思えることは少なかった。

 そんなときインターネットで「Women’s 100」というイベントがあることを知った。世界中で7月23日に女性だけで100km走るイベントがある。「みんなで100km走ろう!=Ride together!」というコンセプトがすごく素敵だった。いつも1人(多くても2人くらい)だから、「みんなで走るってどんな感じなんだろう」と参加してみたいという意欲がわいてきた。

 でも八ヶ岳で企画されているオフィシャルライドは距離100km、獲得標高2000mアップ…。自分はこれまで100kmは走ったことはある。でも2000mアップは未知の世界。上りはいつも遅いし、脚をついてばかりだし、果たして上りきれるのかな…。そしてこういうライドイベントってみんな速くてついていけなくて、遅いと迷惑かけちゃうのかな、そんな思いで参加するかどうかとても迷った。

 でも自転車のきっかけをくれた人と数少ない自転車のお友達、ラファの店員さんが、「少し背伸びするくらい、挑戦するくらいの方が絶対楽しいし、自信にもなる。みんな置いていったりしないし、遅くて文句いう人なんていないよ!」といってくれ、参加を決めることにした。

「どんな人も初めての時がある」

 参加を決めたからには、できるだけ体調を整えて、少しでも走れるようになりたいと、仕事の合間を縫って練習しようと思った。でも練習ってどうやるのかわからないものだから、猛暑の中走って熱中症になりかけたり、ごはんを食べずに走ったら気持ち悪くなって初めてハンガーノックというものになったり。1週間前にはイベントと同じくらいの距離、獲得標高を体験しておきたいと、富士山一周を計画。結果は辛くて逆に自信をなくしてしまいそうだった。「本当にこんなんで大丈夫かな?」と…。

 そんなとき「Women’s100八ヶ岳」のライドリーダー、Mari(矢野麻利)さんからのメールを思い出す。「みんなどんな人も初めての時がある。だから大丈夫。一緒に頑張りましょう!」というメール。とにかく、小淵沢へ行こう。

 前日、苦手な輪行のため自転車をたたむ作業。初めての輪行は自転車友達にやり方を教えてもらったものの、その後は雑誌やインターネットの動画を見て自分で練習。何度やっても後輪を外したりつけたりするのが苦手で手はまっ黒。たたむのも組むのも30分以上かかった。この日もなかなか上手くいかず、四苦八苦しながらたたむ。

 お昼過ぎの人混みの新宿駅を大きな輪行バックを抱えて歩き、「それはなあに?」とおじさんに聞かれつつ小淵沢へ向かう「あずさ号」に乗り込む。途中でエンド金具がゆるんで自転車が倒れそうになったり、締めたはずのバンドが緩んでホイールが中でガチャガチャいったり、何度やっても輪行って難しい。

 なんとか電車に乗り込み小淵沢へ。到着するとなんだか空はどんより、雷鳴も聞こえる。駅の広場で自転車を組んでいたらなんと豪雨に。せっかく組んだのに、雨…。しばらくすれば止むかなと待てども待てども雨は止まず。遅くなるので今夜泊まる宿までタクシーで向かうことに。組んだ自転車をまたばらした(泣)。

 着いたペンションでは宿のオーナーが優しく迎えてくれた。乗ったタクシーの運転手さんにも「明日がんばって」と声をかけてもらい嬉しかった。やっとここで少しホッとすることができた。今日は早く休もうと思い、近くのごはんやさんで夕食を簡単に済ませ、お風呂に入ってストレッチしてベッドへ。でも、明日は本当に大丈夫かな、みんな速い人たちだったらどうしようと考えると緊張してなかなか寝付けなかった。

期待と緊張が入り混じる集団走行

全体ブリーフィングにて。笑顔の中にもどことなく不安が混じる滝澤薫さん(写真中央) Photo: Kyoko GOTO

 前日の夜10時にベッドに入ったのに、深夜の2時半に目が覚める。当然窓の外は真っ暗。1時間くらいゴロゴロするもそわそわ落ち着かない。準備もあるので3時半には起き上がり、お腹も空いてないけど走るために無理矢理にでも朝ごはんをお腹に詰め込む。ウェアを来て、宿の玄関で自転車を組み立てた。

 4時半に宿を出てスタート地点の「道の駅こぶちざわ」に向かう。外は霧。空気はしっとり冷たい。道の駅まで10分くらいだけど、3日ぶりの自転車はやっぱり気持ち良い。気持ちにスイッチが入り、今日も頑張ろう!と気持ちが固まった。

スタート前。最初は全体からも少し距離を空けてしまう滝澤薫さん(写真右) Photo: Yukiko WATANABE

 道の駅に集まったのはラファのスタッフさんと今日のイベントに参加する女性たち。はじめましての方ばかりで緊張が増す。みんな色とりどりのウェアに身を包んでるけど、速そう…。でももうここまで来たら走り出すしかないと思った。それぞれの自己紹介と、スタッフさんのブリーフィングが済み、いよいよ出発となった。

朝5時、霧の中スタート ©Rapha Racing

 まだ薄暗い朝もやと霧雨のなかを進む。半分はずっと上りだと聞いていたものの、少しの下り坂があったりペースも思ったほど速くなかったので、はじめはなんとかついていける感じだった。ただ、急な坂になると話は別。みんなとの距離がどんどん開いていく。気が付けば1人。「どうしてみんなそんなにすいすい上れるの?辛くないの~?」と不思議に思うくらいにみんな楽々と上っていく。

Photo: Naoko TERASAKI

 私は立ちこぎをしたり、車が来ない坂では蛇行したりしながらなんとか脚を回した。つ…、辛い。でも坂の終わりが見えそうなころ、みんなが到着を待ってくれているのがわかる。そしてそこに着くと、必ずみんな「おつかれさま~」って迎えてくれる。なんだろう、この嬉しい感じ。

初めてのグラベルに「楽しい!」

 その後もゆっくりペースだけど脚をつくことなく、なんとかみんなと一緒に走っていく。そして、いよいよはじめてのグラベル(未舗装路)へ。大きな石ころが敷かれた砂利道。それが雨で濡れてさらに滑りそうになっていた。

初のグラベルに挑む背中に、緊張が見える Photo: Kyoko GOTO

 走り方のポイントを聞いたものの、はじめからハンドルとられて上手くこげず、意に反して自転車は右左に傾いていく。スリリングな道なのにビンディングペダルで足がくっついているものだから、倒れそうなときにそれが上手く外れてくれず、2回も転んでしまった。

 見かねたサポートスタッフの方がサドルを支えて乗り方を教えてくれたり、一番遅い私にライドリーダーのMiki(大森美紀)さんが隣についてサポートしてくれた。

みんなのサポートでなんとかグラベルも乗り切った! Photo: Miki OOMORI

 「いいよ~!大丈夫だよ~!その調子だよ~!」と声をかけてくれるMikiさん。おかげで最後の方にはなんとなく慣れて進めるようになった。みんなのところに到着すると、途中絶叫マシン並みに叫んでしまった声がみんなに聞こえていたようで、笑っていた(笑)。終わってみると初めてのグラベル、怖かったけどなんだかアスレチックみたいでちょっと楽しかった!

 グラベル道が終わり、お昼ごはんポイントのごはん屋「ふるさと」までも長い長い上りが続く。補給はしながら走っていたけれど、お腹がすいた。ごはんまでのあと4~5kmが本当に長かった。

苦手な坂で力を振り絞る滝澤薫さん Photo: Miki OOMORI

 途中でやっぱり前についていけず、ひとりになって黙々と坂を上っていたときに、道路工事で片側通行になった場所に差し掛かる。そこの旗ふりのおじさんが、「どこまでいくの?麦草峠まで上るのかい?すごいね!がんばってね!」って声をかけてくれた。普段なら車で通過するだけの場所なのに、こんな風に声をかけてもらえるなんて、きっと自転車じゃなければあり得なかったこと。おじさん、ありがとう!ちょっと元気が出た瞬間だった。

みんなの行動全てをお手本に

 なんとか「ふるさと」まで上りきり、待ちに待ったお昼ごはん。メニューは温かいうどんにした。お腹ペコペコ、一生懸命上ったあとのごはんは本当に本当に美味しかった‼こんなに美味しいものは他にないかもしれない。

みんなのごはんの食べ方も勉強になる ©Rapha Racing

 みんなでごはんを食べる時、メニューをみて驚いたことがあった。みんなめちゃくちゃ食べる‼ということ。牛丼、天丼、天ぷら定食、ごはんつきうどん等々。途中の補給の時も思ったけど、みんなちょっとでも止まる時間があると何かしらモグモグしている。やっぱり自転車に乗るためにはちゃんとエネルギーを取らなきゃいけないんだ。いつも自分は食べないで走ったり、食べるタイミングがわからなかったりしたから、このみんなの様子は驚いたのと同時にとても勉強になった。

 ごはんをしっかり食べたあと、ふるさとから麦草峠のトップまでもやっぱり7~8kmの長い上り。ゆっくりチームが先に出発したのを見て、私も遅いから少し早めに出ようと先に出発する。

ヒルクライムのきつさに思わず下を向く滝澤薫さん(写真左) ©Rapha Racing

 そのとき、後ろから「私もゆっくりチームで行きますよ♪」と声をかけてくれた方がいた。峠のトップまでの長い上りを終始ペースも同じく、お話しながら上ってくれた。そしてさらに峠までの向かい風ゾーンではさりげなく私の前に出てくれ、はじめは「先に行くのかな?」と思ったのだけれど、途中で「これはもしかして風避けになってくれている!つかず離れず後ろの私を気にしてくれてるのはきっとそうに違いないー!」と気がついた。

麦草峠のピークに到着!ものすごい達成感! Photo: Kyoko IWATA

 徐々に上がっていく標高。山にかかる雲が自分よりも低いところを流れていく。だいぶ高いところに来た。2000m、2100mと標識が教えてくれる。まだかな、まだかな、もう脚が重い…。最後まで激坂とまではいかないものの、勾配7~8%の上りがずーっとつづく麦草峠への道は、全然名前の通りじゃない「メルヘン街道」だった。

 最後に麦草峠最高地点の看板が見えたときは、上りきった達成感でいっぱいになった。「ついに来た~!自分の脚で上った~!すごいすごい!嬉しい!!」
あとから登ってくるみんなもつらそう。「ああ、みんな、辛いんだな。私だけじゃなかった!」みんなで上ったことを喜ぶ。そして写真を撮りあう。みんな嬉しそうだった。

「絶対に完走したい」

 麦草峠を上りきったあとはゴールにむけて一気に下る。上りよりは脚は楽だけど、2000mからのダウンヒルは初体験。きつめの斜度に、でこぼこ道。そして濡れている地面。恐怖心が先に立ち、ブレーキを握りしめる手に力が入る。下ハンドルが握れないため、途中でブラケットの部分を握り続けた手が疲れ果て、我慢できなくなって止まってしまった。手がしびれる。みんなは快走して下っていくが、ここでもついて行けなかった。

 そこにグループの後ろを守るMariさんが一緒に止まってくれ、「手、痛いよね!大丈夫だよ!回復したらまた走りだそう!」と声をかけてくれた。1人じゃないという安心感。手も脚も辛いけど、絶対に完走したいと思った。

一体感が生まれたチーム。自分もその一員に Photo: Miki OOMORI

 なんとか下り坂が終わり、メンバー全員が揃うのを待った。初めの頃から私と同じように上りが苦手そうだったメンバーがひとり。そのメンバーの到着をみんなで待った。「辛くなってるかな?頑張ってるはず!」と遅れていても、まさに今前に進んでいるメンバーのことをみんなで想像しながら待った。無事、合流できたときにはやっぱり「おつかれさま~!」の声。辛さがわかる分、みんなの声が優しい。麦草峠を越えてからもゴールまでけっして楽ではないコースだったけれど、みんなのなかに一体感が生まれ、本当に一緒に走っているという感覚だった。

もっと強くなって色々なところに行きたい

いつもより低いところにある雲。自然の近さを感じる Photo: Mariko IZUMI

 今回は八ヶ岳をぐるっと一周するダイナミックな100km。眼下に広がる雲海。雲が動いている。鳥が鳴いている。水の音がする。土と雨の匂いがする。自然が近い。お腹がすく。空気がおいしい。暑い。寒い。楽しい。辛い。嬉しい。苦しい──色んな感覚と感情。普段なら気にもとめないような感覚や感情とひたすら対話しながら進む。自分を取り囲む自然と打ち解けていく感じが心地よかった。

 いよいよゴールまであと10kmちょっと。最後の補給を終えて、またみんなで走り出す。早くゴールしたい気持ちと、もうすぐ終わっちゃう!っていうさみしい気持ちが入り交じる、不思議な感覚だった。いつもなら、「もういやだぁ~」ってなるのに。

早くゴールしたい気持ちと、もうすぐ終わるさみしい気持ちが入り交じる Photo: Mikio OOMORI

 ついに道の駅の看板が見え、今朝出発したこぶちざわ道の駅に帰ってきた。

 「ゴーーーール‼‼ 本当に走りきった‼‼」

 ものすごい達成感だった。遅れていたメンバーも無事走りきり、全員揃っての完走となった。みんなスゴイ‼‼

 気づいたら脚は棒のようになっていた。本当に疲れた。でもなんだろう、嬉しくてしょうがない。目標だった100km、2000mアップを達成したことも嬉しいけど、みんなと一緒だったことが何より嬉しかった。このとき、自転車って楽しいって心の底から思えた。

完走の喜びに緊張が解けて涙する滝澤薫さん ©Rapha Racing

 自転車に乗る人に出会い、自転車を買い、ラファというブランドを知り、このイベントに参加したこと。どれも偶然の出来事だけど、こうして最高の充実感を味わえたこと、本当に幸せなことだと思った。

ライドリーダーの2人に拍手で見送られた滝澤薫さん Photo: Kyoko GOTO

 今はもっともっと自転車に乗りたいし、もっと強くなって色んなところに行きたい。自転車の世界を知ることができて本当に良かった。

 まだ自転車に乗ってない人にこの楽しさを知ってもらいたい。そしていつか、少し前の自分のような人と出会ったら、そのときはその人をサポートできるようになりたい。

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Cyclist for Woman インタビュー(女性向け) 彼女と自転車

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