スマートフォン版はこちら

サイクリスト

サイクリング、挑戦…それぞれの100km「Rapha Women's100」 世界中の女性サイクリストが一つになった日

  • 一覧

 世界中の女性たちが100kmの自転車ライドに挑戦する「Rapha Women’s 100」(ラファ ウィメンズ ハンドレッド)が、7月23日に世界各国で開催された。個人、またはチームを組んで走るグローバルなイベントで、ラファが運営するルートを含め、世界各国で約7000人もの女性サイクリストが駆け巡った。日本国内でも、ラファが主催するライドイベントと、「ライドリーダー」と呼ばれる女性サイクリストが立ち上げるイベントが各地で開催された。

霧の中、「W's100 八ヶ岳」を走る女性サイクリストたち ©Rapha Racing

SNSがつなげるグローバルイベント

©Rapha Racing

 「Women’s 100」は、その名の通り女性のみが参加できる100kmのライドイベント。ラファが「女性サイクリストの自立と、女性サイクリスト同士のコミュニケーションを図る場」として提唱し、年に1度、全世界で同日一斉に開催される。

 各地で開催されるグループライドに参加したり、自らライドイベントを主催することも可能で、自分のレベルや目的に合った楽しみ方を選べるのが特徴。開催当初は100kmに初挑戦するビギナーや仲間を増やしたい人と参加する人が多かったが、5回目を迎えイベントが定着してきた最近は「年に一度このイベントだけは出ると決めている」というリピーターの姿もあった。

©Rapha Racing
©Rapha Racing

 また「Instagram」(インスタグラム)などのSNSを利用し、共通のハッシュタグ「#womens100」を用いてライド風景の写真を共有することで、世界中の女性たちとのつながりを感じられるのもこのイベントの魅力の一つだ。

©Rapha Racing
©Rapha Racing

 日本国内ではラファが主催するオフィシャルライドの他に、独自に発足したライドイベントが全国13カ所で開催された。ラファ・ジャパンによると確認しているエントリー総数は112人だそうだが、エントリーせずに自由にハッシュタグを付けて投稿しているサイクリストも多数おり、女性たちの間ではもはやイベントというより「皆で走る日」として定着してきた感がある。

雨のライドに「炎天下じゃなく良かったね」

八ヶ岳一帯を包む雨雲。例年暑さとの戦いだが、この日は一日冷たい霧と雨 ©Rapha Racing

 その1つ、長野県の八ヶ岳周辺で開催された「Women’s 100 八ヶ岳」に『Cyclist』の女性記者も参加した。八ヶ岳周辺をぐるりと一周するライドで、100kmの走行距離に対して獲得標高は約2200mとなかなかダイナミックなコース。「ちょっと参加者のレベルが絞られるのでは…」という心配をよそに、集まった9人の女性サイクリストは、昨年のイベントで知り合いになったというリピーター同士の参加者もいれば、峠混じりの100kmに挑戦するという女性など個性もレベルもバラバラな面々がそろった。

スタート前に気合を入れる女性たち ©Rapha Racing

 早朝のスタート時の早朝は厚い雨雲に覆われていた。いや、ベースの標高が1000mを越えているため、覆われるというより雲の中にいるようなイメージだ。ひんやりとした空気の中、幸い雨は降っていない。女性たちは「それだけで十分」といった表情だ。

 ラファのイベントでいつも思うことだが、雨も風も暑さも寒さも全ての気象がライドを構成するスパイスになる。状況が過酷であればあるほど神経が研ぎ澄まされ、挑戦に向けて五感がフル稼働する。仲間がいるとそれが連鎖し、皆が強くあろうとする相乗効果が生まれる。

 そうなったらある程度の雨は心配ごとにはならない。むしろ「炎天下じゃなくて良かったかも」なんて言葉が出てくるからたくましい。ライドリーダーの矢野麻利さんの掛け声とともに皆の気持ちにスイッチが入り、午前5時にスタートを切った。

きめが細かく、肌にまとわりつくような霧 ©Rapha Racing

女性どうしだから気持ちが通じ合う

グラベルでバイクを押し歩く滝澤薫さん Photo: Miki OOMORI

 100km、2000mアップはある程度走り慣れていれば走り切れるコースプロファイルだが、そう簡単にいかないのがラファのコース。最高地点となる麦草峠をめざし、約60kmにわたって上り基調の道が続く。じわじわと脚が削られる上に、途中にはグラベル(未舗装路)も現れる。経験のある参加者にして「きつめのコースを走りたかった」と言わしめる設定だ。

全員が完走を目指して助け合う気持ちで臨む Photo: Kyoko IWATA

 そのコースにビギナーの1人として挑んでいたのが神奈川県から来ていた滝澤薫さん。ロードバイクを教えてくれた同僚が転勤してしまい、以来普段は1人で乗り続けているという。コースに対する不安は、経験がないから「わからない」。それでも自転車の本当の楽しさを知りたくて、一人で思い切って挑戦した。

 「Women’s100」のルールはチーム全員が一緒にゴールすること。ライドリーダーがレベルのばらつきも考慮しながらライドを進めるので、ビギナーでも「遅れる」「待たせる」といった心配をせずに参加できる。といっても不安は簡単に拭えるものではないが、力の差がありすぎる男性に引きずられるペースよりはまだ女性同士の方が安心だ。

この日のハイライト麦草峠へ向かう上り。正午過ぎ、気温の上昇とともに霧が濃くなる Photo: Miki OOMORI

 初めてのグラベルで、皆が「鳥の声?」と間違うような奇声を発しながら楽しそうに苦戦していた滝澤さん。最初は緊張気味の面持ちだったが、相次ぐ難関が感情を揺さぶり、解きほぐし、次第にリラックスした表情に。ランチ休憩のときには「皆さんはどうやって普段練習しているんですか?」などと積極的に会話を楽しんでいた。

 麦草峠に向かう7kmの坂では脚の違いが如実に現れ、スピードがばらけたが、寒さから身を守りつつあとから上ってくる人を応援したり、ともにゴールを喜んだりしていた。互いの頑張りを見守る思いが、皆の間に少しずつ一体感を生み出していた。

「麦草峠」と書かれた標識。ここがコースの最高地点 ©Rapha Racing

「みんながいたから力が湧いた」

 麦草峠を上り終えたら、あとはほぼ下りのみ。いまが夏であることを忘れるくらいの寒さ。標高が高いとはこういうことかと、しばらく存在を忘れていたウインドブレーカーに袖を通し、寒さから逃げるように下りを急いだ。

長い長い下りを終え、ゴール地点の小淵沢に向けてひた走る Photo: Mikio OOMORI

 まずは約10kmのダウンヒル。冷たい風が露出している指先の感覚を奪う。ただでさえ握力が弱い女性にとってはヒルクライムとは別の難関。ライドリーダーはマイペースで下るよう促し、手を休めたり遅れをとった人を待つレストを繰り返しながら下山した。

 気温の上昇とともに強張っていた体の力が抜けていく。依然として低く立ち込める雲と山とが重なり、神秘的な情景を作り出す。こまかいアップダウンがたまに脚に刺激を入れてくるが、もう上らなくて良いというリラックス感からおしゃべりも増える。

 午後3時半過ぎ、今朝出発した「道の駅こぶちざわ」に到着。スタートから11時間。全員揃って無事に完走を果たすことができた。皆が達成感にあふれる中で、1人へなへなと崩れるようにしゃがみこんだ女性がいた。滝澤さんだった。

完走を果たし、思わずしゃがみこんだ滝澤薫さん。「もう立っていられません」といいながらも最高の笑顔 Photo: Kyoko GOTO

 ニコニコと笑顔を絶やさず、自分のペースで皆に着いてきていたが、「もう立ってられない」ほど脚を使い果たしていた。

 「辛くて楽しくて、でもやっぱり辛かった」と本音を漏らすも、「みんなが待ってると思うと不思議とまた力が湧いてきて、なんとか走りきることができた。いつもの1人ライドとは比べものにならないくらい楽しかった」と笑顔を見せた。

ライドリーダーの大森美紀さんが用意していたご褒美の桃。クーラーボックスにサンドイッチやおにぎりなど、心配りがうれしい Photo: Kyoko GOTO
ライドリーダーの2人も全員無事完走で安堵の表情 ©Rapha Racing

 雨の森を走り、ドロドロに汚れたバイク。上りや下りの寒さで使い果たした体力。ボロボロの状態にも関わらず、女性たちが輝いて見えたのは笑顔のせいだろう。そんな彼女たちから出た言葉は、「来年、友達を誘ってまた参加したい」─。そんな思いを込め、ライドリーダーの矢野麻利さんと大森美紀さんに全員が感謝の拍手を贈った。

 ライドを演出していた雨も、役目を終えたかのようにすっかりあがっていた。

「Women's 100八ヶ岳」の参加者全員で ©Rapha Racing

関連記事

この記事のタグ

Cyclist for Woman イベント(女性向け) ラファ ラファ・ジャパン

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載