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栗村修の“輪”生相談<105>10代男性「ツール・ド・フランスの選手は単独で走ると時速何kmくらいですか?」

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 毎度ためになる自転車のお話、楽しく読ませていただいています。

 今年でちょうどロード歴1年になります高校2年の学生ローディーです。部活の1日オフを使ってサイクリングをしているのですが、170kmぐらいのロングライドでも常に速さに気になってしまう自分がいます。のんびり行っても1日は終わらないのですが…。

 そこで質問なんですが、ツール・ド・フランスの選手はよく平均時速47kmぐらいで走っているのを聞いたことがあるのですが、これは集団であるからでしょうか? それなら、もし単独で走ったとしたら平均何kmぐらいで走ることができるのでしょうか? それと、ゴール前のスプリントでも時速70~80km出ると聞いたことがあるのですが、単独であるとどのくらいの速さなのでしょうか?

 もちろん、あくまで参考にしたいだけで、これを超えるなどと本気で考えているわけではありませんが、気になったので質問させていただきました。

(10代男性)

 フレッシュなご質問、ありがとうございます。僕にも、質問者さんのような疑問を抱えていた時期がありますから、懐かしくなっちゃいました。

 速度というのは、真っ先に気になる指標ですよね。だからご興味を持つのは当然です。しかし、速度は時に、落車という形で人を傷つけもします。だから、道路交通法を厳守するのはもちろん、安全には徹底して注意してロードバイクを楽しんでください。

 プロの真似は、絶対にダメです。彼らは、クローズされ、整備された場所を走っていますし、走行テクニックもアマチュアとは段違い。それでも落車は起きています。しかも、プロは走ることで生活を立てているから、リスクも負います。そうではないアマチュアが、命を危険にさらしてはなりません。長くなりましたが、くれぐれも安全にはご注意ください。

 さて、ご質問に戻ります。平均時速47kmというのは、おそらくどこかのレースの平均速度だと思いますが、やや速めですね。プロのロードレースは、もちろんコースによって大きく変わりますが、だいたい平均で時速40km~45kmくらいの速度です。

 ただ、レースのように集団で走ると前の選手のスリップストリームに入れるため、ラクに速度が出ます。質問者さんが気になっているのは単独での速度ですよね。

 結論から言うと、海外トッププロならば、単独で時速47kmくらいを維持できる選手はいます。空気抵抗の少ない機材を使う個人タイムトライアルなら、もっと速い速度で走っていますよね。

ツール・ド・フランス2017第7ステージ、この日先頭集団は213kmの距離を、平均時速42kmで走った Photo: Yuzuru SUNADA

 ただ、速度はぶれが多い指標です。同じ速度でも、風の状態やフォーム、道路の勾配などで全然必要パワーが違いますから。…ということで、今や主流になっているパワーで語ってみます。

 時速47kmで走れる選手はいる、と書きましたが、全員が全員、それだけの速度を出せるパワーを維持できるわけではありません。大きなパワーを維持できるタイプの選手と、そうでない選手がいます。

 パワーメーターを使っている方ならよくご存じの、FTPという言葉があります。おおざっぱに言いますと、1時間維持できる平均パワーのことですね。このFTPが大きい選手は、高速を長時間維持できます。筋肉量に富む大柄な選手が多いですね。

 たとえば、クリストファー・フルームのFTPは、400Wを軽く超えているという話を聞いたことがありますが、これはかなりの数字です。日本人プロならば、300W台が相場でしょう。日本人でFTPが400W台に乗るのは、(想像ですが)新城幸也選手や別府史之選手など、ごく一部に限られるはずです。

ツール・ド・フランス2017第1ステージ、クリストファー・フルームは雨の中、平均時速51.6kmで14kmの個人タイムトライアルを駆け抜けた Photo: Yuzuru SUNADA

 ただし、海外トッププロが皆400W台のFTPを誇るかというと、そうではありません。小柄なクライマーなどは、グランツールの表彰台に上るレベルの選手でも、300W台のFTPで戦っていたりします。重力が敵になる上りで問題になるのは、FTPの数字そのものよりも、体重当たりのパワー(パワーウエイトレシオ)だからですね。

 このように、レースを考えると、単にFTPの数値だけで強さを判断するのは間違いということもわかってきます。他にも1分など短時間の出力やパワーウエイトレシオ、レース展開を読む力など、ロードレースを戦うにはたくさんの要素が必要になってきます。FTPはあくまで、トレーニングメニューの負荷設定と、質問者さんが気にされている、平地での平均速度の目安になる数値とご理解いただければ良いでしょう。

 最後に、スプリントについてです。プロのスプリントは、踏み始めた時点で相当の速度になっています。時速0kmからスプリントをはじめることは、レースではありえません。ですから、一括りに「単独で時速●●km」というお答えは難しいですね。

 が、スプリントに関してもパワー値はある程度参考になります。最近は、パワーデータを公開しているプロもいますので、参考になさってください。

(編集 佐藤喬)

前夜祭で「『生』“輪”生相談」も
栗村さんが「伊豆大島 御神火ライド」にゲスト参加!

 9月10日(日)に伊豆大島で開催される、『Cyclist』初のロングライドイベント「伊豆大島 御神火ライド2017」に、栗村修さんがゲスト参加します。ライド前日の9日(土)は前夜祭も開かれ、栗村さんに直接質問できる「『生』“輪”生相談 in 伊豆大島」も行われる予定。またライド当日は栗村さんも、参加者の皆さんと共にコースを走ります。現在エントリー受付中です!

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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