スマートフォン版はこちら

サイクリスト

title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<216>持ち味を発揮した総合争い“第1グループ” フルームに挑むアル、バルデ、ウラン

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 ツール・ド・フランス2017は第1週が終了。ドイツ・デュッセルドルフで開幕し、ベルギー、ルクセンブルクを経て、メインの舞台となるフランスでの戦いも着々と進行している。第9ステージまでを終えて、マイヨジョーヌをはじめ各賞争いの方向性も固まってきた。今回は、ここまでの戦いを振り返り、第2週のポイントを探っていく。

ツール・ド・フランス第9ステージ。総合上位陣がステージ優勝をかけてスプリントした Photo: Yuzuru SUNADA

サバイバルとなった第1週

 ツールの最高名誉であるマイヨジョーヌは、3連覇がかかるクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が第5ステージ以降着用を続ける。過去3回の総合優勝時には、開幕から好調をキープ。第1週時点でマイヨジョーヌを確保し、強固なアシストに守られながら最後まで戦い抜いた。近年のツールでは、早い段階で優勢に持ち込んだ選手がジャージを守り切ることも多く、なかでもフルームはそうした戦術に長けているといえる。

クリストファー・フルームはツール第1ステージの個人TTで6位。ライバルからタイムを稼いでいた Photo: Yuzuru SUNADA

 ただ、決して安泰ではない。第9ステージを終えた時点で、総合2位のファビオ・アル(イタリア、アスタナ プロチーム)とは18秒、同3位のロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)と51秒、同4位リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)が55秒と、タイム差1分以内に上位4人がひしめいている。

 この4人に関しては、1級山岳頂上フィニッシュだった第5ステージ、ジュラ山脈が舞台となった第8、第9ステージではほぼ互角の走り。実質、個人タイムトライアルで競った第1ステージのタイム差がフルームに味方している形だ。

 こと第1週は、落車などのアクシデントを込みでサバイバルの様相となった。特に、超級3つを含む7カ所のカテゴリー山岳を越えた第9ステージは、マイヨジョーヌを争うだけの力を持つ選手が誰なのかを計るうえでは最適の1日だった。

 今大会は3週間を通して山頂フィニッシュが3つと少ない。ダウンヒルを経てのフィニッシュでは、有力選手が一団となってステージを終えることが多く、ライバルからタイム差を奪うのは頂上を目指すステージより難しい。今の段階で総合タイム差1分以上の開きがある選手たちは、これからのステージでその差を挽回するのは厳しい情勢にある。

上位4人「第1グループ」のピレネーの走りはいかに

 ひとまずは総合上位4人が「第1グループ」を形成したと見てもよいだろう。

順当にマイヨジョーヌを着るクリストファー・フルーム(右)。第2週以降も調子を上げてくるか Photo: Yuzuru SUNADA

 フルームは今シーズン未勝利ながら、このツールでは重要ステージを上位でまとめてマイヨジョーヌを守っている。一方で、第9ステージでは自らアタックを試みる場面もあったが、まだ少し力強さに欠けているようにも見受けられる。ここから調子を上げていけるだろうか。

 先々を見越せば、フルームには得意とする個人タイムトライアルが第20ステージに待っている。ライバルを引き離す計算ができる分、それまでのステージでは最低限ライバルから遅れないことを意識して走ることになる。

ツール第5ステージを制し勢いに乗るファビオ・アル。総合タイム差18秒とフルームを射程圏に捉える Photo: Yuzuru SUNADA

 追う選手たちも第1週では持ち味を十分に発揮した。アルは第5ステージでアタックを炸裂させ、頂上フィニッシュを制覇。第9ステージでは、フルームのメカトラブルとタイミングを同じくしてアタックするシーンもあった。その動きには現地でもブーイングが起こったが、どんな形であれフルームを仕留めようという強い意志の表れと捉えることもできる。

 一発逆転が可能な位置につけるアルは、もう一度頂上フィニッシュをめがけたアタックに期待したい。チャンスはペイラギュードを上る第12ステージ。総合5位につけるチームメートのヤコブ・フルサング(デンマーク)との共闘もプラスに働くか。

 第9ステージでは、得意の下りを利用して一時独走態勢に持ち込んだバルデも、アル同様に“再現”によってトップをうかがいたい。その機会は、3つの1級山岳を経てフィニッシュへと一気に下る第13ステージ。この日は100kmのショートステージであることから、1日通してアタックの応酬となることが予想されるが、力のある山岳アシストを味方に、有利な状況に持ち込みたい。フランス革命記念日の7月14日に行われるステージであることもモチベーションとなるはず。

 第9ステージを制するなど、久々にグランツールの上位争いに加わるウランも、山岳での安定感が光る。第2週からはより攻撃的な姿勢が見られることだろう。

ツール第1週を終えて総合3位につけるロマン・バルデ。得意のダウンヒルでの攻撃なるか Photo: Yuzuru SUNADA
久々にグランツール総合上位争いに加わるリゴベルト・ウラン。第2週はより攻撃的な走りが求められる Photo: Yuzuru SUNADA

 第2週では、果たして誰が戦いを優位に進められるだろうか。王座を狙う選手たちの意地がぶつかり合う。

各賞争いも本格化へ

 マイヨジョーヌ以外の各賞も、第2週以降熾烈を極めることだろう。

圧倒的なスプリント力でマイヨヴェール争いの首位をゆくマルセル・キッテル Photo: Yuzuru SUNADA

 ポイント賞のマイヨヴェールは、ここまでマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)が首位。2位のマイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)に52ポイント差をつけてリードしている。

 第1週の走りを見る限り、すでにステージ3勝を挙げているキッテルのスピードは群を抜いている。獲得しているポイントのほとんどがフィニッシュで得ているもので、脚を温存するために中間スプリントでは無理をしていない。それでいてマイヨヴェール争いでトップを独走できるあたり勝負強さが光っている。

 第3ステージを制し、ジャージ争いのライバルとなっていたアルノー・デマール(フランス、エフデジ)が第9ステージでタイムアウトになり、大会を離脱。代わってマシューズがキッテル追走の1番手となった。

 マシューズは、現状ではキッテルに大差をつけられているが、第9ステージで逃げに加わり中間スプリントを1位通過。スプリントステージでのフィニッシュ勝負では苦戦をしているが、この先控える山岳ステージでは登坂力を生かして逃げグループに入り、中間スプリントで稼いでいけば、キッテルとの差を縮めることはまだまだ可能。

 スプリント勝負が期待される第10、第11ステージで有力選手たちがどれだけポイントを稼ぐかによって、マイヨヴェール争いの流れがある程度決まってくるかもしれない。昨年までマイヨヴェール5連覇していたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が大会を去り、新たなスプリント王の争いに注目が集まる。

ツール第9ステージでの好走でマイヨアポワに袖を通したワレン・バルギル Photo: Yuzuru SUNADA

 山岳賞のマイヨアポワはまだまだこれから。第9ステージでワレン・バルギル(フランス、チーム サンウェブ)が大量得点をゲット。2位のプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNL・ユンボ)に30ポイント差をつけている。

 一見大差に見えるが、今後も複数の上級山岳を越えるステージが待ち受けており、レース内容次第では順位のシャッフルも大いにあり得る。ただ、グランツールの総合での実績を持つバルギルが山岳賞狙いにシフトしていることは、第9ステージでの走りで明白となった。かねてから山岳賞を目指すと公言してきたティボー・ピノ(フランス、エフデジ)ら実力者も、バルギル同様にこの日に逃げでレースを進めたこともあり、第2週以降は混戦となりそう。現時点で総合争いにおいて苦戦している選手たちが狙いをマイヨアポワに変えてくると、より混迷を極めることとなる。

個人総合でも7位につけるサイモン・イェーツが新人賞のマイヨブランを着用する Photo: Yuzuru SUNADA

 新人賞のマイヨブランは、個人総合でも7位につけるサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)が着用。実力通りといった印象だ。現時点で2番手につけるルイ・メインティス(南アフリカ、UAE チームエミレーツ)に2分58秒の差をつけている。

 まだまだ安心できるタイム差とはいえず、調子を崩す日が出てくると後続の追い上げにあうことも考えられる。とはいえ、イェーツが総合上位をうかがう位置にいることから見て、近年のマイヨブラン争い同様に総合トップ10に食い込めるくらいの力を持っていることが、純白のジャージに袖を通す条件となってきそうだ。

狙いを変更したチームの動きが活発に

 波乱の多かった第1週。有力選手の多数が大会を去り、総合争いから脱落した実力者も増えている。そのため、目標の変更を強いられるチームが出てきそうだ。

 チーム2番手の選手を軸に“Bプラン”に転じることができれば、「総合上位進出」や「スプリントでのステージ優勝」など、明確なターゲットに向かって走ることができるが、絶対エースを失ったチームとしては、どのように軌道修正していくかがポイントだ。

 その意味で、第2週は各チームの思惑が交錯するステージが相次ぐと予想される。特に、ピレネーや中央山塊を行く第12~15ステージは逃げ狙いのアタックや、ステージ優勝を意識した動きで出入りが激しくなるとみられる。

 各チームや選手の新たな狙いを見ることができ、4賞争いとは一味違ったレースの見方ができることだろう。

今週の爆走ライダー−アルテュール・ヴィショ(フランス、エフデジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ツール第1週、フランスに入国してしばらくは今大会一番人気なのではないかと思うほど、毎日彼への大きな歓声がスタート地点に響き渡った。特に第6ステージは地元が近かったこともあり、多くの友人をチームパドックに招待。仲間たちに囲まれ笑顔が弾けた。

ツール第2ステージを走るアルトゥール・ヴィショ。第1週はアシストに徹した Photo: Yuzuru SUNADA

 2013年と2016年のフランスロードチャンピオン。同国を代表するパンチャーは、ワンデーレースを主戦場とする。UCIワールドツアーでの表彰台経験も豊富。ツールでの勝利はまだないが、スプリントトレインの牽引や山岳アシストなど、マルチに仕事ができる点を評価されている。このツールでもデマールのスプリントに貢献。第2週からは自身の脚質に合ったステージも出てくることから、チャンスは巡ってくるかもしれない。

 ちなみに、おじのフレデリック氏はトラック競技の元フランスチャンピオン。父のマックス氏はフランスのホイールブランド「マックスホイール」の創設者という自転車一家に育った。これまでのキャリアで申し分のない実績を積んできたが、もしここに「ツールのステージ優勝」という勲章が加わったら、どれだけ素晴らしいことか。案外、その日はすぐにやってくるかもしれない。

地元を巡った第1週はたくさんの友人に囲まれていたアルトゥール・ヴィショ。第2週以降は自身にチャンスが舞い込んでくるかもしれない Photo: Syunsuke FUKUMITSU
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

関連記事

この記事のタグ

ツール・ド・フランス2017 ツール2017・レース情報 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載