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ツール・ド・フランス2017 レースサイドレポートフランス勢の好調に沸くツール この先の命運を賭けジュラ山脈を巡る

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2017は、第1週が大詰めを迎えている。プロトンは今大会登場する山岳地帯のうちの2つ目であるジュラ山脈に入った。マイヨジョーヌはもとより、4賞すべての争いはまだまだこれから。一方で、第8ステージまでを終えて明らかになったこともある。それは近年になくフランス勢が好調なことだ。地元選手たちの活躍は、ツールににぎわいを与える大きな原動力になっている。

2級山岳コート・ド・ヴィリーに現れた「悪魔おじさん」ことディディさん。ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムへの期待を込め「SAITAMA」のパネルを掲げてくれた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

日増しに強まる暑さに順応する新城

 前日のフィニッシュ地だったニュイ・サン・ジョルジュはブルゴーニュワインの名産地とあって、ユネスコ世界遺産にも登録されている一面のブドウ畑が1日のハイライトだった。ブドウ畑が広がっていたのはレース終盤だったから、選手たちは眺めている余裕などなかったかもしれないけれど、車で移動していた筆者にとってはとても感動的だった。運転があるため、本場でワインをいただけなかったのが何とも心残りではあるけれど。

岩と木々の緑が調和したジュラ山脈の山々 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 ニュイ・サン・ジョルジュにほど近いドールをスタートする第8ステージ。大会2つ目の山岳地帯であるジュラ山脈にいよいよ突入する。隣国スイスとの国境をなす山々は、むき出しになった岩肌がまるでこちらに迫ってきているかのような迫力。川や滝、湖も多く、岩・水・木が調和することで穏やかさと荒涼さを伴っている印象だ。

レース前にリラックスした表情の新城幸也 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 スプリントステージが一段落し、トレイン牽引という役割からしばし解放される新城幸也(バーレーン・メリダ)。このステージでは監督から自由を与えられていることを明言し、逃げを狙うと宣言。一方で、「(プロトン全体で)何人が“今日は逃げていいよ”と言われていることか。僕以外にも逃げを狙っている選手はたくさんいる」と冷静に分析。その見立て通り、レースは序盤から出入りの激しい展開となり、結局新城の逃げは実現しなかった。

 ただ、この先まだまだチャンスはあるはず。表情は明るく、体調もよいという。何より、フランス入りしてから日増しに上がる気温にもまったく問題なく順応している。その証拠にこの日、出走サインに向かうバーレーン・メリダの選手たちがことごとく冷却ベストを着てチームバスから出てきた中、新城はジャージ姿だったのだ。その佇まいと表情からは「このくらいの暑さで負けていては3週間戦えない」、そんなメッセージにも見えた。

2級山岳に「悪魔おじさん」参上

 フランス人のツールの楽しみ方はさまざま。もちろん、家でゆっくりとテレビ中継を見ている人も多いことだろう。

 かたや、現場に足を運ぶ人たちについては、その場所によって彼らのツールの見方が大きく異なっていることを感じる。

アージェードゥーゼール ラモンディアルのチームパドックを多くのファンが囲む Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 例えば、スタート地点やフィニッシュ地点に足を運ぶ人たちの多くは「レースファン」。お目当ての選手やチームを追いかけ、あわよくば彼らからサインや記念撮影に応じてもらおうという意識がみられる。実際、選手とかかわるチャンスはスタート前の時間くらいしかないので、熱いファンであればスタート地点に足を運ぶのが得策だろう。

レースが通過する街では、早い時間から飲食テントを設置し盛り上がる。おらが街へのツールの到来に祝杯を上げていた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 それとは別に、コース沿道に立つ人たちはほとんどが「お祭り気分」。おらが街のツール通過に、朝から祝杯を挙げる。近所の人たちと飲み交わしながら、プロトンの到来を待つのだ。彼らを街を訪れる大会関係車両にも熱心に手を振って見送ってくれる。「好きな選手は誰?」と聞いても「分からない」と返されてしまうことも多いのだけれど、レースについて詳しく知らなくても楽しむことができる。それがサイクルロードレースの魅力でもある。

 沿道といえば、この日2つ目のカテゴリー山岳であった2級山岳コート・ド・ヴィリーに「悪魔おじさん」ことディディさんが“参上”。運転していた筆者を日本人と気づくや否や「サイタマ~!!」と大絶叫。思わず車から降りて熱い抱擁を交わしたのだった。第6、第7ステージでは、「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」の関連イベントが行われたが、ディディさんも開催を楽しみにしているとのこと。別れの挨拶は「じゃあさいたまで!」だった。

ディディさん作、「SAITAMA」のロードペイント Photo: Syunsuke FUKUMITSU

好調フランス勢 ステージ2勝目

第8ステージを制し、フランスに今大会2度目の歓喜をもたらしたリリアン・カルメジャーヌ Photo: Yuzuru SUNADA

 ジュラ山脈初日の第8ステージは、リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)がラスト18kmを独走しステージ初優勝。今シーズンすでに6勝を挙げ、将来的には総合系ライダーとしての期待もかかるプロ2年目の24歳。山岳賞のマイヨアポワも獲得し、二重の喜びとなった。

 もっとも、チームを率いるジャンルネ・ベルノドー氏にとっては三重の喜びとなったに違いない。この日はベルノドー氏61歳の誕生日。そんな日にカルメジャーヌはきっちりと勝ってみせた。

体いっぱいに声援を送るディレクトエネルジーファン。チームカーからも手を出して応える(写真は第7ステージ) Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 ディレクトエネルジーは、今大会限りで現役を引退するトマ・ヴォクレール(フランス)や、ベテランのシルヴァン・シャヴァネルらを擁し、フランスでのチーム人気は高い。何より、人気を獲得するためのチームの努力には目を見張るものがある。例えばこのツールであれば、チーム名とロゴが印刷されたノベルティを大量に製作し、沿道の人々に配布をしている。応援グッズを持った人々には、チームカーから手を振ったり、クラクションを鳴らして合図をしたりと、チームスタッフも最大限応える。きっとカルメジャーヌも背中を押されたことだろう。

 第3ステージでのアルノー・デマール(エフデジ)と第8ステージでのカルメジャーヌ。フランス勢がこのツールで早くも2勝を挙げた。近年はフランス人ライダーがなかなかステージ優勝できず、それが話題となることもあったが、今年は強さが目立っている。それも、未来ある選手たちが躍動しているのだから、大きな盛り上がりとなる。

 そのデマールはこの日、前半から大きく遅れたが無事にフィニッシュ。前夜から体調を崩し、出走が危ぶまれるほどだったというが、ミカエル・ドラージュ(フランス)とイグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア)に付き添われ、37分33秒遅れでフィニッシュラインを通過。中間スプリントに絡むことができず、ポイント賞のマイヨヴェール争いにおいては痛い1日となったが、今は次につながったことを喜ぶべきだろう。

難関の第9ステージ バルデとピノに注目が集まる

 続く第9ステージは、今大会前半のヤマ場となりそうだ。超級を含む大小7つのカテゴリー山岳を越える181.5km。獲得標高は4600mにも及ぶ。総合争いは第8ステージで大きな変化がなかったこともあり、いまだ混戦模様。マイヨジョーヌのクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)から1分以内のタイム差に9人がひしめいている。

子供達からのセルフィーの依頼に応えるロマン・バルデ(写真は第6ステージ) Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 好調フランス勢は、47秒差の総合7位につけるロマン・バルデ(アージェードゥーゼール ラモンディアル)にすべての期待がかかる。上り調子で今大会入りし、上りはもちろん、ダウンヒルも得意とあれば、最後に越える超級モン・デュ・シャの下りでアクションを起こす可能性も十分。タイム差から見るに、一気にマイヨジョーヌ奪取は難しいかもしれないが、フランス国民にジャージ獲得への希望を持たせる走りは実現しても不思議ではない。第9ステージでの走りや結果が、この先の戦いを左右することが大いに考えられる。

 いま、フランスの自転車界ではバルデとティボー・ピノ(エフデジ)が人気を二分している。総合を狙うバルデと、今大会は山岳賞を目指すと公言しているピノ。ともにそろそろ動き出してもよい頃だ。ジュラ山脈2日目は、マイヨアポワを着るカルメジャーヌとともに、たくさんの視線がバルデとピノに注がれることとなるだろう。

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