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山口和幸の「ツールに乾杯! 2017」<3>ウィギンス、ニーバリがマイヨジョーヌを手にした山岳 フルームは守り抜けるか?

by 山口和幸 / Kazuyuki YAMAGUCHI
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 ツール・ド・フランス2017はボージュ、ジュラ、ピレネー、中央山塊、アルプスというフランスの5大山系すべてを上る。1992年以来のことだというが、まずはボージュ山地だ。フランス東部にあって、ルクセンブルク、ドイツ、スイスと接する。美しい森と湖が点在し、保護された自然の中でハイキング、MTB、釣り、テレマークスキーなどさまざまなアクティビティが楽しめるリゾート地でもある。

日本ではあまり知られていないが、とても美しい景色で人気が高いボージュ山地 ©ASO

大会前半の難関が3度目の登場

 第5ステージのゴール、ラプランシュ・デ・ベルフィーユはボージュ山地の国立公園内にある冬場のスキーリゾートだ。かつてはラプランシュという炭鉱があり、その山の上にスキーで滑れる場所を作ったという感じ。今回で3度目のツール・ド・フランス登場となるが、2012年、2014年と常に大会前半の最初の山岳としてラプランシュ・デ・ベルフィーユが設定された。

 そして興味深い事実がある。過去2回はここでマイヨジョーヌを着た選手が、序盤にもかかわらずパリまで一度もマイヨジョーヌを手放すことなく総合優勝していること。2012年のブラッドリー・ウィギンス、2014年のヴィンチェンツォ・ニーバリだ。

ボージュはアルザスの白ワインがおいしいと地元の人がオススメしてくれた Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 アルプスのラルプデュエズのような大規模ウィンターリゾートではない。そのためツール・ド・フランスのゴール設営は困難を極める。まず記者たちが原稿を書くサルドプレスはコースとはまったくかけ離れた、16kmほど下った町に設営される。関係車両は厳しく制限され、サルドプレスからシャトルバスで往復することになる。

エヴァンスを封じ込めたスカイ勢

ラプランシュ・デ・ベルフィーユの激坂に挑戦する地元サイクリスト ©Regis Ravegnani

 ゴール地点までは細くて急勾配の道が1本しかない。運営面で相当に困難で過酷な状況を余儀なくされているが、走る選手としてもたまったものではない。ゴール手前の激坂は想像を絶する急勾配で、13%、11%、11%と壁のような坂が出現して、最後は20%。100m水平に移動すると高さにして20mアップするという意味だ。

 2012年のラプランシュ・デ・ベルフィーユはウィギンスが勝ったわけではなく、スカイチームでアシスト役をしていたクリストファー・フルームが大会初優勝をしている。フルームがゴール手前300mで抜け出すのだが、スパートするまでは献身的なアシストをこなしていた。このときは連覇をねらっていたオーストラリアのカデル・エヴァンスが難敵だった。エヴァンスは区間勝利とタイム差をかせぐために先手を打って攻撃を仕掛けたが、スカイ勢2人の連携に封じ込められ、2秒遅れの区間2位に終わった。

2012年のラプランシュ・デ・ベルフィーユで大会初優勝したフルーム ©ASO

 フルームの援護もあってエヴァンスと同タイムの区間3位に入ったウィギンスが、この日終わって総合成績で首位に立つのだった。「ウィギンスがマイヨジョーヌをねらうのにふさわしい展開だった。ボクたちは攻撃を仕掛けてきたエヴァンスから離れなければいいだけで、最後はボクが渾身の力を振り絞ってトップフィニッシュした」と初優勝を手に入れたフルームは当時語っていた。

激しく落車したコンタドール

 次は2014年。この年は過去の総合優勝者が3人出場したが、落車による負傷で前半戦ですべていなくなった。4日目にアンディ・シュレク、5日目にフルーム、そしてラプランシュ・デ・ベルフィーユにゴールする10日目にアルベルト・コンタドール。優勝候補が次々と消えてレースは混迷を極めていた。

 コンタドールが落車したのは66.5km地点の下りで、自転車のフレームが大破するほどの衝撃だった。みかけの上では右足から出血していたので、救急ドクターによって止血の処置を受け、さらにマシンやシューズを交換した。およそ6分を要し、ここで大きく遅れた。なんとか走り出したコンタドールを、待機していたチームメートが集団まで復帰させようとけん引し始めたが、コンタドールのペースが上がらない。

 「コンタドールが激しい落車をしたのを目撃していたので、スカイのリッチー・ポートと言葉を交わしてメイン集団のペースを落とした」とニーバリはゴール後に語っている。チーム監督と無線で会話すると、先行している集団との差が4分に開き、総合成績の上で危険な存在になりつつあることを知り、コンタドールの復帰を待たずに前方を追うことになった。

 いったんは走り出したコンタドールだが、85km地点で走るのをあきらめ、チームカーに乗り込んでリタイアした。

ニーバリ「最も過酷なコース」

 ライバルの脱落を気遣いながらもニーバリは強さを発揮した。チームメートの献身的な走りで、前方を走る選手らに近づくと、ゴールまでの激坂で一気にダッシュ。一緒にいた選手らは追走できず、そしてステージ優勝を目指して独走していたホアキン・ロドリゲスも捕らえた。

 「これまで走って来たレースの中で最も過酷なコースだった」とゴール後に語ったニーバリは、ライバルの悲運もあってウィニングポーズは右手の親指を口でしゃぶるという控えめなものだった。前年9月に誕生した愛娘エンマちゃんに贈るメッセージだったという。

 そして2017年のラプランシュ・デ・ベルフィーユ。フルームは思い出深いこの地でステージ優勝こそできなかったが、20秒遅れの区間3位でゴールし、チームメートのゲラント・トーマスに代わって首位に立った。シャンゼリゼまでマイヨジョーヌを守り抜けるか?

フルームがライバルのリッチー・ポートを抑えて区間3位に入った =ツール・ド・フランス2017第5ステージ ©ASO
ファビオ・アルが先輩格のニーバリに続いてラプランシュ・デ・ベルフィーユを制した =ツール・ド・フランス2017第5ステージ ©ASO
2017年のラプランシュ・デ・ベルフィーユでマイヨジョーヌを獲得したフルーム ©ASO
山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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