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山口和幸の「ツールに乾杯! 2017」<2>クラシックレースの本場リエージュ 待たれるベルギーの次世代ツール覇者

by 山口和幸 / Kazuyuki YAMAGUCHI
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 大会2日目はリエージュへ。ベルギー東部ワロンヌ地方の中心地で、オランダ語では「Luik」、ドイツ語では「Lüttich」と表記される。1892年に始まった春のクラシックレース、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュは、現存する大会の中で最古の歴史を持つ。

ドイツとベルギーの国旗は似ているが、色の並びからベルギーのファンかな Photo: ASO

素顔のベルギーに出会う場所

 ムーズ川とその支流ウルト川に抱かれたリエージュは、古くからヨーロッパの交易の地として栄え、新鮮な海産物も北海から運ばれる。なるほど西ヨーロッパの十字路と呼ばれるだけのことはある。観光地とはいうものの、素顔のままのベルギーと出会えるのもこの町の魅力だ。

 中・近世においては欧州屈指の鉄砲の生産拠点だった。日本で言えば堺かな。ということは少ない元手で安く作って高く売る。そんな手腕にたけた商人の町だ。ツール・ド・フランスがゴールした日曜日の朝は、ムーズ河岸のラバットに朝市が立った。魚や肉などの食料品をはじめ、日用品や骨董品を売る店が開かれる。この市に売るものがなくなるころ、ツール・ド・フランスがやってくる。

リエージュ地方は悠然と流れる河川のほとりにあって美しい景観を見せる Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

ツール王者らが見せた「意地の走り」

 スペインのミゲール・インドゥラインがツール・ド・フランス5連覇を遂げた1995年。リエージュにゴールする第7ステージでインドゥラインがアタックを仕掛けたことがあった。これに乗じて地元ベルギー選手が背後につき、結局インドゥラインは区間2位でゴールするのだが、このときのコースはリエージュ〜バストーニュ〜リエージュとほぼ同じものだった。

SRM社の創設者ウルリッヒ・ショベレーさん。本社の中庭で関係者を招いてパーティーを主宰した Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 それまでインドゥラインは、「ツール・ド・フランスにしか出ない」と酷評されていた。その悔しさを胸に彼はこの地でアタックし、クラシックでも走れることを証明したかったのだ。翌日に重要な個人タイムトライアルがあるというのに。

 インドゥラインをマークして区間勝利をさらったベルギー選手。その後はUSポスタルの監督となり、ランス・アームストロングに薬物使用をすすめたヨハン・ブリュイネールである。

 アームストロング自身も「ツール・ド・フランスしか出場しない」と酷評された選手である。アームストロングはご存知のように不正薬物使用で勝ち続けたとんでもないペテン師ではあるが、2004年の第3ステージでそれでも彼の意地を見せつけてくれた。

SRM社の受付にあったトレックはランス・アームストロングが乗っていたものだ Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI
この近くに住んでいるヤン・ウルリッヒが最後まで乗っていたジャイアント Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 この日のコース終盤はパリ〜ルーベで使われる石畳の悪路を走った。ところが石畳に突入する直前の144km地点で集団落車があり、集団が分断した。146km地点から始まる石畳の道で当時アームストロングが所属していたUSポスタル勢が猛然とペースアップ。アームストロング自らも先頭に立ってばく進を始めた。積極的な走りに打って出てワンデーレースでも走れることを証明させたかったのだ。

激坂をねじふせた世界チャンピオン

 さて、2017年のレースは第3ステージでフィリップ・ジルベールの生まれ故郷ベルビエをスタート。ルクセンブルクを経由して、フランスのロンウィーにゴールした。ラスト1.5kmは激坂で、ジルベールに適したコースレイアウトかと思ったが、世界チャンピオンのペテル・サガンの前にはパワーがかなわなかった。

ベルギーといえばビール。サルドプレスでは3種類のビールが用意され、地元の人がふるまってくれた Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI
ルクセンブルクを経由してフランスへ。この日のサルドプレスはリセ(高校)の体育館だ Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 アルプスのような標高の高い山岳はないが、信じられないような激坂が出現するベルギー。自転車レーサーを育成するには絶好の環境だが、次第に世界はベルギー勢を上回りつつある。ベルギーは地元フランスの次に総合優勝回数が多いが、じつは1976年のルシアン・バンインプを最後に栄冠から遠ざかっている。

大会関係者にロレーヌ地方の特産をふるまってくれた Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI
第3ステージのゴールとなったロレーヌ地方はドイツと何度も交戦したエリア。写真は第二次世界大戦時の遺稿  Photo: C. Henrion
山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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