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キッテル「耳が痛いくらいの応援」がチカラに雨のTT会場に輝いた子供の笑顔 みんなを熱くさせた“ヒーロー”の走行直後のコメントも

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 2017年のツール・ド・フランスが開幕した7月1日、雨にけぶったドイツ・デュッセルドルフでは個人タイムトライアル(TT)が行われた。沿道には選手をひと目見ようと観客が連なり、声援と拍手で選手を讃えた。会場には小さな観客――子供たちも訪れ、笑顔の花を咲かせた。

ツール・ド・フランスの毎スタート地点に出没する「ビラージュ」を訪れた子供たち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

子供たちが選手と同じコースを走行

450人の中からレースを経て選抜された76人が「Petit Départ」に参加した Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 個人TTを数時間後に控えた同日昼、子供たちが実際のコースを走行するイベント「Petit Départ」(プチ・デパール)が催された。走行距離はラスト1km地点“フラムルージュ”からフィニッシュラインまで。たった1kmという長さだが、この日のために6つの選考レースが行われてきたという。

 参加した子供たちは、デュッセルドルフが位置するノルトライン=ヴェストファーレン州の450人から選抜された76人。当日は雨で路面状況がよくなかったため速度を抑えたまま集団で走行した。緊張からか、雨天時の走行だからか、あるいは思い切り走れない不満からか、この時子供たちの表情は硬いまま。家族が待ち受けるフィニッシュエリアへたどり着くと、次々と笑顔が輝いた。

真剣な表情で走る女の子たち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
フィニッシュラインの観戦席には子供たちの家族がカメラを構えて待機 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
「Petit Départ」を終えて選手と同じポディウムに立ち記念品のぬいぐるみをもらった子供たち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 デュッセルドルフ近郊から参加をしたマックスくんとキムちゃんは、双子の12歳。マックスくんはクロスバイク、キムちゃんも街乗り仕様ながら変速ギアのあるスポーティーな愛車だ。走ってみた感想を尋ねると、マックスくんは「選手と同じ場所を走れるなんてすごい!」と感動の様子。キムちゃんは、「きょうは(走行距離が)短すぎた」とちょっと物足りなそうながらも、「両親も見に来ているの」と微笑んだ。

マックスくん(左)とキムちゃんは、双子。「選手と同じ場所を走れた!」と感動するマックスくんと、「距離が短すぎた」とキムちゃん Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ドイツ出身選手に注目 みんなのヒーロー 

盛大な声援を浴びて笑顔を保ったまま試走から戻ってきたマークス・ブルグハート(ボーラ・ハンスグローエ) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 レース前には、選手らがコースを試走。待ちわびた沿道の観客からひときわ大きな歓声を受けていたのは、ロードのドイツチャンピオンジャージを着るマークス・ブルグハート(ボーラ・ハンスグローエ)だ。例え選手が分からなくとも、ヘルメットやサングラスで覆われて顔が判別できなくとも、ドイツ国旗のカラーがあしらわれたジャージを見れば一目瞭然。各所で盛大な拍手と掛け声を浴びたブルグハートは、チームバスへ戻る際も笑顔だった。

 試走時は小雨、あるいは一時雨が上がっていた空模様も、レーススタート時間になると本降りに。カーブでスリップし、路面に打ち付けられるように落車をしたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)が救急車で搬送(すなわちリタイア)されるなど、濡れたコンディションは選手を悩ませた。

 この日の優勝候補であり、自国ドイツでのレースに期待を背負って出走したTT世界王者トニー・マルティン(カチューシャ・アルペシン)は、トップから8秒遅れの4着。フィニッシュ直後に報道陣に囲まれると、「とても消化不良。満足していない。ラジオツールで情報を聞き続けたけれど、うまくいかなかった」と、時折顔をしかめつつささやくような声で漏らした。

雨に悩まされたTT世界王者トニー・マルティン(カチューシャ・アルペシン)。「消化不良」と肩を落とした Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 翻って10位につけたマルセル・キッテル(クイックステップフロアーズ)は、「TTのスペシャリストじゃないけれど、全てを出し切ることができた」と結果に満足そうだ。走行中については、「雨で出したいスピードを保つのは難しかった。沿道からの耳が痛いくらいの応援はチカラになった」と語った。

マルセル・キッテル(クイックステップフロアーズ)は耳が痛いくらいの応援はチカラになった」と笑顔 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

沿道で元気いっぱい

 キッテルが「耳が痛いくらい」と表現した声援の主には、子供たちもいたかもしれない。

 「子供たちが来たいと言って…」と話した女性は、デュッセルドルフからおよそ400km離れたチューリンゲンから訪れた2人の姉妹のお母さん。5歳のロッレマーレットちゃんは、会場へ来れば選手らと一緒に走れると思っていたという。「わたしも同じくらいに速く走れるよ! でもパンクしちゃったからタイヤを新しくしたの」とあどけなく教えてくれた。9歳のリフグレーテちゃんにも聞いてみると、「少しは速く走れるかな…」とお姉さんらしく遠慮気味。チームプレゼンテーションが行われた6月29日から同地に滞在しているというので、どんなことをしたのか尋ねると、「グライペルやカヴェンディッシュとも写真を撮ったんだ」と目を輝かせた。

5歳のロッレマーレットちゃんは「わたしも選手と同じくらいに速く走れるよ!」と自信たっぷり。9歳のリフグレーテちゃんは選手たちと一緒に写真を撮ったことを嬉しそうに教えてくれた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 お父さんに連れられてデュッセルドルフから来たフィンくん(9歳)は、初めてのツール・ド・フランス観戦をお父さんの肩車で楽しんだ。「いつもは友だちと道路をマウンテンバイクで走っているんだ」というフィンくんは、お父さんが「疲れてしまって」と肩から下ろすと駆け回って元気いっぱい。マルティンが中間計測地点を最速で通過したとのアナウンスが聞こえたその時、フィンくんはジャンプをして喜んでいた。

お父さんの肩車で観戦を楽しんだフィンくん。お土産もいっぱいもらったよ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
雨の中ゴールしたヤコブ・フルサング(アスタナ)。沿道からは拍手が鳴り止まなかった Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
シュルテ柄沢亜希シュルテ柄沢 亜希(しゅるて・からさわ・あき)

1982年生まれ、ドイツ在住。東京を拠点に4年間記者生活を送った後、フリーランスへ。書くこと、レポートすることが生きがい。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をドイツ・ハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。ブログ「ドイツのにほんじん」ほか、多媒体にて執筆中。

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