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山口和幸の「ツールに乾杯! 2017」<1>30年ぶりドイツスタート 人気と低迷を経てキッテル、トニマルらの活躍で公共放送契約延長へ

by 山口和幸 / Kazuyuki YAMAGUCHI
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 ツール・ド・フランスがドイツで開幕するのは4回目だ。前回はベルリンの壁崩壊以前、今から30年前の西ベルリンがスタート地点となった。今回、改めてドイツが開幕地になった理由には、近年のレースでドイツ勢が活躍していることとともに、ドイツの公共放送グループARDがツール・ド・フランス放送の契約延長を決めたことなどが挙げられる。

日本人街もあるデュッセルドルフだけに着物姿の日本女性も ⒸASO

トラックで無敵だった東ドイツ

 ドイツ勢がツール・ド・フランスで活躍するようになったのは、じつはそれほど古いものではない。東ドイツ選手が自転車競技で金メダルを量産してきた歴史はあるが、それはすべてトラック競技においてである。「ツール・ド・フランスはドイツが制することのできない最後のスポーツ大会」と言われていた。

 1990年にベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツ統合されると、それまでトラックレースでしか活躍の場がなかった東ドイツ勢がプロロードチームに相次いで加入してきた。ツール・ド・フランスの勢力図は世界史と密接な関係があるのである。

ウルリッヒの活躍と陰と

 「ドイツが制することのできない最後のスポーツ大会」の呪縛を打ち破ったのが旧東ドイツ出身のヤン・ウルリッヒだ。1996年にドイツテレコムのアシスト選手としてツール・ド・フランス出場。エースのビャルネ・リースの総合優勝に貢献するとともに、ウルリッヒ自身も総合2位となる。1997年にドイツ勢としてツール・ド・フランスで初めての総合優勝を遂げると、ドイツでの自転車人気に火が付いた。

1996年のツール・ド・フランスでビャルネ・リースをアシストするヤン・ウルリッヒ Photo: Yuzuru SUNADA
1996 年のツール・ド・フランス個人TTで走るヤン・ウルリッヒ Photo:Yuzuru SUNADA
2001年のツール・ド・フランス最終日でポイント賞の表彰を受けるエリック・ツァベル(中央)。左は山岳賞のローラン・ジャラべ―ル、右はランス・アームストロング Photo:Yuzuru SUNADA

 東ベルリン生まれのエリック・ツァベルもほぼ同時期に頭角を現した。トラック競技でスピード力を磨いてきたツァベルもロードスプリンターとしての道が開かれた。1996年に初めてポイント賞を獲得すると2001年まで歴代記録となる6年連続の受賞で、最多記録を更新した。今年その大記録にスロバキアのペーター・サガンが並ぼうとしているのも興味深い。

 ところがドイツのツール・ド・フランス人気は一気に低迷していく。ヤン・ウルリッヒなど自国の有名選手のドーピング問題がきっかけだった。ウルリッヒ総合優勝の1997年から全日程を単独で取材し始めたボクはこのあたりのドイツファンの心境を目の当たりにすることが多かった。

2006年の大会2日目。道路の向こうにライン川が流れ、緑色の部分はドイツだ。撮影=山口和幸

 2006年の大会2日目、ストラスブールを発着とする第1ステージは、ドイツにいったん入国してフランスに戻るというコースだったのだが、ドイツに入ると沿道の観客が少ないことにビックリした。ツール・ド・フランスがドイツに足を伸ばしたときはそれまで黒山の人だかりだったのだが…。やはり彼らはウルリッヒの「除外」を相当根に持っているようだ。

公共放送が2年契約延長

ドイツのアンドレ・グライペルに地元ファンの期待がかかる ⓒASO

 ステージの発着となるのはさらに1年さかのぼった2005年のカールスルーエ以来となる。ドイツ登録チームの増加、マルセル・キッテル、アンドレ・グライペル、トニー・マルティンらドイツ選手の活躍などもあって人気は回復。今年はきっと大観衆で埋め尽くされるはずだ。

 2011年からツール・ド・フランスのテレビ生中継が行われていなかったドイツだが2015年にARDが2年契約で再開。さらに2017年から2年間の契約延長を決めた。

 ツール・ド・フランス総合ディレクターのクリスティアン・プリュドムは「ARDチャンネルのおかげで、ドイツ国民が今後2年間、ドイツの公共テレビを通じて毎日生放送でツール・ド・フランスをフォローできることがとてもうれしい」と話していた。

デュッセルドルフの広大な見本市会場が大会本部とサルドプレスに充てられた。撮影=山口和幸
優優勝候補の一角、コロンビアのナイロ・キンタナ ⓒASO

 2017年のデュッセルドルフは欧州最大の日本人街がある。大阪府堺市に本社があるシマノも欧州進出時はこの町に拠点を置いて、プロチームにメカニックを派遣するなどでレーシングパーツの実績を積んでいったのである。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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