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ツール・ド・フランス2017 プレビュー総距離3540kmの壮大な3週間 マイヨジョーヌ争いはフルーム、ポート、キンタナが中心か

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 世界最大の自転車レース、ツール・ド・フランス2017が7月1日、ドイツ・デュッセルドルフで開幕する。全21ステージ、総走行距離3540kmの「フランス一周の旅」に22チーム・198選手が挑む。サイクルロードレース界最高峰の戦いを経て、第104回ツールの王者となるのは誰か。コースの全容と合わせて、戦いの中心となるであろう選手たちの動向を追う。

3週間の長い旅路を経て、最後はパリ・シャンゼリゼへと帰還する =ツール・ド・フランス2016第21ステージ、2016年7月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

フランス国内5つの山脈を巡る

ツール・ド・フランス2017 ルートマップ ©A.S.O.

 ドイツ西部の街・デュッセルドルフをスタートする今年のツール。まずは14kmの個人タイムトライアルで、全選手が旅の始まりを迎える。ここから3日間は、ドイツ、ベルギー、ルクセンブルクを主に走り、フランスでの本格的な戦いは第4ステージ以降となる。

 序盤戦のポイントとなりそうなのが、ラ・プロンシュ・デ・ベル・フィーユにフィニッシュする第5ステージ(160.5km)。中級山岳ステージにカテゴライズされるが、1級山岳頂上を目指すコースは、フィニッシュ手前に最大勾配20%の激坂が待ち受ける。

 しばし平坦ステージが続いたのち、第1週の終盤でジュラ山脈へ。スタティオン・レ・ルスへの第8ステージ(187.5km)、7つものカテゴリー山岳を越えてシャンベリーへと下る第9ステージ(181.5km)は、総合争いの形勢を見出すのに十分な威力だ。特に、中盤と終盤合わせて3カ所の超級山岳を通過する第9ステージは、今大会のクイーンステージに挙げる声もあるほど。

ツール・ド・フランス2017第9ステージコースプロフィール ©A.S.O.

 ところ変わって、ピレネー山脈を目指しフランス南部を進む第2週。おなじみのペイラギュードの頂上フィニッシュとなる第12ステージは、214.5kmの中に超級山岳を含む6カ所のカテゴリー山岳が待ち受け、消耗戦となる可能性が高い。続く第13ステージは101kmのショートステージながら、1級山岳を3つ越え、最後はフィニッシュに向かっての27kmに及ぶダウンヒル。いつになく出入りの激しい山岳ステージとなるはずだ。

ツール・ド・フランス2017第18ステージコースプロフィール ©A.S.O.

 運命の第3週はいよいよアルプスへ。超級2つを含む4カ所のカテゴリー山岳を越える第17ステージ(183km)、超級山岳イゾアールの頂上フィニッシュとなる第18ステージ(179.5km)で今大会の山岳ステージは終了する。

 マイヨジョーヌ争いを締めくくる第20ステージは、マルセイユでの22.5km個人タイムトライアル。海沿いを走るコースは後半に急坂が待ち受け、この区間での走り方でタイムや順位に変動が生まれそう。この2日前まで山岳で熾烈な勝負を繰り広げた選手たちが、最後の賭けに出るのか、はたまた総合順位を守り切るのか興味深い。そして、最終第21ステージ(103km)は、完走を目前とした選手たちのパレード走行と、シャンゼリゼ通りでの恒例のスプリント勝負で閉幕となる。

 今大会は、1992年以来25年ぶりにフランス国内にある5つの山脈をすべて通過する。通過順はヴォージュ、ジュラ、ピレネー、中央山塊、アルプス。平坦ステージが9と多い一方で、山岳頂上フィニッシュが3つと少なめとなっているのも特徴的。その分、例年以上にスピード感のあるレースに期待が膨らむ。

ツール・ド・フランス2017 ステージ概要

総走行距離 3540km
平坦ステージ 9(第2、4、6、7、10、11、16、19、21ステージ)
中級山岳ステージ 5(第3、5、8、14、15ステージ)
上級山岳ステージ 5(第9、12、13、17、18ステージ)
山岳頂上フィニッシュ 3(第5、12、18ステージ)
個人タイムトライアル 2(第1、20ステージ)
休息日 2

ポートが打倒フルーム一番手か キンタナ、アルも調子を上げる

 個人総合時間賞の「マイヨジョーヌ」。2015年、2016年に続く3連覇を目指すクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)だが、これまで以上に勝つことは容易ではなさそうだ。

3連覇の偉業に挑むクリストファー・フルーム。今シーズンは未勝利だが、ツールに合わせてくるか =ツール・ド・フランス2016第21ステージ、2016年7月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今シーズンのフルームは、ここまで勝利数がゼロ。近年はゆっくりと調整する姿こそ見られたが、6月に行われる“ツール前哨戦”クリテリウム・デュ・ドーフィネの頃には、しっかりと調子を上げてきていた。しかし、今年はドーフィネで総合4位。結果的に上位でまとめたとはいえ、大事な山岳ステージで遅れを喫する場面が目立ち、本番に向けていささか不安を残した印象だ。

 2連覇した昨年、一昨年は、第1週からトップギアに入れ、そこで得た貯金を後半戦でも生かしてきた。今回に向けた調整が順調だったのかどうかは、前半ステージの走りである程度見えてくるかもしれない。

打倒フルーム一番手に名が挙がるリッチー・ポート =クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第7ステージ、2017年6月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 打倒フルームに燃える選手たちもひしめき合っており、今大会はマイヨジョーヌを懸けた混戦となる可能性は十分。その筆頭格に名乗りを挙げたのは、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)だ。

 今シーズンのポートは、開幕戦のツアー・ダウンアンダーを皮切りに、パリ~ニースでステージ1勝、ツール・ド・ロマンディでは総合優勝と絶好調。ドーフィネでは、最終ステージで逆転を許し総合2位に終わったが、本格山岳では強さを発揮した。昨年は序盤にメカトラブルで遅れるなど、大舞台でのアクシデントに見舞われることが多いのが気になるが、かつてアシストを務めたフルームを最もよく知る男でもあり、戦い方を熟知している点も強み。同国の先輩で、2011年ツールを制したカデル・エヴァンス氏も今年のポートの走りに太鼓判を押す。

ジロ・デ・イタリア以来のレースとなるナイロ・キンタナ =ジロ・デ・イタリア2017第20ステージ、2017年5月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 総合2位で終えたジロ・デ・イタリア以来のレースとなるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)は、疲労を回復させて本番に臨むことができるか。ジロ同様、個人タイムトライアルの走りがポイントとなりそうだが、それをカバーし余りあるだけの登坂力が大きな魅力。過去には「第3週の男」と呼ばれたが、今年のツールは第1週から本格山岳が次々と登場。どこでリードを奪いに行くかが見もの。ベテランのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)との共闘も心強い。

ドーフィネでは不発に終わったアルベルト・コンタドール。ツール本番での巻き返しなるか =クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第4ステージ、2017年6月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ドーフィネでは総合11位と、いまひとつ調子が上がらなかったアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)。あくまでもツールに向けた調整段階にあることを強調しており、その後の仕上がり具合が気になる。このところは勝負どころを前に失速する場面も見られるが、ライバルの動きへの対応力や、自ら攻撃を仕掛けてレースを動かせるかも重要となる。

 地元フランスの期待を一身に背負うのは、昨年総合2位と大躍進したロマン・バルデ(アージェーデューゼール ラモンディアール)。ドーフィネでは総合6位とまとめ、春のクラシック以降の調整が順調なことをうかがわせた。上りでの安定感ばかりでなく、攻撃的な姿勢や得意のダウンヒルなど、調子がよければあらゆる展開に応じられるはず。

 そして、ここへきて調子を上げてきたのが、ヤコブ・フルサング(デンマーク)とファビオ・アル(イタリア)のアスタナ プロチーム勢。フルサングがドーフィネ最終ステージで大逆転勝利を演じれば、けが明けのアルも総合5位フィニッシュ。アルに至っては、6月25日のイタリア選手権ロードレースで優勝。ともに文句なしの総合エースとして、首脳陣が任命。あとは、ダブルエース体制でのチーム内バランスを保つことができれば、総合優勝争いに食い込むことは大いにあり得る。

ドーフィネ大逆転勝利で勢いに乗るヤコブ・フルサング =クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第8ステージ Photo: Yuzuru SUNADA
6月25日のイタリア選手権を制し、完全復調を印象付けたファビオ・アル ©BettiniPhoto

 そのほか、ドーフィネ総合3位のダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)、こちらもけが明けで復調してきたエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)、初の総合上位入りを目指すヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)、過去2回山岳賞を獲得の実績を持つラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、昨年総合8位のルイ・メインティス(南アフリカ、UAE チームエミレーツ)といった実力者の走りも押さえておきたい。

サガンはマイヨヴェール6連覇なるか

 スプリンターの勲章であるグリーンのポイント賞ジャージ「マイヨヴェール」争いは、昨年まで5連覇中のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が最右翼。今回獲得となると、1996年から2001年にかけて6連覇したエリック・ツァベル(ドイツ)に並ぶ。

マイヨヴェール6連覇に挑むペテル・サガン =ツール・ド・フランス2016第21ステージ、2016年7月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ツールでのサガンといえば、平坦ステージではスプリントで確実に上位フィニッシュをし、山岳ステージでも中間スプリントまでは逃げまたはメイン集団で粘り、しっかりとポイントを稼ぐスタイル。平坦ステージでの付与ポイントを充実させ、スプリンターに有利となると同時に、中間スプリントでも“ポイント貯金”が可能である現在のレギュレーションは、まさにサガンのためにあるようなものだ。

 サガンに対抗できる選手を挙げるとするならば、マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)とジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)か。ピュアスプリンターをも凌駕するスピードと勝負強さを武器に、逃げやスプリントにトライしたいところ。

9つある平坦ステージでのステージ優勝争いも見もの。マルセル・キッテルらピュアスプリンターたちが躍動する =ツール・ド・フランス2016第4ステージ、2016年7月5日 Photo: Yuzuru SUNADA

 9つあるスプリントステージでの主役を狙うピュアスプリンターでは、マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)、アルノー・デマール(フランス、エフデジ)、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)に注目。2015年、2016年とシャンゼリゼでのスプリントを制したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)、春先の体調不良を乗り越え戦線に戻ってきたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)も勝機をうかがう。

山岳賞のマイヨアポワ。2016年はラファウ・マイカが獲得した =ツール・ド・フランス2016第21ステージ、2016年7月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 白地に赤の水玉があしらわれる山岳賞ジャージ「マイヨアポワ」争いは、総合争いから何らかの理由で後退した選手や、山岳逃げのスペシャリストが獲得するケースが多い。また、頂上フィニッシュは得点配分が2倍となることから、総合上位の選手が最終的に獲得することもある。

 多くの選手がまずはマイヨジョーヌを目指して走ることになるだろうが、形勢が見え始める第2週以降に山岳賞に絞って動き出す選手も現れそうだ。ちなみに、主催者A.S.O.がSNSを通じて候補選手をリストアップ。マイカ、トマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)、ワレン・バルギル(フランス、チーム サンウェブ)、セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)、トマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)が挙がっている。また、ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)もマイヨアポワ獲得に意欲を見せているとの情報もある。

ツール前哨戦のドーフィネではエマヌエル・ブッフマンがマイヨブランを獲得。ツールでも有力候補の1人だ =クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第8ステージ、2017年7月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

 25歳以下が対象の新人賞は、総合最上位の選手が純白の「マイヨブラン」を着用する。近年は、対象選手のレベルが大幅にアップ。マイヨブランを懸けた戦いは同時に、総合上位争いへと直結する傾向にある。

 A.S.O.がリストアップした候補選手は、メインティス、ピエール・ラトゥール(フランス、アージェーデューゼール ラモンディアール)、リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)、サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)、エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)。実力はもとより、実績から見てもこの中からジャージ獲得にあずかる選手が現れることだろう。

チーム総合、毎ステージの敢闘賞争いも見逃せない!

2016年大会のチーム総合はモビスター チームが獲得した =ツール・ド・フランス2016第21ステージ、2016年7月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 各ステージでチーム内上位3選手のタイムを合算し、それを毎ステージ加算して順位を決める「チーム総合時間賞」。トップに立ったチームは、イエローのゼッケンをつけて次のステージを出走する。ユニークなのは、チーム力が直接反映されるわけではない点。大逃げが決まるようなことがあると、予想外のチームが急浮上することもある。

 TTステージを除く各ステージでインパクトある走りをした選手には、「敢闘賞」が与えられ、次のステージでは赤いゼッケンを着けることができる。大会を通じて最も印象的な走りをした選手には、「スーパー敢闘賞」として、パリ・シャンゼリゼの総合表彰台で祝福される。今大会からツイッターでの投票が導入され、レースファンにもスーパー敢闘賞にふさわしい選手を選ぶ権利が与えられる。なお、投票日は2回ある休息日となる予定で、得票数の多い選手が最終候補に挙がるシステムが予定されている。

 そして、最後はわれらが日本のエース、新城幸也(バーレーン・メリダ)の出場だ。

 シーズンインの段階からツールのメンバー入りを念頭にレースプログラムを組んできたが、まさに順調そのものに開幕を迎えたといえそうだ。昨シーズンは2月に大腿骨骨折の大けがを負い、そこから這い上がってのツール出場だったが、今年は結成1年目のチームにおいて主力としてビッグレースに次々と出場。直前のドーフィネではスプリントトレインを牽引する場面も見られ、それらの働きが高く評価された。

 バーレーン・メリダは、イサギレの総合やソニー・コルブレッリ(イタリア)のスプリントなど、幅広く勝負できる布陣。あらゆる局面で新城の働きがみられることだろう。展開次第ではステージ優勝狙いの動きや、2012年第4ステージ、2016年第6ステージに続く敢闘賞獲得など、活躍に期待が膨らむ。

順当にツールのメンバー入りを果たした新城幸也。強力なチームにあって、あらゆる働きができる強みがある =クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第5ステージ、2017年6月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

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