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フィジカルと栄養の両面から試みた進化へのアプローチ2016年全日本チャンピオンの初山翔が目指す「次への一歩」 進化への肉体づくりに迫る

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 2016年6月、伊豆大島で行われた全日本選手権ロードレースで、初山翔(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)は見事なチームプレイから、自身初の全日本ロード王者に輝いた。チャンピオンジャージをまとっての今シーズン、初山は「普遍的なやり方では自身のパフォーマンスの成長スピードに限界を感じて、去年の冬は例年とは変わったトレーニングで過ごしてきた」(本人ブログより)と、これまでと違うアプローチで、さらなる進化を目指してきた。そして迎えた5月下旬の国内最高峰のステージレース、「ツアー・オブ・ジャパン」(TOJ)では多くのファンを魅了する大活躍。ロードレースシーズンの前半戦が終わりつつあるなか、初山の「新たな取組み」に密着し、その強さの裏側に迫った。

初山翔(右)と吉田輝幸トレーナー Photo: Shunsuke Mizukami

海外レースで一歩上へ パワー面を強化

 TOJを走り終えた6月初旬、東京・中目黒のトレーニングジムに、初山の姿があった。昨シーズンオフからここでトレーニングの指導を受けているという。初山を指導する吉田輝幸トレーナーは、野球、ゴルフ、サッカーなど幅広いプロスポーツ選手やアスリートの豊富な指導経験を持つ。また、EXILEのフィジカルトレーナーを務めるなど、アーティストや一般愛好者からの支持も高い。

 ジムではまず体組成を測定。初山は体脂肪率や筋肉量の推移を見せてくれた。続いて10種類ほどのアセスメントテストを行い、身体の動きや筋力のバランスをチェックする。その後行う実際のトレーニングのメニューは、下半身を中心に、約30種類におよぶ。

体組成をチェック。この日はTOJ直後のカラダの状態が把握できた Photo: Shunsuke Mizukami
体幹や四肢の筋肉量をチェックできるため、長いスパンでのトレーニングの効果を確認できる Photo: Shunsuke Mizukami

 これまで、自転車上で行う以外のトレーニングの経験はほとんどなかったという初山が、吉田トレーナーのパーソナルトレーニングジム「PCP」を初めて訪れたのは昨年10月。「海外のレースを重要視したときに、パワー不足を感じていた」という初山は、最初は体重を増やすことを考えていたという。

アセスメントテストはバーを持った状態での腕の上げ下げやスクワットの動作などを行う。各部の筋力バランスや関節の可動域などをチェックする Photo: Shunsuke Mizukami

 だが吉田トレーナーは、ロードレースにおいて体重が増えるリスクをまず指摘。初山の身体をチェックして、「股関節の動きや、お尻周りの筋肉の使い方に、まだ伸びしろがある」との分析から、筋肥大をせずにパワーの出力を上げることのできるカラダづくりを提案。初山のためのトレーニングメニューを構築した。

 オフシーズン中、吉田トレーナーのメニューを週3回実施したという初山。「ウエイトトレーニング後は自転車を踏むことができないくらいでした」というほど、地道なトレーニングを繰り返し、新しい刺激をカラダに入れ続けた。その結果、2月の測定では、筋肉量が1.1kg増加。カラダにも変化が表れはじめていた。

強化メニューの中心となるのはデッドリフト。現在は50~70kgのウエイト Photo: Shunsuke Mizukami
フォームを崩さないよう慎重に行う Photo: Shunsuke Mizukami

 初山はまた、栄養指導も受け始めた。カラダづくりのために、トレーニングと栄養、「二本立て」の強化を目指し、栄養面でチームをサポートする明治の栄養士に指導を依頼。一週間の食事写真を栄養士に送り、栄養バランスや不足栄養素を分析してもらった。不足している栄養素に対し、どのように補っていくか、補給タイミングなども指導を受け、たんぱく質量や鉄分が不足傾向にあったことから、初山は意識して食事で摂取するようになったという。意外にも活用するサプリメントは多くなく、運動前のアミノ酸VAAM、運動後のザバスのプロテインとシンプルだ。

食事の写真を撮りためて、栄養指導を受けた Photo: Sho HATSUYAMA

 以前から使用していたアミノ酸VAAMの摂取方法も、今シーズンは変えた。これまではレースでは使っていたものの、日頃の練習のときには飲んでいなかった。運動中に体脂肪のエネルギーを活用することは、ガス欠対策や集中力キープなど動き続けるカラダには重要なエネルギー戦略。今シーズンは日頃の練習の日も含め、毎日のように摂取するようにした。1回の練習をより濃いものにするためにも、練習前にとるVAAMは新しいルーティーンとなった。

「スーパーヴァームシリーズ」の4商品。初山翔が愛用するのはスーパーヴァーム顆粒(左から2番目) Photo: MEIJI

進化の苦しみを経験した序盤戦 高い集中力でTOJ山岳賞へ

 今年は3月頭にクロアチアのレースでシーズンインした初山。「例年より体重が2kgほど重かった」と例年と違うリズムでシーズンインしたことで、幾分か準備とコンディション不足に若干の焦りもあったという。自身の成績も当初伸びずに苦しんでいた。進化の過程、新たな挑戦で生まれる葛藤を経験した。

記念すべき第20回大会を迎えた今年のTOJで、初山翔は日本人選手としては20年ぶりの総合山岳賞に輝いた Photo: Shusaku MATSUO

 しかし海外での連戦、トレーニングを信念をもって着実にこなしていき、ベスト体重まで落として臨んだ5月のTOJでは、ファンが待ち望んだ活躍を見せた。全8ステージ中、個人タイムトライアルの堺と、短距離のヒルクライムの富士山ステージを除く、6ステージ全てで逃げに入り、日本人選手としては20年ぶりとなる個人総合山岳賞に輝いたのだ。

 大人数のメイン集団から飛び出す少人数の「逃げ」は、空気抵抗が最大の敵となる自転車ロードレースにおいて、常に風を受けて体力を消耗し続けることを意味する。逃げに入るまでもアタック合戦をくぐりぬける必要があり、1ステージであっても逃げに入るということは、質と量の両面において並大抵ではない仕事になる。移動しながら8日間、毎日レースを続けるTOJ。逃げでの疲労はともすれば、翌日のレースで致命的な体力不足を招くリスクもはらむ。

Photo: Shunsuke Mizukami

 そのなかで初山は、2日目の京都ステージから3日連続で逃げに乗り続けた。次に待ち受けるのはTOJ屈指の難コースで知られる、アップダウンが厳しい南信州ステージ。連日の逃げの疲労を考えると、完走が精一杯でもおかしくない。だが今年の初山は一味違う。「かなりきつかったですけど、南信州で取れば(総合山岳賞が)確定だったので、山岳ポイントがゴールだと思って」と集中した走りで逃げに乗り、山岳ポイントを2度先頭通過。3ステージを残して総合山岳賞を確定させた。20年ぶりのTOJ日本人山岳王。TOJが現在の富士山ステージを含むコース設定になった2005年以降では、初めての快挙を達成した。

「翌日に持ち越すダメージが少なかった」

山岳賞を決めた後も逃げ続けた初山翔。最終日の東京ステージでも逃げに乗る走りで、会場に詰めかけたファンを沸かせた Photo: MEIJI

 初山は山岳賞が確定した後も、富士山ステージをはさみ、残る伊豆、東京ステージで逃げに入る熱い走りを続けた。上りと下りしかない厳しいコースの伊豆ステージでは、優勝こそ逃したものの、メイン集団から最後まで逃げ切って6位を獲得。最終日の東京ステージでも山岳賞ジャージを着て逃げ続け、チームメイトのステージ3位に貢献した。疲れ知らずの活躍は終盤戦さらに輝きを増し、ファンはその走りを興奮と同時に、驚きをもって見続けていたに違いない。

 連日の走りを初山は、「体が多少大きくなり、一日一日の体のダメージが若干減ったように思います。例年だと一日ハードに走ると、次の日に疲れてしまっていましたが、今年はこれまでより持ち越すダメージが少なかった」と振り返る。新たな進化に挑戦した今シーズン前半、トレーニングや栄養、補給面など、新たなアプローチは十分な成果をもたらすものだったといえるだろう。

Photo: Shunsuke Mizukami
Photo: Shunsuke Mizukami

 一方で吉田トレーナーは、「ウエイトトレーニングの本当の効果が出てくるのは、やり始めて2年後から3年後」と先を見据える。当初の目標でもある、筋肥大を伴わないパワーアップは、高負荷(大重量)でのメニューを少ない回数で行うというもの。高いレベルのトレーニングを行う技術面の準備や、トレーニングで得られた筋力が神経系とつながり競技に生かされるまでを含めると、ロードマップは年単位におよぶ。

初山翔(左)と吉田輝幸トレーナー Photo: Shunsuke Mizukami

 レースシーズンが始まって以降は、ウエイトトレーニングの疲労による影響を避けるため、自転車でのトレーニングに集中しているが、今後はシーズン中にもウエイトトレーニングを行える体を目指すという。「レースシーズンでもウエイトトレーニングを行うことを、無理じゃなくするのもトレーニング。シーズンを通してトレーニングできるようになるとまた違ってくる」と吉田トレーナーは、さらなる進化の道筋を示した。

ウエイトトレーニングの本当の効果が出るのは2~3年後だという吉田輝幸トレーナー Photo: Shunsuke Mizukami
吉田輝幸トレーナーは数年先を見据えた強化プランを提案 Photo: Shunsuke Mizukami

「“チャンス”に対応できる選手に」

 初山は今年29歳。ロードレーサーが最も脂が乗った時期になるといわれる30歳前後の時期にかかっている。初山に今後の目標を尋ねた。

昨年の全日本ロード、終盤に3人で抜け出しゴールスプリントを制した。ブリヂストンアンカーは初山翔と西薗良太がワンツーフィニッシュ Photo: Shusaku MATSUO

 「海外のレースなど、より高いパワーが求められるレースでも活躍できるようになりたいと思っていますし、もちろん全日本でもタイトルをもう一度取りたいと思っています。レースで言えばジャパンカップとか、さらに高いレベルのレースで、もう一歩というところになっているので、そういうところで今まで以上に走れるようになりたい」

 10代から20代前半にかけて、本場ヨーロッパのトッププロ選手を目指し、がむしゃらに走ってきた初山。その夢は一度破れたが、国内プロチームで年々力をつけ、全日本タイトルをつかんだ今、世界への夢は再び違う形で初山の視線に写る。

1年間着続けた全日本チャンピオンジャージ。各国の現役王者のみが、国旗を模したチャンピオンジャージでレースを走る Photo: Shunsuke Mizukami

 「ワールドチームには、チャンスがあれば行きたいと思っていますが、年齢的なものもあるし、普通に成績を残してというのは限りなくゼロに近い。でもそういうチャンスが来たときに、いつでも対応できるような選手になっておくことが目標」

 昨年の全日本戴冠から季節はめぐり、再び6月を迎えた。1年間着続けたチャンピオンジャージに一旦別れを告げ、連覇がかかった青森県階上町での、今年の全日本ロードへと挑む。

 「僕だけじゃなくチームにとって一番大事なレースなので、ちゃんと(チームで)勝てるようベストを尽くします。自分もチャンスはあると思っています」と笑顔の奥に自信をのぞかせた。

Photo: Shunsuke Mizukami
初山翔初山翔(はつやま・しょう)

1988年生まれ。神奈川県出身。高校から本格的に自転車競技を始め、高校卒業後はU23カテゴリー中の3年間、同世代の世界トップクラスの選手が集まるイタリアでロードレースの経験を積む。2013年にブリヂストンアンカー加入。逃げ、上り、スプリントまで幅広く対応するオールラウンダーとして、2013年ツール・ド・おきなわ優勝、2015年ツール・ド・シンカラ区間優勝、2016年全日本選手権ロードレース優勝など、国内外のレースで実績を伸ばしている。

吉田輝幸吉田輝幸(よしだ・てるゆき)

1975年生まれ。国士舘大学体育学部卒業。大学卒業後に本格的にパーソナルトレーナーの道を進むため、渡米。帰国後はさまざまなスポーツ、ジャンルのアスリートのトレーナーとして活躍。正しい身体の使い方、正しい動きによって最高のパフォーマンスを引き出す「吉田コアパフォーマンスメソッド」を提唱。現在は、EXILEフィジカルトレーナーとしてパフォーマンスアップに従事し、自らのパーソナルトレーニングジム「PCP」においてパフォーマンスコーチ&ディレクターも務める。

ロードサイクリスト向け、厳選3メニュー

 初山への取材の合間に、吉田トレーナーからCyclist読者のために、ロードバイクに乗る人向けのトレーニングメニューを紹介してもらった。

クワド・ストレッチ

 前傾姿勢が長時間続くロードバイク特有の体勢による、腹部の筋肉が収縮した状態をリセットする。両膝を90度に曲げて片膝立ちになり、後ろ足側のお尻の筋肉に力を入れることで、前側の筋を反作用的に伸ばす。前側を無理に引っ張って伸ばさないこと。

両膝を90度に曲げ、片膝立ちに Photo: Shunsuke Mizukami
後ろ足側の臀筋を収縮させ、前側の腸腰筋などを伸展 Photo: Shunsuke Mizukami
これは悪い例。無理に前側を伸ばそうとしないこと Photo: Shunsuke Mizukami

ヒップリフト

 お尻の筋肉が使えるようになるエクササイズ。仰向けで膝を立て、両腕を垂直に上げた状態から、お尻を持ち上げる。10回程度繰り返す。

仰向けで膝を立て両腕を垂直に上げる Photo: Shunsuke Mizukami
最初の姿勢からお尻を浮かせる Photo: Shunsuke Mizukami

プランク・ヒップフレクション

 体幹の安定と、股関節をより使えるようにするためのエクササイズ。うつぶせで膝・腰を浮かせ両肘とつま先で支えた「プランク」の姿勢から、片脚ずつ横側を回旋させる。

体幹トレーニングの基本、プランクの姿勢。上半身は床と平行に Photo: Shunsuke Mizukami
膝を横から前へ突き出す Photo: Shunsuke Mizukami

初山翔が使用する「スーパーヴァーム顆粒」

そのまま飲める、スーパーヴァーム顆粒

 小分けの顆粒タイプで持ち運びに便利。1袋にスズメバチアミノ酸「V.A.A.M.」3000mgと、コエンザイムQ10、L-カルニチンをプラス。口の中で素早く溶けるため、水なしでそのまま飲むことができる。

●スーパーヴァーム顆粒
 4g×10袋入り 税抜価格: 2,300円

 栄養成分 ※1袋(4g)当たり
 ・エネルギー 16kcal
 ・たんぱく質 3.1g
 ・脂質 0.05g
 ・炭水化物 0.8g
 ・ナトリウム 0.8mg
 ………………
 ・V.A.A.M. 3,000mg
 ・コエンザイムQ10 30mg
 ・L-カルニチン 200mg

VAAM

(提供:株式会社 明治)

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