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初山翔が20年ぶり日本人山岳賞6人のライダーが魅せたTOJ 徹底したブリヂストンアンカーのエネルギー戦略

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 5月下旬に開催された「ツアー・オブ・ジャパン」(TOJ)。ブリヂストンアンカー サイクリングチームの躍動と大会を盛り上げた活躍は記憶に新しい。現全日本王者の初山翔が連日にわたる逃げを見せ、山岳賞を獲得。20年ぶりの日本人山岳賞総合獲得という快挙を成し遂げ、また、西薗良太が総合12位で日本人トップの成績を収めて気を吐いた。8日間に渡って繰り広げられた日本最大の国際ステージレースで見せたチームの活躍と、レースでの戦いの裏で徹底されていた補給の舞台裏に迫った。

初山翔は山岳賞ジャージを着用後、一度もほかの選手に渡すことがなかった Photo: Shusaku MATSUO

高いモチベーションで臨んだTOJ

ブリヂストンアンカー サイクリングチームは結果だけでなく魅せる走りでファンを魅了した Photo: Shusaku MATSUO

 ブリヂストンアンカー サイクリングチームはシーズン開幕からの欧州遠征を終え、コンディションを上げた最強の布陣で5月21日からのツアーに臨んだ。昨年、全日本ロードレース選手権大会を制し、日本チャンピオンジャージを着る初山。同じく全日本タイムトライアル(TT)選手権大会を優勝した西薗、また、新加入でスプリンターの大久保陣、欧州経験が豊富な石橋学、若手でホープの鈴木龍、2010年のジロ・デ・イタリアのステージ優勝を飾ったダミアン・モニエ(フランス)の計6人だ。

個人タイムトライアルに向けてウォーミングアップを行う選手たち Photo: Shusaku MATSUO
大久保陣も出番に備えてローラーを回す Photo: Shusaku MATSUO

 チームにとってTOJは、年間レースの中でも最も重要なレースのひとつ。ブリヂストンアンカー サイクリングチームは日本のチームであるが、海外レースへの参戦が多く、TOJは日本のファンの前で走る数少ないレースでもある。また、良い結果でこのレースを終えることは、連覇のかかる全日本選手権大会(6月23日開幕)へ向けた弾みとなる。

全日本タイムトライアル王者の西薗は、日本チャンピオンジャージを着て出走 Photo: Shusaku MATSUO

 初日、堺ステージのチームテント裏では、黙々とローラーでアップを行う選手たちの姿があった。距離わずか2.65kmのタイムトライアル(TT)だが、選手たちは「少しのタイムも落とせない」という意気込みで体を温めていた。30秒ごとにスタートが切られる第1ステージ。純白の全日本TTチャンピオンジャージに身を包み出走した西薗は、全力のスプリントでフィニッシュラインを越え、トップから11秒遅れのまずまずの結果でツアーのスタートを迎えた。

6日間逃げに乗り、山岳賞を獲得

ツアー最初の山岳ポイントを獲得した初山翔 Photo: Shusaku MATSUO

 続く第2ステージ(5月22日)の舞台は京都。「逃げる予定はなかった」とレース後に話した初山が、1周目に3人の逃げに合流し、レースをリードした。この日、ツアー最初の山岳賞が2回設けられたが、山頂に設定されたラインを2回ともトップで通過し山岳ポイントを獲得。メイン集団には捕まったが、ステージを完走して山岳賞ジャージをゲットした。TOJのような「ツール」には、個人総合時間賞、ポイント賞、山岳賞、新人賞の4つの大きな賞があり、それぞれ各ステージで暫定トップの選手がそのリーダージャージを着て走ることになっている。初山の山岳賞獲得でチームは幸先の良いスタートを切り、そしてこの日から初山の活躍が始まることになる。

連日逃げに乗り、長時間高い運動強度で走る初山 Photo: Shusaku MATSUO
京都ステージの逃げで山岳ポイントを先取し、山岳賞ジャージを獲得した初山 Photo: Shusaku MATSUO

 翌日も逃げを決め、山岳ポイントを重ねた初山はその後、ヒルクライムレースの富士山ステージを除く全てのステージで逃げグループに乗った。また、逃げグループ内では山岳ポイントを取り続け、一度も山岳ジャージを明け渡すことなく最終日の東京ステージを完走。逃げたくても逃げることができない選手が多いなか、的確な判断と鍛え上げられたフィジカルで全日本チャンピオンらしい走りを見せつけ、20年ぶりに日本人選手の山岳賞獲得を果たした。

伊豆ステージをメイン集団から逃げ切り、6位でフィニッシュした初山翔 Photo: Shusaku MATSUO
ダミアン・モニエとともに富士山ステージのゴールを目指す西薗良太。この日のタイムで日本人総合トップに躍りでる Photo: Shusaku MATSUO

 活躍したのは初山だけではない。理論派で、TTが得意というイメージが強い西薗だったが、集団スプリントにも果敢に挑み、南信州ステージ(5月25日、第5ステージ)ではスプリンター相手に4位に食い込んだほか、最も上りが厳しく、斜度が22%の激坂が登場する富士山ステージでは15位でフィニッシュ。他の日本人選手とのタイム差を広げ、日本人総合最高位を不動のものにした。

タイムトライアルが得意な西薗良太だが、集団スプリントでもトップ争いをみせる Photo: Shusaku MATSUO
石橋学は富士山ステージでリーダージャージより前方でゴールする好タイムを出した Photo: Shusaku MATSUO

 レース全体を盛り上げたのが“仕事人”モニエだ。いなべステージ(5月23日、第3ステージ)で逃げに乗ったモニエは、一緒に先行していた選手がメイン集団に飲まれるなか、ラスト4.5kmまで単独で粘り、ゴールまであと一歩のところで吸収。惜しい結果となったが、モニエが逃げている間、チームメイトは集団の中で体力温存に繋げることができた。

ゴールまでラスト4.5kmまで単独で粘るも、惜しくも集団に捕まったモニエ。 Photo: Shusaku MATSUO

 伊豆ステージ(5月27日、第7ステージ)では初山とともに逃げを決め、チームでステージ優勝を目指した。1位を取るに至らなかったが、モニエが5位、初山が6位の好成績を残し、UCIポイントを獲得。ほかにも大久保が最終・東京ステージ(5月28日)では3位でフィニッシュ。若手の鈴木もスプリントで、石橋は富士山ステージで頭角を表した。

集団トップでフィニッシュしたスプリンターの大久保陣 Photo: Ikki YONEYAMA
ハイスピードな展開となった東京ステージも逃げに乗り、大勢の観客の前を走る初山翔と大久保陣 Photo: Ikki YONEYAMA

耐久レースを戦い抜くためのエネルギー戦略

 8日間、計743.75kmにも及ぶレースを走りきった選手たち。彼らは日々鍛え上げた優れたフィジカルもさることながら、長丁場を戦い抜くためのエネルギー戦略を徹底している。100㎞を超えるレースでは、4000kcal以上ものエネルギーを消費することもあるという。どんなにコンディションが良くても、ガス欠になれば戦いどころではないし、また体内のエネルギー不足は集中力の低下や疲労感にもつながりかねない。

選手が混雑する補給エリアで受け取りやすいよう、長袖のチームジャージを着て居場所をアピール Photo: Shusaku MATSUO

 ウォーミングアップを終えた選手たちは、各々補給食をウエアポケットに入れ、そしてスーパーヴァーム顆粒を飲んだ。長時間に及ぶ戦いの彼らのエネルギー源は体内の「糖質と体脂肪」だ。特に体脂肪のエネルギー活用を意識したエネルギー戦略は、2014年頃から取り入れている。大きなエネルギー源である体脂肪を使うことは、糖質の温存につながると彼らは考えている。最後の最後まで絞り出せる粘りと爆発的なスプリントのためにもエネルギー戦略は綿密だ。

レース前にVAAMを飲む初山翔 Photo: Shusaku MATSUO
チームテントにはVAAMやザバス「ピットインエネルギージェル」が豊富に用意され、選手が素早く補給できる準備が整のう Photo: Shusaku MATSUO

 「レース中は30分に1本のボトル(500ml)を消費する」と初山が話す通り、コース上に設けられた補給ポイントでは、注意深くいくつものボトルを受け渡すチームスタッフの姿があった。

「ヴァームウォーターパウダー」を水とかしたものに更に「スーパーヴァーム顆粒」を溶かしたスペシャルドリンクの2種類を用意 (写真提供:明治)
堺ステージスタート前「これから始まるハードなステージ前にローディングしたい」とVAAMを飲む大久保陣 Photo: Shusaku MATSUO

 選手に渡すボトルの中身は2種類とのこと。水専用のボトルに加え、アミノ酸VAAMと電解質が補給できる「ヴァームウォーターパウダー」を水とかしたものに更に「スーパーヴァーム顆粒」を溶かしたスペシャルドリンクを用意している。スーパーヴァーム顆粒を溶かしたボトルはレースが1時間を経過したあたりから出し始めているとのことだ。

30℃に迫る気温の中、こまめな水分補給は欠かせない Photo: Shusaku MATSUO

 「30分に1本のボトル」というように目安を決め、こまめな水分補給を行うことで脱水対策を行う。1時間を超えたあたりからアミノ酸VAAMを水分とともにチャージする。これらはブリヂストンアンカーのパフォーマンスを支える戦略の1つとなっている。

補給で手渡されるスペシャルドリンクはヴァームウォーターパウダーとスーパーヴァーム顆粒を溶かしたもの Photo: Shusaku MATSUO

 最終日の東京ステージを終え、山岳賞を守りきった初山は「ツアー中は逃げに乗り続け、賞を取ることができました。逃げは狙っても簡単に乗れるものではなく、自分のテクニックには満足しています。また、長時間の有酸素運動となるロードレースではエネルギー戦略が不可欠。これまではレースの時にしか飲んでいなかったVAAMですが、オフシーズンから日頃のトレーニングにもVAAMを取り入れました。山岳賞ジャージを獲得できたことが本当に嬉しいです」と東京ステージの表彰後にほっとした表情でコメントした。

「長時間の有酸素運動となるロードレースではエネルギー戦略が不可欠」と東京ステージ表彰後に語る初山翔 Photo: Ikki YONEYAMA

 高いモチベーションと、優れたチームワーク、そしてエネルギー戦略を駆使し、プロフェッショナルな走りを魅せたブリヂストンアンカー サイクリングチーム。TOJ後に開催されたツール・ド・熊野第3ステージでは、モニエが念願のステージ優勝を飾り、「Jプロツアー」の那須ロードレース大会では鈴木龍がプロ初勝利をあげるなどチームをさらに勢いづけた。連覇がかかる全日本選手権大会も彼らの活躍から目が離せない。

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