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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<212>ツール・ド・フランス前哨戦が本格化 有力選手の調整、メンバー選考に注目

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 第100回記念のジロ・デ・イタリア、初開催のハンマーシリーズとが終わり、7月に行われるツール・ド・フランスに向けた準備が本格化している。レースシーンでは前哨戦がスタートし、ツール本番での活躍が期待される選手から、はたまた出場がかかるボーダーラインの選手まで、いよいよ動き出し始めた。前哨戦も見どころは満載だ。そこで、レース結果にとどまらない、ツール開幕までのチェックポイントを押さえていこう。また、有力選手についても幅広く取り上げていく。

6月4日に開幕したクリテリウム・デュ・ドーフィネ第1ステージのスタート前、前日にイギリス・ロンドンで起きたテロ事件犠牲者の冥福を祈り、黙祷を捧げる Photo: Yuzuru SUNADA

“仮想ツール”ドーフィネに有力選手が結集

 まずは、ツールをターゲットとする有力選手たちが、どの“前哨戦”をチョイスしているのかを見ていこう。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第1ステージを走るクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADA

 第3ステージまでを終えたクリテリウム・デュ・ドーフィネは、この大会3連覇がかかるクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)を筆頭に、今シーズン好調のアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)らが参戦。フランス期待のロマン・バルデ(アージェードゥーゼール ラモンディアル)も元気な姿を見せている。さらには、けがのため無念のジロ欠場となったファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)や、エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)も復帰戦にチョイスしている。

 この大会を主催するのがツールと同じA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)であることから、近年はツール本番のコースに類似したセッティングを施しているのが特徴。今年は大会前半から中盤にかけて、スプリンターにチャンスのあるステージを設計。第2ステージで優勝したアルノー・デマール(フランス、エフデジ)に加え、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)、ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)、ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)といった実力者もそろっている。

クリテリウム・デュ・ドーフィネ第2ステージ、メイン集団を牽引する新城幸也 Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、クラシックシーズンを経てすっかりチームの主力として欠かせない存在となった新城幸也(バーレーン・メリダ)、8年ぶりのツール出場に期待が膨らむ別府史之(トレック・セガフレード)の日本勢も快調な走りを見せている。

 これだけのメンバーがそろっていれば、どの選手がどの程度調子がよいか、調整が進んでいるかがうかがえるはずだ。ここ数年はドーフィネで総合優勝した選手がツールも制するなど、6月の段階で調整が進んでいないとツール本番でトップを狙うのは厳しいのが実情。選手たちにとっては、総合優勝またはステージ優勝とまではいかずとも、ある程度戦える状態にあることは確認しておきたいところだ。

 ドーフィネの総合争いは、第4ステージに控える23.5kmの個人タイムトライアルから動き出すことになりそうだ。ここで有力選手たちの独走力が試される。さらに大会最後の3日間、第6~8ステージに山岳が集中。第7ステージでは、ツールでおなじみのラルプ・デュエズを上るなど、“仮想ツール”としてはこれ以上ない演出が待っている。

スイスにヴァンアーヴェルマート、サガンらが出場

 ドーフィネと並び、UCIワールドツアーのレースとしてツール前哨戦の意味合いを強く持つのが、ツール・ド・スイス。今年は6月10~18日の日程で開催される。

急峻なスイスアルプスを舞台に開催されるツール・ド・スイス。写真は昨年のレース風景 Photo: Yuzuru SUNADA

 舞台となるスイスアルプスは急峻で、コース難易度はドーフィネ以上との声もある。実際、今年は平坦ステージが設けられておらず、第1・第9ステージの個人タイムトライアル以外は、中級から上級の山岳ステージが続く。

 それもあり、消耗を避けたい選手や、脚質に合わないと判断した選手などはドーフィネやその他レースを選択。前回の総合覇者であるミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)は出場予定だが、ツールでのステージ優勝が期待されるライダーが調整の一環としてスイスに集まりそうだ。

クラシックシーズンに覇権争いを演じた(右から)グレッグ・ヴァンアーヴェルマート、ペテル・サガンがツール・ド・スイスに参戦する Photo: Yuzuru SUNADA

 ツールのポイント賞「マイヨヴェール」6連覇を目指すペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は、兄・ユライとともにスイスへ。そのサガンとクラシックシーズンの覇権争いを演じたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)、ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・スコット)らも参戦予定だ。

 暫定のスタートリストでは、ジロ覇者のトム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)、同じくジロでポイント賞を獲得したフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)もラインナップ。そのまま出走するのかどうかも楽しみなところだ。

 UCIワールドツアーではないものの、6月14~18日にオランダで開催されるステルZLMツール(UCIヨーロッパツアー2.1)はスプリンター向けの調整レースとして人気。現時点では、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)、マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)が参戦を予定。ピレネー山脈を舞台に6月15~18日の日程で行われるルート・デュ・スッド(UCIヨーロッパツアー2.1)には、UCIワールドチームが多数エントリー。こちらもツールに向けた調整や、メンバー選考などに役立てようとする選手やチームが現れることだろう。

ツールに間に合うか 戦列復帰を模索する選手たち

 ツール前哨戦が進行する一方で、戦線を離脱し復帰を模索する選手たちの動きも気になるところ。ツール本番に間に合うか微妙な有力選手も多く、この時期の回復状況やレース結果次第で大きな決断を迫られることになる。

明るい表情でジロ・デ・イタリアの会場に現れたマーク・カヴェンディッシュ。いよいよレースシーンに復帰するが、ツール出場は不透明だ Photo: Yuzuru SUNADA

 春にエプスタイン・バール・ウイルス感染を発表し、以降戦列を離れているマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チーム ディメンションデータ)は、すでにトレーニングを再開し、ジロ期間中には明るい表情で会場にも現れた。6月に入り、いよいよレース復帰を果たす。プレッシャーを避けるべく、復帰戦に選んだのは6月15~18日のツール・ド・スロベニア(UCIヨーロッパツアー2.1)。コース設定を見る限り、本調子であればスプリントのチャンスはありそうだが、現実はそう甘くないようだ。

 チームを指揮するロジャー・ハモンド監督は、「正直なところ、ツールは遠いところにある」と述べ、いまのコンディションではツールのメンバー入りは厳しいことを示唆。ひとまずは今月下旬のイギリス選手権をターゲットとしているが、スロベニアでの走りが1つ焦点となるはず。

膝の故障が癒えたヨアンエステバン・チャベスはクリテリウム・デュ・ドーフィネで戦線復帰 =ツアー・ダウンアンダー第6ステージ、2017年1月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 けがからの復帰組では、膝を痛めていたチャベスとアールがドーフィネに参戦中。ツール初参戦を予定しているチャベスとしては、時期的には間に合ったといえるが、出場できるかはドーフィネ次第。オリカ・スコットは、総合エースの1人であるサイモン・イェーツ(イギリス)のレースプログラムを変更し、ツールで総合上位を目指す方向を固めている。ドーフィネではチャベスとサイモン・イェーツのダブルエース体制を敷いているが、ツールまで継続されるかは未知数。

ジロ・デ・イタリアを欠場したファビオ・アール。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネの走り次第でツール・ド・フランス出場を決める見通し Photo: Yuzuru SUNADA

 同じく、アールもけがによる失意のジロ欠場から戦列に戻ったが、ツール出場についてははっきりしていない。やはりドーフィネ次第といったところだが、アスタナ プロチームはヤコブ・フルサング(デンマーク)に総合を狙わせる方針だったことから、方向性を変えてまでアールをメンバー入りさせるかも見もの。かたやフルサングは、その扱いいかんでは来シーズンの移籍も辞さない構え。ストーブリーグにも影響する可能性が出てきた。

ジロ・デ・イタリア第9ステージでの落車負傷で大会を去ったゲラント・トーマスだが、ツール・ド・フランス出場に明るい兆しが見えてきている Photo: Yuzuru SUNADA

 ジロでは総合優勝を目指しながら、第9ステージでの落車で負傷したゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)。その後、第13ステージで大会を去ったが、こちらもトレーニングを再開し、ツールのメンバー入りをチームが望んでいる。

 絶対的エースであるフルームを擁し、またけが明けということもあって「プランB」とするのは難しいものの、レースができる状態にあれば大きな戦力となるだろう。順調にトレーニングを積むことができれば、ツールの前にルート・デュ・スッドで脚試しをする見通しだ。

 本来であれば、それぞれのチームでエース、または同等の立場にある選手たちだけに、ツールを走ることができるかどうかはチームの戦術にも大きくかかわってくる。彼らが各チームにとって、「最後の1ピース」となるか。選手本人・チームともに決断の時が迫りつつある。

今週の爆走ライダー−ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 フランスのファンや関係者が期待を寄せる25歳のスプリンターにとって、キャリアの分岐点になるであろう日々を送っている。

5月にチーム離脱の意向を発表したブライアン・コカール。長年ともにしたチームとの決別の意思を固めた Photo: Yuzuru SUNADA

 そのきっかけは5月。今シーズン限りでのチーム離脱を自ら発表。昨今のプロトンでは異例ともいえる行動は、スポンサーやチーム首脳陣の許可を得て行ったものだったとはいえ、シーズン最大の目標となるはずのツール出場に暗雲が立ち込める大きな要因となっている。

 現在、クリテリウム・デュ・ドーフィネに出場こそしているものの、ツールのメンバー入りは約束されていない。もっとも、「契約延長をしない限り、ツールのメンバー入りは厳しい」とチームからの通告を受けているという。

 それでも譲れない思いがあった。「UCIワールドツアーを主戦場にしたい」。UCIプロコンチネンタルチームであるディレクトエネルジーに所属している以上、それはなかなか叶わない。つまりは、UCIワールドチームへの移籍を目指すということだ。

 苦しい立場にあるが、いまのチームには感謝しているという。下部組織で育成を受けていた頃も含めると、長年チームとともに歩んできただけに「大きなファミリーのようなもの」と述べる。もし本当にツールのメンバーから外されても、チームの意向を尊重する心積もりだ。

 実力からして、トップチームへの移籍は大いに可能だろう。それ以上に、ファンや関係者も気がかりな問題は、コカールがツールに出られるかどうか。彼いわく、「ツールまでによい結果が残せれば、出場はできるかもしれないね」。どうやら、ドーフィネでアピールする必要がありそうだ。

 ツールのスプリント争いに彼がいないのは、大きな損失だ。さまざまな事情はあれど、あとはチームの公正な判断にゆだねることとなる。

チームの意向でツール・ド・フランスに出場できない可能性が高まっているブライアン・コカール。状況を打破すべく、勝利を手にしたい Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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