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栗村修の“輪”生相談<102>20代男性「日本のレースをさらに観客に楽しんでもらうためにはどうすれば?」

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 先日地元で第1回ツールドとちぎが開催されました。初の本州ラインレースで、かつ地元ということで大変楽しませていただきました。一方で、ヨーロッパでのレースと比べるとまだまだ良くできる所もたくさん見受けられました。特に、レースの放送については、ゴールまでの残りの距離、逃げと集団との時間差を表示してほしい、などレースを楽しませてもらっている身分でありながら思ってしまいました。

 そこで質問なのでが、日本のレースをさらに観客の人(レース会場にいる人やテレビ、PCで見ている人)に楽しんでもらうためにはどのような方法がありますか。非常に抽象的なのですが、TOJディレクターである栗村さんにお聞きしたいです。

(20代男性)

 「ツール・ド・とちぎ」は、近代では本州初のラインレース型ステージレースということで、注目されましたね。僕も現地で3日間、見ていました。もちろん細かい改善点はあるでしょうが、初チャレンジとしては大成功だったと感じています。やりきった栃木県はすごいですね。

 さて、ヨーロッパのレースと比べると、とありますが、どのレースと比べるかが重要です。ツール・ド・フランスと比べるならば、お客さん向けのサービスはまだまだと言わざるを得ません。しかしヨーロッパの同クラス(つまりUCIの2クラス)のレースと比べると、ツール・ド・とちぎの観客へのサービスはすでに世界トップクラスでしょう。

 ゴール地点に大型ビジョンがあり、解説もあり、賑わいイベントもあり、さらには食べ物や飲み物も充実している。ここまで手が行き届いた2クラスのレースというのはそうはないと思いますよ。ライブストリーミングも、初めてとしてはかなりのものだったのではないでしょうか。

 ですがもちろん、改善点を探すことは大切ですよね。そもそも、観客を楽しませる工夫という点では、ヨーロッパでも自転車ロードレースはまだまだ未成熟です。おっしゃるように、やれることはたくさんあるはずです。

今年初開催された「ツール・ド・とちぎ」 Photo: Shusaku MATSUO

 あくまで提案ですが、データ面はもっと充実させられると思うんです。リザルトを見るだけじゃレースの本質がわからないのが自転車ロードレース。専門家ですらなかなか展開というか真実が見えてこないんですよ。

 たとえば、選手たちのパワーデータを公開して、逃げ集団とメイン集団ではどのくらいの出力差があったのか確かめるとか、一部で行われているように、先頭を引いた時間を選手ごとに示すとか。ゴール前のパワーも気になりますよね。

 こういう、毎レース単位でのデータも充実させたいですが、もっと長期的なデータも弱い気がします。野球なら打率や防御率が算出されますが、同じことができないでしょうか。スプリント率、勝利率、逃げ率、逃げ切り率、ヒルクライム率…いろいろありそうです。

 そういうデータがあると、見る人がより一層楽しめると思います。どのチームがどのくらい、どんな仕事をしたか。次のレースでは、ひいきの選手やチームはどういう戦略で来るか。ほら、楽しそうじゃないですか。

 まだまだ未成熟な自転車ロードレースですが、表現を変えると、もっと楽しめる可能性があるということです。元来日本人はデータ収集が得意なはずなので、そういう楽しみ方を開拓する時代が来ると、僕は信じています。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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