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産経WEST【経済裏読み】より老舗部品メーカー「NTN」をTOJスポンサーに導いた「あのブランド」の存在

by 上野嘉之 / Yoshiyuki KOZUKE
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 「ツール・ド・フランス」に代表される自転車ロードレースは、本場ヨーロッパでは高い人気を誇るが、日本での認知度はまだまだ低い。そんな中、創業100年を迎える老舗の機械部品メーカー、NTN(大阪市)が今年、国内ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」(TOJ)の冠スポンサーに就いた。消費者向け製品を手がけていない同社が、なぜマイナーな自転車競技の支援に乗り出すのか?その陰には、航空・宇宙産業にも活用されるNTNの超高性能部品の存在があった。

白熱したレースが繰り広げられた昨年の「ツアー・オブ・ジャパン」東京ステージのゴールシーン =2016年6月5日、東京・大井埠頭 photo: Kenta SAWANO

ベアリングの世界的大手

 「来年、100年を迎えるにあたり、どんな社会貢献ができるか考えていた」

 そう語るのは、NTNの創業100周年事業推進プロジェクトリーダー、井口耕平さん。同社は自転車レースとは無縁だったが、昨夏に社外から協賛の提案があったという。社内で議論した結果、自転車はエコの象徴であり、NTNが目指す究極のエコ技術や環境保護にも通じる―として前向きに検討を進めていった。

「ツアー・オブ・ジャパン」の冠スポンサーとしての取り組みを語るNTN100周年事業推進プロジェクトリーダー、井口耕平さん =5月12日、大阪市西区のNTN本社 photo: Yoshiyuki KOZUKE

 NTNは、回転軸の軸受(ベアリング)を主力商品とする精密機器メーカーだ。自動車のハブベアリングのシェアは世界1位、ドライブシャフトは世界2位という大手で、連結売上高は6833億円(平成29年3月期)。その製品は自動車、鉄道をはじめ世界中のあらゆる機械に採用されている。

 自転車に用いるベアリングも、さまざまなメーカーに供給してきた。ただ、会社が大きいが故に、市場が小さな自転車関連部品は主力製品とまではいえない。

 しかし100周年記念事業に向けた準備の中で、同社の部品を使った自転車パーツが「サイクリストの間ですごい人気を呼んでいることを知った」(井口さん)という。

航空・宇宙技術を自転車に

 NTNの事業領域には航空・宇宙産業向けもある。超高速・超高負荷で回転するジェットエンジンの軸受けなどを手がけ、精度をミクロン単位まで突き詰めた製品を生産・供給している。

 そんなNTN製の高規格ベアリングからジェットエンジン部品や超精密機械部品を製造している近藤機械製作所(愛知県蟹江町)が、高い技術力を生かして5年前、自転車競技用ホイールのブランド「GOKISO(ゴキソ)」を立ち上げた。

 ゴキソのホイールはNTN製の特注ベアリングの性能を生かすため、精度や強度を徹底的に高めて回転抵抗を低減し、驚異的ななめらかさを実現した。その性能は「回り始めるといつまでも回っている」と、またたく間にサイクリストの間で評判になった。

ゴキソのホイールを用いて「ツール・ド・おきなわ」市民210kmで優勝した高岡亮寛選手 =2016年11月13日

 まもなくゴキソのホイールを国内の有力レーサーたちが使い始めた。その結果、1日の走行距離が国内最長の210kmに及ぶ「ツール・ド・おきなわ」や、山岳ヒルクライム日本一を決める「マウンテンサイクリングin乗鞍」といったビッグレースで数々の勝利を積み重ねている。

 自社のベアリング製品の活躍ぶりを知ったNTNは、「自転車事業は当社と親和性が高い」と判断。2020年の東京五輪を視野に、複数年にわたって自転車ロードレースをサポートしていくことを検討している。

キャラバンカーでアピール

 ツアー・オブ・ジャパンは、大阪から東京まで毎日場所を移しながら競技を続けるステージレースだ。20年目を迎える今年の大会は、5月21日の第1ステージ(堺市)で幕を開け、28日までの8日間に京都(けいはんな学研都市)、三重(いなべ市)、岐阜(美濃市)、長野(飯田市)、静岡(小山町、伊豆市)、東京(千代田区~品川区)と横断する形で、計743.75kmを走破する。

 NTNはレース期間中、各地の会場に、同社の技術サービスカーをキャラバンカーに改装して派遣し、大会を盛り上げる。その取り組みの中心は、子供たちを対象とする「回る学校」。摩擦のメカニズムや回転の特性、省エネルギーなどを体験しながら学べる講座を連日開催し、参加者には特製のお菓子もプレゼントする。

 そしてもう1つの目玉となるのが、ゴキソ製ホイールの展示とデモンストレーションだ。究極の回転性能を誇る自転車用ホイールの実物をアピールし、レース観戦に訪れたサイクリストたちにNTNの知られざる技術力を伝える。

NTNが「ツアー・オブ・ジャパン」の会場に派遣するキャラバンカーの展示内容。右半分で、同社製のベアリングを採用する超高性能ホイール「ゴキソ」の製品をアピールする photo: Yoshiyuki KOZUKE

 井口さんは「日本の自転車人口は7500万人と言われるが、エコを追求するこれからの時代、まだ増えていくだろう」と指摘。さらに「(日本では)自転車競技は他のスポーツよりも伸びしろが大きい。東京五輪の開催もあり、将来性を感じている」と期待する。

 NTNは今回の冠スポンサーとしての協賛を機に、自転車競技のすそ野拡大に貢献していきたい考えで、社内では「趣味の自転車部を作ろう」という声も上がっている。ゆくゆくは、ツアー・オブ・ジャパンが本場のツール・ド・フランスのように盛り上がってほしい―。大きな夢を乗せて、キャラバンカーが出発する。

産経WESTより)

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