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産経新聞関西版【関西+BIZ】より新規事業、しまなみ快走 「アンデックス」のスポーツ自転車

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 【広島発】広島県尾道市の塗装設備を手掛けるものづくり企業が、社内ベンチャーとして始めたスポーツ自転車事業が、中小企業の異分野展開のモデルケースとして注目を集めている。成功の鍵となったのは、機能とデザインへのこだわりと量より質を重視した戦略。同市を起点に自転車道を備えた瀬戸内しまなみ海道の人気の高まりも追い風に、企業ブランドの発信機能、人材の採用、地域との連携といったさまざまな面で波及効果が生まれている。

社員提案きっかけ

アンデックスのスポーツ自転車とプロジェクトリーダーの高橋要一さん。事業は徐々に加速している(若狭弘撮影)

 この企業は昭和46年設立の塗装設備製造企業、アンデックス(田邊耕造社長)。自動車の補修塗装設備で国内トップシェアを維持し、航空機や鉄道車両向け塗装設備も手掛けている。豊富な特許と実用新案を保持し、得意分野を伸ばすことで事業を拡大してきた。堅実経営を重視するこのものづくり企業が、本業とは全く関係のないスポーツ自転車事業に乗り出すきっかけになったのは、一人の社員の提案だった。

 提案したのは工業デザイナーとして入社し、自転車に深い造詣を持つ高橋要一さん。プロジェクトがスタートしたのは7年前。社員食堂での昼食中、田邊社長に直談判したところ、その場で快諾を得た。自らデザインした自転車を生み出すことは子供のころからの夢だったという。「社員のやる気を尊重してくれる社風だからこそ挑戦させてくれたのだと思います。それだけに会社のブランドを具現化できる製品に仕上げたかった」と高橋さんは振り返る。

機能とデザインで

アンデックス本社は、瀬戸内しまなみ海道の広島側の入口、広島県尾道市に位置する

 なにもかも手探りのスタートだったが勝算はあった。国内のスポーツ自転車市場のシェアは、イタリア、ドイツ、スペインといった欧州や台湾のメーカーが大半を占めており、国内メーカーの存在感は薄い。だからこそ、市場開拓の余地があり、機能とデザインにこだわった製品を開発すれば、後発でも勝負できるのではないかと考えた。自転車愛好家に人気があり、地元自治体が振興に力を入れるしまなみ海道との相乗効果も期待できた。設計からスタートし、試行錯誤しながら試作品が完成したのは1年半後。最初に開発したのは、ミニベロと呼ばれるスタイリッシュな小径型の自転車だ。デザインはもちろん、しまなみ海道を走破できる安定性と、狭い路地が多い尾道の市街地を自在に走り回ることができる機動性の両立を図った。

 もの静かな瀬戸内海をイメージした「凪」(なぎ)のブランド名で、平成23年から販売したところ、ツール・ド・フランスの元チャンピオンから評価を受けるなど自転車愛好家の間で評判が高まった。販売台数を追わず、手間はかかるが1台ずつ納得がいく製品に仕上げてから出荷する事業スタイルが自転車ファンの心をつかんだ。

カープとコラボも

 事業は徐々に加速している。価格帯は、10万円以下から30万円台まで幅広くそろえ、ミニベロ以外にもスタンダードタイプや女性用、プロ野球広島カープとのコラボレーションなど種類を増やしている。累計販売台数は千台を超え、レンタサイクルでの採用や自転車を軸にした地元企業との連携も広がっている。

アンデックスの田邊耕造社長(若狭弘撮影)

 田邊社長は「夢を追求する社員のやる気を大事にしたかった。自転車の品質へのこだわりが新しい企業イメージを生み出し、人材の募集や地域への貢献も図りやすくなるなど大きな効果が生まれている。新しい自転車文化を尾道市から発信していきたい」と夢をふくらませる。

 新事業の開拓を模索する中小企業は全国で増加傾向にある。中小企業の支援に取り組む独立行政法人、中小企業基盤整備機構近畿本部の瀬戸口強一経営支援部長は、新事業を軌道に乗せるポイントについて「本業が安定していることはもちろん、明確なビジョンを持って長期的視野で取り組むことが大事。また、地域資源との組み合わせや独自の視点で他社との差別化に取り組むことが求められる」と指摘している。

■瀬戸内しまなみ海道

 3ルートある本州四国連絡道路のうち広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ全長60kmの自動車道。向島、因島、生口島、大三島などをつなぐ大橋には自動車道と併設して自転車・歩行車道が整備されている。

産経新聞・関西版より)

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