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キャニオン初! 女性向けラインナップ取材記<後編>サイズ“3XS”は体の下に全てが収まる安心感 650Bホイールがフィットするロードを試乗

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 ドイツのバイクブランド「Canyon」(キャニオン)が5月4日、同ブランド初の女性バイクを発表した。注目のラインナップは、「Ultimate(アルティメット) WMN CF SLX Disc」「Endurace(エンデュレース) WMN CF SL Disc」「Endurace WMN AL Disc」の3種類。発表に先立ちドイツ・コブレンツで4月20日、21日、女性ジャーナリスト向けの製品発表と試走イベントが催され、筆者も参加してきた。全モデルディスクブレーキで650Bホイールを採用するなど女性のニーズに寄り添ったバイクの全貌と、計64kmの試走の様子をレポートする。

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キャニオン初の女性バイクを試乗した。写真はプロレース仕様の「Ultimate WMN CF SLX」、サイズは3XSで650Bホイールが配されている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

快適かつ“見た目のバランス”を重要視

 試走前日に行われた製品発表では、元MTBライダーで3年前からキャニオンの女性バイクのプロダクト・マネジャー、カトリン・ノイマンさんをはじめとする開発チームが説明を担当した。キャニオンが女性バイクを手がけるに至ったきっかけについて、女性が求めるデザイン・構造のバイクがいままで存在しなかったと強調。「ただ快適性を求めるだけでなく見た目にもバランスよくするには?」「男性モデルや他社の女性モデルとどう違いを打ち出すか?」といったアプローチで開発を進めていったという。

4月20日にコブレンツで行われた女性ジャーナリスト向けの製品発表の様子 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
プロダクト・マネジャー、カトリン・ノイマンさんは筆者らの試乗に同行した Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 とはいえ女性バイクプロジェクトが始まった当初、ノイマンさんは「最初はどうしたらいいか分からなくて、女性ライダーへ聞いて回った」と明かした。そういった草の根的な作業のほかに、女子ロードレースのプロロードレースチーム「CANYON//SRAM RACING」(キャニオン・スラム レーシング)の選手からのフィードバックや、6万人分のカスタマーデータ分析結果を活用できるのがキャニオンの強みでもある。

 分析結果から導き出されたのは、「これまでバイクの製造業において『女性の腕は長い』と言われてきた定説は誤りで、胴体サイズに相応してより短い」という“新事実”や、胴体幅に伴い肩幅が狭い、骨盤の柔軟性に優れる、脚の長さに性差はほとんどないといった特徴。当然、身長・体重は男性よりも小さな数値となる。またエアロダイナミクスにおいても風洞実験を重ねて最適な形状を探った。

快適性を高める弓状のシートチューブ

 こうして生み出された女性バイクの最大のポイントは、3XS(スリーエックスエス)サイズの展開と650B(584mm)ホイールの採用。650Bホイールが備わるのは日本人女性の多くが当てはまるであろう身長152cm〜166cmの3XS・2XSで、対象身長166cm〜186cmのXS・S・Mサイズは700Cホイールとなる。ギアはすべてのバイクでリア11-32なのに対し、フロントは3XS・2XSサイズで52/36、XS・S・Mサイズは50/34となる。

「Ultimate WMN CF SLX Disc」のトップモデル「9.0 TEAM CSR」はプロロードレースチーム「CANYON//SRAM RACING」と同デザイン。写真は3XSでホイールサイズは650B Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 さらに650Bホイールの3XS・2XSでは、ヘッドチューブ角もわずかに垂直寄りに変更。ホイールベース(前後ホイールの中心から中心の距離)を狭めることで、バイクのコントロール性能を高めキビキビとしたハンドリングを可能にした。ノイマンさんは、「キャニオン・スラム レーシングの小柄なライダーから、現存するバイクではコーナーが厳しいと聞いていた」として、フィードバックを生かし、より快適なバイクを実現したことに自信をみせた。

 そのほかの注目すべき点は、エンデュレース WMN CF SL Discのシートポストからシートチューブにかけての弓状のシェイプ。「究極の快適性を追求した結果」生まれたという形状は、15%の快適性向上に貢献している。開発チームは「大きな石畳でもひるまず走行して欲しい」と語りかけ、またブランドマネージャーのミレーナ・ヴェーバーさんは、「数値のことはわからないけれど、乗った実感として“完ぺき!”と思えたバイク」とコメントした。

「Endurace WMN CF SL Disc」を「完ぺきなバイク」と表現するブランドマネージャーのミレーナ・ヴェーバーさん。身長160cmと欧州では小柄な女性だ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
シートポストからシートチューブにかけて弓状のシェイプが特徴的な「Endurace WMN CF SL Disc」 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 一方のアルティメット WMN CF SLX Discは、プロレース仕様。シートポストはクランプ内蔵、ハンドルバーコックピットのヘッドステム部分は長く設計され前傾での走行姿勢を支えるジオメトリーだ。「ツアー・オブ・カリフォルニア」(5月11日〜14日)での実戦デビューを前にトレーニングで使用したというティファニー・クロムウェル選手(オーストラリア)は、「乗ってみて感心した。とにかくいい感じなんです。それに、(全バイク共通装備の)ディスクブレーキの安心感がとてつもない」と絶賛した。

トップモデル「Ultimate WMN CF SLX Disc」をはじめ全ラインナップでディスクブレーキを採用 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
エルゴノミクスが計算されたハンドルバーコックピットは女性も握りやすい大きさ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

驚くべき快適性 恋バナもしつつ試乗

試乗スタートに備える女性ジャーナリストたち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 いよいよ試乗時間となり、筆者の1台目はまずエンデュレース WMN CF SL Disc。身長159cmの筆者は、3XSをあてがわれた。実はキャニオン社内やチームに3XS対象身長のライダーがおらず、このサイズに乗るのは筆者が初めてとのこと。関係者からの期待の眼差しを感じながらバイクにまたがりペダルを踏み込んでみると、「?!」――なんだろう、この感覚。本当に小さいのだ。それでいて心地よくフィットしている。全てがコンパクト腕の下に収まっているかんじ、とでも言おうか。安心感があることこの上ない。

 見た目のバランスもとてもかっこいい。筆者サイズのライダーだと、シートポストを下げられるまで下げてポジションを合わせる場面によく遭遇する。特にこういった新製品の試乗では無理やり“サイズを合わせ”て乗ることも少なくない。それがエンデュレース WMN CF SL Discは、シートポストが美しくスッと伸び、ハンドルバーコックピットを高く調節するためのスペーサーまでセットされているのに筆者によくフィットした。もちろん650Bホイールは小ぶりなフレームサイズに違和感なく馴染んでいた。

筆者が試乗した「Endurace WMN CF SL Disc」の3XSサイズ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
シートポストを充分に長くした状態で試乗できることに感激 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
「Endurace WMN CF SL Disc」の弓状のシートチューブは裏から見るとよくわかる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
3XS・2XSサイズのフロントギアは52/36 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
「Endurace WMN CF SL Disc」のステム一体型ハンドルバー Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
試乗スタートエリアにラファの「モバイルサイクルクラブ」が設置され淹れたてエスプレッソが振る舞われた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 1回目のライドは、およそ34kmのコース。最初のライドということもあってか余裕もあり、平坦路で2列巡航が続く際は、バイクに乗った感想や仕事についておしゃべりしながら脚を慣らした。自国(地元)のバイクカルチャーやライディングスタイルといった話題に混じって、恋愛話が飛び出すのが女性らしいところ。ワイン畑や菜の花が広がる風景に時折笑顔になりながら、始終快適に走行することができた。

「Endurace WMN CF SL Disc」のサイズ比較。筆者は最小サイズとなる3XSで、右の女性は最大サイズとなるM。ホイール径の違いにも注目 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

ディスクブレーキの恩恵を実感

順調に速度を保ち隊列を成すジャーナリストとキャニオンスタッフたち Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 昼食休憩を挟んで2回目の試走、およそ30kmのコースへ。本当のところ、エンデュレース WMN CF SL
Discが驚くべき快適性を備えていたことには、次にアルティメット WMN CF SLX Discに乗ってみて初めて気付かされた。アルティメット WMN CF SLX Discもプロ仕様なりの快適性は高めているはずだが、路面からの衝撃がダイレクトに伝わってくるようで少々の路面の荒れで「うっ」とくる。また筆者の普段乗っている愛車が他社の女性ロングライドモデルとあってか、レーシーなアルティメット WMN CF SLX Discでは後半にはハンドルバーを握る手・腕、サドル、腰が徐々に痛みを感じ始めた。

 ただし、上りで踏み込んだ際は確かに車体が素直に動いてくれる感じを受けた。3XSサイズであること、小柄な体に合ったジオメトリーであることのメリットもあったのだろうか。「バイクに乗せられている感」はなく、筆者が坂でめげそうになる度、バイク自体に励まされた。

「Ultimate WMN CF SLX Disc」のコラムスペーサーは27.5mm分あり、650Bホイール採用により、十分にサドルーハンドル落差を確保できる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
「Ultimate WMN CF SLX Disc」はシートクランプ内蔵(外に見えているリングはシートポストとフレームの間のスリーブ) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
先頭集団は上り坂に入っても減速することなう美しくまとまったまま走り去っていった Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
試乗中ひと休みの場面 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
遅れる筆者がスタッフに激写されているところ。「Ultimate WMN CF SLX」に乗り始めて15km、めげそうになるとバイクに励まされる感じだった Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 幅が狭くうねった道が続く下りでは、度々クルマが現れる上にハイキングの人たちが歩いているなどテクニカル。そんな下りにあっても、「ブレーキが間に合わない」というシチュエーションは一切なかった。下りでは基本的のブレーキに手をかけている状態だが、前出の筆者の愛車であれば下りきる頃にはブレーキレバーを握る手がヘトヘトに疲れているのが常だ。アルティメット WMN CF SLX Discのディスクブレーキではそういった疲労はなく、「手がきつくなってきたかな、そろそろ(ブレーキがかけやすい)下ハンドルも持ってみようかな」と思った時にはすでにふもとだった。

遅れをとりつつ最後まで楽しく走りきったメンバーとコブレンツの名所「ドイチェス・エック」(ドイツの角、の意)で記念撮影 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
3XSサイズでは、ダウンチューブに設置したボトルホルダーのボトル出し入れの際トップチューブが干渉して少々難 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
650Bホイールサイズ採用により、タイヤとシューズつま先は乗車時接触しない距離が確保されている。(停車時には触れ合う) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

◇         ◇

スラムの担当者が電動コンポーネント「RED eTap」の操作方法を解説 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 なお、今回試乗をしたエンデュレース WMN CF SL Disc、アルティメット WMN CF SLX Disc共に、スラムの電動コンポーネント「RED eTap」を備えた最上位モデルだった。シマノの電動コンポーネント「Di2」とは異なる操作性ではあるものの、直感的で分かりやすく、ギア変更が極めてラクだったことは言うまでもない。

各モデルの価格(税抜、※配送費用別途)

Ultimate WMN CF SLX Disc 9.0 Team CSR (SRAM Red eTap HRD) 679,000円
Ultimate WMN CF SLX Disc 8.0 Di2 (Shimano Ultegra Di2)479,000円
Ultimate WMN CF SLX Disc 8.0 (Shimano Ultegra)379,000円
Ultimate WMN CF SLX Disc 8.0 Team CSR (SRAM Force22) 329,000円

Endurace WMN CF SL Disc 9.0 LTD (SRAM Red eTap HRD) 649,000円
Endurace WMN CF SL Disc 9.0 SL (SRAM Red eTap HRD) 519,000円
Endurace WMN CF SL Disc 8.0 (Shimano Ultegra) 279,000円
Endurace WMN CF SL Disc 7.0 (Shimano 105) 219,000円

Endurace WMN AL Disc 8.0 (Shimano Ultegra) 189,000円
Endurace WMN AL Disc 7.0 (Shimano 105) 165,000円

シュルテ柄沢亜希シュルテ柄沢 亜希(しゅるて・からさわ・あき)

1982年生まれ、ドイツ在住。東京を拠点に4年間記者生活を送った後、フリーランスへ。書くこと、レポートすることが生きがい。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をドイツ・ハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。ブログ「ドイツのにほんじん」ほか、多媒体にて執筆中。

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