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NHK自転車情報番組の奮闘ぶりに共感の声結成2年目の「チャリダー★坂バカ女子部」 四人四色のデコボコ進化論

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 『Cyclist』の人気連載「坂バカ奮闘記」でもおなじみ、猪野学さんが監督を務めるNHK BS1『チャリダー☆』の「坂バカ女子部」。「坂に情熱を燃やす女性ヒルクライマー」を募集するオーディションで選ばれた4人の女性たちだ。厳しい選抜を勝ち抜いた剛脚揃いかと思いきや、表彰台経験者のリーダーを除けば、アウター縛りのママさんクライマー、坂にトラウマをもつ泣き虫ビギナー、運動好きな女性芸人となかなかの凸凹ぶり。昨年の榛名山ヒルクライムでのデビュー戦からひたすら坂に挑み続けた1年。喜怒哀楽を乗り越え、女性サイクリストとして成長した彼女たちが自転車の魅力をどう感じているのかを聞いてみた。

『チャリダー★』の「坂バカ女子部」の皆さん(写真左からリーダーの大宅陽子さん、ママさんクライマーの三谷尚子さん、泣き虫ビギナーの佐藤綾衣さん、お笑い芸人の牧野ステテコさん) Photo: Naoi HIRASAWA

『チャリダー★』は“ガチ”なドキュメンタリー番組

─坂バカ女子部の結成から1年が経ちましたが、振り返ってみていかがですか?

三谷尚子 短かいように感じるけど、けっこう大変だったよね。とくにテコさん(牧野)とぎーちゃん(佐藤)は。

佐藤綾衣(あやぎ) よくここまで来られたなぁというのが正直なところです。私は事務所の紹介でオーディションを受けたんですけど、坂が苦手だから受かりたい気持ちと受かりたくない気持ちの間で複雑な心境で。だから合格したときは「受かっちゃったなー」っていうのが本音でした(笑)。でも苦手なことを克服するのもいい経験かなって。「坂が好き」なんて嘘ついても仕方ないし、そこは素で挑みました。自転車の番組は以前ちょっとだけ出たことがあって少し経験がある気でいたんですけど、まったく違いました。

数々のシーンを思い出して、本気で顔を曇らせる2人 Photo: Naoi HIRASAWA

牧野ステテコ 求められていることが想像以上に“ガチ”で。「課題クリアできないとクビだ」っていわれ続けてました(笑)。いま思うとそんな本気でもないんですけど、当時はスタッフさんもそうやって追い込んで我々を本気にさせていたんだと思います。

─正直やめたいと思ったことは?

佐藤 たくさんあります!冬に皆で走った検定試験の160kmライド(※)はとくにきつかった!初めてあんなに心折れたかも、っていうくらい本当にしんどかった…。

(※メンバー4人が「坂バカ検定4級」の160kmライドに挑戦。伊豆半島を縦断、天城峠越えする厳しいコースを制限時間<8時間>内で走り切るという課題)

「チャリダー★」検定4級試験ロケの朝。スタート前のメンバーと猪野監督 ©NHK/テレコムスタッフ

全員 あれはきつかったね~。

三谷 テコさんは道間違えて160km以上走ったもんね(笑)。

牧野 「私何やってんだろう」って気持ちになりました(笑)。ここまで追い込まなきゃいけないんだっけ?って。

佐藤綾衣(あやぎ)さん。通称「ぎーちゃん」。上り坂にトラウマを抱えるビギナー。辛くなると嗚咽が出るが、苦手なことを克服しようとする頑張り屋な一面も Photo: Naoi HIRASAWA

佐藤 実はそのへんで少しやる気を失っていて、中途半端な気持ちで臨んだんです。そしたら本当につらくって!でも、そのときに「苦手なことから避けちゃだめだー」って。人間て心が完全に折れるとちょっとずつ回復していくみたいで、もうちょっと練習しておけばよかったと思った瞬間に「後悔してるならちゃんと走ろう」って、逆に気持ちが吹っ切れました。

牧野 坂を克服したってこと?

佐藤 いや、そこはまだ…(苦笑)。でも坂が嫌いな人って本当に多いみたいで、たまにロケの様子をSNSにアップすると「私も坂嫌いだけど、がんばろうと思いました」とか、「私もめっちゃ遅いですけど走ります」とかメッセージが送られてきます。最近は自分も本気になったせいか、そういう言葉をもらうと一緒に頑張ろうって気になります。

「坂バカ検定」のロケを思い出して、思わず苦笑いするメンバー Photo: Naoi HIRASAWA

大宅 普段から手を抜かないと思ってましたが、あのときは本当にごまかしのないロケだと思いました。移動だって途中でクルマに乗せることもないし、必要以上に助けるわけでもない。『チャリダー★』って本当に自転車のドキュメンタリー番組。だからこそ、観てくれている人に伝わるものがあるのかもしれません。

─猪野監督も厳しいんですか?

佐藤 設定だとスパルタ監督らしいですけど、猪野さんはすごく優しい。こんなこと言ったらキャラ崩壊かもしれないけれど、すごくみんなを気遣ってくれます。

牧野 猪野さんは坂バカとしてはすごい人けど、監督としては本当に優しいすね。

─でも独身なんですよね?

牧野 どこか変なところがあるんじゃないすかね。

大宅 求める理想が高いんじゃないですか。

三谷 恋愛対象が女性じゃないとか?

「優しいけどM」な猪野監督 ©NHK/テレコムスタッフ

大宅 彼女と一緒に自転車乗ってても夢中になったら彼女を置いていきそうですよね。初めて榛名山ヒルクライムの試走に行ったときも、「あれ?いない」と思ったら、坂を“おかわり”しててびっくりしました(笑)。「坂バカ俳優」はキャラだけど中身の「坂バカ」は素です(キッパリ)。
牧野 あれだけいっぱい走らされて、しかも褒めてもらえなくて、普通の俳優さんだったら絶対いやですよね。

大宅 Mなのかな。

三谷・佐藤・牧野 Mだよね(バッサリ)。

「勝利」に目覚めた三谷尚子さん

─4人の中で一番変わった人は?

佐藤・牧野 三谷さん!

大宅 三谷さんは女子部結成当初からアウター縛り(※)で上ったりしていて周囲から「伸びしろしかない」といわれていたんですが、この1年間で体型とフォームを改善したらパフォーマンスが大幅に変わりました。

※フロントの変速ギアをアウター側(重いほう)に限定して走ること

─なぜ最初はアウター縛りだったんですか?

三谷 楽しく走るための一つの方法でやってたんです。パワーで坂をねじ伏せるっていうのが楽しくて。たまにダンシング縛り(※)とかもしてました。

佐藤 すごい!日々挑戦!

※ひたすら立ち漕ぎで坂を上ること

乗鞍で初めて大宅陽子さんを抜き、恍惚の表情でゴールした三谷尚子さん。このときの勝利が彼女を変えた ©NHK/テレコムスタッフ

三谷 いまでも速く走ること自体が楽しいというわけではないんですけど、昨年の乗鞍で大宅さんに勝てたことが転機になりました。前より「勝ちたい」っていう気持ちが強くなった。いまは練習して帰ってガーミンのデータ見るのが楽しみです(笑)。

佐藤・牧野 えーーーーーーっ(爆笑)。

大宅 ちょっとわかる気もする…(笑)。

─新しいステージに行きましたね。

佐藤 三谷さんには1カ月の練習メニューがあって、これがやばいんです。

大宅 プロの合宿トレーニングみたいだよね。

佐藤 みんなドン引き。何やってんの?みたいな(笑)。

大宅 ときどきメニューに「バンク」って言葉も入っている。

三谷尚子さん。アウター縛りという妙な“遊び方”をしていたパワーサイクリストだったが、勝つことに目覚めて以来そのベクトルはアスリート路線へ?  Photo: Naoi HIRASAWA

三谷 ペダリングの矯正を始めて、その結果どうなったかを確認しようと思って競輪場のバンクを走ったらそれが楽しくて。いまは週1でバンクに通っています。バンクは風を切って走れるから楽しいんですよ。教えてくれる人が回りにたくさんいて、レースに出させてもらったりとにかく環境が最高。強くなれるかは、あとは自分の努力次第だと思って頑張ってます。

ぎーちゃんがアスリートフードマイスターに?

─牧野さんと佐藤さんは、自転車を始めて生活で何か変わったことは?

牧野ステテコさん。通称「テコさん」。芸人枠(?)で合格した「女子部のゆるきゃら」。登山が好きだったり体幹が強かったり、実はポテンシャル高め Photo: Naoi HIRASAWA

牧野 いまは週3で自転車かローラーに乗っていて、それが習慣になりつつあるっす。暇なのにやらないと気持ち悪いなーとか感じるようになりました。

大宅・三谷・佐藤 おぉ~~~♪

牧野 でももともと運動好きなので、全然自分の性格には合ってるのかも。努力というよりは、どっちかというと私は楽しめてると思います。機材のことはまだあまりわからないけど。

─ステテコさんは土井雪広選手にペダリングをほめられていましたね。

牧野 うれしいっす。自分ではあまりわからないんだけど。

大宅 カメラまわっていないところでも「ステテコさんみたいに背中を使うんだよ」っていわれたよ。

「チャリダー★」検定4級試験で土井雪広選手にペダリングをほめられた牧野ステテコさん。本人は漕ぐのにただただ必死 ©NHK/テレコムスタッフ

佐藤 感覚がちょっと違うよね。たぶん天才なんだと思う。

大宅 ストイックに求めてるわけじゃないけど、自然とできてる。

牧野 竹谷先生(“ドクター竹谷”こと竹谷賢二さん)が言ってることをなんとなく噛み砕くと、力でねじ伏せない、体のどこかを使えば楽に漕げるんだなって思って。で「楽に漕ぎたい!」っていう気持ちが自然とそうさせてるんだと思う。皆より歳とってるんで(笑)。工夫です、工夫。

佐藤 私は体力なかったり補給が弱かったり、自分の欠点が食にあるのかなぁと思って、最近は食事に興味をもち始めました。それが転じて、最近「アスリートフードマイスター」の資格取得に向けて勉強を始めたんです。

大宅 なにそれ、知りたい!

自転車を始めて体と食の関係に目覚めたという佐藤綾衣さん(写真右から2番目) Photo: Naoi HIRASAWA

佐藤 番組で腰痛特集をやったとき、専門家の先生が「なぜ前もってわからなかったんだ」といったのに対して「教えてくれる人誰もいなかった」っていうやりとりがあったんです。あれを聞いて「確かに」と思った。勉強を始めてみると栄養素の役割も間違って覚えていたりして、それは食でもいえることだって思いました。

大宅 私もそうだったけど、自転車乗りって偏った情報を思い込みで実践して体壊したり体力なくす人も少なくないから、ぎーちゃんのいうように正しい知識は大事。早く教えてほしい!

佐藤 もうちょっと待っててね~。勉強して資格に受かったら皆にアドバイスするよ。大会3日前の献立とかね(笑)。

─大宅さんは「女子部」に加わって何か変化は?

腰痛克服に向け、自主練に励む大宅陽子さん ©NHK/テレコムスタッフ

大宅 長年腰痛で悩んでいたんですが、その対策を特集として教えてもらったのはありがたかったですね。後ろ乗りだったポジションを変えて、今はまだ筋肉が追い付いてないんですが、着実に体得している感じです。自分は体幹がまったくないってことを痛感しました。骨盤なんて全く立てていなかった。いまは腰痛は出なくなったので、このまま無茶な乗り方はせず、積み重ねていくのが課題です。

Photo: Naoi HIRASAWA

牧野 骨盤立てて乗るんだ。

佐藤 立ててるから大丈夫だよ。

大宅 テコさんは体幹あるんだよ。

佐藤 テコさんはすごいんだよ。

牧野 これ、おだてて陥れるやつ??

大宅・三谷 (爆笑)

佐藤 だいじょぶだいじょぶ(笑)。

牧野 その言い方~!(笑)。

たまには美味しいもの巡りがしたい!

─それぞれが感じている自転車の魅力を教えてください。

牧野 これまで電車で行ってた距離を自転車で行けるようになったのは嬉しいです。交通費浮いたわーって(笑)。しかも電車よりも早く着くし、最高っす。

大宅 そこ?(笑)

 Photo: Naoi HIRASAWA

佐藤 私は早朝に空いている道を走るのが好き。あと深夜の空いている道を走るのも好き。練習しなきゃって思いたったときに走るんですけど、「気持ちいい~!」って思わず叫んじゃいますね(笑)。自転車って朝に走るイメージだったんですけど、夏の夜とか本当におすすめ。あとは食べ物が美味しくなる!ビギナーの人は、って私もビギナーだけど、美味しいごはん屋さんを見つけて、そこを目指して行くというのが良いかも。ちょっと遠いなって感じる方が楽しいし、本当にごはんが美味しくなる。これは実体験です!

牧野 それはマジでテンションあがるっす。

大宅 2人がもう少し乗れるようになったら連れて行ってあげたいところがたくさんある。50kmとか70kmとか多少疲れてもいけるっていうポテンシャルが出てくれば、世界は広がるよ。

佐藤 このまえ連れていってもらった古民家チックなうどんやさん、美味しかったなー。自転車乗りの人に教えてもらうお店はおいしくて雰囲気の良いところが多いね。

「おいしいものめぐりがしたいー!」と叫ぶ佐藤さんとステテコさん Photo: Naoi HIRASAWA

牧野 『チャリダー★』の企画でたまにはそういうのやりたいっす~。

大宅 ずっとストイックなんだよね。始めてこの方、山上りかローラー台しかやっていない(笑)。

佐藤 それでいきなり160kmだもんねー。皆でおいしいもの巡りやりたーい。

大宅 でもきっと私たちが行く店は激坂の上とかなんだろうね。

佐藤 それでもいい!

2人を見つめる大宅さんの眼差しはまるで先生のよう? Photo: Naoi HIRASAWA

大宅 自転車の楽しさって、ヒルクライムの楽しさはもちろんあるけれど、それしか知らないのってすごくもったいないと思う。ヒルクライムレース一筋になって出るだけが坂バカじゃないと思うから、いろんな坂の楽しさを知ってほしいなと思う。個人的には奥武蔵グリーンラインとか連れていってあげたい。山奥のきれない景色とか、レース中だとほとんど見てないじゃないですか。

佐藤・牧野 見てないし見れない(笑)。

─それを知らなくて自転車を続けてこれたのはすごいですね。三谷さんは次のステージに飛んでいっちゃった感じですけど

三谷 前は地元のママ友が集まって、自転車でランチ食べに行ったりしていたんですよ。でももうその楽しさとはさよならしました。練習あるのみです。

牧野 ストイックー。

大宅 数年後には「ガールズケイリン」で活躍してたりして。

佐藤 そっちいったかーってね(笑)。

さらなる進化の2年目

─いよいよ今シーズンが始まります。2年目の意気込みを聞かせてください。

今シーズンの目標は「昨年よりも笑いをとること!」と牧野ステテコさん Photo: Naoi HIRASAWA

三谷 私は今シーズンは勝ちに行きます。表彰台、優勝を狙います。

全員 おお~~。

牧野 私は楽しく継続しながらちょっとずつ速くなる、ですかね。

佐藤 大事なこと忘れてない?

牧野 …あっ!あとは「去年より笑いをとる」ですね。危ない、仕事忘れるとこだった(笑)。

「チャリダー★」検定4級試験。つらさのあまり、上り坂で泣き出す佐藤さん。低い鳴き声に猪野監督も思わず笑ってしまう ©NHK/テレコムスタッフ

佐藤 私は、今シーズンは泣かない。「う~っ」ていう苦し涙よりも、自己記録を達成して「よっしゃー!」って嬉し涙を流したいですねで。あとはアスリートフードマイスターの資格をとってメンバーをサポートしたい。大宅さんとかに色々自転車のことを教えてもらうけど、私もそんなふうに誰かの力になれたらって思ってます。自分にしかできないことを1つ見つけていきたいです。

大宅陽子さん。筋金入りのヒルクライマーだが、体を痛めた経験からヨガインストラクターの道へ。自分の体と向き合いながら、無理なく乗ることが自身のテーマ Photo: Naoi HIRASAWA

大宅 一言でいうと「腰を痛めずに乗る」です。腰痛の再発以来、自分がどういう乗り方をしているのか、どうすれば再発防止できるのか身体と向き合うようになりました。自転車って乗り方やライフスタイル、考え方、体質とか色々なことが加味されて、その真ん中にいれば乗れてるし、ちょっとずれてしまえば乗れなくなる、ある意味生活のバロメーターのようなもの。そういうバランスを崩さずに楽しめる、一つ大人な自転車乗りを目指したいですね。

─今シーズンのさらなる進化が楽しみですね。

大宅 2年目も一緒に走れることになったこのメンバーと、いろんな自転車の楽しさを伝えられたらと思っています。開幕戦は5月13日(土)18時放送の「伊吹山ヒルクライム」です。一回り成長した「坂バカ女子部」をぜひ見てください!

パワーアップした「坂バカ女子部」の活躍に乞うご期待! Photo: Naoi HIRASAWA

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