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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<208>ジロ・デ・イタリア2017直前展望 マリアローザ争いはハイレベルな「群雄割拠」

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 サイクルロードレース2017年シーズンは春のクラシックレースが終わり、いよいよグランツールの時期を迎える。その先陣を切るのは、今回で第100回を迎えるイタリア一周「ジロ・デ・イタリア」だ。5月5日に戦いの火蓋が切られるレースを展望していこう。注目選手紹介はもちろんのこと、2007年以来の開幕地となるサルデーニャ島での3ステージについても占っていきたい。

第100回目を迎えるジロ・デ・イタリアがいよいよ開幕する Photo: ANSA/LUCA ZENNARO

アペニン、ドロミテを経てミラノへ

 第100回ジロの開幕は、サルデーニャ島北西部のアルゲーロ。同島では3日間を過ごし、シチリア島へと移る。

サルデーニャ島で開幕し、シチリア島、イタリア本土へと続く2017年のジロ・デ・イタリア ©RCS SPORT

 シチリア島初日にあたる第4ステージ(181km)は、エトナ火山の頂上フィニッシュ。今大会最初の上級山岳ステージとなり、総合優勝候補たちの動向をチェックする機会だ。

 イタリア本土へ足を踏み入れるのは、第6ステージから。前半戦の締めくくりとなる第9ステージ(149km)は、イタリア中部のアペニン山脈の一角、ブロックハウスの頂上フィニッシュ。レース距離こそ短いものの、最大勾配14%、平均勾配9.4%の上りが約10km続く上りは、総合争いの形勢を大きく動かす可能性を秘める。

 39.2kmの個人タイムトライアルが行われる第10ステージも、総合争いにおいて高い重要度を占める。ここでの取りこぼしは、先の戦いに響くことは間違いない。さらに、第14ステージ(131km)からはイタリア北部の山岳地帯を巡る。

 運命の第3週。クイーンステージと目されるのは第16ステージ。レース距離222kmに対し、獲得標高が5000mを超える驚異の1日。この日2つ目の上級山岳にあたる、ステルヴィオ峠が今大会の最高標高地点「チーマ・コッピ」となる。ドロミテ山脈を代表する4つの峠を越える第18ステージ(137km)も総合争いにおける勝負どころ。ここで得たリードを、残る3ステージで守りたいと考える選手が多く現れそうだ。

 そして5月28日、大会はミラノをフィニッシュとする28kmの個人タイムトライアルで終わりを迎える。ただ、顔見せ的な個人TTで終わるかどうかは未知数。この日まで僅差の勝負となっていれば、マリアローザを賭けた最終決戦になることも大いにあり得る。

マリアローザは誰の手に?

 ジロの前哨戦にあたるレースが終わり、各チームが次々と出場選手を発表している。開幕に向けて、着々と準備が進んでいる印象だ。出場22チームの動向から、今大会のマリアローザなど4つのリーダージャージ獲得候補者を挙げてみたい。

注目のマリアローザ争いは、2連覇を狙うヴィンチェンツォ・ニーバリらそうそうたるメンバーが揃う =ジロ・デ・イタリア2016第21ステージ、2016年5月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

 まず、個人総合時間賞のマリアローザ争い。今回はまさに「群雄割拠」との言葉がピッタリなくらい、そうそうたる顔ぶれとなった。

 前回に続く総合連覇を目指すヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)を筆頭に、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)、ティボー・ピノ(フランス、エフデジ)、ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)、ゲラント・トーマス(イギリス)とミケル・ランダ(スペイン)のチーム スカイ勢、トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)、アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)…。とにかく、これまでにはないくらいハイレベルの戦いが見られることは必至だ。

 これだけのメンツにあって、誰が、そしてどのチームが主導権を握るのかが戦いを左右する大きなポイント。できることなら、早い段階でプロトンをコントロールする状況へと持ち込み、エースの戦いを楽にしたいところ。一方で、アシストの負担は大きくなるが、そのリスクを軽減すべく各チームともに実力者をそろえてきている印象。こうした趣きが、戦いをさらに高い領域へと押し上げる要素となるだろう。

ナイロアレクサンデル・キンタナも順調に調整を進めている =ティレーノ〜アドリアティコ2017第7ステージ、2017年3月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 これらの選手たちの中で、直前のツアー・オブ・クロアチア(4月18~23日、UCI2.1)で総合優勝したニーバリや、ブエルタ・ア・アストゥリアス(スペイン、4月29日~5月1日、UCI2.1)を総合2位で終えたキンタナは順調な調整ぶりをアピール。昨年のツール総合4位と新人賞を獲得し、今年は満を持してジロへと臨むイェーツも、リエージュ~バストーニュ~リエージュ8位と好調。1人でもレースが組み立てられる強みを評価されており、スプリント陣との共闘にも不安はなさそうだ。

昨年のジロで大活躍したステフェン・クライスヴァイクも総合優勝候補 =ジロ・デ・イタリア2016第16ステージ、2016年5月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年ジロで総合争いを盛り上げたクライスヴァイクは、ツール・ド・ヨークシャー(イギリス、4月28~30日、UCI2.1)第1ステージで落車。その後レースに復帰したが、第3ステージを未出走。あくまでも、「調子のよさが確認できたため」と理由を説明するが、それが真実かは開幕後に分かることだろう。チーム スカイは、首脳陣の意向でトーマスをエースに立てるが、山岳に絶対の力を持つランダがWエース体制を志願しているとされ、両者のバランスがいかに保たれるかがカギに。

トム・デュムランはTTでタイムを稼ぎたい =ジロ・デ・イタリア2016第5ステージ、2016年5月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ヴァンガーデレンやデュムランは、個人TTステージでどれだけタイムを稼げるか。TT能力に向上の兆しがみられるモレマも楽しみ。もちろん、山岳でも力を発揮する3人だけに、上級山岳ステージを上手くまとめられれば、マリアローザの可能性が一気に高まる。

 総合上位常連のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル)、昨年のジロ新人賞のボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)、ジロ初出場のルイ・コスタ(ポルトガル、UAE チームエミレーツ)も忘れるわけにはいかない。彼らが好調だと、頂点を目指す争いはさらに熾烈になる。

マリアチクラミーノ復活 ダウンヒル賞も設定

 ポイント賞首位の選手には昨年まで、情熱の赤いジャージ「マリアロッソパッショーネ」が渡っていたが、今年からはシクラメンをイメージした紫の「マリアチクラミーノ」が2009年以来の復活を果たす。

マリアチクラミーノが2009年以来の復活。ポイント賞ジャージとして採用される。写真はジロ2009第3ステージで勝利したアレッサンドロ・ペタッキ Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年からは、平坦ステージでより多くのポイントが与えられるよう配分設定がなされたが、今回のステージ構成上、どこまでスプリンターが出走意欲を見せるかが不透明。スプリントステージとしては第13ステージ(167km)が最後となり、その後のレースを見越して大会を途中離脱する選手も現れそうだ。厳しい山岳をクリアし、ミラノまで到達するスプリンターがどれほどいるかも押さえておきたい。

 参戦予定の有力スプリンターとしては、ポイント賞3連覇中のジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)、カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)、サーシャ・モードロ(イタリア、UAE チームエミレーツ)、サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)、クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、ディメンションデータ)。そして、ついにグランツール初参戦となるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)の名も挙がる。

昨年のツール新人賞のアダム・イェーツが、ジロでも新人賞に名乗りをあげる =ツール・ド・フランス2016第8ステージ、2016年7月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 山岳賞のブルージャージ「マリアアッズーラ」は、総合争いから遅れたクライマーや、山岳ステージでの逃げを決めた選手に渡るだろう。新人賞のホワイトジャージ「マリアビアンカ」は、1992年以降に生まれた選手が対象となる。総合優勝候補にも挙がるイェーツや、同賞2連覇がかかるユンゲルスが有力だ。

 また、今大会には特別賞として、指定されたダウンヒル区間のスピードを争う「ピレリ・プレミオ・ミリオール・ディセンシスタ」が設定される。その名の通り、自動車タイヤメーカーのピレリ社がスポンサーを務める賞で、通過順位やステージ順位を問わず、指定区間を最も短時間で下った選手に500ユーロ(約61000円)が贈られる。さらに、各回の順位をポイント化し、総合ダウンヒル賞も設けられる。

 対象区間は次の10カ所となる。モンテ・サンタンジェロ(計測開始地点:第8ステージ100.7km地点)、キエーティ(第9ステージ91.2km地点)、モンテ・フマイオーロ(第11ステージ135.8km地点)、コッラ・ディ・カザーリア(第12ステージ、63.4km地点)、セルヴィーノ(第15ステージ170.8km地点)、パッソ・デッロ・ステルヴィオ(第16ステージ143.5km地点)、パッソ・デル・トナーレ(第17ステージ60.2km地点)、パッソ・ポルドイ(第18ステージ26km地点)、セッラ・キアンズタン(第19ステージ104.7km地点)、モンテ・グラッパ(第20ステージ122.7km地点)。

指定のダウンヒル区間を最も速く下った選手に特別賞が贈られることが決定した Photo: Yuzuru SUNADA

サルデーニャステージ展望

●5月5日(金) 第1ステージ アルゲーロ~オルビア 206km 難易度★★

ジロ・デ・イタリア2017第1ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORT

 サルデーニャ島北部の海岸線を進む。細かなアップダウンこそあれど、スプリンターにチャンスのあるステージといえそうだ。フィニッシュまで約20kmのポイントにあたる、4級山岳サン・パンタレオは最大勾配12%。集団分断を狙うチームが出るかもしれない。


●5月6日(土) 第2ステージ オルビア~トルトリ 221km 難易度★★

ジロ・デ・イタリア2017第2ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORT

 中盤以降に3級、2級とカテゴリー山岳が続く。2級山岳頂上からフィニッシュまでは約45km。スプリンターにチャンスのあるステージではあるものの、ハイスピードの展開になった場合は上りで苦しむことになりそう。各チームの思惑がどう働くか。


●5月7日(日) 第3ステージ トルトリ~カリアリ 148km 難易度★

ジロ・デ・イタリア2017第3ステージ コースプロフィール  ©RCS SPORT

 レース距離が短く、フラットに近いコースレイアウトとあって、全体的に脚休めの1日となるイメージ。天気が崩れたり、風が強くなったりすると激しさが増すが、定石通りにいけばスプリンターのためのステージとなるだろう。この翌日は休息日(移動日)となる。


今週の爆走ライダー−サンデル・アルメ(ベルギー、ロット・ソウダル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 4月30日に閉幕したUCIワールドツアーのツール・ド・ロマンディ。リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)が最終ステージの個人TTで逆転し、総合優勝を果たしたことが大々的に報じられた一方で、地味ながらも快挙を達成した選手がもう1人存在する。サンデル・アルメは、終始積極的な走りを見せて山岳賞を獲得。昨年に続く2連覇となった。

ツール・ド・ロマンディ2017第2ステージ。逃げに加わったサンデル・アルメ(右端)は、ステージ優勝争いからは遅れるも、山岳賞で首位に立った Photo: Yuzuru SUNADA

 山岳賞連覇のきっかけは、逃げを打った第2ステージ。山岳でのスプリントを制し、着実にポイントを重ねた。これが「勝ち逃げ」となったためステージ優勝の可能性が高まるところだったが、随所で脚を使いすぎたアルメは残り20kmで脱落。チャンスを逸したことに「失望した」というが、それからは山岳賞狙いにシフト。一時はピンチもあったが、何とか乗り切った。

 今年でプロ8年目の31歳。そのキャリアは異色で、10代の頃はインラインスケートに傾倒。15歳でベルギーチャンピオンになり、その2年後にはマラソン種目でヨーロッパチャンピオンにも輝いた。元々ロードバイクはインラインスケートのトレーニングの一部だったが、20歳を過ぎてからロードレースでも能力の高さを披露。地方タイトルではあるものの、ロードとタイムトライアルの2冠を達成したこともある。

 プロ入り後は勝利こそ挙げていないものの、アシストとしての堅実な走りは高く評価される。この先視野に入れるのは、未だスタートラインに立ったことがないツール・ド・フランスとなりそうだ。

 熱き戦いを支える縁の下の力持ち的な存在だが、彼のようなライダーがいなければ、今のプロトンは成り立たない。こうした陰の立役者にも目を向けてみると、レースの奥深さやおもしろさを再認識できるのである。

ツール・ド・ロマンディ山岳賞2連覇を果たしたサンデル・アルメ。次なるターゲットはツール・ド・フランス初出場だ Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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