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「グッド・チャリズム宣言プロジェクト」瀬戸圭祐さんがリポートクライマーの聖地、ヤビツ峠が走れなくなる? 規制される前にもう一度マナーの確認を

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 神奈川県の秦野市にあるクライマーの聖地「ヤビツ峠」。いま、そこが危険な状態にあるという。激増したサイクリストの事故やトラブルだけの問題ではなく、マナーの悪さが周辺住民の反発を買っているようで、秦野市でも問題として取り上げられ始めている。このままでは、なんらかの規制がかけられてしまうかもしれない。そうした事態を防ぐべく、自転車のマナー向上と安全意識の啓発活動に取り組む団体「グッド・チャリズム宣言プロジェクト」(通称:グッチャリ)が、ヤビツ峠周辺でマナーアップ活動を実施した。
(レポート:グッド・チャリズム宣言プロジェクト理事 瀬戸圭祐)

裏ヤビツは道が細い場所が多く、すれ違うクルマも苦労している Photo: Keisuke SETO

社会の目が厳しくなっている自転車のマナー

 「ヤビツが走れなくなる!?」─そんなウワサを昨今あちこちで耳にするようになってきた。それが本当ならば、ヤビツだけの問題ではない。

カーブで対向車にヒヤリとするが、クルマのドライバーはもっと焦っているかも Photo: Keisuke SETO

 もし規制が導入されたら、同じくサイクリストが増えて周辺住民や道路利用者との問題が燻っている南多摩尾根幹線(通称:尾根幹)や荒川の緊急用河川敷道路(通称:荒川サイクリングロード)のほか、各地に規制が飛び火するリスクがないとはいえない。世の中の関心が大きくなりつつある自転車のマナー問題を背景に、社会的にサイクリストを見る目が厳しくなり、規制が広がる可能性もある。

路線バスが峠まで通っており、自転車と頻繁にすれ違う Photo: Keisuke SETO

 グッド・チャリズム宣言プロジェクトはふだん荒川を中心にマナーアップ活動を行っているが、こうした事態を憂慮し、今回はヤビツ峠周辺でのマナーアップ活動を実施した。

 まずはヤビツでタイムアタックする際の基点にもなっている名古木(ながぬき)のセブンイレブンで活動を開始。サイクリストが多く立ち寄るポイントで、出発準備をする人たちにマナーアップを呼びかけた。今回は、地元でもある「座間サイクリングクラブ」と、三浦半島でも協力いただいている横須賀の「チームBIG-END」の皆さんにもご協力いただき、一緒にマナーアップ活動を行った。

蓑毛のバス折り返し点。ここからの下りで飛ばすサイクリストが多く、住民に怖れられている Photo: Keisuke SETO

 スタート直後はカーブの少ない、比較的直線的な上りが蓑毛(みのげ)のバス折り返し点のある停留所付近まで数km続いている。この区間は住居が多く、交通量も多い場所ながら斜度10%程度の坂もある。気合の入ったタイムアタックの人たちがどんどん駆け抜けてゆく、落ち着かないゾーンだ。

 さらに反対車線を下ってくるサイクリストは、傾斜の強い直線的な道を時速数十kmとも思えるハイスピードでかっとんで来る。休日ともなれば、上りも下りも多くのロードバイクが次々に行き交い、クルマのドライバーや地元の歩行者からは自転車が“怖い存在”となっているようだ。

 実際、秦野市の議員が市に対して「名古木交差点まで自転車の台数を数えながら下っていきましたが、その数は140台を超えました。下っていく自転車を見ていると、蓑毛バス停から鳥居までの間では、弾丸のように下っていきました。この現状を見ると、減速させる何らかの啓発が必要と考えます」(※)と問題提起をしている。

※出典:「秦野市議会平成23年第2回定例会(第4号・一般質問)」本文より抜粋

行政の啓発メッセージは「UNDER 30km/h 法廷速度遵守」と書かれたノボリがたった一つだけ? Photo:Ryohei SAKATA

 しかし、現場には「UNDER 30km/h 法廷速度遵守」と書かれたノボリがたった一つあっただけで、行政が積極的に啓発に乗り出しているとは思えなかった。とはいえ、地元サイクリストの話では、ヤビツではパトカーを見ることが増え、サイクリストが絡む事故が頻発しているとの事だったので今後、行政や警察が何らかの対策をしてくる可能性は高いかもしれない。

自転車の他にもバスやクルマ、ランナーの存在

 その先は一車線の細い道路となる上にカーブが続き、針葉樹林帯で見通しも悪くなる。そこをバスやトラック、クルマが行き交うのだから、ヒルクライムに適した環境とは言いがたい。

ランナーの練習場所としても人気が高まっており、上手く共存していかねばならない Photo: Keisuke SETO

 また、ゴールデンウィーク中という事もあってかオートバイでツーリングする人々も多く、さらにはランナーの姿も一般道の車道の峠道とは思えないほどたくさん見かけた。自転車だけでなく様々な人がこの道路を利用しており、共存共栄の必要性を強く認識せざるを得ない。

 サイクリストにはタイムアタックをしていると思われる人が多いが、中には我々を追い抜いて行く際に声もかけず、「邪魔だ」と言わんばかり無言ですぐ横を通り抜けて行き、何度かヒヤリとさせられたこともあった。

富士山の眺望が素晴らしいが、タイムアタックの人々は黙々と上って行く Photo: Ryohei SAKATA

 チーム練習をしている人たちよりも、個人でタイムアタックしていると思われる人が多く、マナーを指導される環境にないのか、周りを配慮する余裕の無い様子が見受けられる。

 途中の休憩ポイントである「菜の花台展望台」で、マナーアップチラシを配ろうとしたが、ほとんどのサイクリストは富士山の眺めの良いこの展望台に見向きもせずに素通りし、ひたすら上り、そして下って行った。

道路利用者への思いやりの気持ちをもって

 ヤビツ峠は数十人以上のサイクリストで溢れていた。さらに秦野側から上る通称「表ヤビツ」からも、宮ヶ瀬湖側から上る「裏ヤビツ」からも次々にサイクリストがやってきて、そして下っていく。

ヤビツ峠は、数十人のサイクリストが溢れていた。スゴイ人気スポットだ! Photo: Keisuke SETO

 峠に居た20分ほどの間に延べサイクリストの数は100人近くに及んだのではないかと思われる。イベントでもないのにこれほど多くのサイクリストが集まる様子に、“超”がつくほどの人気スポットとなっていることを改めて実感した。

 ここでサイクリストの皆様にチラシを渡し、マナーアップとルール遵守を呼びかける活動を精力的に展開。個々のサイクリストの方々とお話をさせていただいたが、住民や他の道路利用者からの苦情が多いことを知る人は少なかった。

ヤビツ峠で精力的にチラシを配布し、マナーアップを呼びかける Photo: Keisuke SETO
ヤビツ峠で精力的にチラシを配布し、マナーアップを呼びかける Photo: Keisuke SETO

 若いサイクリストが多く、その中にはマナーやルール遵守に対する認識が高くない人たちも随分いた。荒川や三浦半島の自転車利用者は、こちらからのマナーアップの働きかけにも敏感に反応してくださる方が多いのに対し、ここでは「ポカン」と学校の先生に説教でも受けているような顔をする人が多かったのも印象的だった。

 しかし、我々の話にしっかりと耳を傾け、チラシをちゃんと読んでくれた人たちもいて、決して道徳観に欠ける人たちばかりだとは思えない。多分マナーやルールを「知らないだけ」なのかもしれない。ヤビツのおかれている現状を正しく認識し、マナーやルール遵守の指導や教育を受ければ、きっと彼らの意識や行動も変わってくると信じている。

 手前味噌ながら、荒川で続けている啓発活動により、少しずつ荒川の自転車利用者のマナーが向上してきたと感じられるようになった。ヤビツでも、そして同様の問題を抱えるそれぞれの場所でも、道路利用者が互いに相手を思いやる、ちょっとした譲り合い精神が醸成されて行くことを願って止まない。

瀬戸 圭祐瀬戸圭祐(せと・けいすけ)

中学高校時代にランドナーで日本全国を走り、その後北米大陸ロッキー山脈、北極圏スカンジナビア山脈、欧州アルプス山脈、西ヒマラヤ/カラコルム山脈、ヒンズークシュ山脈などを単独縦断走破。著書は「ジテツウ完全マニュアル」「爽快!自転車バイブル」「自転車ツーリング ビギナーズ」「自転車生活スタートガイド」など多数。現在は自動車会社に勤務しつつ、NPO自転車活用推進研究会理事や(財)日本自転車普及協会の事業評価委員、(社)グッド・チャリズム宣言プロジェクト理事などを務め、より良い自転車社会に向けた活動をライフワークとしている。

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