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「イーバイク・フェスティバル」レポート<下>疲れ知らずの市内名所巡りサイクリングへ MTBライダーが見出す“電動アシスト”の魅力とは

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 4月7日から9日にドイツ西部の都市ドルトムントで開催された「イーバイク・フェスティバル ドルトムント 2017」は、出展社136、来場者5万5千人の大規模イベント。イベントレポートの<上>では、多種多様なイーバイクの中から注目シティーバイクをピックアップした。イーバイク・フェスティバルでは、展示のほかに参加型プログラムも充実。イーバイクを楽しむためのすべてが詰まったイベントだと言える。オーガナイザーや招待ライダーらにイーバイクやイベントについて伺うとともに、筆者もイーバイクでドルトムントのサイクリングスポットを巡るライドに参加してきた。

コンフォートイーバイクは未舗装のサイクリングロードも何のその。春のドルトムント巡りを楽しんだ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

イーバイクを無料貸出

サイクリングコースには、プログラムスポンサーのイノジーが提供する電気自動車の電力供給スポットも組込まれていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 市内サイクリングを担当するスポンサーは、ドイツのエネルギー企業「innogy」(イノジー)。国内最大の電力供給元でもあるイノジーは風力・太陽光発電にも熱心で、海上の風力発電機数は「世界で3番目」に入るという。今回のサイクリングでは、1885年創業のドイツ老舗バイクブランド「Diamant」(ディアマント)のコンフォートイーバイクにイノジーデザインを施して参加者へ無料で貸し出していた。

「ディアマント」のコンフォートイーバイクにイノジーデザインが施されたスペシャルバイクが貸し出された Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
各回10人程度、イベント期間中に毎日2回ずつ開催されたサイクリングのイーバイク貸出し風景 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
貸し出されたイーバイクの操作パネル部分 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
全ドイツ自転車協会(ADFC)所属のベテランガイドが参加者に説明をしている様子 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 サイクリングは各回10人程度で、イベント期間中に毎日2回ずつ開催。土曜の午前中の回に行ってみると、参加者はぱっと見40代半ば以降といった落ち着いた年齢層だ。イーバイクが初めてという参加者も多く、スタート前「全ドイツ自転車協会(ADFC)」に所属する地元ガイドの説明をもとに、足慣らしおよびパネルの操作慣らしの試走タイム。最後部からついていくと、車列からはサイクリング前のウキウキ感が伝わってきた。

 コースは、イーバイク・フェスティバルのメーン会場となっている中心街から時計回りにおよそ14km。自転車道やそれをつなぐ一般道を走行しながら、ドルトムントの名所を訪れるルート設計だ。ドルトムントのADFCでは日頃から近郊を巡るライドや「春の名物シュパーゲル(白アスパラガス)お買物ツアー」「水路コースのツアー」「カフェ&ケーキツアー」といったテーマを設けたツアーを走行距離20km〜90kmで実施している。今回はそのコンパクト版という雰囲気だ。

参加者には「飲酒をしていません」のサインが求められた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
賑やかな落書きが展開されている壁の横を通過するサイクリング一行 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

未舗装路も快適に進むコンフォートイーバイク

 さっそく走り出すと、信号のないサイクリングコースを走る爽快感とともに、かなりの距離になる未舗装路を物ともしないコンフォートイーバイクの走破性を実感した。ドイツでは、自転車のマークが記された赤字の案内標識が全国どこにでもあり、サイクリングルートまたは推奨ルートを簡単に見つけることができる。km表示もあり走行時のめやすとなって嬉しいのだが、サイクリング向けだからといって舗装路とは限らないとがポイントだ。今回のルートでは新緑が美しい未舗装の小道が含まれていて最も気持ちよく走ることができた区間だったのだが、実は以前ロードバイクで走行した際は快適とは言えなかった。

新緑が美しい未舗装のサイクリングロードは、コンフォートイーバイクで快適に走行 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
ドイツ中に設置されているサイクリングルートの案内標識(参考写真) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
今回のサイクリングで登場した別のタイプのサイクリングロード案内標識(緑地に白い文字) Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
ちょっとした坂もイーバイクなら楽々上ることができる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 イーバイクでの走行感をつかみ体がほぐれてくると、参加者らもライドを楽しむ余裕が見て取れた。橋やちょっとした上り坂などでも息を切らすことなく走行できるのがイーバイクのメリット。1959年に建設された高さ219.60mの電波塔「フロリアントゥルム」や、8万1359人とドイツ一の収容人数を誇るスタジアム「ジグナル・イドゥナ・パーク」など、ドルトムントのモニュメントを横目に軽やかにペダルを回した。

ドイツ最大の収容人数を誇る「ジグナル・イドゥナ・パーク」は市民の聖地的存在。記念撮影もばっちり Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
高さ219.60mの「フロリアントゥルム」はドイツ・ドルトムントのモニュメントのひとつ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
橋の下で暗く通路が狭まる道では「自転車は降りて走行」の標識 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 市内在住の夫婦は、走行中も仲良くおしゃべり。奥様がイーバイクに興味があるということで参加をしたそうで、目星をつけたイーバイクはすでにリース契約を済ませ到着を待つばかりなのだという。通常の自転車に比べて高額なイーバイクにおいては、ドイツではリースという手段も一般的。サイクリング後に声をかけると男性は「イーバイクは初体験。とても楽々とサイクリングができて驚き」と話し、女性は「素晴らしい! すごく楽しめたわ」と嬉しそうに振り返った。

中心街へ戻ってくると歩行者優先の場所も多く自転車から降りて進行 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
「とても楽々とサイクリングができて驚き」という男性と「すごく楽しめた」と話した女性 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

MTBや自然を楽しむチャンスを与える「E-MTB」

 サイクリング参加者の年齢層に表されるように、スタイリッシュなシティーバイクや本格MTBといったラインアップがあるにも関わらず、イーバイクの標準的なイメージはまだまだ高齢者向け。イーバイク・フェスティバル会場のMTB試走コースで顔を上気させて乗り込んでいた若手ライダーに声をかけると、彼らは20〜30代。ファビアン・キルペルトさん(Fabian Kilpert)とヤン・ザルムさん(Jan Salm)は「モンドラッカー・ロケッツ(Mondraker Rockets)」所属のライダーで、イベントプログラムのナイトスプリントに招待されて訪れたという。

「モンドラッカー・ロケッツ」のユニフォームに身を包んだファビアン・キルペルトさん(左)とヤン・ザルムさん。ナイトスプリントへ向けたクオリフィケーションで会場のMTBコースを走行していた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 キルペルトさんとザルムさんは、共に日頃は通常のMTBに乗るライダー。イーバイク版MTB(E-MTB)について考えることはあるかと筆者が尋ねると、「E-MTBはただ次のステップというだけ」とキルペルトさん。今回E-MTBに乗ってみて感じた可能性を率直に話してくれた。

 「ほとんどの人は、イーバイクの用途としてクルージングするだけと思っているし、高齢者向けと考えているけれど、そうではない。例えばぼくがMTBで妻がE-MTBという風に(体力に差があっても)ライドが叶う。またリフト完備の完璧なMTBパークなんて、世界中にもそうそうない。上るだけで大変だ。そんな時E-MTBがあれば、コースを楽しむ可能性が広がる。それからE-MTBなら、アフターファイブにトレイルを6つ、7つとエンジョイすることだってできるんだ。E-MTBは、MTBや自然を楽しむチャンスを与えてくれるものだと思うよ」

 危険な点はないのかと再度質問してみると、「もちろん、MTBのライドスキルがないライダーが、イーバイクだからと安易に乗るのは危ないよね」とザルムさん。浮き輪を着けたからといって、体力が充分でなく水の中での進み方を知らないのにいきなり大海へ繰り出すのは危険なのと一緒だ。当然のことといえば当然だが、何事もキホンが大切。改めて思い知った。

※動画は、モンドラッカー・ロケッツの公式インスタグラム(@mondraker_rockets)でシェアされた「E-MTB」ナイトスプリントの様子。

◇         ◇

イーバイク・フェスティバル主催者代表のクリスティアン・ステファン氏 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 主催者代表のクリスティアン・ステファン氏(Christian Stephan)は、「(初開催の)昨年は大成功だった」とした上で、イーバイク・フェスティバルのようなオープンで地域に根ざしたイベントでは「来場すればそこにすべてがある、という状態が望ましい」とコメント。今年は、時速138.56kmと“最速後輪ウィリー”のギネス世界記録を持つボビー・ルート氏(Bobby Root)がパフォーマンスのためアメリカから訪れたり、地元でも人気のバンドグループが登場するバンドコンテストをステージで実施したりとさらにイベントとしての魅力を高めた。ステファン氏は「これほど地域の協力態勢が万全なイベントも珍しい」として、より充実した2018年イベント開催へ意気込みを見せた。

“最速後輪ウィリー”のギネス世界記録を持つボビー・ルート氏。ジャンプの間の移動に華麗なウィリーを披露 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
ボビー・ルート氏のイーバイクジャンプは目玉アトラクションのひとつ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
ステージで行われたバンドコンテストには、会場を訪れた人たちが足を止めて見入っていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
シュルテ柄沢亜希シュルテ柄沢 亜希(しゅるて・からさわ・あき)

1982年生まれ、ドイツ在住。東京を拠点に4年間記者生活を送った後、フリーランスへ。書くこと、レポートすることが生きがい。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をドイツ・ハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。ブログ「ドイツのにほんじん」ほか、多媒体にて執筆中。

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