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「イーバイク・フェスティバル」レポート<上>“電動アシスト自転車”はここまでカッコよくなれる ドイツで見つけた注目シティーバイク

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ドイツ・ドルトムントで「イーバイク・フェスティバル」が市の中心地で開催され、136の出展社、5万5千人の来場者で賑わった Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 ドイツ西部の都市ドルトムントで4月7日から9日、「イーバイク・フェスティバル ドルトムント 2017」が開催された。欧州におけるイーバイクとは「電動機能が備わる自転車」の意。日本でほぼ同義となる電動アシスト自転車に比べてジャンルは広く、パワーはオートバイ並の製品も少なくない。2度目の開催で規模がより拡大されたイーバイク・フェスティバルの会場を訪ね、多種多様な最新イーバイクを物色してきた。

試乗コースを増設

 イーバイク・フェスティバル ドルトムントは、欧州最大規模のイーバイクのイベントとして2016年にスタート。多くの人で常時賑わう市の中心街をメーン会場とするなど、市との協調体制を敷き誰もに開かれた展示会・イベントを実現させた。今年は来場者5万5千人を記録。筆者は昨年に続き訪れたが、来場者の関心は相変わらず高く各ブースを熱心に見て回る様子が印象的だった。

 さらに実際に試乗をする来場者が多いのも特徴だろう。それもそのはず、出展数は136に対し用意された試乗車はおよそ900台。メーン会場内の試乗コースは、昨年のMTBコースに加えてシティーバイク向けのコースが増設され、より試乗の機会が広がった。

バンクや地上2階程度の高さのコーナーが目を引くMTB試乗コースは常にギャラリーに囲まれていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
シマノのゲートに誘われるようにして訪れる人が絶えない会場 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
シティーバイク向けの試乗コースは基本的にはフラットな舗装路。筆者はこちらのコースで試乗した Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 実は筆者も今回初めて試乗をしてみる気になった。というのも、MTBコースは鉄パイプで組まれた地上2階程度の高さの坂道と砂のバンクなど本格的な造りの上、広場のど真ん中という立地のためコース外にギャラリーが多い。そんなコースに繰り出すのは、試乗とはいえ日頃MTBに親しんでいない筆者にはハードルが高かったのだ。新設されたシティーバイク向けのコースは、ブロック混じりの舗装路。基本的にはフラットだが、イーバイクの性能を確認するのに効果的な人工の坂道も備わっていた。

シンプルな美しさを追求したイーバイク

 出展社からの「試乗してみます?」の声に誘われてさっそく乗ってみたのは、ドイツのイーバイクブランド「Coboc」(コボック)。あまりにもスタイリッシュでシンプルなデザインだったため、最初は「これってイーバイクですか?」と疑ったくらいだ。2012年に創始したコボックの現在のラインナップは、4車種。ブランドマネージャーのカリナ・エーマンさん(Carina Ehmann)は、「わたしたちのコンセプトは“タイムレスデザイン”。毎年ニューモデルを出すことはせず、バイクのコンポーネントも極力シンプルに仕上げています」と説明した。

コボックの女性向けモデルの「セブン・ヴィレット」は曲線を描くトップチューブが特徴的 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
コボックのイーバイクはアシストレベルの自動調整により一切の操作なしで坂道も楽々 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 筆者が試乗したのは、女性向けモデルの「セブン・ヴィレット」。またぎやすいトップチューブの曲線が特徴的で、T字ハンドル、タイヤのカラーに馴染むブラックの前後フェンダー、ころんとした形の小ぶりのフロントライト、シートチューブに内蔵されたリアライトが備わっている。

 コボックの全車種に共通する最大のポイントは、トップチューブに内蔵された電源・操作部分。ボタンはデザインを邪魔しないようトップチューブの下部にあり、フレームに内蔵されたバッテリーを充電する際のケーブル接続も隣り合っている。ON・OFFのほか、ライトを装備した車種は長押しでライトのON・OFF、スポーツモードが備わる車種はモード変更などボタンひとつで全てを操作可能。バッテリー残量は操作部の反対側、つまりトップチューブ上部に並んだ5つの小さなライトで確認できる。

バッテリー残量はトップチューブ上部の5つの小さなライトで確認できる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
コボックの電源・操作部分はトップチューブ内蔵式 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
「セブン・ヴィレット」の駆動部分。ディスクブレーキが搭載されている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
ころんとした形のフロントライト Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
シートチューブに内蔵されたリアライト Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
コボック「セブン・ヴェスタブロ」は重量15.6kg。カリナ・エーマンさんが高々と持ち上げてみせた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 コボックのアシストレベルは乗車状況により自動で調整されるため、いちいち自分で操作をする必要がない。これは試乗してみて「便利だな」と感じた点のひとつ。イーバイクとしてのメリットを充分に生かせていると思うし、坂でアシストパワーがアップする際もスムーズで極めて乗り心地がよかった。また、オリジナルのスマホアプリを新規に開発。バイクの電源部分にBluetoothを搭載し、電池残量・走行可能距離のほか、速度計測、地図表示(現在地表示)、ナビ機能などが利用可能になった。

コボックのイーバイクに内蔵されたBluetoothと連動するアプリが新登場 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
コボックのイーバイクに電源ケーブルをバイク内臓のバッテリーと接続した状態 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 なお、イーバイクにあって重量15.4kgという点も見逃せない。試乗スタート時に電源を入れ忘れていたが、アシストされなくて初めて気がついたくらいだ。コボックは、全車種で重量13.7kg〜15.4kgの間に収め、「持ち運べるイーバイク」を目指したのだそうだ。エーマンさんは、「わたしも通勤で毎日マンションの階段を行き来していますよ」と「セブン・ヴェスタブロ」を高々と持ち上げてみせた。

クラシカルなバイクにインスパイアされたコボック「ワン・ソーホー」は、イーバイクであることを忘れさせる美しいデザイン Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
バーテープやサドルはブラウンでコーディネートされ、ツヤ消しアルミの車体のクールな印象を和らげる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
「ワン・ソーホー」のリアハブモーターは「セブン・ヴィレット」と同型だが、シルバーかつディスクブレーキでない分すっきり Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

“バンブーフレーム×電動モーター”の異色コンビ

 次に気になったのは、韓国のブランド「Mando」(マンド)から出展されていた小径の「フットルーズ」。妙にすっきりしたデザインだと思ったら、フレームに内蔵されたバッテリーというだけでなくチェーンが不在だった。「けっこう勢いよくスピードが出るので気をつけて。ヘルメットを装着したほうがいいですよ」というスタッフの注意を耳に試乗コースへ行ってみると、すぐにその意味を理解した。

マンド「フットルーズ」にはチェーンがない。自転車というより“イーモビリティー”カテゴリーの2輪車だ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
「フットルーズ」のバッテリーはフレーム内蔵 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
「フットルーズ」の操作パネルはスマホ画面のよう Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 フットルーズは、ペダルをひとこぎするまでもなくグイーンと前進し、ペダルはまるでアクセルの様相だ。コツをつかめばスイスイと運転できるが、間違っても自転車だと思って乗車はできない。スタッフに「フットルーズは自転車ですか?」と尋ねてみると、「イーバイクというよりも、クルマに変わる電動移動手段“イーモビリティー”カテゴリーの2輪車ですね」ということだった。

ベルの横には“ターボスイッチ”とでも呼ぶべきダッシュレバーが備わる Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
折りたたみ式のバイクスタンドがクランクに配されていた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 竹製のフレームを展開するドイツブランド「My Boo」(マイブー)は、イーバイク「マイ・ボルタ」を展示していた。天然素材とシマノ製駆動モーター「STEPS」の組合せがユニークだ。

2017年3月に販売が開始されたばかりのマイブー「マイ・ボルタ」。多くのユーザーのリクエストから生まれた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
シートチューブとダウンチューブの接続部は内部をメタルで補強して駆動部を組込んだ Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 マイブーではフレーム作りをガーナで行い、学校教育や雇用に関する同国の社会的プロジェクトにも貢献しているという。フェアコンディションの製品とイーバイクの生産というイメージが筆者の思考で結びつかず、スタッフへ開発理由を問うと「マイブーの製品は決して安くはないのでユーザー層は30代〜50代と高め。歳を重ねた顧客からのイーバイクの要望が多くて」と明かした。フレームへのモーター取付けはドイツ国内での作業で、開発の工程では特にシートチューブとダウンチューブの接続部が難しかったそうだ。

「マイ・ボルタ」のバッテリーは“積荷式” Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
マイブーでのベストセラーは、1999ユーロ〜(約23万4千円〜)のシティーバイク Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 日本の市場ではほとんど見かけないが、スポーティーな仕様のイーバイクはドイツでは人気がある。ドイツのブランド「Carver」(カーヴァー)は、イーバイクのラインナップとしてハードテイルMTB、クロスバイク、シティーバイクなどを豊富に揃える。ベストセラーはシティーバイクの「ルート」。ボッシュ製駆動モーターの「パフォーマンスライン」を搭載した「ソニック」は、どんな路面でもマルチに走破しスポーティーな走りも楽しめる“トレッキング・オフロード”向けバイクで、40代後半〜50代に好評だそうだ。

カーヴァーの「ルート」(右)と「ソニック」。スポーティーな仕様のイーバイクはドイツでは人気 Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA
カーゴバイクや“働く車”の出展も多く、来場者は試乗を楽しんでいた Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

 そのほか、カーゴバイクや“働く車”はイーバイクの醍醐味。会場には各種試乗車を揃え出展するブースがあったほか、イーバイク・フェスティバルの注目プログラムとして「カーゴバイク・レース」も催された。またドルトムントの隣町・ボーフムの大学の学生たちは、ベロタクシーのような2人乗りの乗り物を展示し、来場者の注目を集めていた。

イベント中日の土曜に開催された「カーゴバイク・レース」の様子 Photo: Andi Frank
イーバイク・フェスティバルは毎年、学生の製作発表の場としても有効活用されている Photo: Aki SCHULTE-KARASAWA

◇         ◇

「デンマーク・コペンハーゲンを目指す」と発言したドルトムントのウルリッヒ・ジーラウ市長(写真中央) Photo: Andi Frank

 昨年のイーバイクの販売数は、ドイツ国内だけでも13%増の60万5千台。業界では2020年までに100万台突破をにらんでいる。イーバイク・フェスティバルに先立ち催されたカンファレンスでドルトムントのウルリッヒ・ジーラウ市長(Ullrich Sierau)は、自転車に優しい街づくりを進めるデンマーク・コペンハーゲンを引き合いに出し「ヴェストファーレン(※)のコペンハーゲンとなりたい」と宣言している。

※ドルトムントを含む周辺都市から成る、州よりも小規模の地域単位。

シュルテ柄沢亜希シュルテ柄沢 亜希(しゅるて・からさわ・あき)

1982年生まれ、ドイツ在住。東京を拠点に4年間記者生活を送った後、フリーランスへ。書くこと、レポートすることが生きがい。執筆ジャンルは自転車・アウトドアアクティビティ、スポーツ、旅、食、アート、ライフスタイルなど文化全般。幼少期の5年間をドイツ・ハンブルクで過ごしたことがアイデンティティのベースにある。ブログ「ドイツのにほんじん」ほか、多媒体にて執筆中。

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