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引退のボーネンは13位ゴールヴァンアーヴェルマートがパリ〜ルーベ初制覇 終盤の消耗戦を制し初モニュメント

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 好調のリオ五輪金メダリストが念願の“モニュメント”初制覇―。4月9日にフランスで開催されたUCIワールドツアー「パリ〜ルーベ」は、5人の先頭集団のスプリントを制したグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)が、歓喜の初優勝を飾った。過去この大会を4度制し、今回が引退レースだったトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップフロアーズ)は、第2集団の13位でプロ生活最後のゴールを切った。

グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)が小集団ゴールスプリントを制してパリ〜ルーベ初優勝 Photo: Yuzuru SUNADA

追い風でハイペースに

 荒れたパヴェ(石畳)の厳しさで知られるパリ〜ルーベは今年、第115回目の開催を迎えた。数あるロードレースの中で特に価値が高いとされる“モニュメント”の一角。その難易度の高さから、「クラシックの女王」または「北の地獄」とも称される

 コースはパリ郊外のコンピエーニュから、ルーベのヴェロドローム(自転車競技場)に至る全長257km。厳しい上りはないものの、残り160km地点から登場する全29区間のパヴェが、選手を骨の髄まで揺さぶり苦しめる。パヴェの各区間(セクター)はカウントダウン形式で番号が振られ、また難易度に応じて最大5つの“星”が与えられている。最高難度・5つ星のセクターは、残り約95km、約48km、約17kmの3区間設けられている。

史上最多タイの4度のパリ〜ルーベ優勝を誇るトム・ボーネン。この日が引退レース Photo: Yuzuru SUNADA
レース前半は逃げが決まらないまま、ハイペースで展開した Photo: Yuzuru SUNADA

 雨が降ると石畳が滑り、まさに「地獄」と化すパリ〜ルーベだが、今年のレースは晴天に恵まれ、また風向きが追い風となったことで、舗装路のみのレース前半は非常にハイペースで進んだ。先行集団を作ってレースを有利に進めたい各チームのアシスト選手がアタックを仕掛けるものの、どれも決まらないままパヴェ区間が目前にと迫った。

 最初のパヴェ・セクター29を前に、ようやく3人が約30秒先行する形となり、本格的なパリ〜ルーベの戦いが幕を開けた。

有力勢も逃れられないパヴェのアクシデント

 パヴェ序盤戦から集団先頭で目立つのは、ボーネンと、世界チャンピオンのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)。最初の5つ星のセクター19「アランベール」を前に、集団前方の好位置をキープし続ける。

落車でコース脇にうずくまるニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ) Photo: Yuzuru SUNADA

 いっぽう優勝候補の一角で前週のツール・デ・フランドル2位のヴァンアーヴェルマートは、セクター20の前半で起きた落車に巻き込まれ、一時停止を余儀なくされてしまう。チームメイトのアシストを受けメイン集団に復帰したものの、前半から脚を使う展開となった。またボーネンのチームメイトで2014年の覇者、ニキ・テルプストラ(オランダ)がパヴェでの落車でリタイアを喫することになった。

 先行グループはセクター17でメイン集団に吸収され、続く舗装区間ではサガンが自らアタックした。平地に強いアシストのマチェイ・ボドナル(ポーランド)を引き連れ、これに反応したダニエル・オス(イタリア、BMCレーシングチーム)、ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)と4人の逃げ集団を形成し、すぐにメイン集団と約30秒の差を付けることに成功した。

 ところが、続くセクター16で、肝心のサガンがパンクでストップ。素早くホイールを交換したものの、結局ボドナルとともにメイン集団へと戻り、先頭はオスとストゥイヴェンの2人が逃げる形になった。

土煙を上げながらパヴェを進むメイン集団 Photo: Yuzuru SUNADA

女神に見放されたサガン

 2つ目の5つ星パヴェ、セクター11の「モン・サン・ペベル」に向けては、淡々と逃げ続ける2人に対して30秒前後のタイム差で、メイン集団の小競り合いが続く構図となった。変わらず積極的なサガンに対し、クイックステップはエースのボーネンをやや温存しつつ、集団に唯一残ったチームメイトのズデニャック・シュティバル(チェコ)が動きに反応する。

積極的に動いたボーネンだが、後半はやや動きが鈍った Photo: Yuzuru SUNADA

 モン・サン・ペベルでは、直前でメイン集団から抜け出した追走3人が、セクター終わりで先頭に追いつくことに成功した。しかしメイン集団も続くセクター10で、ボーネンが先頭に立ちペースアップ。先頭の5人をすぐに吸収した。

 逃げていた5人に、追いついた10人。集団はこの時点でわずか15人にまで絞られた。ボーネン、サガン、ヴァンアーヴェルマートらが残るが、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)、ラルス・ボーム(オランダ、ロットNL・ユンボ)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)らはすでに遅れている。

 残り距離は40km。集団からは再びオスがアタックし、単独抜け出すことに成功した。しばらく静観したメイン集団だが、一人、また一人と追走のアタックが放たれていく。サガンもこれに加わった。

2度のパンクは絶好のアタックが決まったタイミング。完全に運がなかったサガン Photo: Yuzuru SUNADA

 サガンは先に追走するシュティバルら3人に合流。ライバルに先行して有利な展開になったかと思われたが、何とここで再度のパンクでストップしてしまう。

 車輪交換で後退するサガンと入れ替わるように、ヴァンアーヴェルマート、ストゥイヴェン、ジャンニ・モスコン(イタリア、チーム スカイ)が追走集団に合流した。幸運の女神に見放されたサガン。このパンクが結果的に致命傷となった。

モニュメント初制覇へ絶好の展開

 レースに復帰したサガンは、ヴァンアーヴェルマートらを追うボーネンのグループに合流したが、ここに後方から十数人が追いついてくる展開になった。人数が増えて一見有利な状況だが、一度遅れた選手たちが大半を占める集団は、追走の勢いが乏しく、徐々に先頭とのタイム差が開いていった。

 一方ヴァンアーヴェルマートら6人のグループは、先頭のオスと合流。勝負所の最後の5つ星パヴェ、セクター4の「カルフール・ド・ラルブル」に向け、ヴァンアーヴェルマートのために先頭で待ち続けたチームメイトのオスが、露払いのように先頭集団のペースを作る。

 カルフール・ド・ラルブルでは満を持してヴァンアーヴェルマートがペースアップした。これに食い下がるのはシュティバル、ラングフェルドの2人のみ。少し遅れてモスコン、ストゥイヴェンが追随する。

カルフール・ド・ラルブルでヴァンアーヴェルマートが満を持してのアタック Photo: Yuzuru SUNADA

 後方集団ではボーネンが猛然とプッシュを見せるものの、ここまでで差が1分以上開いており、先頭を捕えるには至らない。サガンは心身ともにエネルギーを使い果たしたか、ボーネンの集団からも遅れていった。

 先頭はヴァンアーヴェルマート、シュティバル、ラングフェルドの3人。こうなると、全ての局面でヴァンアーヴェルマートの実力が抜きん出ている。追走するボーネンのために先頭を引かなかったシュティバルが小さな上りでアタックを見せても難なく反応し、ラングフェルドが微妙にペースアップを見せてもすぐに差を埋めてみせる。

最後は圧勝

 最終のパヴェを集団のままクリアした3人は、ついにゴール地点となるルーベのヴェロドロームへ、ヴァンアーヴェルマートを先頭に到達した。最後は屋外競技場のトラックを1周半してゴールとなる。スプリント勝負を前に牽制状態となった3人に、残り半周で後方からモスコンとストゥイヴェンが追いついた。その一瞬の隙を突いて、シュティバルがスプリントを仕掛けた。

不意を突いたシュティバルを落ち着いてかわすヴァンアーヴェルマート(左) Photo: Yuzuru SUNADA

 一瞬他の選手に囲まれて反応が遅れたヴァンアーヴェルマートだったが、落ち着いて加速すると、最終ストレートで一気にシュティバルを追い抜き、最後はガッツポーズでゴールラインを駆け抜けて、自身初のモニュメント制覇を勝ち取った。前週のフランドルでは落車のアクシデントで優勝のチャンスを失っていただけに、喜びもひとしおだ。

 悔しがるシュティバルは2015年に続き2度目の2位、ラングフェルドが3位に入り、終盤逃げていた3人が表彰台を占めた。現役ラストレースのボーネンは、12秒差の第2集団。最後はスプリントの先頭争いには加わらず、数々の栄光に満ちた選手生活を噛みしめるように13位でゴールした。

石畳のトロフィーを受け取ったヴァンアーヴェルマート Photo: Yuzuru SUNADA
表彰台の3人。(左から)2位のシュティバル、優勝のヴァンアーヴェルマート、3位のラングフェルド Photo: Yuzuru SUNADA

パリ〜ルーベ2017結果
1 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) 5時間41分07秒
2 ズデニャック・シュティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ) +0秒
3 セバスティアン・ラングフェルド(オランダ、キャノンデール・ドラパック)
4 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
5 ジャンニ・モスコン(イタリア、チーム スカイ)
6 アルノー・デマール(フランス、エフデジ) +12秒
7 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
8 エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
9 アドリアン・プティ(フランス、ディレクトエネルジー)
10 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)

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