スマートフォン版はこちら

サイクリスト

title banner

栗村修の“輪”生相談<98>41歳男性「転倒の仕方はトレーニングできますか?」

  • 一覧

 
 栗村さんのファンの41歳男です。栗村さんの本やDVDを見て日々トレーニングしております。特に上りのダンシングは、最も参考になった技術の一つです。

 先日、10歳の息子と一緒に長距離を走りに行った時、その帰り道に転倒し腕を骨折してしまいました。

 私の知る限りですが、速く走るためのトレーニング本やDVDはありますが、転倒の仕方や自転車をうまく操るためのものは、無いように思います。プロの方は、激しいレースでバランスを保っていますが、どの様なトレーニングをしておられるのでしょうか?

 例えば、自転車に乗ったままボトルを拾うとか、手放し運転の練習とかですかね? 読みづらい文章で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

(41歳男性)

 自転車は大変魅力的な乗り物であることは間違いありません。しかし、事故やけがのリスクが高い乗り物であるのも事実です。死亡事故も起こっていますし、死亡まで至らない事故なら、膨大に発生しているでしょう。

 自転車に乗る人が増えれば、転ぶ人も増える。これは、否定できない現実です。プロでも、転ぶ選手は転びます。自転車とは転ぶものである、ということを前提にしなければなりません。

 「転倒の仕方」と「自転車をうまく操る」と、ふたつの項目を挙げておられますが、たしかに、落車に関するトレーニングは2つ考えられます。転ばないトレーニングと、転んだあとに、ダメージを減らすためのトレーニングです。

 著書などで何度も繰り返していますが、トレーニングは順応です。これは、インターバルがどうといったフィジカルトレーニングにおいてもそうですが、テクニックにも当てはまるんですね。

トッププロといえども転倒を完全に回避することはできない =ツール・デ・フランドル2017、2017年4月2日 Photo: Yuzuru SUNADA

 順応とはつまり、予想される本番にできるだけ近い状況を経験することで、心身を慣れさせるということです。激しいペースの上げ下げがあるレースには、インターバルトレーニングで備える。長いヒルクライムには、中・高強度を長時間維持できるトレーニングで備える、という具合です。

 以上を踏まえると、転ばないためのトレーニングは、「転びやすい状況を経験する」ということになりますね。具体的には、滑りやすい路面や、他の選手との接触です。

 交通事故などを除くと、実際の、単独の落車の原因のほとんどは、スリップによるものだと思うんです。ということは、転びやすい路面で、転ばずに走るトレーニングが効果的ということです。

 ベストはやはり、シクロクロスなどのオフロード競技を経験することでしょう。ロードバイクに近い形状の自転車で、砂、木の根、泥など、「ロードバイクが転ぶ状況」を経験できるわけです。変な表現ですが、理想的な落車を回避するトレーニングだと思いますよ。

 問題はもう一つのほう、つまり転んだ後のトレーニングです。

オフロードを走るシクロクロスでは、バランス感覚が鍛えられる =シクロクロス東京2017、2017年2月12日 Photo: Naoi HIRASAWA

 こればかりは、順応などと言ってはいられません。一回の落車が命を奪うかもしれないんです。けがをせずに何度も転ぶことができれば、トレーニングになるんでしょうが…。

 と、ここに、落車が怖い理由がある気がします。どういうことかというと、落車の状況って殆どが「初体験」なんですよ。だから、対応が難しいわけです。

 だから、「初体験」の度合いを減らせれば、トレーニングになるかもしれませんね。落車を経験することはできませんが、それに近い体験ができれば、違うと思います。柔道の受け身とか、器械体操とか、自分の体が日常ではありえない形で動く経験は、ある意味落車後のトレーニングになるはずです。

 この点でも、さほど致命的ではない軽度の落車が頻発するシクロクロスなどは効果的かもしれませが、転ぶことを薦めるわけにもいきませんね。質問者さんがおっしゃる、ボトル拾いや手放しも、トレーニングになるはずです。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

関連記事

この記事のタグ

栗村修の“輪”生相談

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載