スマートフォン版はこちら

サイクリスト

NLSエクスペリエンスを体験キャノンデールのSLATEで奈良・柳生の里にタイムスリップ 古都と里山、今と昔をつなぐ50km

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
  • 一覧

 春の奈良の里山をキャノンデールのニューロード「SLATE」(スレート)で走るツアー「NLS EXPERIENCE @NARA」が3月下旬に行われた。走行距離約50kmながら、旧街道をつないで里山を走り、「獲得標高は1000m」とだけ伝えられた魅力的なライド。本格的なオフロード走行初体験のCyclist編集部員が、各地から集まった皆さんと一緒にチャレンジした。

里山の川にかかる木製の橋で記念撮影する Photo: Hisashi INOUE

行き先非公表のミステリーツアー

 行き先、ルートの全く分からないライドほど痛快なものはない。3月下旬、まだ朝日の出ていない朝6時過ぎに大阪・江坂でキャノンデール・ジャパンの山本和弘さんと合流。マウンテンバイクとシクロクロスの日本代表だった元トッププロの山本さんから直接指導を受ける贅沢なライドへ出発した。フォードの大型バンにスレートを積み込むと、早朝の大阪のビル街を抜ける。山本さんにルートを聞いても教えてくれない。「今回はミステリーツアーですから。約50㎞と距離は短い分、1000mアップなので、覚悟だけはしておいてください」と最高の笑顔が、逆に怖く感じた。

朝早く大阪から奈良方面へ移動。どこを走るかは教えてくれない Photo: Kenta SAWANO
サイクリングガイドの資格を持つ井上寿さんが手信号をレクチャー Photo: Kenta SAWANO 

 「あの山を越えた向こうがスタートです」と朝日が上った生駒山系の山を指した。「山奥がスタートなのか…」。有料道路で奈良に入り、到着したのは山ではなく、奈良の中心地、JR奈良駅前だった。スレートはオフロードを走るものと勝手に思っていたが、意外にもビルに囲まれた街中がスタート地点だった。

「ストラーダバイシクル」井上さんがガイド

奈良駅前でブリーフィング。RIDASの井上さんが分かりやすく説明 Photo: Kenta SAWANO 

 その奈良駅で今回のナビゲーターと落ち合う。滋賀県に本店を構えるショップ「ストラーダバイシクルズ」代表取締役の井上寿さんだ。「自転車を売るだけでなく、どういう風に楽しめるかが大事」とサイクリングツアー会社の「RIDAS」(ライダス)も設立し、そのイベント第1号が、キャノンデール・ジャパンと共催した、この「NLS EXPERIENCE @NARA」だった。奈良はサイクリング少年だった井上さんの「庭」でもあり、ルートだけでなく、その歴史も知り尽くしており、より深いライドを提供してくれた。

 井上さんがナビゲートし、オフロードの走り方は山本さんが先生を務めてくれた。荷物と食料を積んだ同店のサポートカーをスタッフの厚海聖子さんが運転。何かあれば万全のサポート体制で要所で補給を手伝ってくれた。

レフティサスペンションには体重に合わせて推奨のエアーを入れる Photo: Kenta SAWANO
レフティサスペンションにエアーを入れる山本和弘さん Photo: Kenta SAWANO 
レフティはサスペンション上のボタンを押して調節 Photo: Kenta SAWANO

 今回は参加者全員にキャノンデール・ジャパンがレフティサスペンションを搭載した「SLATE ULTEGRA」(スレート・アルテグラ)を準備。ドロップハンドルを装備しながら、700C×23Cの外径と同じ650Bホイールに42Cのスリックタイヤ、細く扁平した部分が多いリア三角(SAVE PLUS リアトライアングル)を装備。オンロード、オフロードのどちらも楽しめる機動力を楽しむコースとして奈良が選ばれた。山本さんからタイヤの空気圧と、サスペンションのオン、オフの使い方のレクチャーを受け、一般参加者を含め合計7人のライダーが奈良駅前をスタートした。

古都の景色になじむSLATE Photo: Kenta SAWANO

 五重塔まではメーンストリート「三条通」の舗装道路を走り、観光地の旧市街を抜ける。42Cのタイヤもスリックタイヤのせいか全く重さを感じない。軽やかにシッティングのまま五重塔までの緩やかな坂を上る。古い町並みを眺めたり、森にシカを見つけて写真撮影したり、序盤はのんびりしたムードでライドが進んだ。スタートして上りがひと段落した茶屋では、わらびもちとお茶で一服。時代が止まったような空間で、おそろいの装束でお参りする集団を眺めていると、ちょっとしたタイムスリップの感覚を味わえた。

朝早く、奈良の“メーンストリート”三条通を一列で走る Photo: Kenta SAWANO
鹿に「こんにちは」 Photo: Kenta SAWANO

 福岡から遠路参加した村石昭彦さんは「もともと奈良が大好きなので、そこを自転車で走るイベントがあるとSNSで知って参加を即決しました。一番好きな季節にこんな素敵な道を走れて最高です」と満足そうにお茶をすすった。

江戸時代から続く峠茶屋でまずは一服 Photo: Kenta SAWANO 
作りたてのわらび餅でスタート直後にカロリー補給 Photo: Hisashi INOUE
里山のトレールを車間を空けて走る Photo: Kenta SAWANO

 中盤からは、待ちに待ったトレール区間が始まる。サスペンションの調節方法、トレールでの車間の取り方などについて、山本さんのレクチャーを受けると、一列になって大きな石が混じった土の上を一気に下った。

 最初は恐る恐るラインを選んでいたが、慣れてくると石畳の上で自分が進むべきラインが見えてきた。30年近く前、BMXレースに出ていた頃の“ワクワク感”が戻ってきて、少しずつ攻めた走りができるようになった気がした。

 後ろを走っていた山本さんの「ナイスライン!」というお褒めの(お世辞の?)掛け声で、知らず知らずのうちにスピードアップ。最初はスリックタイヤで心配だったが、空気圧をわずかに落とした42Cのタイヤは確実に路面を捉える。スリックということがわかっていることで、感覚が研ぎ澄まされ、ギリギリのところを攻める感覚が楽しい。

井上さん撮影のプロ級写真も

井上さんが撮影した田中哲治さん Photo: Hisashi INOUE

 今回のライドのもう一つの楽しみが井上さんに撮ってもらう写真だった。井上さんは経営者兼ガイドでありながら、写真家ハービー山口氏とも交流があり、写真撮影に関してセミプロ級の腕前を持つ。撮影ポイントを熟知した井上さんがコースの途中で唐突に「ナイス・レオン・ポイントです!」とストップさせる。

 「ナイス・レオン」とはもちろん井上さんの造語で、雑誌「LEON」(レオン)のような「チョイ悪おやじ」風なポーズを取りましょう(編集部想像)というニュアンスの造語。「普段のあなたじゃないあなたを撮ります。家族に見直されるような写真です。家族を家に残して、週末自転車に乗りに出かけるお父さんライダーが家族に『お父さんは自転車に乗っているとこんなに格好良いんだよ』と伝えられるような写真を目指しています」と笑って説明してくれた。

井上さんが撮影してくれたスレートの楽しさが伝わる写真 Photo: Hisashi INOUE 
川沿いで一休みするキャノンデール・ジャパンの伊藤浩希さん Photo: Hisashi INOUE
一列に並んだ参加者のスレート。なかなかこの数を目にすることはない Photo: Hisashi INOUE

 実際に撮ってくれた写真は、背景、表情、ライディングフォームなど、実物以上に良く撮れていた。シャッターを押されるごとに、参加者も少しずつモデル気分になっていった。そんな体験ができるのも「RIDAS」を主宰する井上さんだからこそのイベント。「RIDAS」では今後、このようなイベントを年間を通じて開催していくという。そんなリラックスタイムを織り交ぜながら、コースは地獄の?上りへと進んだ。

歩いてしか登れないような道もスレートはぐんぐん進んでいく Photo: Kenta SAWANO
「あの山を足を付かずに上れればスレートをプレゼントします」と笑顔の山本和弘さん Photo: Kenta SAWANO
急坂に苦しむ参加者 Photo: Kenta SAWANO

 山本さんが「あの山を登れたらスレートを1台プレゼントします」と遠くの山を指さして宣言した。通称「かえりばさ峠」は勾配20%の激坂。途中からは自転車で走ることができないが、その前に全員が足をついてしまい、残念ながらスレートはゲットできなかった。誰もがスレート獲得を狙ったが、途中で足をついてしまいギブアップ。最後は濡れた細かい石畳の上をゆっくり歩きながら、昔通った旅人に思いを馳せ、峠を越えた。

古びた木製の橋を渡る村石昭彦さん(右)ら Photo: Hisashi INOUE 
「デザート」と呼ばれた川沿いのワインディングロードでジャンプする山本和弘さん Photo: Kenta SAWANO

 ここまでで午後2時過ぎ。峠を越え、柳生十兵衛で有名な「柳生の里」に到着。昔にタイムスリップしたような山里で古びた木製の橋を渡り記念撮影。ここで井上さんが「メーンディッシュが終わりました。ここからはデザートです」と参加者に予告。待ち受けたのは川沿いの古びた舗装路だった。

 一見、普通の道路だったが、途中から舗装路は荒れ始め、川沿いのカーブはどんどん曲がりくねっていった。下りの勾配も急になり、ぐんぐんスピードアップ。テクニカルなコースでもドロップハンドルと短いチェーンステー長のジオメトリーが機敏に反応。後ろを走る山本さんが「イエ~イ!」と絶叫しながら盛り上げてくれる。落ち葉にも細心の注意を払いながら約3kmのジェットコースターライドを満喫した。

日本の原風景のような段々畑の間をスレートで進む Photo: Hisashi INOUE 
最後の写真撮影ポイントでウィリーを披露する山本和弘さん Photo: Hisashi INOUE

 日が傾きはじめ、「もうライドも終わりか」とこの日のライドを振り返っていると、先頭を走る井上さんから「デザートの後のコーヒーみたいなライドで締めます」と声がかかった。これまでの小川が本流の川に合流し、視界が開けると、そこから鉄道沿いの走りやすいトレールが続いた。映画「スタンド・バイ・ミー」をほうふつとさせるのどかな景色。ここで井上さんによる最後の「ナイス・レオン」撮影を全員で行い、素敵な写真に収まっていった。

 参加者も一様に満足そうだった。滋賀県在住の田中哲治さんは「ロードバイクとマウンテンバイクを持っていますが、これ一台で済みそうで、欲しくなりました。現在乗っているSUV車にも似合うそうなルックスもいいですね」と購入に揺らいでいた。大津市から参加の瀬崎順一さんは「スレートは1回軽く試乗しただけなので、今回は思いっきり走れました。ロードバイクとグラベルバイクを持っていますが、そのいいとこどりですね」と気に入った様子だった。

東大寺をバックにスレートに乗って最後の集合写真 Photo: Kenta SAWANO

 最後のトレールを抜けると、やがて東大寺に到着。スレートから下りて押しながら観光地を歩いた。日曜日で大勢の観光客にもまれながら少しずつ街中に戻ると、タイムスリップしていた昔から、現実に戻ってきたような感覚に変わってきた。オフロードとオンロードを両方走れる「スレート」だから結ぶことのできた今回のルート。スレートは今と昔を結ぶ「タイムマシン」のような働きをしてくれたと実感した。

 山本さんも「ロードでは絶対に走れないし、かといってマウンテンバイクだと安定して走れてしまうので、スレートのおかげでチャレンジングで魅力的なライドを楽しんでいただけたと思います」と自らも楽しんだ様子。キャノンデールは今年各地でスレートを楽しむライド「NLS EXPERIENCE」を開催していく予定だ。

 

 

関連記事

この記事のタグ

キャノンデール 奈良県

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載