スマートフォン版はこちら

サイクリスト

title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<203>ブエルタ・ア・エスパーニャ2017の出場チームが決定 フランドル展望もお届け

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 ブエルタ・ア・エスパーニャを主催するスペインのスポーツイベント企業のウニプブリクは3月27日、今年8月19日に開幕するブエルタ2017の出場チームを発表した。18のUCI(国際自転車競技連合)ワールドチームが自動選出されたほか、同プロコンチネンタルチームから選ばれる4枠のワイルドカードは、古豪と新顔とがセレクトされる形となっている。また、今回は間近に迫ったツール・デ・フランドルの展望もお届けする。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017の出場チームが決定。今年も22チームがスペインを巡る =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第21ステージ、2016年9月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

出場は他のグランツール同様22チーム

 シーズン最後のグランツールとして、8月から9月にかけて開催されるブエルタ。第72回大会となる今年は、1月12日に3週間・全21ステージのルートが発表された。そこでは、大会前半から上級山岳が登場し、以降もスペインの名だたる山岳地帯へと向かっていくことが明らかになった。まさに“ブエルタらしい”山岳比重の大きなレースとなることは必至だ。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017ルートマップ © Unipublic

 そんな壮大かつ、名誉ある舞台に立つことができるのは22チーム。ウニプブリクの発表では、「UCIのルールに基づいて」として、まず18のUCIワールドチームを自動的に選出。そして、第2カテゴリーにあたるUCIプロコンチネンタルチームから4チームをワイルドカードとして選んでいる。

 ブエルタに限らず、どのグランツールでも注目されるのがワイルドカード。晴れて今年のブエルタ出場権を確保したのは、コフィディス ソリュシオンクレディ(フランス)、カハルーラル・セグロスRGA(スペイン)、アクアブルースポート(アイルランド)、マンサナ・ポストボンチーム(コロンビア)。このうち、アクアブルースポートとマンサナ・ポストボンチームは、3つあるグランツールを通じて初出場となる。

 出場チームは以下の通り。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017出場チーム

●UCIワールドチーム
アージェードゥーゼール ラモンディアル(フランス)
アスタナ プロチーム(カザフスタン)
バーレーン・メリダ(バーレーン)
BMCレーシングチーム(アメリカ)
ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)
キャノンデール・ドラパック プロフェッショナルサイクリングチーム(アメリカ)
エフデジ(フランス)
ロット・ソウダル(ベルギー)
モビスター チーム(スペイン)
オリカ・スコット(オーストラリア)
クイックステップフロアーズ(ベルギー)
ディメンションデータ(南アフリカ)
チーム カチューシャ・アルペシン(スイス)
チーム ロットNL・ユンボ(オランダ)
チーム スカイ(イギリス)
チーム サンウェブ(ドイツ)
トレック・セガフレード(アメリカ)
UAE チームエミレーツ(UAE)

●UCIプロコンチネンタルチーム(ワイルドカード選出)
コフィディス ソリュシオンクレディ(フランス)
カハルーラル・セグロスRGA(スペイン)
アクアブルースポート(アイルランド)
マンサナ・ポストボンチーム(コロンビア)

新たなブエルタを感じさせるワイルドカード4チーム

 ここからは、ワイルドカードでの出場権獲得を果たした4チームを見ていきたい。

絶対的スプリンター、ナセル・ブアニ擁するコフィディス ソリュシオンクレディは今年もブエルタ選出 Photo: Yuzuru SUNADA

 ビッグレースでもおなじみのコフィディス ソリュシオンクレディは、今大会にも危なげなく選出された。コフィディス社はブエルタの大口スポンサーとして、数年にわたって大会を支えており、チームのワイルドカード選出もビジネス的な側面があるのは確かだ。とはいえども、エーススプリンターのナセル・ブアニ(フランス)や、2014年大会ではステージ1勝を挙げて総合10位に食い込んだダニエル・ナバロ(スペイン)といった実力者がそろっており、戦力的にもビッグチームを追いかけるだけの強さは持ち合わせる。

スペイン唯一のUCIプロコンチネンタルチーム、カハルーラル・セグロスRGAは今年もブエルタの舞台に立つ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第1ステージ、2016年8月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 カハルーラル・セグロスRGAは、スペイン唯一のUCIプロコンチネンタルチームとして、同国自転車界ならびに同国開催のビッグレースでは欠かせない存在。このところブエルタ出場の常連チームとなっており、2015年にはオマール・フライレ(スペイン、現ディメンションデータ)が山岳賞を獲得するなど、存在感を示してきた。近年は、将来性の豊かな選手についてはスペイン人に限らず採用する方針をとっており、チーム力も着々と上がってきている段階だ。

 これら古豪とは対照的に、初出場を勝ち取ったのがアクアブルースポートとマンサナ・ポストボンチーム。

チーム発足1年目ながら、すでにビッグレースへの招待を獲得しているアクアブルースポート。この紺色のジャージを覚えておこう。写真はリー・ハワード ©︎ Aqua Blue Sport

 アクアブルースポートは今年、サイクルロードレースシーンで産声を上げたアイルランド籍のチーム。所属選手は16人と小規模ではあるが、ビッグチームでの経験や実績に富んだライダーをそろえている点で、チーム結成時から注目を集めてきた。このうち、ラーシュペッテル・ヌールハウ(ノルウェー)、ローレンス・ワーバス(アメリカ)、アダム・ブライス(イギリス)、シュテファン・デニフル(オーストリア)、アンドリュー・フェン(イギリス)、リー・ハワード(オーストラリア)、マイケル・クレーデル(オランダ)がトップチームでのグランツールを経験済み。

 アイルランドといえば、同国自転車界の英雄であるショーン・ケリー氏が1988年にブエルタを制覇するなど、関係は深い。2014年にはジロ・デ・イタリアがアイルランドステージを設けるなど、同国内での自転車熱が高まっている。4月に行われる、ラ・フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ~バストーニュ~リエージュにもワイルドカード選出されており、ここまでのロビー活動は大きく実を結んでいる。戦力的に見ても、今年のブエルタでは台風の目となる可能性は秘めている。

コロンビア籍のマンサナ・ポストボンチームがブエルタ初出場を勝ち取った。同国自転車界の支援を目的とした選出だ ©︎ Manzana - Postobon Team

 もう1つのサプライズ選出は、コロンビア籍のマンサナ・ポストボンチーム。こちらは、2006年にチームが結成され、2011年にはコロンビア・エス・パシオン-カフェ・ド・コロンビアの名でUCIプロコンチネンタルチームとして活動した実績がある。現チーム名になったのは2015年で、プロコンチネンタルチーム復帰も今年と、まだ国際的には無名。所属16人中13人をコロンビア人選手が占めており、若い選手が多い。チームで最も実績があるのは、唯一のスペイン人ライダーであるアントニオ・ピエドラ。2012年大会の第15ステージ、難所のラゴス・デ・コバドンガを制したクライマーといえば、思い出される方も多いのではないだろうか。近年は南米のチームを渡り歩いているが、今年は久々のブエルタ復帰が果たせるかもしれない。

 チームは3月26日に閉幕したボルタ・ア・カタルーニャに出場したが、目立った成績は残すことができなかった。ブエルタでも苦戦が予想されるが、ここ数年は財政難に苦慮しているというコロンビア自転車界の支援を目的とした、ウニプブリクによる選出でもあるようだ。

 選ばれたチームを見ていくと、新興チームの存在もあって「新たなブエルタ」の趣きを感じさせてくれる。スペインでの3週間から、また新たな発見や感動に出会うことができるのではないだろうか。

 一方で、出場が期待されながらも無念の落選となったチームもある。今年の開幕地はフランス南部の街・ニームだが、この近くを拠点とするデルコ・マルセイユKTMはツール・ド・フランスに続いて選ばれず。また、大会の常連で、昨年ステージ1勝を挙げているディレクトエネルジー(フランス)の名も呼ばれることはなかった。その意味でも、初出場チームの活躍を期待する主催者の思惑が見えてくる。

 熱戦が楽しみなブエルタ2017は、8月19日から9月10日の日程で行われる。

ツール・デ・フランドルプレビュー

 クラシックレースの中でも、とりわけ歴史と伝統を誇る「モニュメント」に位置付けられる、ツール・デ・フランドルが4月2日にベルギー北部のフランドル地方で行われる。同地では“ロンド・ファン・フラーンデレン”の名で親しまれており、サイクルロードレースにおいて最も権威ある大会として選手・ファン、そして国民全体が注目するレースでもある。シーズンによっては、テレビ視聴率が90%を超えるともいわれる。

ツール・デ・フランドル2017ルートマップ ©︎ Flanders Classics

 第101回目を迎える今回は、アントウェルペンからアウデナールデまでの260kmで争われる。レースのポイントとなる急坂セクションは18、パヴェ(石畳)セクションは5。“ミュール”と呼ばれ壁を意味する急坂セクションは、ほぼ半数が石畳の路面となっており、どれも難所だ。また、かつては勝負どころとして数々の名場面が生まれたミュール・カペルミュールを中盤に通過。丘の頂上に教会がある神聖な場所を走る美しさも備える。

 なかでも注目は、コッペンベルグ(215km地点、登坂距離600m、平均勾配11.6%、最大勾配22%)、3回通過するオウデ・クワレモント(115km・205km・243km地点、登坂距離2200m、平均勾配4%、最大勾配11.6%)、2回通過するパテルベルグ(209km・247km地点、登坂距離360m、平均勾配12%、最大勾配20%)の3カ所。

オウデ・クワレモント3回目の通過ではレースは大きな局面を迎える =ツール・デ・フランドル2016、2016年4月3日 Photo: Yuzuru SUNADA

 例年、コッペンベルグでメイン集団の絞り込みが本格化し、3回目のオウデ・クワレモントで有力選手たちがアタック、そして2回目のパテルベルグで生き残りを賭けた決死の登坂が待ち受ける。これらをクリアした選手の中から、優勝者が生まれるはずだ。

 2回目のパテルベルグからフィニッシュまでは13km。おおむねフラットであることから、独走力のある選手が単独で逃げ切るか、あるいは数人の先頭集団によるゴールスプリントで勝負が決まる可能性が高い。今シーズンの北のクラシック数レースの傾向を見ても、力のある選手のアタックをきっかけに、他の優勝候補選手たちが同調。先頭交代のローテーションを繰り返しながら、そのまま優勝争いへと流れていくことが多い。

E3ハレルベーク、ヘント〜ウェヴェルヘムと連勝しているグレッグ・ヴァンアーヴルマート(中央)がツール・デ・フランドルでも優勝候補筆頭に立つ =2017年3月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 レースは、今シーズン絶好調で、3月24日のレコードバンク・E3ハレルベーク、その2日後のヘント~ウェヴェルヘムを連勝したグレッグ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチームが)優勝候補筆頭。昨年のリオデジャネイロ五輪・ロードレース金メダリストは、このところ狙ったレースを確実にモノにする強さを見せているが、その最大目標はフランドルと公言。5月に32歳となるが、まさに今がキャリアのピークを迎えている。

今シーズンはビッグクラシックの勝利がないペテル・サガン(先頭)だが、十分な存在感を示している Photo: Yuzuru SUNADA

 対抗馬として名が挙がるのは、前回覇者のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)。今年はビッグクラシックの優勝をあと一歩で逃し続けているが、その要因としてヴァンアーヴルマート以上の徹底マークにあっている点が挙げられる。なかなか勝負に出るきっかけがつかめず、その間にライバルの動きを許している感がある。どのレースよりも力勝負となるフランドルこそ、自らの脚で打開するチャンスがあるはずだ。

チーム力は随一のクイックステップフロアーズ。引退へのカウントダウン真っ只中のトム・ボーネンは有終の美を飾ることができるか Photo: Yuzuru SUNADA

 エースクラスを複数そろえるクイックステップフロアーズは、チーム力でどのように展開していくか。今シーズン加入のフィリップ・ジルベール(ベルギー)がジョーカーとなり、早い段階でメイン集団をかき回す戦法は、3月22日のドワーズ・ドール・フラーンデレンでのイヴ・ランパールト(ベルギー)の優勝を呼んでいる。現役引退へのカウントダウンが始まり、キャリア最後のフランドルとなるトム・ボーネン(ベルギー)も好調。消耗戦となれば、アシストに守られ続けたボーネンが勝負に動く可能性が高い。

進境著しいオリヴィエ・ネーセンも上位戦線を賑わせそうだ Photo: Yuzuru SUNADA

 E3ハレルベーク3位のオリヴィエ・ネーセン(アージェードゥーゼール ラモンディアル)、ヘント~ウェヴェルヘム2位のイェンス・クークレール(オリカ・スコット)の進境著しいベルギー勢も勝機は十分。小集団スプリントともなれば、2015年の覇者アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、チーム カチューシャ・アルペシン)やジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)、イェンス・デビュッシュール(ベルギー、ロット・ソウダル)らの名が挙がる。セップ・ヴァンマルク(ベルギー、キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム)は、コンディション不良でここまで目立った走りが見られないが、回復傾向にあるといい、そろそろ上位戦線に姿を現すことだろう。

今週の爆走ライダー−イヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップフロアーズ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 3月22日のドワーズ・ドール・フラーンデレンでは、チームメートのジルベールとのコンビネーションから独走態勢に持ち込み優勝。UCIワールドツアー昇格後最初の覇者となった。

3月22日のドワーズ・ドール・フラーンデレンで快勝したイヴ・ランパールト。地元近くでの勝利に喜びを爆発させた Photo: Yuzuru SUNADA

 勝利をお膳立てしたジルベールをもってして「優勝に値する走り」と、最大の賛辞を受けたこの日の強さ。何より特別だったのは、普段のトレーニングコースで勝てたことだ。コース近くの街・インゲルムンステルに住み、レース後には地元の熱狂的なファンに手荒い祝福を受けた。

 それでも、この1勝でチーム内での立場が大きく変わるとは思っていない。ボーネンやジルベール、ニキ・テルプストラ(オランダ)ら大物ぞろいの中で、自身を「チームプレーヤー」と位置付ける。この先に控えるビッグクラシックでも、まずはアシストとしての働きを意識する。

 昨シーズンのこの時期は、アキレス腱の負傷で戦線を離脱。買い物中にショッピングカートにぶつかり、その痛みはトレーニングすらままならないほどだった。戦力と見ていたチームとしても、プランの変更を強いられる結果に。それだけに、大事なピースの1つとして機能する今シーズンは、どんな役割でも受け入れて走る心構えでいる。

 ベルギーでは屈指のタイムトライアルスペシャリストとしても期待をされる25歳。あらゆる局面に対応できる走りを身につけている「今」が、自らのキャリアを約束するものと信じて走り続けていくことになる。

自らを「チームプレーヤー」と語るイヴ・ランパールト。エースクラスの走りを支えることを意識するが、それが近い将来の躍進へとつながるはずだ Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

関連記事

この記事のタグ

ツール・デ・フランドル2017 ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載