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猪野学の“坂バカ”奮闘記<10>強制退去、狂犬の襲撃…トレーニングにまつわる「恐怖体験」

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 速くなるために必要なのは「トレーニング」だ。今日はそのトレーニングにまつわる「恐怖体験」についてお話ししたい。そう、トレーニングには思わぬ危険がつきまとっており、その対処法を間違えると大変な事態を招く可能性すらあるのだ。

筆者に迫るかつてない恐怖! 決死の逃走の結末は…?

メインのトレーニングは「暗闇練」

 レース会場などで皆さんから一番聞かれるのが「普段どういったトレーニングをされるんですか?」という質問だ。「そうですねぇ…やっぱり仕事が忙しいんでローラーがメインですかねぇ…」と答えるのだが、実は大して忙しくなくても、私のメイントレーニングはベランダでのローラーだ。

神との合宿で直々にローラー練習法を手ほどきされた!感激!

 きっかけは、山の神・森本誠師匠と行った我が故郷三重県での冬季合宿だった。

 当時師匠のメイントレーニングはローラーで、一定負荷をかけ続けるトレーニング。1時間300Wキープ…恐ろしい数値だ。300Wキープするだけに全ての精神を注ぎ込む。テレビも電気も消し、真っ暗な中ただひたすら高強度を維持する。

神と合宿中の1コマ(本文とはあまり関係ありません)

 何故暗くするのか? と問えば「明るいと腹立って来るから」とのお言葉…自分もやってみたが、確かに高強度を維持すると、ちょっとした事に腹が立って来るし、気が散って集中出来ない。暗闇にして精神を集中するのが一番だ!私は今でもわざわざ日没を待ち、暗闇ローラーを実践している。

 しかし森本師匠、今では雨が降っても実走に出かけるほどローラーをやらないらしい。恐らく神は一生分ローラーを回したのだろう。

ローラーの騒音が原因で…

 ローラー歴が長くなると色々な事を経験する。前に住んでいたマンションでは、隣の住人がこう言って怒鳴り込んで来た。

  「お宅の洗濯機ウルサ過ぎるんだよ!」

 ローラーの音を洗濯機と勘違いしたらしい。私はローラーを説明するのが面倒なので、すみません古い洗濯機なのでと嘘をついた。隣のおじさんごめなさい。

素晴らしいベランダで調整中。最高のローラー環境だ

 数日後、外出時に大家さんから「水漏れの点検をしたいので部屋に入っても良いか?」と電話があった。私はローラーの事をすっかり忘れ、入室を承諾してしまった。ローラーがバレた事も恥ずかしかったが、机の上に置きっぱなしにしてた破廉恥なDVD を見られた事の方が恥ずかしかった。結局、騒音の原因が洗濯機でない事がバレたからか、追い出される事になる。破廉恥なDVDでは大家は追い出さない。

 その後は、物件探しに走り回る羽目になった。しかも物件選びの第1条件に「ローラー環境」と書いて不動産屋を困らせた。しかし探せば何とかなるもので、今では素晴らしいベランダに恵まれ、今のところ御隣様から苦情は来ていない。

尾根幹の攻防

 そんなローラー族な私も勿論実走に出掛ける事もある。都内在住のチャリダーたちが愛してやまない尾根幹(多摩ニュータウンの尾根幹線道路)だ。アップダウンがあり信号が少なく、周りには連光寺坂や小山田周回、よみうりランドの坂などがあり、坂環境も充実。プロや実業団の方々も練習に使っているし、私も恐らくもう300回以上は通っていると思う。

私も通っている“尾根幹”。ここでもまた恐怖体験が…

 それだけ通っていると色々な事を経験するのだが、中でも忘れ難い出来事がある。ある日、小山田周回を走っていると、一番勾配のキツいところで、突如狼の様な(少なくとも私にはそう見えた)狂犬が、私のヒラメ筋めがけて襲いかかって来た。私は幼い頃に隣家の犬に太股を噛まれ大量に出血し、今でも太股に犬の歯形が残っているのだが、一瞬であの恐怖が蘇ってきた。尾根幹で大量出血なんて洒落にならない。

※写真は筆者のイメージです

 ギアをスパスパッと2枚上げ、ダンシングで逃げる! …が、狂犬の勢いは衰えるどころか加速して来る。ダメだ噛まれるっ!と思った瞬間、私は良いことを思いついた。ギヤを軽くしダンシングのケイデンスを上げれば、狂犬も噛みにくいに違いない!

生死をかけたアタック! 逃げが決まるかっ?!

 もはや恥も外聞もない。ひたすらケイデンスを上げる。狂犬は噛もうとするがクルクル回る踵が顔にヒットして上手く噛めないようだ。しかし狂犬は諦めない。何とか噛み付こうとフガァっフガァっっと何度も顔をペダルにヒットさせて来る。足首辺りによだれが付着するのがわかる…早く何とかなってくれ!

トレーニングに危険はつきもの

 永遠に続くかと思われた狂犬との攻防だが、勾配が緩くなった所でギアを上げ、ようやく逃げが決まった。この時だけは、ダンシングが苦手な私もコンタドールばりの走りができていたに違いない。咄嗟の判断により何とか事なきを得たが、あんな恐ろしい体験は初めてだった(あとで聞いたことだが、ドーベルマンほどもあるかと思われた狂犬は、どうやら小さな犬だったらしい)。

トレーニングの道は険しい

 こんな私をばかにしてはいけない。自転車乗りが動物に遭遇し怪我をする事は結構あるらしい。赤城山では下山中に鹿にアタックされ落車し、骨折したとか、乗鞍では熊に遭遇したとか。

 速くなるために必須のトレーニングには、家の内外を問わず、思わぬ危険がつきものだということがお分かりいただけただろうか。皆様もどうかお気をつけ下さい。

(写真提供:NHK/テレコムスタッフ)

猪野 学猪野 学(いの・まなぶ)

俳優・声優。自転車情報番組NHK BS1『チャリダー☆』(毎週土曜18:00~18:25)にレギュラー出演し、「坂バカ俳優」という異名で人気を博す。自転車の他、空手やスキーなども特技とするスポーツマン。俳優として舞台や映画、ドラマなどで活躍する一方、映画『スパイダーマン』のトビー・マグワイアの声優としても知られる。ウェブサイト「マナブログⅡ

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