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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<202>時代を象徴したミラノ~サンレモ クラシックシーズンの主役に名乗り出た選手たち

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 3月18日に開催されたミラノ~サンレモは、本格化するクラシックシーズンの主役を占うのにベストなレースとなった。同時に、優勝を争った選手はもとより、各チームがエースに据えた選手たちの顔ぶれを見ても、時代を象徴していた戦いだったこともうかがえる。いま一度、“春”を告げたレースを振り返り、そしてこの先に控えるビッグレースへと思いを馳せてみたい。

ミラノ〜サンレモ2017上位3選手。左から2位ペテル・サガン、1位ミカル・クウィアトコフスキー、3位ジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

上位13位を20歳代の選手が占める

 291kmと、サイクルロードレースのなかでも群を抜くレース距離を誇るミラノ~サンレモ。これまで数多くの名勝負が生まれ、ここでの走りでその後のキャリアを約束された選手も多数存在する。

優勝を争った3選手は長きに渡ってライバル関係が続くことだろう。左からペテル・サガン、ミカル・クウィアトコフスキー、ジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

 リザルトから見る今大会の特徴は、トップ10、さらに広げると上位13選手が20歳代と、これまでになく若い選手たちが活躍を示したレースであった点だ。

 最後の最後に優勝を争ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ)とペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が1990年生まれの27歳。ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)が1992年生まれの24歳。トップシーンでは30歳前後でキャリアのピークを迎える選手が多く見られるが、今大会ではクウィアトコフスキーらを筆頭に、若手ライダーから中堅へと差し掛かろうとしている選手たちが次々と上位を占めたのだ。

上位13選手の年齢

1 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ) 27歳
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 27歳
3 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・フロアーズ) 24歳
4 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) 29歳
5 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップ・フロアーズ) 22歳
6 アルノー・デマール(フランス、エフデジ) 25歳
7 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード) 28歳
8 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ) 26歳
9 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チーム スカイ) 28歳
10 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 22歳
11 マウヌス・コー(デンマーク、オリカ・スコット) 24歳
12 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ) 26歳
13 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 26歳

 例えば、3位にアラフィリップを、5位にガビリアを送り込んだクイックステップフロアーズであれば、かつてこの大会で主役を務めたトム・ボーネンやフィリップ・ジルベール(ともにベルギー)が若い2人をアシスト。優勝こそならなかったが、最後の勝負どころである丘「ポッジオ」で動きがあるならアラフィリップを、スプリント勝負になればガビリアで、というチームオーダーをベテランが率先して機能させた。

4位のアレクサンドル・クリストフ(中央)を含む上位13人が20歳代と若手から中堅が活躍したレースとなった Photo: Yuzuru SUNADA

 クウィアトコウスキーやサガンら“ゴールデンエイジ”と称される1990年生まれ(現26~27歳)のみならず、さらに若い年齢の選手たちも次々と台頭している。これらから推察できるのは、彼らの世代が今後も長きにわたってプロトンの中心選手であり続けるであろうこと。タレントが豊富で、まだまだスーパースター候補が現れるいまのトップシーン、こうした選手たちがこれからも劇的なレースを演出してくれることだろう。

 ちなみに、20歳代の選手に続いて14位でフィニッシュしたのは1980年生まれ、36歳のダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、モビスター チーム)。かつてはスプリンターとして鳴らし、近年はアシストとしても評価を高めるベテランが健在ぶりを示したあたりも、しっかりと押さえておきたい。

“最強”よりも“スマートさ”に軍配

 今年のミラノ~サンレモの決定打は、ポッジオで見せたサガンの驚異的なアタックに他ならない。多くの選手がサガンのスピードに対応できなかった一方で、クウィアトコウスキーとアラフィリップだけは合流に成功。ともに、サガンがアタックするであろうとの読みが当たったのと、それによる集団内での適切なポジショニングが奏功したことは確かだ。

優勝を決めチームメートと喜ぶミカル・クウィアトコフスキー。完全復活を印象付けるレースとなった Photo: Yuzuru SUNADA

 優勝のクウィアトコウスキーは、3月4日のストラーデ・ビアンケに続くイタリアのビッグクラシックを勝利。2014年のロード世界王者は、その後2年間で好不調の波が大きく苦戦を強いられてきたが、いよいよ完全復活を印象付けたといえそうだ。

 現・世界王者であるサガンとの新旧アルカンシエル対決の勝利にあたり、クウィアトコウスキーは「サガンに勝つ方法を知っている」ことを勝因に挙げている。ともに東欧出身で、ジュニア時代から大小さまざまなレースで勝負してきた両者。自信みなぎるサガンの走りに対し、クウィアトコウスキーには後方を走るメイン集団にチームメートでスプリンターのヴィヴィアーニが残っていることを計算。集団に捕まることも覚悟のうえで、先頭交代のローテーションにはそう多く加わっていなかったという。結果的にそれが脚の温存となり、サガンを敗るスプリントにつなげている。7時間を超えるレースにあって、最後は1220ワットもの驚異的な出力をマークしたことが、自身のストラーバで明らかになっている。

2位と敗れたがさすがの強さを見せたペテル・サガン。今後幾度とチャンスは訪れることだろう Photo: Yuzuru SUNADA

 一方、「最強のライダーが必ずしも勝てるわけではない」と述べるのは、初優勝のビッグチャンスを逃したサガン。長年のライバルであるクウィアトコウスキーの走りをリスペクトしつつも、「もう少し協調して走りたかった」と本音も口にしている。

 自身が述べるとおり、このレースで最強のライダーだったといえるだろう。スプリントを見据えるチームがにらみ合う中、その空気を一掃したポッジオでのアタック。当初の予定にはなかった動きであることをレース後に打ち明けているが、「本能のままに動いた」と表現した圧倒的なアタックは、勝負の行方を大きく左右する“一撃”だった。

 実のところ、これがキャリア78回目の2位フィニッシュ。インパクト十分な勝利が多い一方で、「セカンドコレクター」の一面を改めて披露してしまった。とはいえ、実力・実績と申し分はなく、個の力で局面打開するセンスにも長けているだけに、今後幾度となくミラノ~サンレモの勝利に近づくことだろう。あとは、その機会をモノにするだけである。

3位のジュリアン・アラフィリップ。ポッジオではサガンを果敢に追走した Photo: Yuzuru SUNADA

 もう1人の殊勲は、初出場で結果を残したアラフィリップ。「ポッジオで力を使ってしまい、最終局面は脚が残っていなかった」とレース後に語った。ポッジオでは、サガンの動きに真っ先に反応。優勝したクウィアトコウスキーも「サガンの動きに一歩遅れを取ってしまったので、追走に出たアラフィリップの走りに合わせた」と話しており、その走りからは将来的なミラノ~サンレモ優勝もうかがえるものだったといえる。近年のクラシックレースでは上位の常連となっているが、最高位は2位。今回は3位だったが、“2位の壁”を打ち破る日が近いことを予感させる好走だった。

 トップスプリンターに追撃する隙を与えず、「クラシックハンター頂上決戦」の色合いが濃くなった今大会。最後に勝負を決めたのは、“最強”であることよりも“スマートさ”であった。

ボルタ・ア・カタルーニャ、北のクラシック前半戦展望

 UCIワールドツアーのレースが目白押しの3月下旬。ここでは、スペインで開幕したステージレースと、ベルギー・フランドル地方で行われる北のクラシック前半戦のポイントを押さえていく。

●ボルタ・ア・カタルーニャ(スペイン、3月20~26日)

 3月上旬から中旬にかけてのパリ~ニース(フランス)、ティレーノ~アドリアティコ(イタリア)に続き、スペインでもUCIワールドツアーのレースがスタート。新城幸也(バーレーン・メリダ)も、約1カ月後に控えるアルデンヌクラシックまでのレースプログラムの1つとして参戦している。

 総合争いは、標高1725mの1級山岳ラ・モリーナを上る第3ステージ(183.3km)、超級山岳ポルト・アイネの頂上フィニッシュとなる第5ステージ(182km)での走りでおおむね決まるとみられる。

ボルタ・ア・カタルーニャ第1ステージはダヴィデ・チモライが優勝。リーダージャージに袖を通している Photo: Yuzuru SUNADA

 今大会には、グランツールでの活躍が期待される選手たちが大挙して出場。クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)らが顔を合わせている。なお、フルームはアシストとしての出場を明言しており、ゲラント・トーマス(イギリス)の総合上位進出を支える構えだ。

 20日に行われた第1ステージでは、ダヴィデ・チモライ(イタリア、エフデジ)がスプリント勝利し、リーダージャージに袖を通している。21日の第2ステージは41.3kmのチームタイムトライアルが控え、総合順位の大幅なシャッフルが起こりそうだ。

●ドワーズ・ドール・フラーンデレン(203.4km、ベルギー、3月22日)

ドワーズ・ドール・フラーンデレン ルートマップ ©︎ Dwars door Vlaanderen

 この大会から、ベルギー・フランドル地方での石畳系レースが連戦となる。同地の公用語・フラマン語で「フランドル横断」を意味し、コースはおおむね同地方を東西に走る。

 今年からUCIワールドツアーに昇格。4月に開催されるツール・デ・フランドルと同じ「フランダースクラシック」が主催。

 コースはパヴェ(石畳)、急坂合わせて16のセクターが待ち受ける。ツール・デ・フランドルでも使われるオウデ・クワレモント(登坂距離2200m、平均勾配4.2%)は、フィニッシュまで残り約35kmで登場。メイン集団の人数を絞り込む区間となる可能性が高い。また、独走で優勝者を出すことも多く、逃げ切りを狙う選手がどこでアタックするかも見ものだ。

 日本人選手では、別府史之(トレック・セガフレード)がエントリーしている。

●レコードバンク・E3ハレルベーク(206.1km、ベルギー、3月24日)

レコードバンク・E3ハレルベーク ルートマップ ©︎ Record Bank E3 Harelbeke

 コース特性などから「仮想フランドル」と呼ばれることもあるほど、ツール・デ・フランドルと関係の深いレース。こちらも、石畳を含む15の急坂セクションが設定されており、フィニッシュまで残り約46kmからのカぺルベルグ(登坂距離900m、平均勾配4%)、パテルベルグ(700m、12%)、オウデ・クワレモント(2200m、4.2%)、カルネメルクベーク(1530m、4.9%)でのメーン集団の動きに注目。そして、ラスト20kmで迎えるティエゲンベルグ(1000m、6.5km)で決定的なアタックが生まれる可能性が高い。

 昨年はクウィアトコウスキー、一昨年はトーマスと、終盤でのアタックから逃げ切りに持ち込んだ選手が多いのも特徴。今回はサガンやボーネン、グレッグ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)らが優勝争いの中心に立つこととなる。また、このレースにも別府がエントリーしている。

●ヘント~ウェヴェルヘム・イン・フランダースフィールズ(249km、ベルギー、3月26日)

ヘント~ウェヴェルヘム・イン・フランダースフィールズ ルートマップ ©︎ Gent-Wevelgem in Flanders Fields

 ドワーズ・ドール・フラーンデレンと同じ、「フランダースクラシック」が主催する大会。北のクラシックの1つに数えられるが、「スプリンターズクラシック」の側面も大きく、有力スプリンターもエントリーする。

 ポイントは、最大勾配24%、直後の下りもテクニカルなケンメルベルグ。2回通過するが、その2回目はフィニッシュ前34km地点。ここをクリアするとフィニッシュまでほぼフラットとなるが、強風に見舞われることも多いため、メイン集団の分断が発生する可能性も秘める。

 昨年はサガンが優勝。2年連続3回目の王座を目指して参戦予定だ。その対抗馬としてガビリアを推す声も多く、スプリントでの勝負に期待が膨らむ。

今週の爆走ライダー−ヨス・ファンエムデン(オランダ、ロットNL・ユンボ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 3月14日のティレーノ~アドリアティコ第7ステージ、10kmの個人タイムトライアルで2位。トップタイムの選手が待機するホットシートに長い時間座り、勝利の瞬間を待ったが、終盤スタートのローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)にトップの座を奪われてしまった。「失望したけど、また近いうちに勝てたらいいね」とコメントした。

ティレーノ〜アドリアティコ第7ステージで2位となったヨス・ファンエムデン Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年のUCIロード世界選手権では、個人タイムトライアルで8位。TTスペシャリストとして力を発揮するが、今シーズンはロードレースでも好調。3月5日にベルギーで行われたドワーズ・ドール・ウェストフラーンデレン(UCIヨーロッパツアー1.1)では2人で逃げ切り、最後はマッチスプリントで勝利。爆発力はないものの、ひとたびスピードに乗れば強さを見せる。18日のミラノ~サンレモでもチーム最高位の22位。クラシックを得意とする選手やスプリンターにはかなわなかったが、積極的にトライした。

 チームにはグランツールの総合を狙える選手がそろっている関係から、普段はアシストとしての役割を期待される。「グランツールが始まったら、総合争いを意識して毎日しっかり走らないといけない」と話す。かたや、タイムトライアルは自らの成績を狙うチャンスであることも認識している。目標はUCIワールドツアーでTTを勝利すること。

 目標が達成できれば、2015年のエネコ・ツアー第4ステージ以来の大きな白星となる。距離の長短問わず顕示する独走力は、近いうちに喜びへと結びつくことだろう。そう思わせるだけの迫力が、いまのファンエムデンの走りからはうかがえる。

ドワーズ・ドール・ウェストフラーンデレンで優勝したヨス・ファンエムデン。UCIワールドツアーでの久々の勝利も近そうだ ©︎ Team LottoNL - Jumbo
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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