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栗村修の“輪”生相談<97>30代男性「自転車に関する交通安全教育は『義務化』が必要ではないでしょうか」

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 数年前に趣味としてロードバイクに乗るようになり、自転車に関する交通ルールやマナーについて意識することが多くなりました。自分で学ぶようになって初めて、今の日本の交通マナーの乱れを知ることとなりました。

 老若男女問わず、道路の右側通行、並走、歩道での高速通行、一時停止無視、信号無視(これは問題外ですが)のなんと多いことか。ですが、これはある面では無理もないことだと思っています。なぜなら、日本では義務教育の中で自転車の交通ルールについて学んだり、自転車を買う前・乗る前に講習を受ける義務・機会がないからです。かく言う私も、自動車免許を取るまで自転車が「軽車両」であり、道路は左側通行しなければならないという最低限のルールを知らず平気で右側通行していました。歩道の通行を遮る歩行者に対してベルを鳴らすことになんの違和感もありませんでした。

 自動車を運転していると、交通ルールを守らない自転車を見て苦々しく思いますが、それは運転している当事者に対してというよりは、このような現状がありながらそれを放置している国に対する「なぜ?」という気持ちの方が大きいです。若者の車離れが進む日本、今後自動車免許を一生取らないまま自転車に乗り続ける人がどんどん増えていくと思います。私たちローディーは、購入した店、自転車雑誌や番組、そして一緒に走る仲間などを通して交通ルールを学んでいきますが、その他の大多数の自転車利用者は、その機会に恵まれません。恵まれないまま、事故に遭ったり事故を起こしたりしているのが現状なのだと思います。一昨年の道交法により、自転車の罰則と規制が大幅強化されたと言いますが、私はこれを肌で感じることがありません。

 栗村さんはこのような現状についてどのようにお考えでしょうか。自転車に関する交通安全教育は、「啓発」や「促進」ではなく、「義務化」が必要だとは思われませんか。

 本コーナーの趣旨にはそぐわない内容になってしまったように思いますが、『自転車普及協会』の一員であり、自転車普及の旗頭としての栗村さんに質問させて頂きました。本コーナーで取り上げられることはなくとも、栗村さんに届けば嬉しく思います。

(30代男性)

 重要で、昨今の自転車をめぐる問題の核心に迫ったご質問だと思います。結論から申し上げると、おっしゃる通りだと思います。僕は、義務化に関する法整備が必要だと考えています。

 自転車事情をめぐっては、大きく3つの考えがあるように思います。道路事情に問題があるから、まずはそこをなんとかしようという考えが一つ。次に、義務化や刑罰を厳しくするのではなく、あくまで啓発によって改善しようという考えがもう一つ。そして最後に、質問者さんがおっしゃるように、義務化ないし厳格化、罰則の強化を求める考えです。

 以上の3つの考えがきれいに分かれているとは限らず、一人の方のなかに義務化と啓発が同居している場合が多いとは思いますが、とりあえずこの3つに分けてみます。

モラルのみに頼った自転車環境改善には限界があるという栗村さん Photo: Kyoko GOTO

 日本の道路事情には、明らかに問題があります。たとえば、車道は走りにくいし、危険です。自転車道や自転車レーンも少ない。かといって、歩道を自転車が走ると歩行者への脅威になります。そんな様々な矛盾のなかで、自転車は車道が原則とされているわけです。

 日本の道路には、こういった矛盾がたくさんあります。よって、矛盾がある以上、義務化や厳格化を急ぐのではなく、まずは道路環境を整えよう、という考えがあります。

 しかし僕は、道路環境が完璧になるのを待つのは、現実的ではないと思うんです。どこかの段階で、線を引かなければならない。もちろん、道路環境の改善に力を入れるよう、国や社会に訴え続けることは絶対に必要な取り組みだとは思います。

 次に、啓発によって改善しようという考え。僕も啓発は重要だと思います。たとえば、都内では車道を逆走している自転車を多く見ますが、彼らの何割が、それが違法行為だと知っているでしょうか? そもそも、知らない人も多いと思うんですよ。だから、啓発は必要です。

 でも、それだけでは足りないとも思うんです。物事には、自主性に任せて上手くいくものと行かないものがあると思いますが、自転車のルールは後者だと思います。

ツール・ド・フランスの集団ゴールスプリントでも、多くの選手がノーヘルだった。ヘルメットを被るのはプロらしくない、と言われた時代 =ツール・ド・フランス1994 第20ステージ(1994年7月23日) Photo: Yuzuru SUNADA

 たとえば、プロのロードレース界に於けるヘルメット。今でこそ選手はみなヘルメットをかぶっていますが、義務化される前は殆どの選手がかぶっていませんでした。死亡リスクと関係するヘルメットですら、義務化されてようやく普及したんです。自転車の交通ルールは、罰則付きで義務化してはじめて、守られるものだと思います。

 もちろん、繰り返しになりますが、道路環境には矛盾があります。罰則を強化しても、事実上守れないシーンがあるかもしれない。更に義務化するにしても、運転免許証が必要でない自転車運転者をどう効果的に取り締まるのかという課題もあるでしょう。それでも、環境整備が完璧に終わるまでは待てないと思うんです。「すみません、道路事情には問題がありますが、違反者は罰しますよ」と言わなければいけない段階まで来ているのではないでしょうか。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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