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産経WEST【関西の議論】より”大修理バブル”陰りで姫路城「次の一手」 ターゲットは自転車好き西洋人観光客

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兵庫県姫路市内で行われたサイクリングコースの検証(神姫バス提供)

 年間200万人近い観光客を集める世界遺産・姫路城(兵庫県姫路市)。「平成の大修理」を経て約2年前にリニューアルオープンした当初の〝入城者バブル〟にやや陰りが見え始めている。そこで姫路市は、播州地域に散在する観光スポットにまでエリアを広げて誘客を目指す「姫路城プラスワン」と銘打った広域観光プロジェクトに乗り出した。観光客の流れを城の外へ波及させる構想だ。カギを握るのは「バス」と「自転車」という2つのアイテムらしいが、果たして正否は…。(産経新聞姫路支局・荒木利宏)

「ラストサムライ」ロケ地を試験走行

 姫路市北部の集落に2月18日、自転車にまたがる市職員や自転車専門店の関係者、地元サイクリストら約20人が集結した。

 目的地は同市の観光スポットの一つで、トム・クルーズ主演の米ハリウッド映画「ラストサムライ」やNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」などのロケ地にもなった円教寺がある書写山だ。

 参加者たちは、市が設定したサイクリングコースで自転車を走らせた。観光客が自転車で観光スポットを巡るコースとしてふさわしいかどうかを確認する試験走行で、安全性や途中にある観光スポットを確認して回った。

足湯を楽しめる温泉でひと休み(神姫バス提供)

 沿線には地元の酒蔵や足湯を楽しめる温泉があり、参加者からは「これなら観光客も楽しめるのではないか」との意見が出た一方、「道の分岐点に案内表示が少ないので迷ってしまうのでは」と、整備の必要性を指摘する声も上がった。

 3月には、明治時代に整備された産業道路とされる「銀の馬車道」のルートにあたる兵庫県の朝来市と神河町を結ぶコースや、宍粟市内を周遊するコースでも検証した。

日帰りから滞在型に

 姫路市が広域観光に乗り出す背景には、姫路城に依存した観光からの脱却を迫られている事情がある。

 「平成の大修理」が終了し、平成27年3月にリニューアルオープンした姫路城への観光客は、27年度に過去最高となる286万7051人を記録した。しかし、28年度は200万人前後にとどまる見通しで、〝入城者バブル〟もしぼみ始めた。

 集客力のある姫路城だが、日帰りの観光客が多いのも悩み。市が27年度に行った抽出調査で日帰り客は7割に上った。また、兵庫県立大政策科学研究所の28年度の調査(推計値)では、姫路城を訪れた外国人観光客約30万6千人のうち、市内に宿泊するのは15.8%で、大半が大阪方面に移動したという。

 石見利勝市長は「地域の多彩な魅力を楽しめる滞在型観光を進めたい」と繰り返し語るが、実現にはほど遠いのが現状だ。

 姫路観光は「駅と城の往復で完結しがち」と指摘される。JR姫路駅を降り立った観光客の多くは、北にある姫路城に向かって真っすぐ歩く。城観光が終わると、その逆のコースをたどるのが定番だ。城を堪能した後は、せいぜい途中にある商店街で買い物し、再び電車に乗って別の観光地に向かう。

市役所前に設けられた「姫ちゃり」のサイクルステーション =2015年10月(喜瀬雅則撮影)

 こうした観光客をできるだけ留めようと、市が着目したのが自転車だ。

 昨年7月、手始めに姫路駅周辺4カ所に1時間100円で利用できるママチャリ型レンタサイクル「姫ちゃり」を導入。城周辺の美術館や文学館などにサイクルステーションを設けて返却できるようにし、利便性を高めた。

 昨年7~12月に延べ約1万6千人が利用し、「一定の効果がある」とみた市は、当初10カ所だったステーションを16カ所に増やした。ただ、滞在型につながる効果は今のところ表れていない。

カギはバスと自転車

 「姫ちゃり」は中心市街地周遊を想定した短距離用自転車で、姫路周辺に位置する観光地は網羅できない。姫路城に偏在する観光客をいかにして播州全体の観光地へと誘導するか。より広域の観光地をカバーするツールとして浮上してきたのが、自転車とバスの組み合わせだった。

 姫路市が中心となり、昨年8月から広域観光の実現を目指す播州地域の再生計画「はりまクラスター型サイクルスタイル構築事業」を始めた。

 市は播州一帯で路線バスを走らせている「神姫バス」と連携。姫路市内に3カ所、播州北部の宍粟市に1カ所の計4カ所のバス停にサイクルステーションを設置し、中長距離用自転車「クロスバイク」計10台を配備した。途中でパンクなどの非常事態も想定し、設定ルートの沿線には修理工具を備えた施設も10カ所整備するなど万全の態勢で臨む。

JR姫路駅近くに設置されているサイクルステーション。自転車関連用品や更衣室なども備える
期間限定で無料貸し出しされている中長距離用クロスバイク

 観光客のニーズなどを確かめるため、1月17日から3月末までクロスバイクを試行的に無料で貸し出している。サイクリングコースや観光スポットなどを記した案内もセットだ。

 ターゲットは、国内のサイクリストのほか、姫路城に大勢やって来る外国人観光客、特に自転車文化が浸透する西洋人。姫路市によると、1カ月余りで48人がクロスバイクを利用した。西洋人はまだいないが、中国人観光客が4人いたという。

 姫路市地方創生推進室の高井貴雄係長は「寒さが厳しい時期の実績としては健闘した数値」と話す。

「サイクルバス」も登場

 「播州地域は魚介類や農産物、酒米の山田錦の生産地であるなど、食や酒の豊富な土地柄。宿泊してゆっくり観光すれば、必ず満足してもらえる潜在力を秘めた場所」。高井係長はこう力説する。

 市はクロスバイクの配備に加え、29年度からは神姫バスのフロント部に自転車を積めるラックを取り付けた「サイクルバス」も導入する。自転車ごと観光客を路線バスで目的地まで運び、そこから周辺の観光地を巡ってもらう。

 自転車ごと乗車するというアイデアに、神姫バスも前向きだ。同社は神戸・三宮と宍粟市を1時間半で結ぶ高速バスも運行しており、同社地域マーケティング課の岡田勉課長は「バス路線と自転車を活用すれば、神戸方面からも人の流れをつくれる。新しい観光ニーズの掘り起こしにつながる」と期待を寄せる。

サイクリストの「聖地」

 こうした自転車を活用した広域観光の取り組みは全国的に進んでいる。

 広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」や琵琶湖(滋賀県)を一周する「ビワイチ」などは今、サイクリストの「聖地」として注目を集める。

 しまなみ海道では、道路左端に目的地へのルートを示す「ブルーライン」が整備されている。日本サイクリング協会事務局長の小林博さんは「外国人観光客でも容易に識別できる有効なツール」と指摘する。言語別の案内には製作費がかかるうえ、更新が必要な地図より効率的だ。

 昨年12月には自転車活用推進法が国会で成立するなど、観光に自転車を取り入れる環境は整いつつあるといえる。

 小林さんは姫路市の取り組みについて「日常とは違う非日常を味わうために観光客は足を運ぶ。サイクリングの沿線に魅力的なスポットや催しが存在することが大前提だ。自転車は車と違って立ち寄りの自由度が高いので、それらを効率よく巡らせるルートを設定することが重要になる」と話している。

産経WESTより)

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