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サイクリスト

宇部・美祢・山口3市をサイクリング「サイクル県」になった山口を走ろう 秋吉台から西の京、そして彫刻のまちへ

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 中国地方の西端に位置する山口県は2016年度「サイクル県やまぐち」として、多方面からの総合的なサイクルスポーツ振興への取り組み開始した。国際レースなどのシンボルイベントを開催するほか、県内のサイクリングコースの選定などの環境整備も進んでいる。国定公園「秋吉台」などを含む山口・宇部・美祢(みね)市エリアのおすすめスポットを実走で巡った。

山口市の瑠璃光寺五重塔。奈良・法隆寺、京都・醍醐寺の五重塔とともに、日本三名塔に並び称される Photo: Ikki YONEYAMA

日本屈指の鍾乳洞、秋芳洞へ

 3市を巡るサイクリングコースは、「うみやまサイクリングマップ」として近日公開予定。宇部、美祢、山口の頭文字(う・み・やま)を合わせたネーミングで、宇部などの湾岸エリアから内陸の山地までを網羅したコース設定となっている。今回は約90kmの「のんびり観光コース」を中心に回った。宇部市郊外のJR厚東駅から秋吉台を巡って山口市に至る、ネーミング以上に走りごたえのあるコースだ。

気持ちのいい山間部の道。赤い石州瓦を使っている建物が多い Photo: Ikki YONEYAMA

 厚東駅から山を切り開いた新しい道路を抜け、しばらくは低い山に囲まれた集落をつなぐ、緩やかなアップダウンロードを北上する。美祢市に入り中国自動車道をくぐってからは、山口市内から秋吉台を結ぶサイクリングロードを走行。クルマ通りから外れた田園や川沿いをのんびり走って秋芳洞入口に到着した。ここまで通過した信号はわずか2つ。思っていた以上に走りやすい。

 ランチに立ち寄った秋芳洞参道の「安富屋」さんで、オススメのごぼう麺をいただく。ごぼうを練り込んだうどんに、ごぼうのチップスを乗せた濃厚な味だ。お腹を満たした後は、秋芳洞の中も探検。自然が創り出した鍾乳洞の景色は、とにかく壮大で自然の不思議を目に焼き付ける。ゆったり見ても小1時間ほどなので、ぜひ一度は訪れておきたい。

ごぼうの香りたっぷりの「ごぼう麺」 Photo: Ikki YONEYAMA
参道の突き当たりに秋芳洞の入口がある Photo: Ikki YONEYAMA
いざ、鍾乳洞探検へ! Photo: Ikki YONEYAMA
秋芳洞の「百枚皿」。地下水が石灰岩を溶かし、石灰分を含んだ水が乾くことで、長い時間をかけて不思議な風景が形作られていく Photo: Ikki YONEYAMA

秋吉台は別世界

 いよいよ日本最大のカルスト台地、秋吉台へと上る。と、ここでの注意点は、新道の秋吉台道路(カルストロード)の方を上ること! 間違って展望台方面からの道路を行くと、平均斜度14%(最大20%超!)が700m、そこから先も8%勾配が600m続く、”素晴らしい”急勾配が待ち受けている。そう、記者は間違えて上ってしまいました。死ぬかと思いました。脚に自信のある方は、むしろぜひチャレンジを。

カルスト台地の中央を、ゆるやかなカーブを描いて道が伸びていく。何ともいえない風景 Photo: Ikki YONEYAMA

 上りきると、石灰石柱が露出したカルスト台地の真ん中を、カルストロードが伸びていく絶景。雄大な自然の景色を味わいながらゆっくり進めるのは、自転車ならではの楽しみだ。取材日は山焼き直後で禿山だったが、春以降は美しい緑が広がるはず。季節を変えてまた訪れてみたくなった。

上り坂はちょっと辛かったけど、上った先の景色はやっぱり見る価値アリ! Photo: Ikki YONEYAMA
3月末まで美祢市内4カ所で、無料レンタサイクルを実施中。電動アシストで坂も安心だ Photo: Ikki YONEYAMA
山焼き直後で、荒野に岩が散らばる不思議な世界 Photo: Ikki YONEYAMA

西の京・山口 温泉で疲れを癒やして

 秋吉台から下ると、しばらく集落沿いの道を南下してから、コース終点の山口市内へと向かう。石州瓦を使った建物が多く、赤い屋根が並ぶ光景は新鮮だった。国道435号線に入ってからは交通量が多めだが、前出のサイクリングロードが並行しているので、自信のない人はこちらをゆっくり走ればいいだろう。国道9号線を渡ってJR山口線をくぐると、椹野川沿いを山口駅付近まで自転車道で走ることができる。桜並木が連なり、春のサイクリングが楽しみな道だ。

JR山口線の線路を国鉄型のディーゼルカーが駆け抜けていく Photo: Ikki YONEYAMA
椹野川沿いのサイクリングロードの桜並木。4月には美しい景色になるだろう Photo: Ikki YONEYAMA

 明治維新時、その中心的存在だった長州藩の藩庁が置かれていた山口市。山口城址は山口県庁となり、2018年には明治維新150周年を迎える現在も、明治時代に建てられた藩庁門が健在だ。県庁近くの瑠璃光寺には、大内氏が治めた室町時代建立の美しい五重塔(国宝)があり必見。戦国時代まで200年近くこの地で栄えた大内氏は、大陸とも交易を行い「西の京」として独自の大内文化を山口に築いた。16世紀に来日した聖フランシスコ・ザビエルはここで初めて本格的な宣教を許され、市内にはサビエル記念聖堂がある。

旧藩庁門と山口県庁 Photo: Ikki YONEYAMA
国宝の瑠璃光寺五重塔 Photo: Ikki YONEYAMA
サビエル記念聖堂の向かいにある「大聖年平和の鐘」は美しい音を奏でる Photo: Ikki YONEYAMA
YCAM(山口情報芸術センター)ではメディア・テクノロジーを応用した作品を中心に制作発表の活動が行われている Photo: Ikki YONEYAMA

 山口市内には山陽路随一の温泉街、湯田温泉があり、ロングライドの疲れを癒やすのにぴったり。初代外務大臣の井上馨、また詩人の中原中也の出身地でもあり、中原中也記念館が生家の敷地内に開かれている。市街地には無料の足湯スポットも点在するほか、中也記念館の向かいにあるカフェギャラリー「狐の足あと」では、足湯に入りながらカフェメニューを楽しむことができる。

湯田温泉の各所に、無料で入れる足湯が設けられている Photo: Ikki YONEYAMA
「狐の足あと」では足湯に入りながらカフェメニューを楽しめる Photo: Ikki YONEYAMA
ギャラリースペースには中原中也のコスプレを楽しめる外套と帽子が Photo: Ikki YONEYAMA

街全体が彫刻美術館 宇部を探訪

 今回走ったのは内陸部のコースだが、サイクリングコースには海側のルートも設定されている。山口市から宇部市に至るルートでは、河口近くの大きな橋を渡ったり、瀬戸内海が望める砂浜沿いの道を抜けていく。比較的のどかな風景が続くが、宇部の市街地に入ると、臨海部は工業地帯へと一気にその姿を変える。

椹野川の河口近くの大きな斜張橋「周防大橋」を渡る Photo: Ikki YONEYAMA
道の駅「きららあじす」にはサイクルラックが Photo: Ikki YONEYAMA
阿知須の白壁の街並み Photo: Ikki YONEYAMA
穏やかな瀬戸内海を望む海沿いの道。岬を越えると空港や臨海工業地帯へと景色は一変する Photo: Ikki YONEYAMA

 炭鉱の町として近代飛躍的な発展をとげた宇部は、炭鉱が廃れてからもセメントなど重化学工業が産業の中心。いっぽう戦後公害が深刻化する中で、昭和30年代より市内の緑化とともに、彫刻を市内各所に飾る街作りを進めてきた。市中心部から少し丘を上った「ときわ公園」で開かれる野外彫刻の公募展「UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)」は、日本の彫刻界をリードするとともに、新進作家の登竜門となっている。

宇部の現代彫刻の代表的な作品である「蟻の城」(向井良吉、1962年) Photo: Ikki YONEYAMA
ときわ公園内にはそこかしこに彫刻作品が置かれている Photo: Ikki YONEYAMA

 彫刻展では約10分の1のミニチュアによる一次審査を経て、入選作品の一部が実物大制作指定され、制作された中から大賞を含む各賞が選ばれる。彫刻展後も入賞作品を中心に、ときわ公園内や市街地、空港など市内全域に巨大な現代彫刻作品が展示されている。その数はときわ公園内を除いても100点以上あるので、ガイドマップを片手にいくつ回れるかチャレンジしてみよう。

普通の児童公園の片隅に作品が置かれるなど、彫刻が街の風景に溶け込んでいる Photo: Ikki YONEYAMA
全く方向性の異なる複数作品が間近に並んでいたりするのも楽しい Photo: Ikki YONEYAMA

 ときわ公園には遊園地や動物園も併設されているほか、石炭産業を後世に伝える石炭記念館も置かれている。近代産業の基礎となった石炭採掘の技術や文化を、実物や模型を通して学ぶことができる。実際に使われていた竪坑櫓を移設した展望台は、高台にあることもあって宇部の街並みや瀬戸内海を一望することが可能だ。

 宇部市内には市街地から近くに、山口宇部空港がある。東京・羽田空港と約1時間半で結ばれており、現在は一日10往復が就航。首都圏からの玄関口になっている。

ときわ公園内にある石炭記念館。展望台は炭鉱で実際に使われていた竪坑櫓(たてこうやぐら)を移設改装したもの Photo: Ikki YONEYAMA
宇部に生産拠点を持つ宇部興産は、30km超という日本最長の私道を所有。専用の2連トレーラーが爆走する姿は圧巻 Photo: Ikki YONEYAMA

今後も環境整備を継続

 山口県内では今後も県内各地で、市町や商業施設と連携したサイクルエイド・サイクルステーションの設置をはじめ、ソフト・ハード両面の整備を通じて、サイクリストの利便性を向上する取り組みを継続するという。イベントや情報発信を通じて、県外や国外も視野に入れたプロモーションを強化していく。「サイクル県」を宣言した山口の今後の動きに要注目だ。

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