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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<201>新城、ニーバリらがグランツールでの躍動誓う バーレーン・メリダ 2017年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 前年のシーズンオフから新シーズンの序盤にかけてお届けしている、UCI(国際自転車競技連合)ワールドチームのシーズン展望。この冬の最後を飾るのは、今季の注目度では1、2を争うバーレーン・メリダ。中東・バーレーンのナセア王子自らがスポンサーを務め、豊富な資金力を生かしたチーム整備は、トップシーンに新たな風を吹き込むことは間違いない。そして、そこに加わるのは新城幸也、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)といったスター選手たち。シーズン序盤の戦いぶりと合わせて、彼らの動向を追っていく。

晴れてバーレーン・メリダ創設メンバーの1人となった新城幸也。今年もツール・ド・フランス出場を目指す =2017年1月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

“真のプロ”新城が見据えるのはツール・ド・フランス

 昨年の8月に一部の所属予定選手発表とともに産声を上げたバーレーン・メリダ。とはいっても、ナセア王子のサイクルスポーツ好きは以前から知られるところで、このチームプロジェクトが本格稼働する数年前から、ニーバリらとともにバーレーン国内をサイクリングする姿を公にしていた。

 相思相愛の両者を中心に、満を持して動き出したチーム。11カ国から集まった国際色豊かな顔ぶれの中に、新城の姿もある。

1月のツアー・ダウンアンダーでシーズンインを果たした新城幸也。3月20〜26日のボルタ・ア・カタルーニャに参戦する =ツアー・ダウンアンダー第1ステージ、2017年1月17日 Photo: Yuzuru SUNADA

 長年所属したチーム ヨーロッパカー(加入当時はBボックス・ブイグテレコム)を離れ、イタリア籍のランプレ・メリダの一員となったのが昨年。1年でのチーム移籍となるが、新城を“真のプロ”と高く評価するブレント・コープランドGMら首脳陣や、跨るバイクがメリダであることなど、継続されるポイントは多い。すでに今年のレースプログラムはスタートしているが、今のところ順調な進捗といえそうだ。次戦は3月20〜26日開催のUCIワールドツアー、ボルタ・ア・カタルーニャ(スペイン)が予定されている。

今シーズンも新城幸也にはツール・ド・フランスやアルデンヌクラシックでの活躍が期待される =ツアー・ダウンアンダー第4ステージ、2017年1月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今シーズンのテーマをツールに掲げ、敢闘賞を獲得した昨年以上の好走を誓う。イタリア人ライダーが多く所属し、彼らがジロ・デ・イタリアを目指す可能性が高いことも関係して、新城らを取り巻くツール組のメンバー編成も楽しみが膨らむ。ステージのコースレイアウト次第では逃げやステージ優勝狙いのオーダーが出るのか、はたまた総合系ライダーのアシストとして集団前方で堅実な仕事ぶりを見せるのか。

 また、これまで実績を積んできたアルデンヌクラシックに向けて、メンバー入りなるかにも注目していきたい。ニーバリをはじめ、クラシックスペシャリストが数多くそろう中にあって、新城がレギュラー争いを勝ち抜くことができるか。2014年に10位となったアムステル・ゴールドレースはレイアウト変更により、これまでとは違った趣きのレースとなりそうだが、ラ・フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ~バストーニュ~リエージュでも本領を発揮して、チーム内での地位を築きたいところ。クラシックシーズンが1つの指標となる可能性が高い。

ニーバリはジロに集中

 チームの顔であるニーバリ。チームメートも「ニーバリがすべてのチーム」とコメントするほど、彼への期待と信頼を寄せる。そんな頼りになるチームリーダーがターゲットとするのは、ジロ・デ・イタリア。総合優勝した昨年に続く2連覇、キャリア通算3度目の頂点を目指す。

2年連続3度目のジロ・デ・イタリア制覇を目指すヴィンチェンツォ・ニーバリ =ジロ・デ・イタリア2016第21ステージ、2016年5月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ジロは今年で第100回の記念大会。イタリアのほぼ全域をカバーすることもあり、同国南部のシチリア島出身のニーバリは並々ならぬ意欲を燃やす。大会前半にシチリア入りし、第4ステージには序盤の山場となるであろうエトナ火山の頂上フィニッシュが待ち受けている。

 昨年は、ジロに続く目標であったリオデジャネイロ五輪・ロードレースにおいて、ダウンヒル区間での落車によって両鎖骨を骨折する不覚。シーズン終盤に戦列復帰こそしたが、リオでのクラッシュがその後の予定を狂わせてしまった感がある。

ティレーノ〜アドリアティコに出場したヴィンチェンツォ・ニーバリ。総合争いからは大きく遅れたが、ジロ・デ・イタリアに向けてどう仕上げていくか Photo: Yuzuru SUNADA

 早くからジロを目指すことを公言して一冬越したわけだが、今シーズンの序盤はゆっくりとした入り。1月に臨んだブエルタ・ア・サンフアン(アルゼンチン、UCI2.1)で総合8位だったが、それ以外は目立った走りを見せていない。3月14日に閉幕したティレーノ~アドリアティコでもアタックするシーンは見られたが、結果だけ見れば総合争いの圏外となっている。昨年のこの時期は、2月にツアー・オブ・オマーンで総合優勝。翌月のティレーノでは総合6位とまとめ、5月のジロ制覇につなげている。現時点でのエンジンのかかり具合に不安が残るが、そこは百戦錬磨のニーバリだけに、本番にはしっかりと合わせる心積もりだろう。

 このところ、グランツールの総合争いにおいてはダウンヒルスキルが大きなポイントとなっている。急峻な山岳頂上フィニッシュではなくとも、下りでライバルに差をつけることができれば、その後の戦いを優位とする可能性が高いのだ。いまのプロトンにおける、ダウンヒラーの代名詞といえば、やはりニーバリ。リスクを負うがゆえに、リオで起きたような激しいクラッシュに見舞われることもあるが、ジロではきっと勇猛果敢に攻める姿勢が見られることだろう。

 なお、昨年はジロ後にツールにも出場。ファビオ・アル(イタリア、アスタナ プロチーム)のアシストに努めたが、今年はグランツール連戦に消極的。その先のブエルタ・ア・エスパーニャについても「まだ考える段階ではない」とし、あくまでもジロに集中する構え。その後のスケジュールについては、ジロ後にはっきりさせたいとしている。

ヴィンチェンツォ・ニーバリの代名詞でもあるダウンヒル。ジロ・デ・イタリアでは下りで勝負に打って出るか =ジロ・デ・イタリア2016第14ステージ、2016年5月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

タレントぞろいのチーム編成 今後の浮上は必至

 3月12日に閉幕したパリ~ニース終了時点でのUCIワールドツアーランキングで、18チーム中16位と下位に位置。だが、所属メンバーを考えれば、現時点でのポジションは問題ではないだろう。

昨年のアムステル・ゴールドレース覇者のエンリーコ・ガスパロットはクラシックシーズンに本領発揮なるか =2016年4月17日 Photo: Yuzuru SUNADA

 間近に迫るクラシックシーズンに向けては、昨年のアムステル・ゴールドレース覇者のエンリーコ・ガスパロット(イタリア)がアルデンヌクラシックの中心選手となりそう。北のクラシックは、エースの最有力候補だったハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)が古傷の膝を故障したのが誤算だが、代わる存在の台頭はあるか。

 ニーバリで狙うジロへは、ジョヴァンニ・ヴィスコンティやマヌエーレ・ボアーロといった経験豊富なイタリア人選手が脇を固めることになるだろう。ニーバリがトップチーム復帰を望んだというベテランのフランコ・ペリツォッティ(イタリア)も、山岳では重要な役割を担うこととなる。

ベテランのフランコ・ペリォッティがトップチームに復帰。ヴィンチェンツォ・ニーバリ直々の指名で山岳アシストを務める =ティレーノ〜アドリアティコ第2ステージ、2017年3月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 また、パリ~ニースではホン・イサギレ(スペイン)が総合7位。山岳ステージで安定してトップ10フィニッシュを繰り返し、得意とする1週間のステージレースで早速結果を残した。この大会では、スプリンターのソニー・コルブレッリ(イタリア)が第2ステージで勝利。その他2ステージでトップ10と、早々にリタイアしたニッコロ・ボニファツィオ(イタリア)の穴を埋める働きを見せた。コルブレッリは3月18日開催のミラノ~サンレモにも出場を予定しており、上位進出を狙う。

 そのほか、逃げからスプリントまで幅広く対応するラムナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア)、マウンテンバイクから転向したオンドレイ・シンク(チェコ)も控え、その顔触れはバリエーションに富む。

 結成まもないチームに適応し、戦えるメドが立った選手が多いことを見ても、この先に控えるビッグレースでの浮上は間違いないだろう。

UCIワールドツアーチームランキングでは下位にとどまっているが、戦力を考えれば今後の浮上は間違い無いだろう Photo: Yuzuru SUNADA

バーレーン・メリダ 2016-2017 選手動向

【加入】
ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア) ←アスタナ プロチーム
新城幸也(日本) ←ランプレ・メリダ
マヌエーレ・ボアーロ(イタリア) ←ティンコフ
グレガ・ボーレ(スロベニア) ←NIPPO・ヴィーニファンティーニ
ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア) ←トレック・セガフレード
ボルト・ボジッチ(スロベニア) ←コフィディス ソリュシオンクレディ
ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア) ←ユナイテッドヘルスケア プロサイクリングチーム
オンドレイ・シンク(チェコ) ←マルチバン・メリダ バイキングチーム(マウンテンバイク)
ソニー・コルブレッリ(イタリア) ←バルディアーニ・CSF
フェン・チュンカイ(台湾) ←ランプレ・メリダ
イバン・ガルシア(スペイン) ←クライン コンスタンシア
エンリーコ・ガスパロット(イタリア) ←ワンティ・グループゴーベル
ツガブ・グルマイ(エチオピア) ←ランプレ・メリダ
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア) ←イアム サイクリング
ホン・インサウスティ(スペイン) ←エウスカディ バスクカントリー・ムリアス
ホン・イサギレ(スペイン) ←モビスター チーム
ハビエル・モレノ(スペイン) ←モビスター チーム
ラムナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア) ←キャノンデール・ドラパック プロサイクリングチーム
アントニオ・ニーバリ(イタリア) ←NIPPO・ヴィーニファンティーニ
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア) ←アスタナ プロチーム
ドメン・ノヴァク(スロベニア) ←アドリアモービル
フランコ・ペリツォッティ(イタリア) ←アンドローニジョカットリ・シデルメク
デーヴィッド・パー(スロベニア) ←アドリアモービル
ルカ・ピベルニク(スロベニア) ←ランプレ・メリダ
カンスタンティン・シウツォウ(ベラルーシ) ←ディメンションデータ
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア) ←モビスター チーム
ワン・メイイン(中国) ←ウィスダム・ヘンシャンサイクリングチーム

今週の爆走ライダー−ソニー・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 強風や荒天で多くの選手が苦しんだ、今年のパリ~ニース前半戦。消耗戦となり、個々のタフさが問われた戦いにあって、第2ステージを勝利。有力スプリンターが軒並み脱落していった中で、チャンスをものにしてみせた。

パリ〜ニース第2ステージで消耗戦を制したソニー・コルブレッリ。タフなレースになればなるほど力を発揮する Photo: Yuzuru SUNADA

 UCIワールドチームに所属するのはキャリア初めてとなるが、2012年のプロデビュー時からその走りは高い評価をされてきた。コルナゴ・CSFイノックス(現バルディアーニ・チーエッセエッフェ)で与えられた役割は、サーシャ・モドロ(イタリア、現UAE チームエミレーツ)の発射台。その年のジロで仕事をまっとうした。

 その存在が確かなものとなったのは、2014年。ミラノ~サンレモで大健闘の6位にはじまり、シーズン5勝を挙げた。その年のロード世界選手権では、登坂力とスプリント力を買われて、エーススプリンターに大抜擢されるなど、飛躍のシーズンとなった。

 イタリア国内のUCIレースを対象としたシリーズ戦「コッパ・イタリア」では、昨年まで個人3連覇。上れるスプリンターとしての勝負強さは確かなものとなった。

 このところの走りで、ビッグチームの主力として名乗りを挙げた形だが、迎える大きなミッションは、ミラノ~サンレモでの上位進出だ。過去2度のトップ10フィニッシュは、300km近い距離を戦うレースへの対応力の高さを裏付ける。人数が絞られるであろう最終局面に残ることができれば、勝機が訪れるはずだ。

 その結果次第では、自身のキャリアが約束される。そんな運命のレースで、人生を変えることができるか、真価が問われることになる。

早くから走りを評価されていたソニー・コルブレッリ。相性のよいミラノ〜サンレモで運命を変えられるか =UCIロード世界選手権2016、2016年10月16日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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