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2分差を覆す会心の走りキナンのクロフォードが逃げ切りで逆転総合優勝 ツール・ド・フィリピン最終ステージ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フィリピン(UCIアジアツアー2.2)の最終第4ステージが2月21日に行われ、タイム差2分の総合9位でスタートしたジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム)が逆転で個人総合優勝を飾った。クロフォードは序盤に形成された逃げグループに入ると、そのまま逃げ切りリーダージャージのダニエル・ホワイトハウス(イギリス、トレンガヌサイクリングチーム)から2分25秒のリードを奪った。

ステージ5位でフィニッシュしたジャイ・クロフォード Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 フィリピン最大の島・ルソン島を行く4日間の戦いは、いよいよ最終日。200kmを超える長距離は、大会のファイナルにふさわしい設定だ。中盤に2カ所のスプリントポイントがあり、170kmを過ぎたところで2級山岳がそびえる難コース。フィニッシュ直前にも上りがあり、最後は下り基調でのフィニッシュ。個人総合争いに大きな影響を与える可能性を秘める、クイーンステージとなった。

 キナンはここまで、トマ・ルバ(フランス)が個人総合6位、クロフォードが同9位につけ、チームが狙うUCIアジアツアーポイント圏内でレースを進めてきた。また、ルバは個人総合首位のホワイトハウスとは37秒差。逆転を狙ううえで、射程圏内に位置した。

キナンサイクリングチーム、チームUKYO、ブリヂストンアンカーサイクリングチームの日本勢3チームがそろう Photo: Syunsuke FUKUMITSU
スタート直前にアーチが崩れるハプニング Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 午前8時からのパレード、その後のアクチュアル(正式)スタートを経て、しばらくは逃げ狙いのアタック合戦が続いた。均衡が破れたのはスタートから約30分後。7人がメイン集団から飛び出し、その中にクロフォードが入った。

 先行する7人の中には、ホワイトハウスから総合タイム差37秒につけるエドガー・ノハレス(スペイン、セブンイレブン RBP)も含まれ、クロフォードにとっての当面のライバルとなった。それでも、逃げグループを積極的に牽引するのはクロフォード。メイン集団とのタイム差は順調に広がり、リードは約5分となった。

アタックと吸収の繰り返しは約30分続いた Photo: Syunsuke FUKUMITSU
未舗装区間に入ったジャイ・クロフォード Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 追うメイン集団は、リーダーチームのトレンガヌサイクリングチームが主にコントロール。キナン勢は総合ジャンプアップをうかがうルバを筆頭に山本元喜、椿大志、中島康晴が次なる展開に備える。日本人3選手は序盤、クロフォードを逃げグループに送り込むことにも大きく貢献した。

ジャイ・クロフォードは1回目のスプリントポイントを2位で通過 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 逃げグループでは、タイムボーナスがかかるスプリントポイントで熾烈な争いとなる。93.07km 地点に設けられた1回目のスプリントポイントでは、クロフォードが2位通過で2秒のボーナスタイムを獲得。一方で、ノハレスも3位通過で1秒のボーナスを獲得し、依然総合上位浮上を狙っての戦いが続く。130.25km地点に設けられた2回目のスプリントポイントではクロフォードが3位通過し、ノハレスはその後方で通過した。

 そして迎えたのは、174.58km地点に設定された2級山岳ポイント。10%を超える勾配をクリアしたその先には、フィニッシュまでの約30km に及ぶ勝負区間が控える。

キナン勢が隊列を組んで進む Photo: Syunsuke FUKUMITSU
10%を超える勾配が選手たちをふるいにかけた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 この上りでクロフォードは2位通過。後方のメイン集団では、ルバを含む総合上位陣がペースアップ。上りの手前ではルバを先方に送り出すために、中島と椿が好アシストを見せた。

 フィニッシュまでを急ぐクロフォードたちのグループは5人に絞られた。ノハレスが遅れたこともあり、リーダージャージ奪取をかけてクロフォードが猛然と先頭グループを引き続ける。ルバを含む追走グループは、ホワイトハウスら8人。こちらも下りを経て、勢いが増していった。

ジャイ・クロフォードは最後まで攻めの姿勢を崩さなかった Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 だが、序盤からの貯金が生きた逃げメンバーは、フィニッシュまで残り10kmを切っても3分近いタイム差を保ち、逃げ切りが濃厚となる。焦点はステージ優勝の行方と、クロフォードの逆転なるか。そして、フィニッシュへ。最後はスプリント力に勝るパク・サンホン(韓国、LX サイクリングチーム)が優勝。力を使い果たしたクロフォードは3秒差で続いた。

ジャイ・クロフォードにはフィリピンメディアが多数コメントを求めた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 リーダージャージグループも懸命の追走。ルバは待機に徹し、フィニッシュにのみ備える。そして、クロフォードから2分25秒遅れてのフィニッシュによって、ホワイトハウスはリーダージャージを明け渡すこととなった。個人総合優勝の確定を待つクロフォードのもとに優勝決定の一報が届き、チームはおおいに沸いた。

 1月のオーストラリア選手権を経て、コンディションを上げていたクロフォード。第1ステージで5位に入り好位置につけると、翌日の第2ステージで逃げに乗るなど、ルバとともに総合上位をキープし続けた。第3ステージで総合9位に順位を落としていたが、土壇場で会心の走りをしてみせた。

キナンサイクリングチームの選手・スタッフで記念撮影 Photo: Syunsuke FUKUMITSU
閉幕セレモニーでは個人総合優勝のジャイ・クロフォードら各賞の選手が祝われた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 チームは最終的に、クロフォードのリーダージャージ獲得のほか、ルバが総合8位となり、UCI アジアツアーポイントを獲得。再三のアシストでチームを勢いづけた中島が総合13位、椿が総合36位。山本は最終ステージの100km地点過ぎにバイクを降りている。

 2017年最初のUCIレースで最高の結果を残したキナンサイクリングチーム。アジアやヨーロッパでの戦いを見据えるうえで、これ以上ない好スタートを切ったといえよう。チームは充実した戦力を最大の武器として、次なる戦いへと向かう。

監督・選手コメント

石田哲也監督「シーズン初戦で最高の成績が残せてうれしいと同時に、今後に向けてよい流れになる感触を得ている。2017 年のキナンサイクリングチームの方向性が見えたレースになった。初戦とあって、どんなレースができるのか楽しみな反面、不透明な部分もあったが、実際にレースに臨んでみるとみんなが機能して、他チームが数的優位な局面となっても、われわれはジャイとトマという2つのカードを有効に生かすことができ、最終的な結果につなげられた。予定していたプラン通りにレースができたことが何よりの収穫。最後まで攻撃的な姿勢を崩さないことが、チームによい効果をもたらしている」
 
ジャイ・クロフォード 「ベリーハッピーだよ。チームメイトに恵まれ、キナンの角口賀敏会長、すべてのスポンサー、ファンによい報告ができることをうれしく思う。みんなにとって最高の1年のスタートだ。ツール・ド・フィリピンのタイトルは獲得したことがなかった。UCIポイント獲得にもつながったし、申し分ないね。今大会はあらゆる可能性があったけれど、とにかく自分のペダルに力を込めるだけだった。この勝利は自分だけではなく、チームみんなで勝ち取ったものだ。今日のレースに関しては、エドガー(・ノハレス)選手が要注意だった。今大会は強さを発揮していたし、一緒の逃げに入ったことで、勝負を左右する存在となった。ラスト20kmで僕がアタックしたときに、彼が続けなかったんだ。これが僕にとって今日最大の仕事となったね。山岳賞狙いだったマリオ(・フォイト)選手との利害が一致して、よい展開に持ち込むことができた。次のターゲットは、3月のツール・ド・とちぎ。今度はチームに恩返しができるような走りをしたいと思っているよ」
 
山本元喜「暑さに苦しんだ4日間だった。寒い日本から、気温の高いフィリピンに来て、消耗して終わってしまった。そのあたりをどうクリアしていくかが今後の課題。帰国後のトレーニングで意識をしていきたい。あとはコンディションを上げていくだけなので、今回のレースはよいトレーニングにもなった。連携面は、毎年チームメンバーが変わっていく中でレースをこなしていくので、特に気にすることではないし、今回のレースを通しても問題がないことを感じた」
 
椿大志「逃げが決まる直前の動きが目の前で起こっていたが、乗ることができず悔しい。その後はトマのケアに集中し、カテゴリー山岳を前に引ききって仕事を終えた。エースとしてもアシストとしても経験を積んだメンバーばかりなので、毎ステージ臨機応変に動けていたし、その結果がジャイの個人総合優勝につながったので何も言うことはない」
 
トマ・ルバ 「シーズン最初のレースでチームが勝利できたことがうれしい。毎日アグレッシブなレースをして、みんなの働きによってジャイの個人総合優勝が得られた。初めて同じチームで走る選手が多かった中で、ジャイを盛り立てるためにみんなが一丸となって働いたことに意味がある。次はツール・ド・とちぎに向けて、コンディションを整えていきたい」
 
中島康晴「キナンサイクリングチームメンバーとしてのデビュー戦で、よい結果を残したいとの思いでレースに臨んだ。初日からジャイとトマが総合上位につけたことで、僕自身も逃げに乗る機会が生まれたし、最後には素晴らしい結果が得られたので本当にうれしい。最高のシーズンインとなったので、“keep going”の姿勢でさらに上の成績を目指していきたい。みんな経験豊富なので、シーズン初戦でも連携面には何の問題もなかった。あうんの呼吸となるよう、より精度を高めていきたい」

■ツール・ド・フィリピン第4ステージ(207.35km)結果
1 パク・サンホン(韓国、LX サイクリングチーム) 5時間0分13秒
2 マット・ボーイズ(オーストラリア、クウェート・カルトゥーチョ.es) +0秒
3 マリオ・フォイト(ドイツ、アタッキ・チームグスト)
4 ダミアン・モニエ(フランス、ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)
5 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム) +3秒
6 エドガー・ノハレス(スペイン、セブンイレブン RBP) +2分26秒
13 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) +2分28秒
29 中島康晴(キナンサイクリングチーム) +8分8秒
41 椿大志(キナンサイクリングチーム) +8分8秒
DNF 山本元喜(キナンサイクリングチーム)

■個人総合時間賞
1 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム) 17時間33分7秒
2 ダニエル・ホワイトハウス(イギリス、トレンガヌサイクリングチーム) +28秒
3 フェルナンド・グリハルバ(スペイン、クウェート・カルトゥーチョ.es) +51秒
4 ベンジャミン・ヒル(オーストラリア、アタッキ・チームグスト) +52秒
5 鈴木龍(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) +55秒
6 エドガー・ノハレス(スペイン、セブンイレブン RBP) +1分2秒
8 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) +1分5秒
13 中島康晴(キナンサイクリングチーム) +14分5秒
41 椿大志(キナンサイクリングチーム) +40分17秒

■ヤングライダー賞
1 ダニエル・ホワイトハウス(イギリス、トレンガヌサイクリングチーム)17時間33分35秒

■チーム総合時間賞
1 チームUKYO 52時間47分14秒
2 キナンサイクリングチーム +7分25秒

■ポイント賞
1 パク・サンホン(韓国、LX サイクリングチーム) 26pts
6 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム) 11pts
14 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) 2pts
18 中島康晴(キナンサイクリングチーム) 1pt

■山岳賞
1 マリオ・フォイト(ドイツ、アタッキ・チームグスト) 24pts
2 ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナンサイクリングチーム)15pts
10 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) 3pts

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