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初開催「ヒルクライム」も盛況世界自然遺産を走る「2017サイクリング屋久島」 過去最高の天気とおもてなしに感動

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 世界自然遺産に登録されている“太古の島”を走る「2017サイクリング屋久島」(主催・サンケイスポーツなど)が2月19日、鹿児島県屋久島町で開催され、7歳から72歳までのサイクリストが大自然の中でロングライドに挑んだ。今年は大会前日の18日に白谷雲水峡までの約8kmを上る「屋久島ヒルクライム」も初開催。2日間にわたって参加者は島の美しい景観を楽しんだ。大会にはお笑いトリオ、安田大サーカスの団長安田さんがゲスト参加し、島一周100kmの厳しいコースを完走。7回目を迎え、参加者はもちろん、住民も一体となって盛り上がる今大会をCyclist編集部員が実走した。

東シナ海が目の前に広がる絶景の中、ダウンヒルする参加者 Photo: Kenta SAWANO 

地元の声援受けスタート

午前7時30分、モッチョム岳をバックにスタートする団長安田さん(中央)ら参加者 Photo: Shinji TOGARI / SANKEI SPORTS

 早朝のスタートから夕方のゴールまで、常に島民の方々の声援やおもてなしに後押しされた屋久島一周だった。大会には100kmの部、ショートコース50kmの部、ファミリー20kmの部が設けられ、約380人のサイクリストが、走力に合わせてそれぞれのコースにエントリー。日の出に合わせて午前7時ごろから開会式が行われた。準備体操を指導した団長安田さんは「完走も大事ですが、月曜日に仕事があるお父さんライダーは、無理をせず仕事ができる余力を残しておきましょう」と呼びかけた。100kmの部は朝7時30分から約15人ずつのグループになってスタートした。

開会式ではサポート部隊の鹿屋体育大の選手たちがあいさつ Photo: Kenta SAWANO
スタート前、団長安田さんと気合を入れる参加者たち Photo: Kenta SAWANO 
「2017サイクリング屋久島」のコースマップ(大会公式ホームページより)

 コースは屋久島南部の尾之間をスタートし、反時計周りに回る100km。後半の60km地点から約20kmアップダウンが続く世界遺産登録地域の西部林道が最大の難所になる。また海沿いを走る北部も例年、強風に注意が必要だという。ところが今年は、地元の人に聞いても「この大会が始まってから一番の天気」という快晴で無風の朝。

 花崗岩でできた特長的な山頂のモッチョム岳など屋久島南部の山々を左手に見ながら、序盤のゆるやかなアップダウンを進んだ。島を一周する国道77号線に出るまでに、早起きのパン屋さんなど沿道の住民が、軒先で「頑張ってー」と拍手を送ってくれる。いやがおうにもスピードが上がるが、はやる気持ちを抑えてマイペースで進む。

スタート地点近くのパン屋さん「ペイタ」の皆さんも仕事の手を止めて応援してくれた Photo: Kenta SAWANO
日曜日の朝にも関わらず沿道の応援が参加者を後押し Photo: Kenta SAWANO

スタート直後に私設エイドステーション

スタートからすぐの高平地区では収穫期のたんかんがふるまわれた Photo: Kenta SAWANO

 スタート後約5㎞の上り坂でいきなり補給ポイントが出現。差し出された名産「タンカン」に手を出す。ちょうど2月の大会時に収穫の最盛期を迎える地元の名産品。私はバックパックを背負っていたので、後半の補給食用にありがたく頂戴した。

 1袋5個入りなので実はなかなか手を出す人がいないのだが、提供する区長の西田博隆さんは「みんなもらってくれなくてもいいんだよ。私たちはみなさんを心から応援していて、この地区のおいしいタンカンを少しでも味わってもらえれば、と出しているだけだから」と50袋を用意。どこまでもおもてなしの心でサイクリストを歓迎していた。

安房エイドステーションでは地元スイーツ「かから団子」に舌鼓 Photo: Kenta SAWANO
100キロの部最初の安房エイドステーションは地元スイーツが中心にふるまわれた Photo: Kenta SAWANO

 15kmほど走って、最初の激坂をクリアしたところで「安房エイドステーション」に到着。ここでは「かから団子」をメーンとした地元手作りスイーツが並ぶ。ヨモギがたくさん入った団子がサツマサンキライという葉っぱに包まれているもので、その葉が地元で「かから」と呼ばれているからだという。新鮮なヨモギの良い香りと甘いアンが絶妙で、ついつい3つも平らげて再スタートした。

前半は屋久島の険しい山々を左手に見ながら進んだ Photo: Kenta SAWANO
沿道の子供たちの応援は何よりもうれしかった Photo: Kenta SAWANO

 約25㎞地点の屋久島空港付近からは、いよいよ屋久島北部へ。深い青色の海を右側に見ながらゆるやかなアップダウンが続く。北側は風が強くて大変という話も聞いたが、この日は微風。スピードを緩めて風景を楽しみながら走った。ここまでの道のりだけでも、ところどころで沿道に観客が集まり、太鼓を叩いたり横断幕を掲げたりして応援してくれる。

 大会をサポートするサイクルパーツブランド「マヴィック」のマヴィックカーがパンクなど参加者のメカトラブルに対応。中盤では参加者のパンク修理にマヴィック・コミュニティーマネージャーの川口朋さんが手早く当たっていた。マヴィックカーは、エイドステーションや後夜祭会場でも黄色いボディーが人気を集め、多くの参加者が記念撮影していた。最後尾付近をパトロールしながら走る鹿屋体育大の高田奈生さんも「屋久島は初めてですが、地元の方の応援が暖かいし、景色も素敵ですね」と大満足の様子だった。

パンクにも迅速にマヴィックカーで対応していた川口朋さん Photo: Kenta SAWAN
笑顔でサポートしてくれた鹿屋体育大の新田東弥選手(左)と高田奈生選手 Photo: Kenta SAWANO
団長安田さんは積極的に隊列の先頭で参加者を引っ張った Photo: Shinji TOGARI / SANKEI SPORTS

 サポート体制だけでなく、地元の方の運転マナーも素晴らしいと感じた。屋久島の北側は58km地点の永田エイドステーションまではほぼ信号がなく、交通量も少ない。クルマもスピードを出しやすい環境だ。それでも参加者に近づいた後続車はしばらく道幅が広くなるところまで待って抜いてくれたり、2mくらいサイクリストから距離を置いて追い抜いてくれたり、配慮が感じられた。さらに、穏やかな島民気質ゆえか、抜くときには「頑張ってくださ~い」と声をかけてくれる。台湾を走ったときに「加油(がんばれ)~!」と声をかけられたことを思い出した。 

屋久島北端の町・一湊(いっそう)付近の真っ青な海を横目に走る Photo: Yosuke SUGA

永田エイドステーションで地元グルメ満喫

永田エイドステーションは昼食をとる参加者で大賑わい Photo: Shinji TOGARI / SANKEI SPORTS

 正午を過ぎたころ、58km地点、ほぼ中間地点の永田エイドステーションでは、後半のアップダウンが続く山場「西部林道」を前に、昼食をとる人が多かった。正午を過ぎたころで、腹ごしらえ。島の特産「トビウオ」やサバ味噌やサバ節、タンカンなどがいくらでもお代わりできるほど贅沢にふるまわれた。

 ボランティアに参加した屋久島町の兵頭つやさんは、「地元で揚がったばかりのトビウオやサバを皆さんにおいしく食べてもらえるように炭火で丁寧に焼きました」と、サイクリストのために腕を振るった。焼き立ての海の幸をご飯と共にいただき、やや過補給気味になりながらゴールを目指す。

永田エイドステーションでトビウオを炭火で焼いてくれた兵頭つやさん(右)と安藤秋野さん Photo: Kenta SAWANO
永田エイドステーションの昼食セット。おでんや豚汁、サバ節、トビウオなどが並んだ Photo: Kenta SAWANO
西部林道ではヤクザルを間近に見ながら走ることができる Photo: Shinji TOGARI / SANKEI SPORTS

 午後1時半過ぎ、いよいよ世界遺産登録地域の西部林道へ。うっそうとしたシダ植物などに囲まれた細い道が続き、コースで最も標高があるポイントだ。沿道にヤクザルやヤクシカなどが顔を出し、動物園の中を走っているかのよう。険しいアップダウンも楽しいアトラクションのように感じるから不思議だ。

世界遺産の一部となる西部林道を上る Photo: Yosuke SUGA

昨年、出場できなかった悔しさ飛んだ

昨年は悪天候で出場できなかった「SHARINKAN」社長の奥村勝さんたち一行は真っ青な東シナ海をバックに笑顔 Photo: Kenta SAWANO

 約20kmの西部林道が終わると、目の前に真っ青な東シナ海が広がった。絶景を見ながらダウンヒル。絶景を記念撮影していたのが熊本の自転車店「SHARINKAN」社長の奥村勝さんが率いる一行だった。

 悪天候に見舞われた昨年は、鹿児島からフェリーで向かおうとしたところ欠航になり、無念の不参加となっていた。今年はそのメンバー7人でリベンジし「こんな良い天気で、去年の悔しさが飛んでいきました」と揃って笑顔だった。

ディビッド・マルクスさん(左)とリット・ディビッド・ジェフリーさんは大川の滝でポーズ Photo: Kenta SAWANO

 日本の滝百選に選ばれた落差88mの「大川の滝」でマイナスイオンを浴び、82km地点、最後の栗生エイドステーションでカレーライス(小盛り)を食べると、傾きかけた日差しを浴びながらゴールに向かった。日本の島々を走りつくしたという慶応大教授のリット・ディビッド・ジェフリーさんと友人のディビッド・マルクスさんも「素晴らしい景色、素晴らしい人たちで、日本でもなかなかないサイクリングイベントですね」と大会を絶賛した。

 終盤は少しずつ集落が連なる地域で、草原の間をゆるやかにアップダウンするハワイのような景色を楽しめた。残りの距離が少なくなってくると「もう1周走りたい」と、それまでよりさらにゆっくり風景を楽しみながら走った。

「家族で年に1度集まれるイベント」と話した大和尚子さん(後方左)と母の渡邉くにえさん(同右) Photo: Kenta SAWANO

 ゴール地点はスタートと同じ町営ゲートボール場だ。午後3時30分、無事にゴール。MCが次々と完走者の名前を呼び、完走証が手渡された。参加した家族のゴールを待つ人も多く、100kmを走り切った家族や知人の健闘をたたえる輪があちこちでできていた。福岡県から50kmの部に参加した大和尚子さんは屋久島出身で、母の渡邉くにえさんと、100kmを走った兄の渡邉功樹さんを待ち受けた。渡邉さんは「このイベントは家族が年に1度集まる大切な大会。ゴール後に家族で食べる焼肉を楽しみにしています」と話した。

歓声を受けながらゴールする女性サイクリスト Photo: Shinji TOGARI / SANKEI SPORTS

 サイクリング屋久島ならではの特典として、夕方5時から後夜祭が催され、地元の手料理が無料で提供された。それぞれのクラスを走り切ったサイクリストたちは会場のあちこちで完走の喜びを分かち合っていた。地酒をはじめ豪華賞品が当たる大抽選会も行われ、団長安田さんの司会で当選者がステージに呼び上げられ盛り上がった。

初開催「ヒルクライム大会」も好評

2月18日に公道を封鎖して行われ初開催された「屋久島ヒルクライム」 Photo: Shinji TOGARI / SANKEI SPORTS

 前日18日に初開催された「屋久島ヒルクライム」の表彰も行われた。速報タイム27分48秒で優勝した橋本耕太朗さんは「平均勾配6.9%と聞いて楽勝かなと思って飛ばしていたら、途中からきつくなり死ぬ気で上りました」と振り返った。とはいえ距離7.9km、標高差583mで完走率も98%と高く、前述のジェフリーさんも「途中の眺めが最高で来年は倍くらいに参加者が増えるんじゃないでしょうか」と高評価した。

「屋久島ヒルクライム」で優勝し賞品を受け取る橋本耕太朗さん Photo: Shinji TOGARI / SANKEI SPORTS
大抽選会を盛り上げる団長安田さん Photo: Shinji TOGARI / SANKEI SPORTS

団長安田さん「年々道路がきれいに」

 3年連続でゲスト参加した団長安田さんも「昨年から本格的にトライアスロンに取り組んで競技志向でしたが、屋久島の世界遺産の素晴らしい景色を見ながらゆっくり走るイベントは、やっぱり自転車の楽しさを思い出させてくれていいですね」と振り返った。

 そして参加者の宴を見ながら「年々、道路もきれいに整備され、地元のおもてなしも素敵です。参加者もどんどん増えて、ずっと続くイベントになると思います。10回大会に呼んでもらえたら是非家族と来て、屋久島を紹介したいですね」と話した。安田さんのように「屋久島の素晴らしさを伝えたい」という気持ちが、さらに多くの参加者を呼んでいくのだと実感した。

◇         ◇
 「サイクリング屋久島」を満喫した後には、屋久島の素敵なスポットを回るポタリングもおすすめ。編集部が巡ったカフェや昼食スポット、見どころを紹介します。

一湊珈琲焙煎所の高田忠幸さん・みかこさん夫妻。(下)この日はコスタリカ産の豆を使ったコーヒーとカプチーノ Photo: Kenta SAWANO

一湊珈琲焙煎所

北部の町・一湊(いっそう)にあるスペシャリティーコーヒーストア。昔ながらの民家を改造した落ち着いた店内には、世界各地から厳選されたコーヒー豆や専用器具が並ぶ。エスプレッソマシーンや、DJセット、たくさんの本に囲まれながら美味しいコーヒーを飲める。オーナーの高田忠幸さんはコテージ「おわんどの家」も運営している。
住所:鹿児島県屋久島町一湊2282-2
電話:0997-49-5945

ヤクスギランドのわかれ杉 Photo: Kenta SAWANO

ヤクスギランド

安房から約16kmにある標高1000~1300mに広がる自然休養林。面積は270.33ha。仏陀杉・母子杉・小田杉といった巨木や双子杉・くぐり杉・ひげ長老などのユニークな名をもつヤクスギが点在する広大な森に4つのコースを設定し、興味や体力に合わせて0.8㎞(30分)から3.0㎞(150分)まで4コースから好きなコースを歩くことができる。

ヒロベーカリー

ヒロベーカリーで食べたパンと、屋久島の山々をバックにした店構え Photo: Kenta SAWANO 

屋久島東部・安房の丘の上の住宅街にある小さなパン屋さん。朝7時からオープンしているため、早朝のサイクリングを終えて朝食用に立ち寄ることもできる。クロワッサン生地で一口サイズの「プチあん」、「プチクリーム」は1個95円と、低価格なのもありがたい。朝4時から仕込んでいるという店主の内田広秋さんは「夕方より前に売り切れてしまうこともありますが、自転車に乗っていらっしゃる方も大歓迎です」と話す。
住所:鹿児島県屋久島町安房1877-21
電話:0997-46-2888

ご飯や 屋久どん

トビウオの焼き魚とうどんがセットになった「屋久どん満喫セット」と、ヤシの木が店の前に倒れる「屋久どん」の入り口 Photo: Kenta SAWANO

安房港のすぐそばで、とびうおを中心とした郷土料理を味わえる。おススメは「屋久どん満喫セット」(写真)。トビウオの唐揚げは白身がパリッと揚がっており、さば節でだしを取った「屋久島風うどん」と「トビウオの漬け丼」がついている。店主の池田秀作さんは「漬け丼はシメにうどんの汁をかけるとさらにおいしいですよ」とアドバイス。併設のキャンプ場では、BBQの施設やトイレと水道を利用することができる。(800円〜/お一人様1泊料金)
住所: 鹿児島県熊毛郡屋久島町安房500−46
電話:0997-46-3210

 

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