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サイクリスト

ビルダーやメーカー47社が集結2017ハンドメイドバイシクル展に過去最高3172人来場 夢を具現化するビルダーとの対話

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
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 ハンドメイドビルダーの匠の技が光る自転車、パーツを、実際に見て楽しむことができる「2017ハンドメイドバイシクル展」が1月21、22日、東京都千代田区の科学技術館で開催された。47社が集結した会場では、ハンドメイドで製作された様々な自転車、パーツの展示に加えて、ビルダーやメーカーによるトークショーと座談会も行われ、過去最高となる3172人の来場者で賑わった。ロードバイク、ランドナーが中心ながら、目立ったのがグラベルロード、マウンテンバイク(MTB)。編集部が気になったブランドを中心にイベントを振り返る。

2日間で過去最高3,172人の来場があった「ハンドメイドバイシクル展」 Photo: Kenta SAWANO2日間で過去最高3,172人の来場があった「ハンドメイドバイシクル展」 Photo: Kenta SAWANO

 「ハンドメイドバイシクル」はフレームビルダーと呼ばれる自転車の”匠”が様々なオーダーやニーズに応えながら、オートクチュールのドレスのように作り上げた理想の自転車だ。このイベントでは、各ブースにビルダーが腕を振るった自慢の1台、最新の1台が展示された。ボードには工房の住所、得意な車種、こだわりなどが書かれており、訪れた人は気軽にコンタクトができる。

東京・品川で美しいフレーム「EQUILIBRIUM」を作り出しているウラジミール・ボラホブスキーさん Photo: Kenta SAWANO東京・品川で美しいフレーム「EQUILIBRIUM」を作り出しているウラジミール・ボラホブスキーさん Photo: Kenta SAWANO

海外出身のビルダーも参加

EQUILIBRIUMのカスタムオーダーの「ステンレスロードレーサー」。エアロを意識した前三角がチネリの「レーザー」を思い出させるEQUILIBRIUMのカスタムオーダーの「ステンレスロードレーサー」。エアロを意識した前三角がチネリの「レーザー」を思い出させる

 「Equilibrium cycle works」(エクイリブリウム・サイクルワークス)はラトビア出身のウラジミール・ボラホブスキーさんが手掛けるブランド。結婚を機に日本に移り住み、競輪用(NJS)フレームも手掛ける東京・品川の大瀧製作所で約3年修業して、2014年に立ち上げたブランドだ。記者も美しい仕上げが気になっており、是非話を聞いて、乗ってみたいと思っていた。

細いパイプをカーブさせたリア三角がショックを吸収 Photo: Kenta SAWANO細いパイプをカーブさせたリア三角がショックを吸収 Photo: Kenta SAWANO
バラフブスキーさんが「一番苦労した」というシートステーとシートチューブのクロスする部分 Photo: Kenta SAWANOバラフブスキーさんが「一番苦労した」というシートステーとシートチューブのクロスする部分 Photo: Kenta SAWANO
静かに主張するロゴはCOOKPAINTWORKSによるもの Photo: Kenta SAWANO静かに主張するロゴはCOOKPAINTWORKSによるもの Photo: Kenta SAWANO
シンプルな「EQUILIBRIUM」のヘッドマーク。塗装はCOOKPAINTWORKSによるもの Photo: Kenta SAWANO シンプルな「EQUILIBRIUM」のヘッドマーク。塗装はCOOKPAINTWORKSによるもの Photo: Kenta SAWANO 

 今回メインで展示されたのはストックモデルの「Brutalist」(ブルータリスト)。ロングライド、ツーリング、グラベルにも対応できる万能バイクだ。「荒れた道でのロングライドを想定しており、パフォーマンスを犠牲にせず、快適さをいかに出すかを考えた」とボラホブスキーさんは話す。チューブは最高級の「コロンバスHSS」をメーンに、本来の強度を保持できるという銀ろうで溶接処理されている。ジオメトリーでは安定感を増すため、低い重心と長めのホイールベースをとっている。

 特別に試乗させてもらうと、カーブしたシートステーのおかげで段差を越えても、ショックを静かに吸収してくれた。かといって軟らかくなく、坂をダンシングで上ってもキビキビと進む印象だった。パナレーサーのグラベル用「グラベルキング」の32Cを履いていたが、抵抗を感じることなく、漕いだ以上に進んだ。

 ボラホブスキーさんに感想を述べると「僕の仕事はお客さんのパフォーマンスを上げることで、注文が難しければ難しいほど自分のパフォーマンスも上がるので楽しいです」と、真剣な表情で話してくれた。こうしたビルダーとサイクリストのアツい会話が会場のあちこちで交わされていた。

福島発、全国に発信する「ABUKUMA」

オーナーの思いが詰まった「アドベンチャーバイク」のイメージイラスト。ハンドメイドバイクならこんな夢が実現する Photo: Kenta SAWANOオーナーの思いが詰まった「アドベンチャーバイク」のイメージイラスト。ハンドメイドバイクならこんな夢が実現する Photo: Kenta SAWANO

 福島の「あぶくま自転車工房」の坂田智徳さんもグラベルロードとしてオーダーされた「アドベンチャーバイク」を展示した。オーナーが思い入れたっぷりの完成イラストを持ち込み、坂田さんと話し合いを重ねて作り上げたという。深緑色の落ち着いた外観だが、ベンドタイプのクロスシートステーや、シングルスピード対応のチェーンステー長可変タイプのリヤエンド、自作のクラウンなど、どこまでも凝った作りだった。

あぶくま自転車工房が出展した「アドベンチャーバイク」。オーナーの思いが詰まった1台 Photo: Kenta SAWANOあぶくま自転車工房が出展した「アドベンチャーバイク」。オーナーの思いが詰まった1台 Photo: Kenta SAWANO
美しいカーブを描くベンドタイプのクロスシートステー Photo: Kenta SAWANO美しいカーブを描くベンドタイプのクロスシートステー Photo: Kenta SAWANO
クラウンもビルダー坂田さんが一から制作した Photo: Kenta SAWANOクラウンもビルダー坂田さんが一から制作した Photo: Kenta SAWANO
ポールのカンチブレーキや、ギブネールのシフターなど、パーツセレクトも凝っていた  Photo: Abukuma jitensha koubouポールのカンチブレーキや、ギブネールのシフターなど、パーツセレクトも凝っていた  Photo: Abukuma jitensha koubou

 坂田さんは、「三連勝」、「マキノ」といった歴史的な工房で腕を磨き2010年に独立。「マウンテンバイクで走る山もあるし、自転車競技場(泉崎国際サイクルスタジアム)もある自転車環境にほれ込みました」と縁のなかった福島県白河郡に移り住み工房兼自転車店をオープンした。自らもシクロクロスやロードレースに参加している。

 今回の展示バイクは、すべてオーナー自身がパーツをチョイスしたもので、アメリカの「PAUL」(ポール)のカンチブレーキやクランク、「GEVENALLE」(ギブネール)のシフターなどシンプルで機能的なパーツ選びにこだわりが見られた。フレームだけでなく、シンプルで優れたパーツのセレクトに見入っている来場者も多かった。

 坂田さんは最近の傾向を「カーボンフレームなど、メーカー品の最高級のものまで全部使った上で『やっぱり人と違ったものを作りたい』とクロモリに戻ってくる方が、どんどん増えていますね」と話した。

MTBの伝道師「モンキー」初出展

 会場の中央部では、ハンドメイドのマウンテンバイク(MTB)がズラリと並び賑わっていた。80年代からマウンテンバイクを日本に広めてきたショップ「ワークショップ モンキー」と、フレーム制作のためのレンタルスペース兼工房の「BYOB FACTORY」のブースだ。モンキーの今泉紀夫さんはショップオーナーとして、フレームビルダーと一緒に日本に合うMTBを作り上げてきた。

 その歴史と熱意が今回の初出店につながった。今泉さんがメインに展示したのが「98SH」。98年に発表され、日本の里山を快適に走るためにトップチューブを下げた独特のデザインの人気モデルを、現代の企画、技術に合わせアップデートしたモデルだ。

モンキーが作り出した80年代からの名車もズラリ Photo: Kenta SAWANOモンキーが作り出した80年代からの名車もズラリ Photo: Kenta SAWANO
98SHのヘッドマークは「猿」。今泉さんの人柄が出たかわいらしいディスプレー Photo: Kenta SAWANO98SHのヘッドマークは「猿」。今泉さんの人柄が出たかわいらしいディスプレー Photo: Kenta SAWANO
代表作「98SH」と並ぶワークショップ・モンキーの今泉紀夫さん Photo: Kenta SAWANO代表作「98SH」と並ぶワークショップ・モンキーの今泉紀夫さん Photo: Kenta SAWANO

 その「98SH」を作ったのが「BYOB FACTORY」を主宰する高井悠さん。BYOBでフレーム作りの指導をしながら、ブランド「Sunrise Cycles」も手掛け、北米のハンドメイド自転車展「NAHBS」(North American Handmade Bicycle Show)にも出展したりしている。BYOBでは、同スペース出身のビルダーと、全国のショップオリジナルのバイクを、言わばOEM的に作り出している。

BYOB FactoryとSunrise cyclesを主宰する高井悠さんと空井戸サイクルオリジナルのMTB Photo: Kenta SAWANOBYOB FactoryとSunrise cyclesを主宰する高井悠さんと空井戸サイクルオリジナルのMTB Photo: Kenta SAWANO
BYOB Factoryが手掛ける広島のショップ「Grumpy」オリジナルMTB。シングルスピードでバイクパッキング向けにダボ穴がたくさん設置されている Photo: Kenta SAWANOBYOB Factoryが手掛ける広島のショップ「Grumpy」オリジナルMTB。シングルスピードでバイクパッキング向けにダボ穴がたくさん設置されている Photo: Kenta SAWANO

 今回出展したバイクはいずれも、地方都市から全国に情報を発信している注目のショップオリジナルMTB。京都の「空井戸サイクル」と、広島の「Grumpy」オリジナルモデルだ。高井さんは「地元を知るのはやはり地元のショップ。中でもMTBは、その地域の山の走り方に合わせ、特徴が出ると思います。地域のお店が考えるフレームを小ロット生産で適正価格で作っていきたい」と、ショップとともに新しいムーブメントを起こしている。

サドルも「結婚記念」オーダー

 ハンドメイドバイシクル展は自転車だけの展示ではない。毎年、色とりどりのサドルで来場者を楽しませてくれるのが加島サドル製作所(KASHIMaX)だ。ポールスミス本人からオーダーの入ったスペシャルモデルや、「May the force be with you」と入った「スター・ウォーズ」コラボモデルなど、大阪の町工場から世界に発信を続けている。競輪用のサドルも一手に引き受けながら、加島英二郎社長が職人さんと2人でママチャリからスペシャルカスタムのサドルまで様々なモデルを生み出す。

スペシャルオーダーやコラボモデルのサドルを持つ、加島サドル製作所の加島英二郎社長 スペシャルオーダーやコラボモデルのサドルを持つ、加島サドル製作所の加島英二郎社長 
「祝御結婚」と刺しゅうされたオーダーサドルやポール・スミスとのコラボモデル(左から2番目)。中央は加島社長が履き古したデニムから作ったサドル「祝御結婚」と刺しゅうされたオーダーサドルやポール・スミスとのコラボモデル(左から2番目)。中央は加島社長が履き古したデニムから作ったサドル
加島さんが「大阪のおばちゃん用カラーリングです」と話すママチャリ用サドルもカラーオーダー可能だ Photo: Kenta SAWANO 加島さんが「大阪のおばちゃん用カラーリングです」と話すママチャリ用サドルもカラーオーダー可能だ Photo: Kenta SAWANO 

 人気商品「aero」は1個からカスタムが可能で、ベース(土台)とトップカバーを自分な好きな色で作ることができる。さらに最近スペシャルオーダーとして人気なのが結婚式などの「お祝い用刺しゅう入りサドル」だ。「祝結婚」や新郎新婦の名前を刺しゅうしたサドルをプレゼントするサイクリストが増えつつあるという。「お店の宣伝を入れたり、いろいろなオーダーに応えていきます」と加島さんが話すように、パーツをスペシャルオーダーする楽しみも選択肢の一つだ。

 今イベントは入場無料。今回紹介したビルダー、メーカーは、ほんの一部だが、日本独自の“自転車職人”が一対一で相談などに応じてくれる、大変楽しく、有意義なイベントだった。回を重ねるごとに若手のビルダーの参加が増え、来場者も少しずつ若くなってきているように感じた。客層もシリアスサイクリストだけでなく、ファッションの一部としてハンドメイド自転車に乗って来場しているタイプの来場者も多く、それが過去最高の来場者数につながったのではないか。この分野の自転車の盛り上がりを感じた2日間だった。

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