スマートフォン版はこちら

サイクリスト

title banner

栗村修の“輪”生相談<93>19歳男性「身長156cmです。体格で勝る相手に勝つには何を意識すれば良いですか?」

  • 一覧

 
 僕は156cmと男性の中では特に身長が低いのですが、体格で勝る相手に勝つためにはどういうことに意識すれば良いでしょうか?

(19歳男性)

 156cmと、たしかに小柄ですね。しかし、サイクルロードレースの面白いところは、マラソンなどと比べても、選手たちの体格差が大きい点にあります。小柄で強い選手もたくさんいますから、やり方次第で、体格で勝る選手に勝つことはもちろん可能です。

 ではそのためには…と、お答えしたいのですが、ご質問にはとても重要な情報が抜け落ちています。

 それは、体重です。

 平地や横風が得意な「重量級の選手」と、上りに強い「軽量級の選手」に分けてお話ししようと思っていたんですが、変な表現になっちゃいますけど、ロードレースでは、体重だけ、あるいは身長だけで重量級か軽量級かの判断はできないんですよ。

 質問者さんは、小柄なご自身のことを軽量級ライダーだと思われているかもしれませんが、実はそうとは限りません。ということは、これをご覧の読者の中には身長180cmや190cmの方がいたとして、それだけでは重量級とはいえないということでもあります。

 体重もそう。「自分は60kgだから軽量級」とか、「70kgだから重量級」とはいえないんです。この競技では、体重と身長、両方を見なければいけないんです。身長と体重の比率が重要なんですね。

身長の低さで目立つサミュエル・デュムランだが、体格はがっしりしている Photo: Yuzuru SUNADA身長の低さで目立つサミュエル・デュムランだが、体格はがっしりしている Photo: Yuzuru SUNADA

 例を挙げてみましょう。

 フランスにサミュエル・デュムランという選手がいます。身長は160cmを切る、小柄な選手です。

 しかし彼は、軽量級とは言い難い選手です。スプリンターとしてかなりの実績がありますし、横風など平地に強い。これは、いわゆる「軽量級」の走りじゃありません。見た目もけっこう筋肉質です。

 そのデュムランの体重は56kg。この数値だけを見ると軽量級選手なのですが、身長を考慮すると、この体重はけっこうあるほうです。だから、軽量級ではない走りを見せていると。

 一方で、たとえば、引退してしまいましたが、アンディ・シュレクという選手がいましたね。身長186cmで、体重が68kg。数値だけなら、身長・体重ともにデュムランよりもはるかに重量級です。

 しかしアンディは、平地はからっきしダメ。上りで勝負する選手でした。

 それは、アンディの場合、身長に対する体重が小さかったからです。仮にアンディが、186cmの身長はそのままで、体重が80kgなら、重量級の選手に分類されるでしょう。重量級選手の代表であるフェビアン・カンチェラーラがちょうど、そのくらいの身長・体重でしたね。

 つまり何がいいたいかというと、レースの得意分野(平地か、上りかなど)を左右する、重量級・軽量級の判断は、身長と体重、両方の情報がないと判断できないんです。だから、156cmの質問者さんがどういう分野が得意なのか、わからないんです。

(右から)ファビアン・カンチェラーラとアンディ・シュレク。身長は同じだが体格は重量級と軽量級 Photo: Yuzuru SUNADA(右から)ファビアン・カンチェラーラとアンディ・シュレク。身長は同じだが体格は重量級と軽量級 Photo: Yuzuru SUNADA

 さらに付け加えると、質問者さんが勝ちたいという「体格で勝る選手」というのも、同じように判断がつきづらいですね。「体格」というのが身長を指しているのか、体重を指しているのか、はっきりしないからです。例に挙げたデュムランからすると、アンディもカンチェラーラも身長は30cm近く高いわけですから、どちらもデュムランに体格で勝っています。が、アンディとカンチェラーラでは、得意分野が全然違うことは触れましたよね。

 だから、質問者さんの体重が仮に50kgならば、軽量級といえるでしょう。基本的に上りで勝負するタイプです。でも、体重が60kgならば、(体重だけで決まるわけではありませんが)平地もイケるんじゃないでしょうか。

 具体的に体格で勝る相手に勝つためにはどういうことに意識すれば良いかといえば、前者(軽量級)であれば、やはり体重の軽さを生かして、上りで仕掛ける走りが効果的になります。一方、ウィークポイントとしては、平地の走り、特に横風区間など、出力の絶対値が重要になる区間などはかなり不利になりますから、意識的に集団の前方に上がるなど、位置取りに気を遣う必要があるでしょう。また、スプリントも不利になるでしょうから、集団ゴールになった際は、絶対に自分が風を直接受ける位置は走らず、大きめの選手のスリップストリームに入ったまま「なだれ込み2着」を狙うテクニックが有効になります(優勝は諦める?)。

 一方、後者(重量級)であれば、出力値はそれなりに高いと仮定すると、「身長が低い=空気抵抗が少ない」という傾向を利用して、より空力特性の良いフォームを習得しつつ、レースの中でもなるべく風を受けない位置取りや立ち回り方を身につけて、自分が得意とするセクション(インターバルやスプリント)で一気に勝負を決めるようなイメージを持つと良いかもしれませんね。

 自転車ロードレースという競技は、自分が持って生まれた身体的特性をどの様に生かしてレースの成績に結びつけていくかを研究するスポーツと言っても過言ではないと感じています。

 ですから、是非、小柄であることの利点を見つけ出し、質問者さんオリジナルの武器を生み出してみてください。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

関連記事

この記事のタグ

栗村修の“輪”生相談

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載