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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<193>ブエルタ2017はやはり「クライマー主役」 全21ステージ解説と3週間のレース予想

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 1月12日にスペイン・マドリードで、ブエルタ・ア・エスパーニャ2017(8月19日~9月10日)のコースプレゼンテーションが開かれた。3週間でめぐるルートの全容が明らかになり、2017年のグランツールすべてのコースが出揃った。今回は、このスペイン最大のレース全21ステージを紹介し、レース展開の予想も踏まえながら解説する。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017のルートマップを指差して笑顔を見せる関係者 © Photo Gomez Sportブエルタ・ア・エスパーニャ2017のルートマップを指差して笑顔を見せる関係者 © Photo Gomez Sport

フランス開幕 大会史上3度目の国外スタート

 コース発表には、サムエル・サンチェス(BMCレーシングチーム)やオマール・フライレ(ディメンションデータ)といったスペインを代表する選手のほか、このほど現役を退いたホアキン・ロドリゲス氏も出席。

言葉を交わすサムエル・サンチェス(左)とホアキン・ロドリゲス氏 © Photo Gomez Sport / Unipublic言葉を交わすサムエル・サンチェス(左)とホアキン・ロドリゲス氏 © Photo Gomez Sport / Unipublic

 多くの関係者が見守る中、大会ディレクターのハビエル・ギーエン氏や、ツール・ド・フランスでディレクターを務めるクリスティアン・プリュドム氏などが、第72回ブエルタの全体像や新しくなった大会ロゴなどを明らかにしていった。

 開幕地として選ばれたのは、フランス南部の都市・ニーム。古代ローマ時代に栄えた街で、市内には数々の遺構が残されている。街の中心にある円形劇場は古くに建てられたものだが、今もなお闘牛やコンサートに使用されており、今大会の開幕地選定においても「フランスとスペインのコミュニティをつなぐ数多くの関係を示すことを目的とした」とギーエン氏が説明した。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017ルートマップ ©  Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2017ルートマップ © Unipublic

 ニームをスタートしてからは、スペイン入国を経ておおむね地中海に沿って南下。同国東部と南部をめぐった後、空路北部へと移動。ビスケー湾に面した山岳地帯を走り、最後は首都マドリードへ向かう。注目は、14の都市がスタート地に初選出され、同じくフィニッシュには8都市が選出された点。うち第1、12、13、17ステージは発着地ともに初登場(ルート詳細は後述)と、大会に新たな風を吹き入れようとの狙いがうかがえる。きっと、ブエルタ、そしてスペインの新たな魅力に出会うことのできる大会となるだろう。

 第1ステージとなる、ニームでの13.8kmのチームタイムトライアルを皮切りに、総距離3297.7kmを21日間で走破する(大会開幕までに、多少のルート変更や距離の調整が行われるのが慣例)。内訳は、平坦ステージが5、頂上フィニッシュとなる平坦ステージが1、中級山岳ステージが8、上級山岳ステージが5、個人タイムトライアルステージが1、チームタイムトライアルステージが1。頂上フィニッシュは合計して9つと、前回より1つ減ったが、それでも厳しく、険しい“クライマーズ・ブエルタ”となることは必至だ。

山岳比重の高い3週間

 それでは、コースを見ていこう。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第3ステージ © Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2017第3ステージ © Unipublic

 ニームでの開幕後、2ステージはフランス国内で実施。第3ステージではいったんスペインに入るが、すぐにピレネーの小国・アンドラ公国へ。そして、この日から早くも上級山岳が登場する。

 第4ステージから、いよいよスペインでの戦い。翌日の第5ステージから4日間は中級山岳ステージが連続する。この日は3級山岳アルコッセブレの急坂を経ての頂上フィニッシュ。第8ステージでは、中腹の勾配が22%にものぼる1級山岳ソレット・デ・カティをフィニッシュ直前に超えることとなる。第1週最終日の第9ステージは、平坦にカテゴライズされながらも最後は頂上フィニッシュ。1級山岳アルト・デ・プイグ・ジョレンカの急坂が待ち受ける。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第11ステージ © Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2017第11ステージ © Unipublic

 スペイン南部を進む第2週。第11ステージでは、終盤に2つの1級山岳が登場。フィニッシュ地であるオブセルヴァトリオ・アストロノミコ・デ・カラール・アルトは、標高2160m。中級山岳、平坦とステージをこなし、第14ステージからは上級山岳。頂上フィニッシュのシエラ・デ・ラ・パンデラ(標高1790m)は、この大会最初の超級山岳。続く第15ステージは、シエラネバダ山脈のアルト・オヤ・デ・ラ・モーラ(標高2490m)の超級山岳頂上フィニッシュ。途中の1級山岳ポイントを含めると、33kmにも及ぶ上りが控えている。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第14ステージ © Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2017第14ステージ © Unipublic
ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第15ステージ © Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2017第15ステージ © Unipublic

 2度目の休息日は、空路北部へと移動。第3週の初日である第16ステージは、42kmの長距離個人タイムトライアル。第17ステージからはカンタブリア山脈での最終章。この日は1級山岳アルト・デ・ロス・マチュコス、第18ステージも3級山岳のアルト・デ・サント・トリビオ・デ・リエバーナと、頂上フィニッシュが続く。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第20ステージ © Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2017第20ステージ © Unipublic

 そして、最終決戦は第20ステージ。ブエルタではおなじみの、アルト・デ・ラングリル(アングリル峠)で雌雄を決する。登板距離13.2km、平均勾配は10%を超え、最大勾配は約24%にも及ぶ、ヨーロッパ屈指の上りだ。この日走り終えた段階で、個人総合で首位となっている選手は最終的なマイヨロホ獲得が濃厚となる。

 最終日はブエルタの通例どおり、マドリード首都圏を走り、中心部に設けられるサーキットでフィナーレを迎える。

マイヨロホ争いの行方を予想

新デザインのブエルタ・ア・エスパーニャロゴ © Unipublic新デザインのブエルタ・ア・エスパーニャロゴ © Unipublic

 シーズンで3つあるグランツールの中でも、とりわけ山岳の難しさが際立つブエルタ。第1ステージのチームTTでは、勝利チームの中で先頭フィニッシュした選手に総合首位の証であるマイヨロホが渡されることになるが、栄誉に浸ることができるのもほんの数日となりそうだ。

 1級2つ、2級1つと第3ステージから選手たちを苦しめる。この日を終えた段階で、マイヨロホは総合を争う選手たちによる奪い合いとなるかもしれない。その後しばらくは平坦ステージと中級山岳ステージとが続くこともあり、大逃げを決めた選手にマイヨロホが“譲渡”されることも考えられるが、それでも総合争いを見据えた上位陣はにらみ合いを続けていくことだろう。

第2週には山岳での熾烈な争いが見られるはずだ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第14ステージ、2016年9月3日 Photo: Yuzuru SUNADA第2週には山岳での熾烈な争いが見られるはずだ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第14ステージ、2016年9月3日 Photo: Yuzuru SUNADA

 勝負のうえで、第2週を重視する選手が多くなるかもしれない。できれば、第11、14、15ステージの頂上フィニッシュ3つでライバルに差をつけたい、そう考える選手も出てくるだろう。なぜなら、2度目の休息日明けの第16ステージは長距離個人TT。リズムを崩そうものならマークする選手から2分、3分と大差をつけられかねないだけに、リスクマネジメントとして早めに仕掛けておきたいと思う選手が現れても不思議ではない。

 一方で、総合力の高い選手にとっては、42kmの個人TTは狙いどころ。ここでタイムを稼いで、残るステージを優位に戦いたい。休息日明けのステージであることから、どの選手もコンディションの変化には最新の注意を払いたい。

2013年のブエルタではクリストファー・ホーナーがアングリルで総合優勝を確定させた =ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第20ステージ、2013年9月14日 Photo: Yuzuru SUNADA2013年のブエルタではクリストファー・ホーナーがアングリルで総合優勝を確定させた =ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第20ステージ、2013年9月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 大会のクライマックスとなる、カンタブリア山脈での攻防は当然激しくなるだろう。先の個人TTを終えた段階で、上位陣にどの程度のタイム差が生まれているか次第で、その後の動きが大きく変わる。ノーガードの打ち合いとなるのか、はたまたリーダージャージを着る選手が守りに入るのか。アングリルで大逆転というシナリオも大いにあり得る。

 現時点では出場への明確な意思表示をしている選手は現れていないが、スペインのエースであるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)は意欲十分のよう。明言こそ避けたが、「8月19日にはニームに立っていたい」とコメント。「今度のブエルタはクライマーのためのもので、疑う余地はない。スプリンターのためでも、TTスペシャリストのためのものでもない」とも語った。

 また、チームを指揮するエウセビオ・ウンスエ氏も「ブエルタらしいルートになった。スペクタクルな戦いになることを期待している」と述べ、大会への意欲を見せている。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 ステージ一覧

第1ステージ 8月19日 ニーム~ニーム(フランス) 13.8kmチームタイムトライアル
第2ステージ 8月20日 ニーム~グリュイッサン.グラン・ナルボンヌ 201km(平坦)
第3ステージ 8月21日 プラデ・コンフラン・カニゴー(フランス)~アンドラ・ラ・ベリャ(アンドラ) 158.5km(上級山岳)
第4ステージ 8月22日 エスカルデス・エルゴンダニ(アンドラ)~タラゴナ.アネッラ・メディティラネア2018 193km(平坦)
第5ステージ 8月23日 ベニカシム~アルコッセブレ 173.4km(中級山岳)
第6ステージ 8月24日 ヴィラ・レアル~サグント 198km(中級山岳)
第7ステージ 8月25日 リリア~クエンカ.シウダー・パトリモニオ・デ・ラ・ウマニダ 205.2km(中級山岳)
第8ステージ 8月26日 エリン~ソレット・デ・カティ.コスタ・ブランカ・インテリオール 184km(中級山岳)
第9ステージ 8月27日 オリウエラ.シウダー・デル・ポエタ・ミゲル・エルナンデス~クンブレ・デル・ソル.エル・ポブレ・ノウ・デ・ベニタチェル 176.3km(平坦頂上フィニッシュ)
休息日 8月28日
第10ステージ 8月29日 カラバカ・フビラール~エルポソ・アリメンタシオン 171km(平坦)
第11ステージ 8月30日 ロルカ~オブセルヴァトリオ・アストロノミコ・デ・カラール・アルト 188km(中級山岳)
第12ステージ 8月31日 モトリル~アンテケラ.ロス・ドルメネス 161.4km(中級山岳)
第13ステージ 9月1日 コワン~トマレス 197km(平坦)
第14ステージ 9月2日 エシハ~シエラ・デ・ラ・パンデラ 185.5km(上級山岳)
第15ステージ 9月3日 アルカラ・ラ・レアル~シエラ・ネバダ.アルト・オヤ・デ・ラ・モーラ 127km(上級山岳)
休息日 9月4日
第16ステージ 9月5日 シルクイト・デ・ナバーラ~ログローニョ 42km個人タイムトライアル
第17ステージ 9月6日 ビジャディエゴ~ロス・マチュコス.モヌメント・ヴァカ・パシエガ 180km(上級山岳)
第18ステージ 9月7日 スアンセス~サント・トリビオ・デ・リエバーナ 168.5km(中級山岳)
第19ステージ 9月8日 カソ.パルケ・ナトゥラル・デ・レデス~ヒホン 153km(中級山岳)
第20ステージ 9月9日 コルベラ・デ・アストゥリアス~アルト・デ・ラングリル 119.2km(上級山岳)
第21ステージ 9月10日 アロヨモリーノス~マドリード 101.9km(平坦)

今週の爆走ライダー-ベン・スイフト(イギリス、UAEアブダビ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 昨年までのランプレ・メリダからチーム運営、スポンサーと一新され、新たなチームとして今シーズンを向かえたUAEアブダビ。中東を代表する国をバックに戦うチームにあって、浮沈のカギを握るとされるのがスプリンターのスイフトだ。

ミラノ~サンレモでは2度のポディウムを経験。2016年には2位となった =2016年3月19日 Photo: Yuzuru SUNADAミラノ~サンレモでは2度のポディウムを経験。2016年には2位となった =2016年3月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 2010年の発足からともに歩み続けたチーム スカイでは、ワンデーレースや1週間のステージレースを中心に活躍。エーススプリンターを任されることも多かった。なかでも自信につながったのが、2014年のミラノ~サンレモでの3位入賞。スプリンターの誰もが憧れるレースでポディウムに立った経験は、その後のキャリアにおける指針にもなった。そして昨年は2位。頂点まであと一歩まで迫った。

 環境を新たに迎えた今年も、まずはミラノ~サンレモをターゲットにする。目標はもちろん優勝だ。新スポンサーでのチーム運営を発表しながら、昨年末までその方向性が定まらず、UCI(国際自転車競技連合)ワールドチームのライセンスが降りない状況に陥ったが、自身は努めて気にせず、トレーニングに集中した。無事新チームとともにシーズンインを迎え、開幕戦のツアー・ダウンアンダーに臨んでいる。

 トラック出身で、2012年には世界選手権ではスクラッチの金メダルをはじめ、3つのメダルを獲得。同年のロンドン五輪にはけがのため出場を逃したが、バンクで培ったスピードをロードでの活躍につなげている。

 ダウンアンダーのスタートを前に、「ミラノ~サンレモまでは残すところ9週間。少なくともこのレースで状態を上げていかなければならない」と気合いを込めた。ミラノ~サンレモの愛称でもある「ラ・プリマヴェーラ(春)」に向かって、この冬は淡々と力を蓄え続けている。

ツアー・ダウンアンダーでシーズンインしたベン・スイフト。目標のミラノ~サンレモに向けて調整を進める Photo: Yuzuru SUNADAツアー・ダウンアンダーでシーズンインしたベン・スイフト。目標のミラノ~サンレモに向けて調整を進める Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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