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つれづれイタリア~ノ<86>想定外の大雪にも「神対応」 NIPPO・ヴィーニファンティーニのチームプレゼン舞台裏

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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 イタリアと日本の協力のもと生まれたUCI(国際自転車競技連合)プロコンチネンタルチーム「NIPPO・ヴィニファンティーニ」のチームプレゼンテーションが、1月7日にイタリア中部のオルトーナ市で行われました。6人の日本人選手と数多くの日本人スタッフが活躍する、日本の自転車競技の未来を担うチームとしても貴重な存在です。チームプレゼンテーション(兼強化合宿)では、チームの意気込みや危機に対する考え方などを理解するための重要な機会となりました。様々なハプニングにも見舞われたプレゼンテーションでしたが、それに対するチームの素早い対応と柔軟性に脱帽する場面も。その舞台裏をご紹介します。

ファルネーゼ宮殿でキャプテンのクネゴ選手を中心にチームケーキをカットするスポンサーたち Photo: Marco FAVAROファルネーゼ宮殿でキャプテンのクネゴ選手を中心にチームケーキをカットするスポンサーたち Photo: Marco FAVARO

UCIカテゴリーとは

 UCIの規定ではプロチームは3つのカテゴリーに分かれています。サッカーやラグビーとは異なり、昇格・降格はUCIによる審査で決まります。所属するカテゴリーによって参加できるレースが限られています。

【ワールドチーム】
アスタナ プロチーム、チーム スカイ、BMCレーシング チームなど、世界最高峰のチームから構成されたトップカテゴリー。ジロ・ディタリアやツール・ド・フランスなど、UCIが指定するトップレースに参加する権利がある。現在、18チームが登録
【プロコンチネンタルチーム】
ワールドツアーの次のカテゴリー。招待権を獲得すれば、ワールドツアーチームが参加するトップレースにも参加できる。NIPPO・ヴィニファンティーニはこのカテゴリーに所属
【コンチネンタルチーム】
アジア、アメリカ、オセアニア、ヨーロッパなど、各地域の最初のプロチームのカテゴリー。愛三工業、宇都宮ブリッツェンなどがこのカテゴリーに所属

まさかの大雪に非常事態!

大雪で動けなくなったバス Photo: Marco FAVARO大雪で動けなくなったバス Photo: Marco FAVARO

 昨年同時期に行われたチームプレゼンテーションは汗ばむぐらい季節外れの暖かさでした。しかし今年は例年にない大雪に見舞われ、スケジュールが大混乱。予定では、6日にスポンサーや国内外のメディア、イタリア自転車協会の有識者がチームが滞在しているホテルに集合して懇談会を行い、7日は選手たちが参加するオープンサイクリングイベントに行くはずでしたが、予想を超える大寒波がイタリア南部を襲い、積雪30cmを超える大雪の影響で交通がマヒ。ペスカーラ空港も閉鎖となりました。

滞在先のホテルの玄関口 Photo: Marco FAVARO滞在先のホテルの玄関口 Photo: Marco FAVARO
スピニングに向かう一行。ほとんどの道は動けなくなった車でいっぱい Photo: Marco FAVAROスピニングに向かう一行。ほとんどの道は動けなくなった車でいっぱい Photo: Marco FAVARO
雪の中、スピニングに向かう一行雪の中、スピニングに向かう一行

 まさに非常事態! 幸い日本から駆け付けたメディアやNIPPOの岩田裕美社長をはじめ、イタリアなどからの参加者はほぼ全員が無事ホテルにたどり着きました。

 サイクリングイベントは大雪の影響で中止となりましたが、ここで祝福ムードを壊すまいと、チームマネージャーのフランチェスコ・ペロージ氏とステファノ・ジュリアーニ監督は、あらゆる可能性を考えました。その結果、隣町にあるスポーツ施設の関係者と連絡を取り、急きょ「スピニング(※)教室」を開くことに。一晩で30台以上のバイクをかき集めるという早業を見せました。

※スピニング:2000年代アメリカ生まれの室内バイクグループエクササイズの一種。音楽のリズムに合わせて練習を行うプログラムが特徴

危機に素早く対応するイタリア人の柔軟性

所せましとかき集められらたスピニング用バイク Photo: Marco FAVARO所せましとかき集められらたスピニング用バイク Photo: Marco FAVARO

 なぜここまで素早い対応ができたのでしょうか。

 自転車競技には予想外の出来事はつきものです。選手の落車から、メカニックトラブル、ホテル設備の不備、サポートカーの故障まで、刻々と変化する事態に対し、素早い判断が求められます。ここでイタリア人の危機に対する柔軟な姿勢が役に立ちました。

 スポーツ施設までおよそ30km。しかし、大雪と道路の凍結でチームバスは使用不能。メディア関係者を数えると50人を超える団体を移動させなければなりません。そのための交通手段を一晩で確保することができました。

音楽に圧倒され、楽しむ選手たち(写真はスタッキオッティ選手) Photo: Marco FAVARO音楽に圧倒され、楽しむ選手たち(写真はスタッキオッティ選手) Photo: Marco FAVARO
楽しみながらも真剣なまなざしのキャプテン、クネゴ選手 Photo: Marco FAVARO楽しみながらも真剣なまなざしのキャプテン、クネゴ選手 Photo: Marco FAVARO
左から、ペローズィ氏、ショッティ氏、岩田氏、デローザ氏 Photo: Marco FAVARO左から、ペロージ氏、ショッティ氏、岩田氏、デローザ氏 Photo: Marco FAVARO

 スポーツ施設に到着すると、スピニングルームには所狭しとバイクが置かれていました。インストラクターが緊張することなく、自転車のプロの前でも楽しそうにレッスンを開始。選手たちもあまり経験していないプログラムに興味津々でした。

 NIPPOの岩田社長やヴィーニファンティーニのヴァレンティーノ・ショッティ社長、デローザ社のクリスティアーノ・デローザ社長、チームスポンサーとゲストの一部もプログラムに参加。30分のレッスン時間は大幅に超え、汗だくになった選手とスポンサーの間には一体感が生まれたようでした。

伝統と最新の技術を同時に愛するイタリア人

ヴィットリア(勝利)劇場 Photo: Marco FAVAROヴィットリア(勝利)劇場 Photo: Marco FAVARO

 午後4時になるとヴィーニファンティーニ社の拠点となるオルトーナ市の歴史的劇場「ヴィットリア」(イタリア語で「優勝」の意味)で、チームプレゼンテーションが行われました。大雪にもかかわらず市長、州知事、イタリア自転車競技連盟やスポーツを代表する有識者をはじめ300人以上の観客が駆け付けました。

 オルトーナは人口2万人の小さな都市ですが、歴史が古く、石造りの建物が目立つ街です。作曲家フランチェスコ・トスティ(1846-1916)生誕の都市ともして有名。街の中心部に位置するファルネーゼ宮殿は16世紀に建てられ、プレゼンテーションが行われたヴィットリア劇場は19世紀に建てられたものです。

デローザ社長が見せる最新作、プロトス Photo: Marco FAVAROデローザ社長が見せる最新作、プロトス Photo: Marco FAVARO

 イタリア人が「古いものと新しいもの」の組み合わせが大好きだということで、最新鋭のレースマシーンと新しいチーム体制を紹介するには、歴史ある劇場が理想的な場所だと思っているようです。確かに今シーズンに使用される最新のデローザ製のバイク「プロトス」はなぜか石畳に合う自転車です。

 悪天候の中でも多くの方がプレゼンテーションに参加し、チームへの期待度の高さが伺えました。プレゼンテーション終了後のアフターパーティーは歴史あるファルネーゼ宮殿の中で行われ、アットホームでありながらエレガントでシックな雰囲気の中での開催となりました。

成長が問われるチーム体制

 雰囲気を見ても今年のチームは変わったように感じます。まずは明確な目標を設定したことで緊張感がみなぎっています。アジアツアーでは3位以内、ヨーロッパツアーでは15位以内という明確なビジョンが示されました。そして2020年に東京で開催されるオリンピックに向けて、日本人選手の強化につながるプログラムを組みます。

NIPPO・ヴィニファンティーニの集合写真(場所=1月7日のチームプレゼンテーション) Photo: Marco FAVARONIPPO・ヴィニファンティーニの集合写真(場所=1月7日のチームプレゼンテーション) Photo: Marco FAVARO

 その達成のために新たなトレーナーのほか、ジュリアン・アレドンド選手(コロンビア)、イヴァン・サンタロミータ選手(イタリア)、マルコ・カノラ選手(イタリア)が新規加入。日本人側では窪木一茂選手と小石祐馬選手に加え、内間康平選手、中根英登選手、小林海選手と伊藤雅和選手が新しく加わりました。確実にアジアツアーポイントを狙う作戦です。

 日本人選手の意気込みも強いです。内間選手は、より高いレベルのレースに挑戦したいため4年ぶりにNIPPOへの復帰を強く望んでいたそうで、希望が実現したいま、「これから厳しいレースが待っているが、チームの勝利に貢献したい」と考えているとのことです。

言葉の壁は障害ではない

プレゼンテーション会場にいた受付の女性スタッフ Photo: Marco FAVAROプレゼンテーション会場にいた受付の女性スタッフ Photo: Marco FAVARO

 19人中6人が日本人というチーム体制に、言葉の壁はどうしても立ちはだかります。チーム拠点はイタリア国内、チームメイトの7割がイタリア語しか話せないためです。当然ながらイタリア語をうまく話せないと細かい指示が十分に理解できない場合も発生し、優勝を逃すことになりかねません。

 ところがステファノ・ジュリアーニ監督によりますと、「日本人選手はイタリア語を学ぶ努力を惜しまないし、イタリア人選手の中にも日本語を学びたい人もいます。言葉の壁は確実に崩れてきており、チームの一体感が確実に深まってきている」と感じているそうです。

 NIPPO・ヴィーニファンティーニの成長は始まったばかりですが、心地よい緊張感が伝わってきます。次回は合宿の様子をお伝えします。ご期待ください。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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