スマートフォン版はこちら

サイクリスト

title banner

猪野学の“坂バカ”奮闘記<7>「坂バカ界のアイドル」筧五郎さん直伝 地獄の特訓で編み出した“意識飛ばし”作戦

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 「坂バカ」というのは、よく考えるとすごい単語だ。知らない人が言われたら「バカにすんな」と激怒するに違いない。でも、坂バカたちはその愛称で呼ばれると喜んでしまうから、我ながら謎の多い生き物だ。しかし、この世にはもっとすごい愛称を持っている人がいる。「坂バカ界のアイドル」…筧五郎さんだ。

誰が呼んだか「坂バカのアイドル」筧五郎さん(左)誰が呼んだか「坂バカのアイドル」筧五郎さん(左)

坂もキャラも強いヒルクライマー

おもしろいだけじゃない!五郎さんには走りの師匠としても大変お世話になっているおもしろいだけじゃない!五郎さんには走りの師匠としても大変お世話になっている

 初めて会ったのは、伊豆の競輪学校で行われた『チャリダー★』の体力測定ロケだった。待ち合わせは静岡の三島駅。あの有名な筧五郎さんに会える…私はかなり緊張していた。そこに輪行バックを片手に、絞り込んだ華奢な身体でロケバスに乗り込んで来た。

 私も含め一通りスタッフの皆と挨拶を交わし、さっそく自転車談義…。しかし話題は次第に下ネタに…。五郎さんのキャラの濃さに呆気にとられる車内。あげくの果てには「ちなみにそのイノさんてのは何処に居るんですか?」と、隣に座っている私に聞いてくる。あんなに緊張して損したわけだが、その飾らない人柄を一発で好きになってしまった。

初めて会ったのは競輪学校での体力測定ロケ初めて会ったのは競輪学校での体力測定ロケ

 別のロケでは、サングラスをかけ韓流スターに扮装して「あなたが好きだからぁ〜」と登場した。カメラも回ってないのに。

 これ以上書くと本人の名誉に関わって来るので割愛するが、面白エピソードには事欠かないのがアイドルたる所以かもしれない。

時には実験好きの博士として登場時には実験好きの博士として登場
最強のエアロスーツを求めて実験最強のエアロスーツを求めて実験

 どうしても面白いキャラクターばかり目立ってしまう五郎さんだが、ご存知の通り、乗鞍ヒルクライムも富士ヒルクライムも優勝している凄い人だ。教えを乞うて成績アップした人の話もよく耳にする。そこで去年の乗鞍では、五郎さんの猛特訓を受ける事になった。

面白キャラで『チャリダー★』でも大活躍の筧五郎さん(右から2人目)と猪野学さん(同3人目)。リオモ・ベルマーレのメンバーらと面白キャラで『チャリダー★』でも大活躍の筧五郎さん(右から2人目)と猪野学さん(同3人目)。リオモ・ベルマーレのメンバーらと

地獄のローラー練で開眼

 特訓は、名古屋にある五郎さんの自宅兼ショップ「56サイクル」で行われた。その名も「地獄のローラー練」。乗鞍を想定して75分間一定の出力をキープする。出力はその人にギリギリ出せるパワーを五郎さんが考えてくれる。

「56サイクル」で行われる地獄のローラー練。さほど広くない店内で男4人、すし詰め状態「56サイクル」で行われる地獄のローラー練。さほど広くない店内で男4人、すし詰め状態

 景色もない、勾配変化もない。この変化が全くないのが本当に辛い。苦しさを紛らわすことができないからだ。

 皆様に、この苦しさとどうやって向き合っているのか聞いてみると、楽しい事を考える人、美味しい食べ物を考える人、自転車と会話を始める人、ひたすらエロい事を考える人と様々。

マスクを着用し、低酸素状態でひたすらローラーを回す。だんだん目がうつろになる筆者マスクを着用し、低酸素状態でひたすらローラーを回す。だんだん目がうつろになる筆者

 だがしかし、五郎さんの地獄ローラー練をしながら思い直す。やはり苦しいものは苦しい。私にはこの苦しみを紛らわすことなんて出来やしない…出来やしない…出来るわけがない……

 意識がフッと遠のいたその時! 私はひらめいた。もう楽しい事やエロい事すら考えない!意識ごと吹っ飛ばす作戦を思い付いたのだ。

 もちろん真っ直ぐ走らなきゃいけないし、ぺダリングやフォームも意識しなきゃいけないから本当に意識をなくすわけではない。必要な事は意識しながらも、あとは頭を空っぽにしてしまうのだ。

 この作戦はすばらしかった。うまく行けば脳内に変な快楽物質が出て、「苦しいんだけど物凄く気持ちが良い訳の分からない」状態まで持って行ける。さすが“アイドル”五郎さんのローラー練だ。私はいろんなことに気付かせていただいた。

坂バカか人間失格か

苦しみと対峙する筆者。かろうじて意識は…ある苦しみと対峙する筆者。かろうじて意識は…ある

 しかしこの“意識飛ばし”は、お勧め出来ないところもある。何故なら、意識を飛ばしている最中は鼻や口から液体という液体が流れ出てしまうのだ。番組スタッフによれば、この瞬間の私はへんな笑顔になっているらしい。笑いながら色んな液体が噴き出てる40代男性…。冷静に考えれば人として失格だが、坂バカ的には最高のコンディション。どちらを取るか悩ましいところだ。

 今年のレースで私が変に笑っていたら、「ああ、“意識飛ばし”をやってるんだな」と思って、流れ出る液体に関してはご容赦ください。

 皆様、今年もこんな坂バカを何卒宜しくお願い申し上げます。

(写真提供:NHK/テレコムスタッフ)

猪野 学猪野 学(いの・まなぶ)

俳優・声優。自転車情報番組NHK BS1『チャリダー☆』(毎週土曜18:00~18:25)にレギュラー出演し、「坂バカ俳優」という異名で人気を博す。自転車の他、空手やスキーなども特技とするスポーツマン。俳優として舞台や映画、ドラマなどで活躍する一方、映画『スパイダーマン』のトビー・マグワイアの声優としても知られる。ウェブサイト「マナブログⅡ

関連記事

この記事のタグ

猪野学の“坂バカ”奮闘記

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

わたしらしく自転車ライフ

スペシャル

SBAA動画

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載