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栗村修の“輪”生相談<92>アラフォー男性「ヒルクライムが速くなるには、どういったトレーニングが必要ですか?」

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 アラフォー男性です。ヒルクライムにおいて、勾配によってケイデンスを決めている方の話を聞きました。一方で常に一定のケイデンスを維持するほうが良いとの意見も聞きます。その人に合ったリズムということなのでしょうか?

 そんな中で平均勾配6%(最大10%)、ある程度速い方なら30分を切る手稲山というところがあり、35分台で行き詰まっています。30分くらいを目標にする中で、どういったトレーニングが必要だと思われますか? ちなみに自分は168cm・65kgと少しお肉が付いてます。

(アラフォー男性)

 ケイデンス(1分当たりの脚の回転数)は、よく話題に上りますね。みなさん、気にされているんでしょう。よく90回転前後がいいと言われていますが、初心者の方にとってこの数字を維持するのはなかなか大変だと思います。一方で、選手たちは練習中に平地では110回転で回せ、などと言われたりもしましたね。

 高ケイデンスでまわすことに慣れることはケイデンスの幅が広がることを意味しますから、有益であることには間違いありません。自転車はざっくりいうと筋力と心肺能力の両方を使って前に進むわけですが、これまたおおざっぱにいいますと、低ケイデンスは筋肉への負担が大きくなり、高ケイデンスは心肺への負担が大きくなるといわれています。ですので、使えるケイデンスに幅があると、状況に応じて負担を心臓と筋肉とに振り分けられますから、長時間の走行になればなるほど有利になってくる可能性があります。但し、常用すべきケイデンスには個人差もあるので、「○○回転がいいですよ」とは一概には言えなかったりもします…。

 ヒルクライムでは、シッティングかダンシングかで適切なケイデンスは変わります。その適切値に関しては先に書いたように個人差があるのでここで具体的な数字を示すのは難しいですが、理論的にはあるパワー値に対して最も心拍数が下がる回転数がその人にとって適したケイデンス値といえるでしょう。そして、普段から高回転で走るトレーニングを意図的に行うことで、この適切値も変化していくはずです。一般的にケイデンスは低いより高い方が良いとされています。

 と、これで基本的な説明が終わってしまったので、今回はインターバルというか、勾配の変化に合わせたテクニックのお話もしますね。これ、タイムを縮める上では意外と重要な話だったりします。

ヒルクライムは一日にしてならず Photo: Naoi HIRASAWAヒルクライムは一日にしてならず Photo: Naoi HIRASAWA

 ふつう、峠の勾配って一定じゃないですよね。急に勾配がきつくなったり、逆に平坦(もしくはちょっとした下り)があったりします。そういう場所って、無意識にがんばり過ぎたり、逆に休み過ぎたりするものです。一定のケイデンスを意識し過ぎると、そういう罠にハマることもあります。

 しかし、そういう勾配の変化を上手く乗り越えられると、タイムを短縮できる可能性がでてきます。これはフィジカルというより、テクニックのお話ですね。

 たとえば、峠の途中に、ほんの数十メートルだけ勾配がきつい区間があったとしましょう。そこを過ぎれば勾配は元に戻るんですが、そこだけきつい。

 パワー値とケイデンスを一定に保って走っていると、そこで速度が落ちますよね。時速15kmで上っていたのに、時速10kmまで落ちたとしましょう。すると、その後再び時速15kmまで戻すのにはある程度の時間を要します。

 この場合、パワー値やケイデンスの数字にとらわれすぎずに、急勾配区間をダンシングで速度を落とさずにクリアできると、その後の再加速の負担はなくなります。もちろん、その1回のダンシングで無酸素領域に入ってしまったらダメージの方が大きくなってしまいますが…。

 ヒルクライムであっても、ある程度は慣性の力を利用できるわけですから、この辺りを意識できるようになってくると走りの幅が広がってきます。

 峠の途中に平坦区間があった場合も同様で、やはり早い段階で速度を上げてあげることで、一時的に脚に負担がかかりますが、平坦路での慣性を使えることになります。

 ここでポイントになってくるのが、慣性を獲得する際には一時的に高い出力を発揮する必要があるので、そこで脚がパンクしてしまわないギリギリのレベルを知ることと、慣性が効いている時には一瞬足を休められるのでそこで回復できるインターバル能力を高めることになります。

 慣性の力を上手く使いながら勾配の変化を「いなす」力って、ヒルクライムではとても重要なんです。ヒルクライムって実は、こういうインターバルの連続なんですよ(もちろん、勾配が完全に一定の峠なら別ですが…)。ヨーロッパの選手でも、ナイロ・キンタナのような生粋のクライマータイプ(パンターニも同様)を見ていると、細かくペースを上げ下げしているんですね。あれはライバルへの揺さぶりもありますが、勾配の変化をうまく乗り越えている面もあるはずです。

 ここまではテクニック。あとはトレーニングですが、これはごく基本的なアドバイスになります。30分の上りですから、30分間継続可能な上限のパワー値での走りを繰り返し、順応しましょう。後半にタレちゃうのはまずいので、頂上に向けてペースが上がる走りを意識してください。

インターバルトレーニングには固定ローラーも有効 Photo: Ikki YONEYAMAインターバルトレーニングには固定ローラーも有効 Photo: Ikki YONEYAMA

 次に、上でお話しした勾配の変化に対するインターバル能力もつけたい。仮に30分250wのパワーで走れるならば、途中の短時間の加速のために、例えば1分や3分ほどの高強度系インターバルトレーニングもしたいですね。このような短時間・高出力を繰り返すとインターバル能力がつきますし、同時に、高負荷を小分けにしているわけですから、30分間の持続可能パワー値も上がる可能性があります。

 2週間に一回くらい峠でのTTをやって、基礎能力を上げる。並行して、負荷を小分けにした短時間・高出力のインターバルをやる。フィジカル的にはこんなところでしょうか。

 前半でお話ししたテクニックと、後半のトレーニングは密接に関係しています。あ、あとはもちろん、体重を落とすことは効果的ですね。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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