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福田昌弘さんがレポートドバイのUCIグランフォンドを実走 年代別カテゴリーでアマチュアの世界選手権がより身近に

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 北海道で2016年7月に開催された「ニセコクラシック」がUCI(国際自転車競技連合)グランフォンドに認定され、グランフォンド世界選手権への予選となった。今回、アマチュアレーサーで、トレーニングスタジオ「ハムスタースピン」のトレーナーとして活動している福田昌弘さんが2016年12月16日にドバイで開催されたシリーズの一戦「Spinneys Dubai 92」(スピニーズ ドバイ 92)に出場。より身近になったグランフォンド世界選手権への切符を獲得したレポートをお送りします。

ドバイの街中を走る集団。先頭を引くのは福田昌弘さん (提供写真)ドバイの街中を走る集団。先頭を引くのは福田昌弘さん (提供写真)

 2011年にスタートしたUCIグランフォンドワールドシリーズは(UCIGF)、UCI(国際自転車競技連合)が統括するロードレースのシリーズ戦で、年代別に8グループに分かれて順位を争います。UCIGFの最大の魅力は公道を使ったスケールの大きなレースであること。日本では「ツール・ド・おきなわ」など限られた大会しかありませんが、世界に目を向ければ多数開催されています。

年代別なのでハードルも低め

出場した福田昌弘さん(右) (提供写真)出場した福田昌弘さん(右) (提供写真)

 2016年は世界中で19大会が開催され、山岳中心から平地基調など、コースも多岐に渡っています。この各地の大会が予選大会となり、上位25%に入れば世界選手権大会へ参加することができます。世界選手権大会の開催地は毎年変わり、2016年は9月にオーストラリアのパースで開催されました。今まで、噂程度でしかこのような大会があることは知らなかったのですが、今回で3回目を迎えたニセコクラシックがUCIGFのレースとなり、それをきっかけに世界選手権に挑戦することができ私にとっても身近なものとなりました。

 日本から見て「世界のレース」となると、これから世界に挑戦していく若者が目指すレースというイメージが強く、私達アマチュアレーサーにとっては遠い存在でした。その原因の1つは、日本の実業団レースにもあるような脚力別のカテゴリーにもあると思います。UCIGFでは脚力別のカテゴリーではなく年代別のカテゴリーで争われます。カテゴリーが増えた分だけ表彰対象者も多くなりますし、年代ごとの身体的な能力差も少なくなりますから、参加のハードルも低く感じるのではないでしょうか。

 とはいえ、大会によって運用は変わるようで、ニセコクラシックでは全年代が同時スタートで年代別の表彰、世界選手権では年代毎に時間差をつけてのスタートとなりました。2017年はフランス・アルビでの開催となり、本格的な山岳を含むコースになっています。自転車競技の本場とも言える、ヨーロッパからの参加者が増えるでしょうし、今まで以上に厳しい闘いが予測されます。

広大な敷地で会場作りの用意が進む (提供写真)広大な敷地で会場作りの用意が進む (提供写真)

 今回参加した「Spinneys Dubai 92」(スピニーズ ドバイ 92)はUCIGFカテゴリーで全年代155人が出走、40人のUCI国際ライセンスを持つ選手たちとあわせて195人が同時スタートするレース。距離は94km、ドバイの郊外にあるAutodrome(オートドローム)というサーキットをスタートし、東へ西へ往復したあとサーキットに戻ってゴールとなります。

 40~44歳のクラスは28人が出走。25%をクリアするためには7位以内でゴールする必要があります。集団でのゴールとなると、ちょっとした駆け引き次第で順位が大きく変わってしまいます。余裕を持ってクリアするためにはゴールスプリントではなく逃げに乗りたい。目標は7位ではなく優勝。最低限でも表彰台に立つつもりでレースに臨みました。

スタートはまだ辺りが暗い早朝に行われた (提供写真)スタートはまだ辺りが暗い早朝に行われた (提供写真)

日の出前の暗闇でスタート

 日の出まで1時間以上ある午前6時、想定以上の暗さの中、200人弱が一斉にスタート! スタートを無難にこなし先頭10番手程度につけたのですが、暗くてコーナーが見えないためジリジリと後退、地元の選手はかなり大きめのライトを装着していました。このあたりは経験の差でしょうか…サーキットを出て、まずは東へ。94kmと聞くと長く感じますが、ほぼフラットなコースのため時間にすれば2時間強です。

 こういったレースの場合、序盤は脚に余裕がある選手が多いためアタックがかかりやすいものの、追う側にも余裕があるため逃げはなかなか決まりませんが、選手が激しく集団内を移動するためトラブルにも巻き込まれやすくなります。集団の前方に位置することが重要です。

 中盤は不意のアタックが決まりやすい時間帯。強烈なアタックでなくとも、なんとなく集団から離れたグループが、そのまま逃げグループになってしまうことが多くあります。やはり集団の前方にいて、動きに対応していくことが重要です。テレビで見るプロのレースでは、ゴール前に追いつかれることが多々ありますが、そのためには意志の統一された集団の力が必要となります。自己を犠牲にしてチームのために貢献するアシストの力です。

チームより個人の成績優先

レースボードの前で撮影 (提供写真)レースボードの前で撮影 (提供写真)

 しかしながらUCIGFはアマチュアのレースであり、大半の選手はチームよりも個人の成績を優先するものです。中盤で出来た逃げは、そのまま逃げ切ってしまう可能性が高いと予測されます。そして後半に入ると、ゴールに備えて前へ前へと上がってくる選手が多くなります。無理な位置取りも多くなり落車が発生しやすい時間帯。集団の前方に位置することが重要です。

 いずれにしても集団の前方にいるしか選択肢がありません。つまり、やるべきことは序盤のアタック合戦で消耗しないように気をつけながら位置取りをし、集団が「そろそろいいかな?」と思うぐらいのタイミングで逃げる、または逃げに乗ることです。

 ということで、まずは先頭付近に上がってみたのですが、ライトがないと暗くて道がよく見えず、ちょっとした段差やなんてことないラウンドアバウト(環状交差点)の通過に恐怖を感じます。暗闇の中で右へ左へと動く集団、なんとなく見える4、5人前の動きから予測して走り抜けるしかありません。

 結局、ジワジワと後退し、ギリギリ先頭の様子を伺える20番手ぐらいで序盤を過ごすことになりました。 11km地点でUターン、来た道を戻ります。とにかく道幅が広いこちらの道路、片道4車線ぐらいあるため、来た道を戻るといっても反対車線はかなり離れており、後からスタートした別のカテゴリーとすれ違う時も、はるか彼方に感じます。

「spinneys dubai 92」レースコース (大会公式HPより)「spinneys dubai 92」レースコース (大会公式HPより)

 コースを右折し、さきほどとは別の東へと向かうルートに入ります。こういった繋ぎの道にはスピードを落とさせるための段差があり、選手によって技量の差が出てきます。トラブルに巻き込まれる原因にもなりやすく、常に周り選手にの動きに注意し、危険を感じる人には近寄らないことが重要です。

 再び右折して東へ向かうルートへ、おそらく砂漠の中を突き進むルートなんでしょうが、周りの様子が見えないために、なんの感動も得られなかったのは残念な所。レースも中盤へと差し掛かる28Km、コース最東地点に達する頃には少し明るくなってきました。

レースの流れは日本と酷似

 まずは勢いよくアタックして前待ち。こちらの選手は派手なアタックへはすぐに反応する傾向があるようで、集団全体がお尻をあげて追いついてきます。次は、コースの反対側に移って、そろーっとペースをあげる作戦。こちらは難なく抜け出せます。後ろに3人着いてきたし、「このまま逃げが決まるんじゃないか?」と内心喜んだのですが、横に動いてもサインを出しても後ろの選手が先頭を交代してくれませんでした。じわじわと後退して集団に戻り。ここまで来るとドバイのレースの流儀?が段々と分かってきました。

ドバイのレースの流儀

1.集団が1つの場合、先頭はひかない→当たり前
2.アタックは潰しに行く→どんなアタックでも…
3.逃げが出来てもローテーションはしない→なんで?

 日本のホビーレースと一緒ですね(笑)。違いを感じるのは集団の安定度でしょうか。比較的密集している時間帯でも不安を感じることはありませんでした。とはいえ横風区間やラウンドアバウト(環状交差点)のようなコーナーでも、コースと砂漠の間に1台が余裕で通れる隙間が空いてることが多く、コーナリングの技術に問題があるのは万国共通なんですね。

 スタート地点のオートドロームも通過し東側の往復ルートへ。こちら側には緩いアップダウンがあります。試しに先頭でペースを上げると、後ろはそれなりに脚に来ている様子。そのままペースを上げ直すと3人が後ろに。「もうローテなんか頼まない。このまま踏む!」と、脇の間からチラっと後ろを見たら同行したチームメイトも集団の先頭を引いている…。共に脚使うのもバカみたいなので集団へ。

大通りを通行止め

 このあたりは前日にも試走しているのですが、日中はかなりの交通量がある大通り。午前6時〜8時とはいえ、そこを通行止めにしてレースをするとは、凄い規模のレースです。Uターンして後半戦に入ると集団の動きは活発になってきます。4車線の道路を右へ左へ。何とかして抜け出そうとする選手が次々に飛び出していきます。もし自分が踏み切れるとしたら何分が限界だろう?10分?15分?このあたりが限界か。うまく3人ぐらいで抜け出せば逃げ切りは可能かもしれない。

計測チップはマラソン大会などで使用される1秒ごとに計測されるもの (提供写真)計測チップはマラソン大会などで使用される1秒ごとに計測されるもの (提供写真)

 Autodromeへ向かう最後の登りからゴールが20分ほど。この登りで仕掛けて2、3人で抜け出せばゴールまで行ける。ラインを変えて緩く飛び出すと後ろとは差がついた!が、つきすぎた。一人飛び乗ろうとしてくるが無理そうなので、一旦緩めます。集団に戻ったと同時に再びアタック!今度は2人着いてきた。が、弱そうだったので一旦戻り。再度アタック!も今度は完全に一人。諦めて踏んでいく。後ろとはほんの2、3秒差。が、頂上が近づいて勾配が緩くなるに従い集団の速度が上がって吸収されてしまった。

 この後、サーキットへ戻る道が唯一のテクニカル区間。何が起こるか分からないため、脚を使ってでも10番手以内で前に入るよう、チームメイトには伝えてから自分も前へ。先頭5番手ぐらいでコーナーを曲がった後、サーキットへと続く道は駐車場内なので、基本的に速度が出せないように設計されています。先頭はココをギリギリのラインで走り抜けていく、予想通り、自分の後ろで中切れが発生し、6人程度で抜け出す形となった。残りは5km。「死ぬ気で踏め〜」って英語では何て言えばいいんでしょうね?

 なぜかココでペースを落とす先頭グループ、さっきまでの勢いはどこへやら。集団は50人ぐらいだろうか?道中でマークしていた同年代の選手は2人。Team GIANT-RBS(クラブチーム)と、地元のGMS-YAS Cycles(バイクショップ)チーム。先頭3番手につけたTeam GIANT-RBSが活発に動いてるので彼の後ろをピッタリマーク。サーキット内を右へ左へ。初めて走るコースで先が全く分からない。

 事前の確認では、少し登って右に曲がったらゴールのはず…と考えていたら、左からゴールスプリントする選手たち。あれ?まだ早くない?そもそも、あと何km? 同年代の選手がさらに2人抜いていく。

 数秒考えてしまったが、目の前にあるそれっぽいのをゴールとして踏み直しはじめました。前の2人にギリギリ追いつくか?最後まで踏み倒して、ほぼ横並びでゴール!ああ、計測ラインが敷いてあった。ここがゴールでした。UCIGFでは25番、同世代のゼッケンを数えると、おそらく7位。目標をギリギリ達成か?!

世界選手権切符をゲット

 そして夜公開されたリザルトを見ると4人いる5位グループでのゴール。どうやら7分前に4人の逃げがあったようです。後からStravaで確認すると、逃げが発生したのは最北端へと向かうルート。私が暗さを嫌がって後ろに下がっていた所です。後日、世界選手権への招待の連絡がきました!今回使われていたチップ、マラソン大会などで使われる足に巻くタイプのものですが、こちらの精度が1秒単位の計測で、同着5位ということになったようです。計測機器に救われました。

 「Spinneys Dubai 92」は、世界ではなくドバイのレース。ヨーロッパからの選手も多く参加していました。日本のレースと異なっていたのは、コースの広さと運営の大雑把さでしょうか。確かに、集団内には日本のレーサーには少ない屈強なタイプの選手が多く、絶対パワーが有利となる平地のレースでは実力負けしそうな印象を受けます。しかし相手も人間。普段の練習をこなしていれば十分に対応できる範囲であると感じました。

スタート地点の会場は、参加者やブースの出展で盛況 (提供写真)スタート地点の会場は、参加者やブースの出展で盛況 (提供写真)

 現在は19回に増えたUCIグランフォンドワールドシリーズ。公道で開催される長距離のレースは、日本で多いサーキットのレースとは別の楽しみがあります。今回は旅費も飛行機代含めて10万円かからない位でした。フランス・アルビで開催される世界選手権を目指し、日本からも海外のレースへ挑戦される方が一人でも増えるキッカケになれば幸いです。

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