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サイクリスト

2017年新春インタビュー<1>テーマは「今年もツール・ド・フランス」 バーレーン・メリダに移籍の新城幸也に聞く

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 日本ロードレース界のエース、新城幸也にとって2016年は激動の一年だった。チーム移籍しての初戦で大腿骨骨折の大けが。しかし見事復活してツアー・オブ・ジャパンの難関伊豆ステージでの優勝。ツール・ド・フランス、リオデジャネイロ五輪、さらにブエルタ・ア・エスパーニャにも出場してファンを沸かせた。2017年は新チーム「バーレーン・メリダ」に移籍。昨年12月、恒例のタイ合宿出発直前の新城に、2017年シーズンに向けての思いを聞いた。

2017年は新チーム「バーレーン・メリダ」に移籍した新城幸也 Photo: Ikki YONEYAMA2017年は新チーム「バーレーン・メリダ」に移籍した新城幸也 Photo: Ikki YONEYAMA

大けがに始まるも充実の一年

 ――まずは2016年を振り返って、本当に様々な出来事がありました

 そうですね。まず移籍を決めた時から2016年に対する思いは大きかったです。チームからの期待も感じていましたし、それを実行するだけだったんですけど、初戦で転んでああなって(骨折して)しまった。正直言って折れた瞬間は、ツールもそうだし、オリンピックも無理だと思いましたよね。

 本当はカタール、オマーンから帰ってきて、その後にオリンピックの代表発表の予定だったんです。それがああなって、大腿骨だったので、全部終わったなって。今年半分はもう無いなと。

 でもそこで、浅田さん(ロード日本代表ヘッドコーチの浅田顕氏)が「(五輪代表に)選ぶから」と言ってくれたので、それで回復に向けてやる気が出ました。ただ間に合って良かったというか、僕自身も正直どこまで戻るかは未知数でしたし、そのあたりは今思えば今年のようには思えないですね。

3月のリオ五輪代表選手発表会に臨んだ新城(左)。このときまだ松葉杖だった Photo: Shusaku MATSUO3月のリオ五輪代表選手発表会に臨んだ新城(左)。このときまだ松葉杖だった Photo: Shusaku MATSUO

 ――復帰してからはほぼ休みなくレースに出続けましたね

 本当にそうです。今年80レースくらい走りましたから。グランツールも2つ走ったし、2月に骨折して5月末にツアー・オブ・ジャパンで復帰して、言ってみれば5カ月間で80レース走ったんで、まあそれはそれで充実してましたよね。チームもレースに出られるだけ出してくれたので、それはありがたかったです。

 ――ツアー・オブ・ジャパンは、久々の出場でしたが、どうでしたか?

 以前僕が出ていた頃より、ステージも増えましたし、お客さんも増えたなという感想ですね。

 ――コースの印象はどうでしたか?

 新しくできた京都といなべは本当、すごく面白いコースでしたし、あと伊豆は、あれはよく(コースを)つなげたなと思いました。無理矢理つなげた風だけど、それなりにきついし、でも流れるコースになってるし。あとは、富士山と…大阪も昔のコースの方がもっと面白いと思うんですけど。

日本人選手はもっと頑張らないと

 ――ツアー・オブ・ジャパンではステージ優勝で大変盛り上がりました

 でも、なんで日本の選手、新しい選手が出てきていないのかというのは、ありますよね。

 テレビのインタビューでも言いましたけど、僕にとってのツール・ド・フランスが、日本人選手にとってはツアー・オブ・ジャパンだと思うんですよ。だったらもうちょっと頑張れるんじゃないか。イタリア人がジロ・デ・イタリアを目指すように…日本人がツアー・オブ・ジャパンに出るということは、そういう事だと思うんですよ。そういうレースであってほしいし、選手にそういう思いがもう少し欲しいなと。

大腿骨骨折からの復帰戦となった5月のツアー・オブ・ジャパン。難関ステージの伊豆ステージで見事ステージ優勝を果たし、復活を強烈に印象付けた Photo: Ikki YONEYAMA大腿骨骨折からの復帰戦となった5月のツアー・オブ・ジャパン。難関ステージの伊豆ステージで見事ステージ優勝を果たし、復活を強烈に印象付けた Photo: Ikki YONEYAMA

 ジャパンカップはワールドチームが多いけど、ツアー・オブ・ジャパンでは日本のチームの方が多いんだから、そこでもっとガチガチ攻撃してくれてもいいと思うんです。でも集団を引いているのはNIPPOとかランプレとかが多かったですよね。

 ――伊豆で勝った。そこは日本人として可能性を見せたのでは

 あれはけが明けで自分の実力もまだ測れていなかったので、大人しくしていて残って、最後皆が牽制したところを行っただけなんです。調子が良ければもっとアタックしていましたよ。

 でも1周目から集団が分かれて、僕あの時、裏の上りで一人で追いついたんです。何で皆あそこで止まるのか分からなかった。ほとんどの日本人は後ろじゃないですか。何やってんだって感じで。

Photo: Ikki YONEYAMAPhoto: Ikki YONEYAMA

 ――そこは脚の違いかも?

 だって1周目ですよ。諦めるところじゃないじゃないですか。前に追いつかないと思っているから追いかけない。でも僕が最後一人で追いついた訳だから、そこに付いて来れば良かったんだし、日本人はそういうところも、もうちょっと頑張ってほしいですね。

 ――若い選手に対して積極的に何かを訴えるような場面はありますか?

 うーん。ただ彼らが何を求めているのか分からないし、正直、こちらから言っても迷惑なときがあるじゃないですか。逆に僕らが「この子いいよ」と言ってそれがプレッシャーになると嫌だし、強くても「僕ヨーロッパに興味ありません」かもしれないし。

 だから僕らは待ってることしかできない。来てくれれば応えるし、練習したいなら一緒にするし。

 ――ドアは常に開いている

 開いてます。タイ合宿もそうだし。やる気のある子はどんどん引っ張り上げるし、だから本当にやる気次第じゃないですかね。

 僕が何かをやろうというよりは、来てもらって感じてもらえれば。経験や走りは伝えられるし、タイ合宿では24時間一緒ですから。

ニバリのチーム「楽しみ」

 ――移籍の経緯を聞かせてください

 新しいチームができると聞いたのがツールの後で、来ないかという話になったのはブエルタの前です。ただ、僕としてはこんなガラッと変わったチームになるとは思ってなくて。

 ――メンバーの印象は? バラエティに富んでいます

 中学校から高校に進学したみたいな感じですよね(笑)。元ランプレが4人で一番多くて、他は数人や1人とか。全く新しいチームというのは初めてなんですけど、といってもイタリア式だから、多分ランプレとあまりやり方は変わらないと思います。

 結構アムステルゴールドで活躍している選手ばかりなんです。競争はすごく激しくなるので、どうやって自分の位置を築くかですよね。

バーレーン・メリダで新城のチームメイトとなるヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)。ツール、ジロ、ブエルタの世界3大ステージレースを全て制した経験を持つスーパースターで、2016年も2度目のジロ総合優勝を達成 Photo: Yuzuru SUNADAバーレーン・メリダで新城のチームメイトとなるヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)。ツール、ジロ、ブエルタの世界3大ステージレースを全て制した経験を持つスーパースターで、2016年も2度目のジロ総合優勝を達成 Photo: Yuzuru SUNADA

 ――ニバリがチームメイトになります。彼に関してはどう考えていますか?

 2017年はジロが100周年じゃないですか。だから絶対に狙っていきますよね。僕としては全然ジロは興味ないし、ツールに出られればいいし。

 彼がジロを獲ってくれたら、やっぱり新しいチームにとって優勝というのが一番大きいので、そういう意味でも1年目は大事なので。だから、モチベーションを高めて頑張ってほしいですね。

 ――誰もが認めるスーパースターの選手です

 まさにそうですね。今までは、ルイ・コスタにせよ、ピエール・ローランにせよ、先頭からいかにタイム差を失わないというレースだったんです。

 それがニバリの場合は、逆にタイムを取りに行くじゃないですか。攻撃してジャージを狙っていく。そういう部分でも走り方が変わるので、それは楽しみです。

 今まではヨーロッパで攻撃を仕掛けるというのはなかったですけど、僕自身それにうまくはまれるようにしたいです。

 ――チームとはどういう話に?

 まだ全然話はしていなくて、自分の希望も言ってません。12月の8日から20日まで合宿だったんですけど、僕はもうタイ行きのチケットを買ってしまっていて、行けないって連絡したんです。そうしたらブレン(ランプレから共にバーレーン・メリダに移るブレント・コープランドGM)は分かってくれているから、全然何も言ってこなかった。1月にチームプレゼンテーションがバーレーンであるので、そこで僕は実質初合流です。

 バイクは同じメリダでフィッティングも必要ないし、ランプレからメカニックもマッサージャーも行くので、メカニックが僕の数字を持っていけばいいだけなんです。

 ――メリダのバイクを1年間乗ってきた印象は?

Photo: Ikki YONEYAMAPhoto: Ikki YONEYAMA

 良いと思いますよ。エアロフレーム自体が初めてだったので、最初、進ませることに関してはいろいろ難しいところもあったし、メリダの売り文句は上りも上れるエアロフレームということなんで、上れるように頑張って研究しました(笑)。

 ――具体的には?

 基本的には踏み方を変える、ですね。ポジションはペダリングの癖によって変わるので。ただリアクト(メリダのエアロロードバイク)は多分前乗りの方が進みますよね。

 あとはリアクトは、脚があれば問題ないです。良く回るフレームなので、脚をよく回す選手にはいいと思います。ガシガシもいけますけど、ずーっと脚を入力し続けると、ずっと回るフレームなんですよ。逆に言えば脚がなくなるとダメなんです。丁寧に踏めば踏むほど進むのが、リアクトですね。

 ――スクルトゥーラは?

 スクルトゥーラ(オールラウンドタイプのロード)は全然もう、どんなにやってもと言ったら変だけど、進ませるのが簡単なフレームです。それぞれに良さがありますね。

 ――新チームの不安というのは無さそう

 僕自身がまだチームに合流していないから、何も言えないんですけれど、本当にいいチームになると思うし、いい監督が待っているし。あと、(日本人マッサーの)中野喜文さんもバーレーンなので、そういうのは楽しみですね。日本人がスタッフにいるのって、初めてなんです。

パワートレーニングは結局「やってない」

 ――オフはどんな感じで過ごしましたか?

 11月中は家にほとんどいなくて、イベントづくしでした。さいたまクリテリウムが終わって翌週からずっとで、愛媛に行きましたし、石垣にも帰りましたし、ほぼ毎週末どこかイベントに行っていました。

 ――トレーニングは?

 してないです。イベントで乗るだけで、それ以外はトレーニングらしいトレーニングはしていないですね。

 ――例えばウエイトとかストレッチとか…

 いや全く。普段からストレッチやらないし、マッサージに何回か行って、くらいですかね。毎年そうですね。

 ――練習はいつから?

Photo: Ikki YONEYAMAPhoto: Ikki YONEYAMA

 1月17日のダウンアンダーが開幕戦なので、12月から乗り始めています。最初は2時間くらい。あとはタイ合宿に行って、もう山本幸平も行ってますし、行けばいつも通りですね。

 チームも何も言ってこないし、それはもう任されているということだから、しっかり準備をしていかないといけないですよね。

 ――昨年のインタビューでパワートレーニングについて聞きましたが、1年間やってきて、どうですか?

 いや正直、やってないんですよ。

 やってないというか、チームにトレーナーを付けるかって聞かれたときに、まず自分のやり方で見てくれということになって、その後タイ合宿からカタールで合流したときに、トレーナーが全く問題ないからそのまま続けていいよって言われたんです。

 だからデータは取っているけど、練習は自分の練習でやってるんです。コーチも付けていないし、ただデータが取れたというだけですね。

 ――ええっと、新チームでは?

 特に何も言われてないので、このままじゃないですかね。

 ――データに関しては何か見たりとか?

 見てないです。もうただデータ取って、トレーニングピックスに上げているだけで、それをトレーナーが見ているという。自分で解析はしていないですね。見ても分からないし(笑)。

強いチームに行けるのが楽しみ

Photo: Ikki YONEYAMAPhoto: Ikki YONEYAMA

 ――2017年のテーマは

 いやもう完全にグランツール、ツール・ド・フランスです。2016年は一応ツールでは敢闘賞は取ったけれども、それ以外はいい走りができなかったので、またツールに出たいですよね。

 ――いい走りができなかったというのは?

 もうちょっと逃げに乗ったり先頭を引くとか、派手なのがなかった。チームのルイ・メインティスが、もう全然40番手30番手でいいっていう人間だったんで。

 でも次はニバリが先頭を走るチームなので、また仕事内容が変わってきますよね。これまで所属した中で一番強いチームなので、それが楽しみ。僕もこうやって10年かけてだんだんレベルアップしてきたので、それに従ってこうやって強いチームに行けるというのが、楽しみです。

 ――ツールへのこだわりを、今一度教えてください

 なんですかね。やっぱりツール・ド・フランスはツール・ド・フランスですよ。1回走ったら、ツールは好きになります。キツいけど。グランツールはみんなキツいですね。

 その中でツールが一番観客は多いし、僕はやっぱり応援されてナンボってところがあるので、やっぱりそういうところがいい。シャンゼリゼのあの歓声の中を走るのはツールくらいですし、そういう意味でも非日常なんですね。ツールでしか聞けない歓声というのがあります。

 だから2017年「も」ツールですね。そろそろステージ優勝しないと、いつまで待たせるんだって話になるので。それでもしジャージでも着れたら、もっといいですしね。

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