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つれづれイタリア~ノ<85>冬の体重増加対策 イタリア人監督が教える「真冬のトレーニングですべきこと」

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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 2016年が終わろうとしています。自転車業界では様々な出来事がありました。どん底から立ち上がりジロ・ディタリアで劇的な総合優勝を飾ったヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)、そしてファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック・セガフレード)の現役引退。さらにティンコフやIAMサイクリングチームの解体まで。思い起こせば息抜きできない一年でした。息抜きは年末年始のわずかな時間に与りたいところですが、一方で我々自転車競技を愛する者にとってこの時期は深刻な問題に直面します。それは「体重増加」です。

イタリア地元のライダーたち。冬の朝は霧が発生することが多く、骨にしみこむような寒さが続くためしっかり防寒する(12月撮影) Photo: Marco FAVAROイタリア地元のライダーたち。冬の朝は霧が発生することが多く、骨にしみこむような寒さが続くためしっかり防寒する(12月撮影) Photo: Marco FAVARO

避けられない体重増加問題

 冬になると、体重はどうしても増えます。これは哺乳類に仕込まれた宿命です。食べ物の乏しい冬を越すために、私たちの祖先は体の中で脂肪を蓄える道を選びました。そのDNAが私たちの中にしっかりと機能しています。そして冬は悪天候や寒さで、外で運動する機会も減ります。

 そこに追い打ちをかけるのが、この時期特有の食文化、年越しそば、おせち料理、お餅、鍋料理などです。ほとんどが高カロリーで、気づかないにお腹周りが膨らみます。これは日本のみならずイタリアでも大きな問題で、年末年始はどうしても暴飲暴食がつきものです。

 さて、スポーツマンとして冬を「安全に」過ごせるコツがあるのでしょうか。イタリアのU23強豪チーム「Zalf Euromobil Désirée Fior」(ザルフ・エウロモビル・デズィレ・フィオル)の監督を務めるイラリオ・コンテッサ氏に電話取材をし、質問をしてみることにしました。

Zalf2017年体制 ©Zalf Euromobil Désirée FiorZalf2017年体制 ©Zalf Euromobil Désirée Fior

 コンテッサ氏は長年にわたり、パドヴァ市を拠点とする「ワーク・サービス・ブレンタ」という強豪ジュニアチームの監督を務め、その成績が買われ2017年からザルフ・エウロモビル・デズィレ・フィオルの監督を務めることになりました。このチームは現在ワールドツアーで活躍している多くの選手たちを輩出しました。

 若い選手の成長を見続け、チームの栄養士とドクターとともに選手たちの健康管理や食事療法を指導してきた彼が、選手としての「正しい冬の越し方」を教えてくれました。

トレーニングメニューは脂肪を増やさない組み方を

 ─選手たちはどれぐらいの休みを取りますか?

 休みの取り方はずいぶん変わり、短くなりました。90年代まではほぼ2カ月の休みが普通でしたが、レースの数が増えた影響で、ほとんどの選手たちが長くても3週間しか休むことができません。それでも定期的に自転車に乗ったり、自主練習をしたりします。ちなみにプロの休暇はもっと短いです。

 ─冬特有のトレーニング方法がありますか?

 寒くなると、どうしても体に脂肪がつきやすくなります。なのでトレーニングメニューは脂肪を増やしすぎないように組まなければなりません。寒い中で激しいトレーニングをする必要はありませんし、1週間に2~3回外で自転車に乗れば十分です。距離もスピードを控えても問題ありません。自転車に乗れない日はインドアでできることも多いです。スポーツセンターで行われるスピニングプログラムもかなり有効だと思います。

元チャンピオン、ステファノ・ガルゼッリも防寒を怠らない(2016年1月撮影) Photo: Marco FAVARO元チャンピオン、ステファノ・ガルゼッリも防寒を怠らない(2016年1月撮影) Photo: Marco FAVARO

 ─日本、特に太平洋側では冬はイタリアほど寒さは厳しくありませんが、アウトドアでトレーニングするときの注意点は?

 寒さの感じ方に関しては個人差があると思います。今まで携わったチームの中でも寒さに弱い人はいました。最初は過剰にジャージを重ねていましたが、その場合、汗のかきすぎに注意しなければなりません。練習が終わると体が急に冷えるからです。まずは汗をかきすぎないようなウェアの選び方を学ぶ必要があります。重要なポイントは末端部分。

 足や手、耳や首、膝と肘をきちんとカバーすること。シューズカバーまたは冬用ソックス、冬用グローブ、アームやレッグウォーマーなどを着用すれば、たいていの寒さはしのげます。

 ─自転車を使わないとき、ランは有効的な運動ですか?

 人によります。ランと自転車は違う筋肉を使いますので気分転換になると思いますが、人によっては筋肉にダメージや違和感を与えることもあります。不安な人は、家でも簡単にできるスクワットやベンチプレスなどがおすすめです。負荷を上げすぎないことが重要。数をこなすのがポイントです。

 ─上半身強化は?

 体幹を鍛えるための練習も重要です。これはどこも簡単にできます。腕のための練習も大事です。自転車の場合、下半身ばかりをトレーニングしがちですが、上半身が弱すぎると自転車のコントロールが乱れ、落車につながる危険性が増えます。

 ─外で練習する場合、どのコースがおすすめですか?

 冬は安全な平たんなコースがおすすめです。山間部はどうしても日陰で道が乾かないために凍結する危険性があります。春が近付いてきたら、当然ながらアップダウンのあるコースに挑むべきです。誰にとっても山での練習はきついですが、山頂が目標だと定めることができるので、メンタル的な強化に役立ちます。

イタリアのライダーたち(12月撮影) Photo: Marco FAVAROイタリアのライダーたち(12月撮影) Photo: Marco FAVARO

 誰でもそうですが、明確な目標を決めなければ練習は退屈なことで、すぐに飽きてしまいます。ところどころ上りと下りのあるコースで練習すればトレーニングにメリハリが出て、メンタルの強化につながります。別の言い方をすると、「飴と鞭」のようなものです。飴は下り、鞭は上り。だらだらと練習をするより、強度の高い目標設定をすれば達成感は増します。

 ─それでも暖かい布団の甘い誘惑に負けた場合、どうすればいいですか?

 イタリアではこう言います「Volere è potere(ヴォレーレ・エ・ポテーレ)」。「やる気があれば、何でもできる」を意味します。でも、やる気がない場合もありますよね。そのときは時間を無駄にしないために頭を使うゲームをすればいいと思います。集中力を維持できる数独やクロスワード、パズルゲームなどがおすすめです。レース時の素早い判断力につながります。

 ─冬が終わりに近づきますと、どんなトレーニングがおすすめですか?

 冬を良いコンディションで越すことができたのであれば、インターバルトレーニングにシフトすべきです。悪天候の場合、ローラー台を使ってもけっこうです。最近のローラー台はコンパクトになり、狭い家でも使用できるようになりました。

 インターネットにつなげれば、面白いサービスもたくさんあります。可能であれば、しっかり1時間練習してほしいところですが、時間がない人は20分でも効果的です。もちろん練習の強度によりますが。

小さなチームの若者もしっかり防寒対策している(2016年1月撮影) Photo: Marco FAVARO小さなチームの若者もしっかり防寒対策している(2016年1月撮影) Photo: Marco FAVARO

 とにかく冬は寒くても外でのトレーニングはすべきです。医学的にも重要です。寒さに耐えるために、体が免疫を高めようとするので、だんだん風邪を引きにくい体が作られます。もちろん適度であることが重要です。

 ただし、トレーニングの直後は必ず免疫が落ちるため、直ちに選手たちにシャワーを浴びてもらい、暖かい服に着替えてもらいます。でないとすぐに風邪を引いてしまいます。とにかく体がリカバリーしている時に冷やさないことが肝心。自転車の掃除やメンテナンスは後回しで良いです。

 ─ありがとうございました

 さて、目の前においしそうな料理が運ばれてきました。今年は少し我慢をしましょうか。2017年の目標として「腹8分目」を忘れないようにします。

 それでは、みなさまよい年末年始を。2017年にまたお会いしましょう。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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